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2021年5月5日更新節税
不動産における相続の手続きや売却の際の節税対策をわかりやすく解説
相続における不動産は、相続の手続きが面倒だったり、税金対策の考慮など知っておくべきことは多くあります。この記事では、不動産相続の手続きや流れ、名義変更(相続登記)や書類関係、税金や計算方法、節税対策をわかりやすく解説します。
不動産の相続
相続の際、被相続人の相続財産の中に不動産が入っていることは珍しくありません。ただそのまま受け取ればいい現金と違い、不動産は相続はさまざまな手続きや税金の問題が発生するため、これらの問題に直面した際に戸惑うこともあることでしょう。
あらかじめ相続の手続きを知っておくことでスムーズに不動産の相続が実施できます。今回は不動産の相続の手続きや売却の際の節税対策、名義変更(相続登記)と書類などについてお伝えしていきます。
不動産の分割方法
ここからは、具体的に不動産の分割方法について紹介していきます。不動産の分割方法は主に下記の4つの方法があり、それぞれの特徴を紹介していきます。
- 現物分割
- 代償分割
- 共有分割
- 換価分割
①現物分割
現物分割は不動産を相続人の数だけ分割して、換金したりせずその状態のままで相続する方法です。預貯金など不動産のほかにも遺産がある場合、1人が不動産を相続して、他の相続人が預貯金などを相続するというケースが多く見られます。
②代償分割
代償分割は相続人1人が不動産を相続し、他の相続人にはそれに見合った金額を支払うという方法です。不動産の所有権でトラブルにならない限り、代償分割は家族内相続をする際の贈与税の節税対策にもなり、分割しやすい方法と言えます。
③共有分割
共有分割は、複数の相続人でその不動産を共有する方法です。誰か1人が不動産を相続するわけではないため公平な方法ではありますが、次の世代での相続や不動産を処分する際にトラブルに発展する可能性のある方法でもあります。
④換価分割
換価分割は不動産を売却して現金化し、そうして得た金銭を相続人で分割する方法です。不動産や土地の分割に比べて、現金化することによって比較的分割しやすく公平な方法であると言えるでしょう。
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不動産相続の手続きや流れ
不動産を相続する際には決まった手続きがあり、そのプロセスを踏まえておく必要があります。ここでは、不動産の相続に関する手続きの詳細について、順を追ってお伝えしていきます。
①相続の発生と遺言書の確認
被相続人が亡くなったことで相続が発生した場合、まず死亡届を7日以内に役所に届け、その後は被相続人の遺言書を確認します。公証証書遺言書の場合は公証役場で検索することができますが、そうでない場合は遺言書がないかしっかり調べておきましょう。
もし遺言書があった場合はすぐに開封せず、家庭裁判所や専門家に頼んで検認してもらいます。これは遺言書の偽造や複製を防ぐために必要で、相続トラブルを防ぐためにも行っておきましょう。
また、遺言書の確認に関しては、事前に被相続人から遺言書の有無を聞いておくようにしておきましょう。特別な事情がない限りは、事前に遺言書の有無や内容を把握しておいたほうが相続がスムーズに進みます。
②法定相続人の確定
続いては、法定相続人の確定です。たとえ遺言書に特別な記載があっても他の相続人が把握していない法定相続人がいる可能性はあるため、被相続人や相続人が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本を確認しておくようにしましょう。
ケースとしては少ないですが、被相続人が亡くなってから隠し子や疎遠になっている兄弟が見つかることもあります。戸籍謄本を確認しないことで後々トラブルに発展することもあるため、入念にチェックしておくことをおすすめします。
また後述する遺産分割協議は、法定相続人が全員そろっていなければ協議を終えてもやり直しになってしまいます。そのためにも、このプロセスはとても重要です。
③相続財産の確定
相続財産の確定も、法定相続人の確定と合わせて行う必要があります。相続手続に入る前に遺産がどのくらいあるのかを調べて、不動産や現金など他の相続財産と合わせて確定させる重要なプロセスとなります。
不動産を含めた全ての相続財産は相続税の対象になるため、こちらも被相続人の通帳などを細かく調べておく必要があります。
④遺産分割協議(遺言書がない場合)
もし被相続人の遺言書がない場合は、法定相続人と相続財産が確定次第、遺産分割協議を行うことになります。これは法定相続人同士で、遺産をどのように分配するかを決定する協議です。
遺産分割協議では遺産をどのように分配するかを話し合うことになりますが、単純に分配すればいい現金と異なり、数値化されていない不動産は少し手間がかかります。遺産分割協議それ自体には、法定相続人を全員集める必要はありません。
しかし、後述する遺産分割協議書を作成する際には、法定相続人全員の捺印が必要になってきます。また、遺産分割協議は何かとトラブルに発展しがちなプロセスであり、協議がなかなか進まないケースも少なくありません。
そのためにも、必要に応じて弁護士のような専門家を招いておくようにしましょう。遺産分割協議の際に、未成年の法定相続人がいる場合は、家庭裁判所から特別代理人を選定してもらう必要があります。
⑤遺産分割協議書の作成
遺産分割で法定相続人が納得できる結果に至ったのならば、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は法的に書式が決められているわけではありませんが、今後も使う書類であるため相続する不動産については正確に記述する必要があります。
初めての相続で、どのように遺産分割協議書を作成すればいいのかわからないという方も多いことでしょう。そのようなときは、専門的な知識を持った司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
⑥相続登記
遺産分割協議の作成が完了したら、次に相続登記で名義変更を行います。相続登記を行う際には、相続する不動産の固定資産評価証明書を取得し、遺産分割協議書など必要書類を用意します。
その後は法務局で相続登記の手続きを行えばよいですが、相続登記の際には登録免許税が発生するので注意してください。法務局は平日にしか業務を行っていないため、仕事でいけないというときは司法書士のような専門家に全てを任せるという選択もあります。
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不動産を相続したときの名義変更(相続登記)と書類
ここでは先ほどお伝えした、不動産の名義変更(相続登記)についてより詳しくお伝えします。相続における名義変更、すなわち相続登記は不動産の所有権移転の相続版といえます。
プロセスに関してはお伝えした通りですが、相続登記にはいくつかの必要書類があります。それでは以下に、相続登記の必要書類を紹介していきます。
- 相続する不動産の登記簿謄本
- 本籍の記載がある被相続人の住民票の除票
- 被相続人の出生から死亡するまでの戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続する不動産を取得する相続人の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
上記の書類を全てそろえることはなかなか大変であり、役所が平日しか運営していないため仕事を休まざるを得ない状況になることが多いです。そのため全て自分で行うことが難しい場合、先ほどお伝えした通り相続登記を司法書士に丸投げしてしまうのもいいでしょう。
司法書士に任せれば、印鑑証明書以外は代行取得してもらえるため、書類をそろえる手間が減ります。当然司法書士に依頼するなら報酬は発生しますが、司法書士は弁護士のような専門家と比べて比較的報酬は安いので余裕がある場合はなるべく依頼することがおすすめです。
不動産を相続した場合の税金と計算方法
先ほどから何度か触れているように、不動産の相続で発生する税金は事前に把握しておいたほうがいいでしょう。そこで不動産を相続した際に発生する、「相続税」と「登録免許税」の計算方法を以下に紹介していきます。
①相続税
不動産に限らず、相続の際には相続税が発生しますが、相続税には基礎控除があり相続財産から差し引きます。それでは、基礎控除の計算方法を以下に示していきます。
- 3,000万円+法定相続人の数×600万円
基礎控除を差し引いた後は税率を掛け合わせ、さらに控除額を差し引きます。相続税は累進課税であり、相続財産の総額に応じて税率が変わります。相続税の税率は以下の通りです。
基礎控除を差し引いた相続財産の総額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上記を踏まえたうえでの相続税の計算方法は、以下の通りです。
- 基礎控除を差し引いた相続財産×税率ー控除額
ご覧いただいたように相続税は控除が多いため、相続財産がそこまで大きくなければ、相続税が発生する心配はあまりありません。もちろん、相続税が発生しなければ相続税の申告は不要です。
②登録免許税
登録免許税は、相続登記を行った際に発生する税金です。不動産の相続登記を行った場合、登録免許税の計算方法は以下の通りです。
- 固定資産評価額×0.4%
登録免許税は相続税と比べてそこまで大きな負担にはなりませんが、登記する内容によって税率が変わるので、不動産以外の登記を行う場合は気を付けてください。
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相続した不動産の売却と節税対策
不動産を相続した際に、不動産を速やかに売却するケースも多いです。遺産分割協議の換価分割のように売却したほうが分割しやすいですし、不動産は固定資産税がかかるため、売却したほうが管理の手間が省けると考える人もいます。
しかし、相続した不動産の売却に関しては注意点があり、所得税と住民税、さらに印紙税が発生する可能性があります。ここでは相続した不動産の売却で発生する税金について、そしてその際に発生する税金の節税についてお伝えします。
①所得税と住民税
不動産を売却して得た利益は譲渡所得として扱われ、そのまま所得税と住民税の対象となります。譲渡所得は、以下のような形で計算されます。
- 譲渡価額ー取得費用ー譲渡費用=譲渡所得
この計算をして譲渡所得がプラスだった場合は、所得税と住民税が発生します。この際に、所得税と住民税の税率が不動産の所有期間によって変わるという注意点があり、譲渡所得に発生する所得税・住民税の税率は所有期間が5年を超えるか超えないかで以下のように変わります。
所得名 | 所有期間 | 所得税の税率 | 住民税の税率 | 合計税率 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 20% |
上記の税率を元に所得税・住民税は計算されます。なお、不動産を売却した際に発生する所得税は分離課税であり、総合課税になっている給与所得などとは切り離して計算・納税する必要があります。
②印紙税
印紙税は不動産の売却の際に取り交わした、売買契約書に発生する税金です。こちらは売買契約書に、印紙税分の印紙を貼り付けることで納付が完了する税金になります。
印紙税は売却する不動産の契約金額に応じて税額が変わり、2018年3月31日まで交わされた契約に関しては契約金額に応じて税金が軽減されていました。印紙税の税額の軽減される金額は、以下の通りです。
契約金額 | 印紙税額 | 軽減される金額 |
500万円超、1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超、5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超、1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超、10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
相続した不動産の売却による節税対策
不動産の売却の際、印紙税を節税することは難しいですが、所得税に関しては有効的な節税対策があります。不動産売却の際の所得税の節税対策は以下の2つがありますが、これら2つの節税対策は併用できないため注意してください。
3,000万円特別控除
これは不動産の譲渡所得が3,000万円未満だった場合は、所得税が課税されないというものです。ただし、この特例を使うにはその家に居住している必要があるところが注意点です。
ところが、2019年12月31日までなら住んでいない家でも適用されていたため、被相続人が亡くなったあとに誰も住んでいない実家の売却でも適用されていました。
取得費加算の特例
こちらは相続税の申告期限から、3年以内に不動産を売却した場合に税金が軽減されるという特例です。取得費加算の特例を使うと、売却した際の利益から土地や建物に対する相続税を差し引くことができます。
つまり、相続税分の金額が譲渡所得から減らせるというわけです。これは相続税を支払ったという人には、なかなか有益な特例と言うことができるでしょう。
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相続不動産の評価
正直、相続不動産の評価は素人には難しいものです。土地の評価に関しては国税庁に載っている路線価や倍率を使った「路線価方式」や「倍率方式」を使えば、ある程度の評価額を出すことができます。しかし、土地の形状や場所によって補正率をかけたりするため、計算は難しくなります。
また建物がある場合は、建物そのものの評価も必要になります。この際、建物の年数や状態だけでなく、駅までの所要時間や日照、周辺の騒音や眺望などかなり細かい部分まで考慮して評価を行わなければならなくなります。
そのため不動産全体の評価は、素人では難しいものになっています。実際に相続不動産の評価をする際には、不動産鑑定士や不動産に強い弁護士・税理士といった専門家の力を借りることがおすすめです。
ただ相続財産となっている不動産の場合は、遺産分割協議での話し合いも加味されるため、一般の不動産評価とはまた違う額になる可能性があります。
まとめ
相続における不動産は、相続の手続きが面倒だったり、税金を考慮しなければならないなど、知っておくべきことは多くあります。
もし不動産の相続の手続きを何も知らないでいると、仕事を休んで1週間対応に追われるといったこともあるので、なるべく早いうちから知識を身につけておくことがおすすめです。
もちろん無理に自分たちで解決せずに、専門家の協力を借りるのもトラブルを避ける方法と言えるでしょう。今回の記事をまとめると、以下のようになります。
・不動産の相続
→不動産は相続はさまざまな手続きや、税金の問題が発生する
・不動産の分割方法
→現物分割、代償分割、共有分割、換価分割の4つの方法がある
・相続税の計算方法
→基礎控除を差し引いた相続財産×税率ー控除額
・登録免許税の計算方法
→固定資産評価額×0.4%
・相続した不動産の売却による節税対策
→3,000万円特別控除、取得費加算の特例
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