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2019年12月27日更新
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社員への株式譲渡とは?メリット・デメリットや株式譲渡手続きの流れを解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

近年、後継者不足問題を抱えている中小企業の事業承継、福利厚生の一環として、社員への株式譲渡が行われるケースが見られます。ここでは社員に株式譲渡する流れやメリット・デメリットなどをポイントをおさえてお伝えします。

目次
  1. 1.社員への株式譲渡とは?
  2. 2.社員への株式譲渡のメリット・デメリット
  3. 3.社員への株式譲渡方法とその手続き
  4. 4.社員への株式譲渡の注意点
  5. 5.まとめ

1.社員への株式譲渡とは?

株式譲渡はM&Aの手法の一つで、特に中小企業のM&Aではしばしば見られるスキームです。通常会社対会社で行われますが、事業継承や福利厚生を目的として社員(従業員)に譲渡するケースが増えてきています。以下、その概要を見ていきましょう。

株式譲渡とは?

株式譲渡とは、株主が保有する株式を第三者に譲渡することです。

株式譲渡が行われることにより、譲渡された側の企業は譲渡する側の企業の役員の選任・解任といった経営にかかわる権利(株主総会の議決権)を得ることになります。

例えば、株式譲渡によってB社がA社の株式を取得すれば、取得した部分においてB社がA社の株主となるので、その持分によってA社の経営権を得ることができます。

つまり、B社がA社の株式の100%を取得すると、A社の経営権が全てB社に譲渡されることになるのです。これが、株式譲渡によってもたらされる効果です。

また、上記のような株式の100%譲渡は、中小企業のM&Aスキームとしてしばしば見られます。中小企業が自社の株式の100%を他の会社に譲渡することで、その会社に経営を任せ、事業継続を図るといったケースです。

※関連記事
株式譲渡とは?メリット・デメリット、M&A後の社員や税務を解説 

社員に株式を譲渡するとどうなるか?

では、上記でご紹介した内容を、社員(従業員)へ譲渡した場合はどうでしょう。

例えば、自社の株式を100%持っているA社が自社の株式を社員(Bさん)に譲渡するとします。その100%の株式をBさんに譲渡すれば、最終的にA社の経営権がBさんに移管されることになります。

他の株主と共同で経営を進めてもらいたい場合には、株式の一部を譲渡することになります。Bさんがどの程度A社を支配できるかは、譲渡する株式の割合によって変わってきます。 

社員の定義について

会社法上、「社員」は「出資者(株主)」を意味しますが、この記事での「社員」は、「従業員」、いわゆる一般的に雇用されている人を指すものとします。

そのため、「社員への株式譲渡」というのは、一般的に雇用されている従業員に株式を譲渡することで、その社員が株主になる、という流れになります。 株式の譲渡を受けるまでは、社員は株主ではありません。

社員への株式譲渡の目的


ではなぜ、社員(従業員)への株式譲渡をするのか。その目的は大きく以下の4つが挙げられます。

①後継者不足

近年のM&A事例の活発化の原因として代表的なのが後継者不足問題です。経営を任せられる後継者を見つけることは、会社の事業継続を左右する重大な問題です。

そこで、これまで会社に貢献してくれた社員に株式を譲渡することで、その社員を後継者とし、事業を承継させることができます。

②安定株主の確保


新たに敵対的な株主が登場することを防ぐため、社員を株主として確保しておくという方法です。

③福利厚生

会社によっては、福利厚生として自社の株式を社員に譲渡する場合があります。 「社員持ち株制度」などとも言われているこの制度は、自社や親会社の株式を社員に保有してもらう制度のことです。

会社が「持株会」を設立して運営を行い、会員になった社員が毎月一定の金額を出資(給与天引きなど)して、共同で自社の株式を買い付けるという仕組みです。 社員は自社株を保有することで、持分に応じて配当金を得ることができるため、福利厚生の一環として位置づけられます。

④モジベーション向上

自社株式の一部を社員に保有させることのより、社員への経営参画や成長意識を持たせるねらいがあります。社員の意識向上により、社員育成や生産性向上による利益率向上が期待できます。

2.社員への株式譲渡のメリット・デメリット

社員への株式譲渡のメリット

社員への株式譲渡には大まかに次の2つのメリットが考えられます。

①事業承継としてのメリット

特に事業承継で問題を抱えている会社の場合、信頼できる社員への株式譲渡はメリットがあります。

例えば、会社が後継者を探している場合、当然のことながらきちんと経営を任せられる人を後継者に指名する必要があります。

この場合、これまであまり面識がなかった人を後継者にすることは、いくら経営実績があったとしても、後継者に指名することに抵抗を感じます。

一方で、これまで会社に貢献してくれた社員であれば、経営者としてもどういう人物かがわかっています。 そのため、気持ちの面でも安心して経営を任せやすくなります。 もちろん、会社への貢献という実績があるので、実績面でも信頼して経営を任せることができます。

②福利厚生としてのメリット

福利厚生の一環として社員に株式を譲渡することは、安定株主を増やすというメリットがあります。

株式会社である以上、いつどのような株主が登場するかわかりません。 場合によっては、敵対的な株主が登場する可能性もあります。

そこで、社員に株式を保有してもらえば、会社にとっては安定株主を確保できることになり、配当金を得ることができる株式を、福利厚生という形で社員に譲渡するというケースが多く見られます。

社員への株式譲渡のデメリット


反対にデメリットに関しては次の2点が想定されます。

①M&Aとしてのシナジー効果は期待できない

他社の合併や買収などのように、通常M&Aは会社同士で行うことが一般的です。 もちろん株式譲渡も買収の一つで、例えば、A社が株式の100%をB社に譲渡し、B社がA社を買収するといったケースであれば、M&AによってA社とB社のそれぞれの強みが活かされ、シナジー効果が期待できます。

一方で、社員への株式譲渡は、こうしたシナジー効果が発生しません。 あくまで自社の社員に株式を譲渡しただけで、他社は登場しないからです。

②社員に対する配当が経営に影響を与える

社員に株式を譲渡すると、その社員は従業員の地位に加え、株主としての地位も得ることになります。

会社としては、通常の給与とは別に、配当金の分配も行わなくてはなりません。そのため、配当が会社の経営を圧迫する可能性もあります。例えば、安定株主の確保を目的として社員への株式譲渡を進めていたら、気がついたら配当が経営を圧迫していた、などの事態も考えられます。

※関連記事
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3.社員への株式譲渡方法とその手続き

譲渡方法


社員への株式譲渡には以下の2種類があります。

①報酬として譲渡

株式報酬制度により、社員に直接譲渡します。譲渡制限株式により譲渡する場合、また、ストックオプションにより支給する場合もあります。

②持株会により譲渡

前述の目的でも説明したように、会社が「持株会」を設立して運営を行い、会員になった社員が毎月一定の金額を出資(給与天引きなど)して、共同で自社の株式を買い付けるという仕組みです。

手続き

ここからは上記の方法を行うための手続きを解説します。

①報酬として譲渡する場合

▷株価算定
原則的評価法、もしくは配当還元法を用いて算定します。

▷実行

②持株会により譲渡する場合

▷譲渡先社員
原則会への参加資格は正社員、もしくは系列子会社の社員のみとされています。資格範囲を広くとるか限定するかを決定します。

▷規約作成
入退会、拠出金、奨励金、購入/引き出し/名義書換、持分生産などを記載した会則を作成します。

▷社員への説明会
規約や内容を含んだ説明会を開催し、参加希望者を募ります。

▷実行

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ストックオプション制度とは?導入の手続きとメリット・デメリット

4.社員への株式譲渡の注意点

譲渡する株式の割合

特定の社員に完全に経営を任せたい場合であれば、ある程度の株式を譲渡するケースも考えられます。 社員を後継者にしたい場合には、株式を100%譲渡することもあるでしょう。 ただし、そうでないのなら、社員に譲渡する株式の割合には十分に注意することが必要です。

 株式には株主総会の議決権があり、多くの株式を保有すればするほど、その株主は会社に対する支配権を強めることになります。 株主総会で重要な事項を決める際には、過半数の議決権、さらには3分の2以上の議決権が求められるケースが多いです。

もし、敵対的な社員が過半数の議決権、さらには3分の2以上の議決権を有してしまうと、会社の経営にとって好ましい状況ではありません。

そういった状況への対処法の一つとして「議決権制限株式」が活用されています。議決権制限株式は、株主総会における議決権が制限される株式のことで、「種類株式」の一つです。

株式の内容は、原則として同一の権利内容である必要がありますが、例外もあります。 それが「種類株式」です。 株式会社は、一定の事項について内容の異なる株式(種類株式)を発行することができ、議決権制限株式も種類株式の一つになります。

会社の発展とのバランスも考えるべき

社員への株式譲渡は会社同士の株式譲渡ではないため、M&Aとしてのシナジー効果は生まれません。そのため、M&Aによって会社を発展させるケースとは異なります。

通常のM&Aは、基本的には会社の発展を目的として行われます。売却する側にとっては、大手の傘下に入るなどして、安定した経営環境で事業を継続するといったメリットがあり、買収する側にとっては、新規事業の開始や事業エリアの拡大など、双方様々なメリットが想定されます。

このように考えると、買収側も売却側も、会社の発展を目的として株式譲渡などを行うと言えるでしょう。

一方で、社員への株式譲渡は、M&Aのようなシナジー効果は生まれません。

もちろん、社員を後継者にするために株式譲渡を行う場合であれば、会社の発展として重要なスキームとなります。ただし、目的が事業継承でなければ、他社が関係するわけではなく、基本的に自社だけの問題となるため、社員への株式譲渡と会社の発展はつながりづらくなります。

社員への株式譲渡は、「会社の発展」という側面も踏まえ、バランスを考える必要があります。社員だけに株式譲渡をすることは、他社とのM&Aのチャンスを逃すといった事態が想定され、会社の発展としては好ましくありません。

確かに社員への株式譲渡にはメリットも多いですが、他社とのM&Aで大きなシナジー効果が期待できるなどの事情があれば、社員だけでなく他社への株式譲渡なども考えるべきでしょう。

5.まとめ

社員への株式譲渡といっても、基本的な仕組みは通常の株式譲渡と同じです。

そのため、株式を譲渡する際には専門的な知識が求められます。 例えば、株主総会などの承認機関の承認は必要か、譲渡する割合はどう考えるべきかなど、それぞれ専門的な知識がないと判断が難しくなります。

相手が社員だからといって、簡単に考えることは危険です。 あくまで株式譲渡の一つとして考え、きちんと専門家に相談して進めることが大切です。

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