2021年5月5日更新会社・事業を売る

秘密保持契約書(NDA)とは?書き方や有効期限、ひな形をご紹介

秘密保持契約書とは取引実績の無い相手と今後の取引協議を行うにあたり、相互に開示した秘密情報を漏洩しない旨を約束する契約書で、書き方にはポイントがあります。その秘密保持契約書の書き方を代表的なひな形の紹介と共にレクチャーします。

目次
  1. 秘密保持契約書(NDA)とは?
  2. 秘密保持契約書(NDA)の書き方~重要項目16選~
  3. 経済産業省が公開する秘密保持契約書(NDA)のひな形
  4. 秘密保持契約書(NDA)締結の実際の流れ
  5. 秘密保持契約書(NDA)の印紙
  6. 秘密保持契約書(NDA)の有効期限
  7. 秘密保持契約(NDA)と機密保持契約の違い
  8. まとめ
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秘密保持契約書(NDA)とは?

ビジネスを遂行していく上では新しい取引先候補との折衝も多々発生します。そのような局面で真っ先に締結する必要のあるのが「秘密保持契約書(NDA)」です。

英語表現だと「Non-disclosure agreement」となり、ビジネスの現場では、その頭文字を取った略称のNDAと呼ばれることの方が多いかもしれません。

秘密保持契約書の意味

秘密保持契約書とは、お互いが秘密を開示する際、相互に秘密情報を漏洩しない旨を約束・保証することを契約する書面です。ビジネスの場面では他社、あるいは個人と様々な取引を行います。

その相手が特にまだ取引実績の無い相手であることも多いでしょう。しかし、新たな取引交渉を進めていく時には、お互いの秘密情報を相手に開示する必要が出てくるケースもあります。

業務委託やアライアンス、またM&A等多様な局面が想定されますが、いずれの場合でも話を一歩先に進めようとすれば、お互いに秘密情報を相手に開示する必要性が生じるものです。

そして、秘密情報とは会社のすう勢が掛かった財産にも等しいものです。万が一、外部に漏れた場合は事業の継続が困難となるリスクさえあるでしょう。そのリスクを未然に防ぐために秘密保持契約書は必要な存在なのです。

したがって、秘密保持契約書の内容に違反すれば、多額の損害賠償が科される等のペナルティが設定されるのが常です。重いペナルティでリスクヘッジすることによって情報漏洩の危険をガードする、それこそが秘密保持契約書の意義なのです。

M&Aにおける秘密保持契約書

M&Aは通常の商取引とは趣を異にするものです。また、現実にM&A交渉を経験したという人も少ないでしょう。そこで、ここでは簡単にM&Aでの秘密保持契約書に関して、概要をお伝えします。

M&Aでは、まず始めに匿名の売り手側情報を基に、買い手側がM&Aの取引を進めるかを検討します。そして、買い手側がM&Aを具体的に進行する決意を固めた時、秘密保持契約書を締結します。

売り手側にとっては、財務状況や事業内容だけでなく、M&Aの実行自体が秘密情報です。M&Aにマイナスイメージを持つ事業者は未だに多く、M&Aの実行が外部に漏洩すれば、取引先から契約を打ち切られる恐れもあります。

基本的に秘密保持契約書は相互に締結するものではありますが、M&Aの場合は特に売り手側が秘密保持契約を買い手側に科す必要性が高いと言えるでしょう。

そのようなM&Aにおける秘密保持契約書は、一般の商取引前提の秘密保持契約書とはまた違った取り決めや項目、条文が必要となる場合があります。これについては、専門的な知識がないと危険を伴うかもしれません。

M&Aをご検討の際は、ぜひ一度、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所にはM&Aに関する知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、これまで培ってきたノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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秘密保持契約書(NDA)の書き方~重要項目16選~

それでは、具体的に秘密保持契約書の書き方を見ていきましょう。どのような相手でも、どのような取引の前提があるとしても、秘密保持契約書の中に盛り込んでおくべき項目があります。それは以下の16項目です。

  1. 秘密情報の定義
  2. 秘密保持義務
  3. 情報の使用目的
  4. コピーの禁止
  5. 秘密情報の返還
  6. 秘密保持の検査権
  7. 損賠賠償
  8. 差し止め請求
  9. 権利義務譲渡の禁止
  10. 知的財産権
  11. 義務の非発生
  12. 反社条項
  13. 裁判管轄
  14. 準拠法
  15. 協議事項
  16. 日付・署名・押印
また、ここでの秘密保持契約書の書き方としては、本来の相互契約である観点も保ちながら、自社の利益のために、より相手側の義務行動を強く規定することを主眼とした書き方を意図しています。それぞれの状況に合わせ参考として下さい。

そして、既に使用している自社の秘密保持契約書がある場合、その書き方についても、念のため、もう一度見直しておきましょう。それでは、16項目について一つずつ説明いたします。

①秘密情報の定義

秘密保持契約書では、秘密情報の定義を明確化する必要があります。秘密保持契約書で定義した秘密情報が漏洩禁止の対象となる為、仮に定義外の内容を漏洩されても責任を問えません。

外部に漏洩されては困る情報は、必ず秘密情報として具体的に明記しましょう。

また、秘密保持契約書では、秘密保持義務の例外も規定します。開示前から知っている情報や一般的に公知である情報については、相手側の負担軽減の為に例外としましょう。

②秘密保持義務

相手側が具体的に負うべき義務を明記します。「秘密情報を徹底的に管理する義務」や「秘密情報を開示できる範囲」を盛り込みます。

③情報の使用目的

受領した秘密情報を本来の目的以外に使用しない旨も、秘密保持契約書で定めなくてはいけません。

④コピーの禁止

受領した情報を相手側がコピーすると情報漏洩のリスクが高まる為、コピーを禁止する旨を秘密保持契約書で設定するケースが一般的です。

⑤秘密情報の返還

秘密保持契約書の期間が終了した際に、提供した情報を返還してもらう旨も設定しましょう。

⑥秘密保持の検査権

提供した情報の利用状況を把握する上で、検査権の設定は必須です。検査権を設定すれば、いつでも提供した情報の活用状況を把握できます。情報漏洩や目的外の使用に対処する為にも、検査権は必ず秘密保持契約書に盛り込みましょう。

⑦損賠賠償

万が一の情報漏洩に備え、秘密保持契約書には損害賠償についても定めましょう。損害賠償を設定する事で、相手方に秘密保持契約書の内容を遵守するインセンティブが働きます。

⑧差し止め請求

情報漏洩や目的外の情報利用が発覚した場合に備えて、損賠賠償に加えて差し止め請求も契約書に盛り込みましょう。

⑨権利義務譲渡の禁止

秘密保持契約書で生じる権利や義務を、相手方の承諾も無しに勝手に第三者に譲渡できないことも規定しておいた方が良い内容です。

⑩知的財産権

開示する秘密情報の中に特許権などの知的財産権が含まれている場合、情報開示によってその知的財産使用を許諾することにはならない旨も記した方がいいでしょう。

⑪義務の非発生

秘密保持契約書を締結することによって、今後の取引確約などの義務は生じないことも規定しておくとよいでしょう。

⑫反社条項

秘密保持契約書の契約締結者が反社会的勢力と一切関係無いことを保証すると共に、万が一、そうであった場合の違反規定を記しておきましょう。

⑬裁判管轄

この秘密保持契約書によって、裁判訴訟などになった場合に備え、あらかじめ自社に利便性の高い地域の裁判所を管轄と定めておきましょう。

⑭準拠法

秘密保持契約書の締結相手が海外の企業の場合もあるでしょう。そのような場合には、秘密保持契約書の内容は日本の法律に準拠して解釈、履行されることを記しておきましょう。

⑮協議事項

秘密保持契約書に明記されている事柄で疑義が生じた時は、話し合い協議の上、解決することを記します。

⑯日付・署名・押印

秘密保持契約の効力を確実にする為に、日付や署名、押印を必ず盛り込みましょう。一方の契約者しか日付記載や署名を行なわないと、秘密保持契約書の効力が無効となるので御注意下さい。

経済産業省が公開する秘密保持契約書(NDA)のひな形

秘密保持契約書のひな形をご紹介します。すでにインターネット上では数多くのひな形が出回っていますが、こちらでは経済産業省が公開している秘密保持契約書のひな形を、参考までに紹介します。

経済産業省公開の秘密保持契約書ひな形の特徴は、シンプルな形式にまとめられていて誰にでもわかりやすい点でしょう。しかし、そのため、本記事で上述した項目全てが網羅された書き方には、なっていません。

経済産業省の秘密保持契約書ひな形を使用する場合、状況に合わせたアレンジが必要となる可能性があります。専門の法務担当者がいない場合は、念のために弁護士に相談するとよいでしょう。

  • 経済産業省の秘密保持契約書のひな形

株式会社______(以下「甲」という。)と 株式会社______(以下「乙」という。)とは、__________について検討するにあたり(以下「本取引」という。)、甲又は乙が相手方に開示する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(秘密情報)
本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。ただし、開示を受けた当事者が書面によってその根拠を立証できる場合に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。
① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報

第2条(秘密情報等の取扱い)
1.甲又は乙は、相手方から開示を受けた秘密情報及び秘密情報を含む記録媒体若しくは物件(複写物及び複製物を含む。以下「秘密情報等」という。)の取扱いについて、次の各号に定める事項を遵守するものとする。
① 情報取扱管理者を定め、相手方から開示された秘密情報等を、善良なる管理者としての注意義務をもって厳重に保管、管理する。
② 秘密情報等は、本取引の目的以外には使用しないものとする。
③ 秘密情報等を複製する場合には、本取引の目的の範囲内に限って行うものとし、その複製物は、原本と同等の保管、管理をする。
④ 漏えい、紛失、盗難、盗用等の事態が発生し、又はそのおそれがあることを知った場合は、直ちにその旨を相手方に書面をもって通知する。
⑤ 秘密情報の管理について、取扱責任者を定め、書面をもって取扱責任者の氏名及び連絡先を相手方に通知する。
2.甲又は乙は、次項に定める場合を除き、秘密情報等を第三者に開示する場合には、書面により相手方の事前承諾を得なければならない。この場合、甲又は乙は、当該第三者との間で本契約書と同等の義務を負わせ、これを遵守させる義務を負うものとする。
3.甲又は乙は、法令に基づき秘密情報等の開示が義務づけられた場合には、事前に相手方に通知し、開示につき可能な限り相手方の指示に従うものとする。

第3条(返還義務等)
1.本契約に基づき相手方から開示を受けた秘密情報を含む記録媒体、物件及びその複製物(以下「記録媒体等」という。)は、不要となった場合又は相手方の請求がある場合には、直ちに相手方に返還するものとする。
2.前項に定める場合において、秘密情報が自己の記録媒体等に含まれているときは、当該秘密情報を消去するとともに、消去した旨(自己の記録媒体等に秘密情報が含まれていないときは、その旨)を相手方に書面にて報告するものとする。

第4条(損害賠償等)
甲若しくは乙、甲若しくは乙の従業員若しくは元従業員又は第二条第二項の第三者が相手方の秘密情報等を開示するなど本契約の条項に違反した場合には、甲又は乙は、相手方が必要と認める措置を直ちに講ずるとともに、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第5条(有効期限)
本契約の有効期限は、本契約の締結日から起算し、満○年間とする。期間満了後の○ヵ月前までに甲又は乙のいずれからも相手方に対する書面の通知がなければ、本契約は同一条件でさらに○年間継続するものとし、以後も同様とする。

第6条(協議事項)
本契約に定めのない事項について又は本契約に疑義が生じた場合は、協議の上解決する。

第7条(管轄)
本契約に関する紛争については○○地方(簡易)裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。本契約締結の証として、本書を二通作成し、両者署名又は記名捺印の上、各自一通を保有する。

令和○年○月○日
                                                      (甲)株式会社○〇○〇 代表取締役△△△△
                                                      (乙)株式会社□□□□ 代表取締役▼▼▼▼

秘密保持契約書(NDA)締結の実際の流れ

実際に秘密保持契約書が締結される際の流れについて把握しておくことは有用です。以下に一例を順に記します。参考にして下さい。

①秘密保持契約に向けた話し合い

今後の取引等を見据えた関係構築を目指して交渉のテーブルにつくか否かを当事者間で話し合います。交渉を進めることに合意ができたら、次に秘密保持契約書締結に向けたステップに移行となります。

②秘密保持契約書ドラフトの提示

秘密保持契約書締結予定者のどちらかが、自社の使用している秘密保持契約書のひな形を提示します。基本的には当該契約における主導的立場にある会社側が提示するのが常でしょう。ドラフトとは、草案、草稿という意味です。

③秘密保持契約書ドラフトのチェック

秘密保持契約書ひな形の提示を受けた側が、その内容を確認、チェックします。場合によっては内容の修正依頼を出します。

④秘密保持契約書ドラフトの修正作業

相手方から届いた秘密保持契約書ひな形の修正依頼について、検討し応じるかどうか、あるいは、こちらから再提案をするかを検討します。このやり取りが済むと、秘密保持契約書の内容にお互い合意した状態です。

⑤秘密保持契約書の締結

合意した秘密保持契約書は製本され、順に互いの社内で署名・捺印がなされ正式に締結の運びとなります。

秘密保持契約書(NDA)の印紙

契約書には収入印紙が貼られるのを目にしている方も多いでしょう。秘密保持契約書の場合は、収入印紙をどう取り扱えばよいのか説明します。

①収入印紙とは

収入印紙とは、税金が発生する文書に貼り付けるものです。税金が発生する文書を「課税文書」と呼び、下記の要件全てに該当する場合には収入印紙の添付が必要となります。

  • 印紙税法別表第一に掲げられている、20種類の文書により証明されるべき事項が記載されている
  • 当事者の間にて、課税事項を証明する目的で作成された文書である
  • 印紙税法第5条の規定により、印紙税を課税しない事とされている非課税文書でない

収入印紙の貼り付け有無を判断する際には、上記の条件を参考にしましょう。自身で判断できない際には、税理士や税務署等の専門家に相談することをおすすめします。

②秘密保持契約書には収入印紙は必要か?

秘密保持契約書は課税文書の要件に該当しない為、収入印紙の添付は原則不要です。また、秘密保持契約書に収入印紙を誤って添付した際には、印紙税過誤納確認手続きの実行により、税金還付を受けられる可能性があります。

なお、設備取得等の一部の要件に該当する場合には、秘密保持契約書でも収入印紙が必要となるケースもあります。

秘密保持契約書(NDA)の有効期限

秘密保持契約書には有効期限の設定が必要です。理想的な秘密保持契約書の有効期限とは、どんな書き方が良いのか考察します。

①秘密保持契約書の有効期限とは?

秘密保持契約書の有効期限に法律上の定めはありません。取引の当事者同士が合意の上、秘密保持契約書にて有効期限を設定します。有効期限次第で秘密情報の取り扱いが変わる為、十分に検討して決定する必要があります。

②有効期限の設定

情報を開示する側と情報を受領する側で、秘密保持契約書の有効期限に対する考え方が異なる場合が大半です。情報を開示する側は情報漏洩を避ける為に、秘密保持契約書の有効期限を長期的に設定したいと考えます。

一方で情報を受領する側は、情報の管理コストや万が一の情報漏洩により損害賠償を請求された際のリスクを考え、極力、秘密保持契約書の有効期限を短期的に設定したいと思っています。

有効期限に関する考え方が異なる為、両者で合理的なすり合わせを行う必要があります。取引の契約期間や提供する情報の性質を考慮して、秘密保持契約書の有効期限を設定しましょう。

秘密保持契約(NDA)と機密保持契約の違い

秘密保持契約と似た用語に、「機密保持契約」と呼ばれるものがあります。両者にはどの様な違いがあるのでしょうか?契約書の内容自体は、秘密保持契約と機密保持契約の間に違いはありません。

内容には違いがないものの、実務で用いる際には秘密保持契約書という名称を用いるのが一般的です。

「秘密」と「機密」を単純に言葉として比べた時、「秘密」は民間で用いる用語、「機密」は国に代表されるような公の機関が用いる言葉というニュアンスがあります。

しかし、厳密な決まりはありませんから、会社間であっても、機密保持契約書では間違いということにはなりません。

まとめ

秘密保持契約書は、会社の財産たる秘密情報を漏洩しない・させない旨を約束する契約であり、ビジネスを進めていく際の根幹となる契約書です。

そして、M&Aにおいても秘密保持契約書は重要となります。M&Aの実行が外部に漏洩することは、取引先からの契約の打ち切りや会社の信頼に関わるため、厳密な秘密保持契約書の書き方をおさえ、必ず履行するようにしましょう。

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