M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年9月27日更新会社・事業を売る
表明保証保険とは?M&A取引におけるメリット・問題点、締結プロセスを解説
表明保証保険とは、M&Aの際に表明保証違反が生じた場合に損失を補填する保険です。この記事では、表明保証保険のメリット・デメリット、締結のプロセス、注意点を解説していきます。また、表明保証保険の税務、表明保証保険と株式譲渡契約書についても解説します。
目次
表明保証保険とは?意味や概要
表明保証とは、契約当事者自身あるいは対象会社やその事業に関する過去、現在、そして将来の事実が真実であることを表明し、その内容を保証するものです。
M&Aの際は、主に株式譲渡契約などを締結するとき、契約書に表明保証に関する事項が記載されます。
M&Aは契約締結をしてそれで終わりとなるわけではなく、その後のクロージングを実施してはじめて完了となります。
クロージングに取り掛かるためには、前提条件として表明保証(正確には表明保証事項)に違反していないことが必須です。
表明保証違反が発覚した場合、当事者は契約を解除でき、違反によって発生した損害は金銭的に補償するよう表明保証で約束されています。
このように、表明保証は、M&Aの際に表明保証違反が発生して契約解除となった場合に、契約当事者に発生した経済的損失を補填するための保険です。
また、保険としてだけでなく、対象会社に関する事実の開示や、当事者間の不知の事実に関するリスクを分配する機能も期待できます。
M&Aにおける表明保証保険の特徴・種類
表明補償保険には、M&Aの買い手側と売り手側それぞれを対象したものがあり、主に活用されているのは買い手側の表明保証保険です。
表明保証保険を取り決めることによって、M&Aの買い手側は万が一損失が発生する事態になっても、契約条件にもよりますが損失分の補填が可能です。
M&Aの売り手側からしても、万が一表明保証事項に違反するような事態になっても、買い手との摩擦を避けられ、安心してM&Aを進められます。
2015年から国内でも販売するようになった
表明保証保険は欧米で盛んに使用されていますが、日本ではあまり馴染みのないものでした。
しかし、2015年からは国内でも大手保険会社が表明保証保険を販売するようになり、M&Aが会社の成長戦略として一般化してきたことと比例して、表明保証保険を使用する会社も増えています。
とりわけクロスボーダーM&Aでは、表明保証保険が検討されることが多いです。そもそも表明保証保険はクロスボーダーM&Aを想定したものが多く、表明保証保険を締結する一部のプロセスでは英語が必要な場面もあります。
表明保証保険は日本国内のM&Aでも使用できますが、一部プロセスを英語で使用することは変わりません。そのため、必然的に英語が使用できるアドバイザーやスタッフの力を借りるのがおすすめです。
保険契約のプロセスではM&Aアドバイザーの介入が必要
表明保証保険においては、保険の知識だけでなく英語も理解しなくてはなりません。保険契約のプロセスでは、M&Aアドバイザーなどの専門家のサポートが必要となるため、M&Aの初期段階からM&A仲介会社などに相談することをおすすめします。
その際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A仲介会社であるM&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーが在籍しておりM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)M&Aに関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
M&A取引後のリスク軽減手段
M&Aを進めるうえでは、表明保証違反だけでなく、さまざまなリスクを考慮しておくことが必要です。場合によっては経済的な損失を被る可能性もあるため、事前の対策は不可欠といえるでしょう。本章では、M&A取引後のリスクを軽減する手段を解説します。
基本合意
基本合意書は、売り手と買い手で大まかな合意がなされた時点で締結するもので、タイミングとしてはM&A過程の中間あたりで取り交わします。
基本合意は、成約に向けた最終契約の締結や、デューデリジェンス、クロージングなどを円滑に行うために必要であり、その時点で双方が合意した内容(売買価格やスケジュールなど)が記されます。
買い手側は基本合意締結後にデューデリジェンスを実施しますが、もし売り手が他社とも同時に交渉を進めて契約してしまえば、デューデリジェンスにかける費用や時間が無駄になるリスクがあります。
そのようなリスクを回避するために、基本合意書に独占交渉権について定め、法的拘束力を持たせることが一般的です。
一方で、売り手はデューデリジェンスによって自社の内部情報を開示することになります。基本合意書の締結時に買い手と秘密保持契約を結ぶことで、情報漏洩のリスクのリスクの軽減が可能です。
表明保証条項
M&Aの表明保証条項を規定することにより、買い手は経済的損失のリスクを、売り手は損害賠償や契約解除などのリスクを最小限にできます。
M&Aにおける表明保証の例としては以下のようなものがありますが、売り手側には明確な情報開示と、虚偽のない申告が求められます。もし虚偽の申告を行った場合、当事者にクロージングの義務は生じず、買い手は契約を破棄できます。
- デューデリジェンスに虚偽はないか
- 開示していない偶発債務などのリスクはないか
- 財務諸表や帳簿が正確に作成されているか
- 他社の知的財産を侵害していないか
- 開示していない訴訟や、訴訟を起こされそうな案件はないか
売り手側は、表明保証により契約破棄などのリスク軽減が可能となり、買い手側も明確な情報開示があることで、デューデリジェンスの虚偽や財務に関する深刻な問題などを、事前に知ることができます。
万が一契約後に発覚しても、表明保証違反に該当することから、買い手は経済的損失のリスクを回避可能です。
表明保証保険のメリット・デメリット
表明保証保険も一般的な保険と同様、将来起こる可能性がある損失を補うものです。そのため、検討段階では加入の必要性がわかりにくいこともあるでしょう。
表明保証保険を利用する際は、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで検討することが大切です。本章では、表明保証保険のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
表明保証保険のメリット
まずは、表明保証保険のメリットを、売り手側・買い手側それぞれの視点からみていきます。
売り手側のメリット
表明保証保険に加入する売り手側の大きなメリットは、万が一表明保証違反が発生した際に請求される損害賠償を保険で対応できることです。
表明保証違反でトラブルとなり、M&A案件から脱却しにくい状況になっても、表明保証保険があればクリーンイグジットを実現できます。
買い手側にも共通することですが、表明保証保険にはただ損失を補填するだけでなく、M&A案件が失敗した場合の補償にまつわるトラブルを長引かせない効果が期待できます。
買い手側のメリット
買い手側の一つ目のメリットは、売り手に対して表明保証違反の責任追及をしないとすれば、入札案件などの交渉で優位に立てる可能性があることです。
買い手ニーズのほうが高い業種や複数の買い手候補がいるような状況において、表明保証保険を契約して違反の責任は追求しないとすれば、売り手に対してのアピールにもつながります。
二つ目のメリットは、売り手との良好な関係を維持しやすいことです。表明保証保険を利用することで、補償上限や補償期間などの隔たりを埋めたり、売り手側の信用力を補完したりできます。
また、クロージング後の表明保証違反に基づく補償請求が避けられるため、売り手との良好な関係を維持しやすくなります。
三つ目のメリットとしては、国際間取引における補償請求の負担が軽減できる点が挙げられます。売り手が海外の場合、もし表明保証違反が発覚すれば、補償請求などの業務が大きな負担になります。表明保証保険があれば、請求を保険会社に対して行えるため、負担を大幅に軽減できます。
表明保証保険のデメリット
表明保証保険のデメリットは、コストがかかる点です。表明保証保険が保険である以上、補償を受けるためには保険料が発生します。
保険料の支払いはコストになり、補償の範囲を広げれば当然保険料も高くなります。それ以外に、保険会社の引受審査にかかる費用の負担も必要です。
また、日本国内の保険会社の表明保証保険であっても、引受審査用の書類や保険契約は英文で書かれています。
そのため、日本国内のM&A案件で表明保証保険を使う場合、英文を英訳する手間がかかる点もデメリットといえるでしょう。
表明保証保険締結のプロセス
本章では、表明保証保険を締結するまでのプロセスを解説します。
- 締結までのプロセス・流れ
- 引受審査の申し込み
- 引受審査の開始
- 保険条件の決定
①締結までのプロセス・流れ
表明保証保険は保険約款文言を案件ごとに作り込む必要がある、テーラーメイド型の保険です。そのため、保険契約の締結までは、最低でも3週間かかるといわれています。
M&Aのスケジュールに合わせて保険契約を円滑に進めるためには、いつまでに何が必要になるのか、事前にリストアップしておくことが重要です。
②引受審査の申し込み
保険会社または保険代理店に連絡をし、渡される概算見積書において引受審査の申し込みを行います。
その後、情報をもとに保険会社から概算見積書が届くため、記載されている保険金額や保険料、免責金額、補償期間などを確認しましょう。
保険会社によって補償内容や保険料が異なるため、概算見積書は一社だけでなく複数の会社のものを比較することがおすすめです。
引受審査を申し込む保険会社を決定したら、次に引受審査を申し込みます。保険会社が引受審査をする際に選任する弁護士などの費用は申込者の負担となるので、その内容が記載された経費契約(Expense Agreement)の締結を行います。
なお、引受審査にかかる費用は、保険契約締結の有無にかかわらず申込者が負担します。
③引受審査の開始
引受審査では、申込者は保険会社にM&Aに関する情報を開示し、保険の申込者と保険会社、M&Aのアドバイザーが参加する電話会議(Underwriting Call)も行われます。
その際は、M&A対象の会社やM&Aの交渉経緯、デューデリジェンスの結果、M&Aを行う動機などが質問されます。
M&Aの価値や実現の可能性を確認されるプロセスといえるため、しっかりと準備したうえで臨みましょう。
引受審査でM&Aの実現が低いなどと判断されると、保険会社に引き受けてもらえない可能性もあります。
④保険条件の決定
引受審査が終了すると、保険会社の方から最終的な保険条件が提示されます。ここで重要となるのは、この段階までに株式譲渡契約書の作成を行っておく必要がある点です。
株式譲渡契約書は、買い手側と売り手側で契約書内の文言などを交渉し、作成していきます。
株式譲渡契約書で記載されている表明保証条項を保険会社がチェックし、各項目に「補償提供」「限定補償提供」「免責」などのコメントを入れます。つまり、補償可能な条項や補償されない条項、あるいは補償が制限されるかを明示します。
限定補償提供や免責となった条項は、あらためて買い手と売り手の間で交渉を行い、表明保証条項を変更できます。最後に、表明保証保険の契約手続きを行い、保険料を払い込めば締結となります。
表明保証保険の問題点と注意点
表明保証保険には、以下の4つの問題点や注意点を踏まえておきましょう。
- M&Aの信頼性
- M&Aアドバイザーの選定
- 英語に注意
- 表明保証保険の対象外とされる事項
①M&Aの信頼性
表明保証保険の引受審査では、M&Aの信憑性が重要です。保険会社は電話会議を踏まえた引受審査で丹念にM&Aの計画やプロセスを確認してきます。そのため、成功率の低いM&Aだと判断されると引き受けてくれない可能性が高くなります。
表明保証保険に加入できなければ、M&Aの進行にも影響する可能性が高いため、注意が必要です。
②M&Aアドバイザーの選定
表明保証保険の引受審査の過程では、M&Aをサポートしているアドバイザーもチェックされます。そのアドバイザーが経験豊富か、M&Aの過程で有効的なアドバイスを提供できるかによって、M&A成否が大きく左右されるからです。
M&A総合研究所には知識と経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、これまで培ったノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
③英語に注意
表明保証保険は引受審査が海外で行われるため、電話会議や保険の各種書類の多くが英語で行われることが問題点です。そのため、それぞれのプロセスに対応するためにも、英語ができるスタッフやアドバイザーを選任することが大切です。
必要に応じて株式譲渡契約書やデューデリジェンスレポートなどの書類も英訳する必要があるため、英語の知識は重要です。日本国内のM&Aで表明保証保険を使う場合でも、英語の使用はほぼ必須なため注意しましょう。
今後、日本語対応が可能な表明保証保険は増えていく可能性もあります。しかし、現段階では英語が必須な状態が続くでしょう。
東京海上日動で日本語の表明保証保険の販売を開始
東京海上日動火災保険は、2020年1月から国内の企業同士のM&Aを対象にした表明保証保険(国内M&A保険)販売を開始しました。
従来は表明保証保険は英語を使用する機会が多く、M&Aだけでなく英語の知識も必要でした。
しかし、東京海上日動火災保険が販売開始した表明保証保険は、日本国内の企業同士のM&Aを対象としているので、関係する書類や引受審査も日本語で行います。
④表明保証保険の対象外とされる事項
表明保証保険の保障対象は、株式譲渡契約上の表明保証の内容が主体となっています。しかし、株式譲渡契約では対象であっても、表明保証保険では対象外になる事項があるため注意が必要です。
例えば、被保険者やディールチーム・メンバーが事前に表明保証違反を認識しているケースや、事前に開示されている表明保証違反などは補償を受けられません。
また、デューデリジェンスが行われていない場合も、表明保証保険の保障対象外です。対象外になる事項に関しては株式譲渡契約書に特別条項を設け、売り手に対して直接請求を可能するか、買収価格に反映するかたちになります。
表明保証保険の税務
表明保証保険の税務上の取り扱いはどうなるのでしょうか。
契約締結を行った際に払い込む保険料は損金として処理します。表明保証保険の保険金を受け取った場合は益金として処理するのが一般的です。そのため、いずれの場合も法人税の対象となります。
クロスボーダーM&Aでは注意が必要
クロスボーダーM&Aにおいて、海外で表明保証保険を使用する場合、税務に関しては現地の税法を参照して行う必要があります。当然、海外の税法は日本の税法と異なるため、その差異を理解しておかなければ適切な税務が行えなくなる可能性があります。
そのため、現地の税法を理解したアドバイザーの協力を得ておきましょう。最近ではクロスボーダーM&Aに特化したM&A仲介会社や税理士事務所など専門的な知識を有している機関が増えており、中には特定の国や地域に特化している機関もあります。
M&A案件の実情に合わせて選択することで、より有効的なサポートを得られる可能性が高まるでしょう。
表明保証保険と株式譲渡契約書の関係性
表明保証保険では、株式譲渡契約書内にある表明保証条項を参照して補償できるかどうかが判断されます。
株式譲渡契約書では、表明保証違反が発生した際の補償責任の上限額や免責される金額、補償期間の制限などが規定されますが、表明保証保険を締結する以上は、この規定と保険の条件を合致させる必要があると考えるのが一般的です。
株式譲渡契約の内容によっては、補償責任がある程度制限されているケースもあります。しかし、表明保証保険の条件は、株式譲渡契約書に記載されている規定と合致している必要はありません。
表明保証保険で補償される上限額が、株式譲渡契約書で記載されている売り手側の補償の上限額より多い場合でも、上乗せする形で保険金を受け取ることが可能です。
表明保証保険のまとめ
表明保証保険が本格的に日本で普及しはじめたのは2015年と歴史はまだまだ浅く、クロスボーダーM&Aが前提のものも多いです。
しかし、表明保証保険はただ損失の補填に使えるだけでなく、M&A自体を有利に進展させるうえでも有効です。
成功させたいM&A案件がある場合は、表明保証保険に加入しておくことで成功率も高まる可能性があります。
今後は、日本国内に特化した表明保証保険が登場する可能性も十分考えられるので、実際に使用することを想定して知識を深めておくとよいでしょう。
・表明保証保険とは
→M&Aで表明保証違反が発生した際の損失を補填するための保険
・表明保証保険は
→主にクロスボーダーM&Aで使用されることが多いが、日本国内のM&Aでも使用することも可能
・表明保証保険のメリット
→損失の補填だけでなくM&Aにおける買い手の立場を有利にしたり、表明保証違反が発生した場合の手続きを円滑化できたりする
・表明保証保険のデメリット
→保険料や引受審査の費用などのコストがかかる、英語を使わなければならない場面がある
・表明保証保険を締結するまでのプロセス
→「引受審査の申し込み」「引受審査の開始」「保険条件の決定」のプロセスがあり、トータルで約3週間かかる
・表明保証保険の引受審査では
→M&Aの信憑性やアドバイザーの力量、英語がどこまで使えるかが重要となる
・表明保証保険の税務
→保険料は損金、保険金は益金として処理し、法人税の対象となる(クロスボーダーM&Aの場合は現地の税法に従う必要がある)
・表明保証保険と株式譲渡契約書内の規定
→必ずしも合致させる必要はない
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