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2019年3月10日更新
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負ののれんとは?のれんとの違いや発生原因、事例をご紹介

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

負ののれんは買い手となる会社にとっては、一見利益のように見えるものですが、あくまで一時的な発生益に過ぎず、その本質は潜在的なリスクだといえます。そのため、負ののれんが発生した際には、適切な対処を行い、リスクを取り除けるような経営に取り組む必要があります。

目次

    負ののれん

    負ののれんという言葉は、M&Aについて調べていると、よく見かけることがあるかと思います。

    そもそも、「のれん」という言葉自体、M&Aでよく聞かれる言葉だといえるでしょう。

    負ののれんも、のれんも、M&Aにおいては非常に重要なものです。

    とりわけ負ののれんは、発生するとM&Aが失敗に終わってしまい、最悪M&Aを行った会社の経営を一気に傾かせてしまうことがあります。

    今回はそんな負ののれんについてお伝えしていきます。

    負ののれんとは?

    まずは負ののれんの意味についてお伝えしていきます。

    そもそものれんとは、M&Aの際に売り手となった会社の取引価格と実際の価値の差分をいいます。

    もう少し正確にいうと、「売り手となった会社が実際に買収された時の価格」から、「帳簿上の公正純資産価値」を差し引いた際に発生する差分が、のれんというものです。

    いうなれば、のれんは販売価格と原価の差分ということになります。

    「それって単なる利益では?」と感じるかもしれませんが、この差分、つまりのれんには別の意味があります。

    元々公正純資産額は、その会社の総資産の内、負債の分だけを差し引いて算出した、帳簿上の純資産の価格を意味しています。

    そしてM&Aでは、そこにさらに資産価値を追加することで、取引価格を決定します。

    この場合の資産価値は、売り手となる会社が持っているノウハウや人材、顧客ネットワーク、地理的条件、ブランド、そしてM&Aを行った際のシナジー効果などといった、帳簿では反映できない要素を指します。

    実際のM&Aはこれらの要素を公正純資産額に加味することで、最終的な取引価格を決定していきます。

    つまり、のれんとは単純な利益のようなものではなく、売り手となる会社が持つ帳簿上に反映できない価値を、換算したものだといえるでしょう。

    そのため、のれんのことは「超過収益力」、あるいは負ののれんと対比して「正ののれん」といいます。

    そして「負ののれん」は、こののれんとは逆のものだといえます。

    負ののれんは実際の公正純資産額と、それより低い金額で設定された取引価格のマイナスの差分のことをいいます。

    詳細は後述しますが、負ののれんは売り手の会社に負債などのリスクを原因に発生します。

    そしてそのリスクを加味することにより、公正純資産額より低い取引価格が設定されるというわけです。

    正ののれんが売り手の会社の、ある種のポテンシャルを可視化しているものなら、負ののれんは売り手の会社のリスクを可視化しているものだといえるでしょう。

    負ののれんは正ののれんと比べてあまり発生しないものですが、もし発生したら、適切な対処を行う必要があります。

    負ののれんが発生する原因とは?

    負ののれんはどうして発生するのでしょうか?

    負ののれんが発生する原因には、以下のようなもの挙げられます。

    簿外債務

    基本的にM&Aの取引価格は、帳簿上の公正純資産価値をベースにして算定するものですが、簿外債務があると負ののれんが発生しやすくなります。

    簿外債務はその名の通り、帳簿上に反映されていない債務のことを指します。

    簿外債務は「債務」と名付けられていますが、決して全てが負債というわけではありません。

    簿外債務には未払いの賞与や退職金、回収見込みが少ない売掛金、土壌汚染や訴訟のリスクなども含まれています。

    つまり、「将来的に発生する支払い」が簿外債務だと考えて頂ければいいでしょう。

    簿外債務は中小企業ではよく発生するものです。

    簿外債務の会計は税務会計が一般的であり、法人税の節税のために利益を圧縮する一環として意図的に簿外債務を残しておくケースが多くなっています。

    これに対し、上場しているような大企業は投資家に向けて公正な情報を開示するために、財務会計を行っています。

    簿外債務は自然的に発生することもあるため、存在が必ずしもリスクだとはいえません。

    しかし、簿外債務の中には経営に致命的なダメージを与える損失になっているものもあり、そのようなものだと負ののれんとして計上されることがあります。

    また、悪質な例だと、意図的にリスクが高い簿外債務を隠す会社もあります。

    そのため、後々簿外債務が発覚し、想定されていたシナジー効果が得られないばかりか、一気に赤字に転落することもあります。

    この点を踏まえ、実際にM&Aを行う際は、デューデリジェンスなどを通じて徹底的に簿外債務を洗い出すことが重要です。

    訴訟などによる損害賠償請求

    売り手の会社が訴訟などによって、損害賠償請求を受けている際にも負ののれんが発生することがあります。

    当然ながら、損害賠償請求が発生していれば、将来的に莫大な損失が生まれる可能性があるからです。

    加えてやっかいなのは、もしM&Aが成立すると、買い手が売り手に変わって損害賠償請求を受けることになります。

    そしてこの際の負担の大きさに比例し、負ののれんは膨らんでいきます。

    赤字経営である

    赤字経営が続いている会社はいうなれば倒産のリスクを孕んでいる状態であるため、当然ながら負ののれんとして反映されます。

    赤字状態を回復できれば、当然負ののれんは解消されますが、そのまま悪化するようになれば、かなりの損失が発生してしまうでしょう。

    ちなみに、M&Aにおいて赤字の会社が買収されるケースは珍しくありません。

    優れたノウハウや事業があれば、それだけでもその会社には価値がありますし、買い手となる会社に経営状態を立て直す術があれば、さらなる成長が見込めるでしょう。

    また、赤字経営の会社の買収には一定の節税効果もあり、何より負ののれんが発生するため、コストを抑えてM&Aを実践することができます。

    そのため、負ののれんが発生する赤字経営の会社を率先して買収する会社もあります。

    負ののれんの発生益や記載区分、仕訳について

    ここでは負ののれんの発生益や記載区分、仕訳といった会計処理のやり方についてお伝えしていきます。

    負ののれんの発生益

    負ののれんは買い手にとって大きな利益を発生させ得るものです。

    買い手の立場からしたら、売り手の会社を公正純資産額より安く買収しているため、その分の差額を発生益として捉えられます。

    負ののれんの大きさによっては、かなり巨額の発生益になることもあります。

    一見、これは買い手となる会社にとってメリットがあるように見えますが、実情は違います。

    さきほどもお伝えしたように、のれんは単純な利益ではなく、売り手となる会社のポテンシャル、あるいはリスクを可視化したものです。

    そして負ののれんはれっきとしたリスクであり、もしこれが顕在化するようなことになれば、損失が発生し、一気に経営状態が傾くことになります。

    つまり、負ののれんの発生益はあくまで一時的な利益に過ぎず、リスクが顕在化した際の損害が利益を上回る可能性は十分にあります。

    だから負ののれんの発生益を過信するべきではないでしょう。

    しかし、会社によっては、負ののれんの発生益を利用することで業績が好調と見せかける手法を用いていることがあります。

    このような手法は粉飾決算ではないため、違法ではありませんが、会社の売り上げの実態やリスクがわかりにくくなるため、投資家には嫌われる方法です。

    だから、負ののれんの発生益を利用する手法はあまりおすすめできません。

    負ののれんの仕訳

    負ののれんの仕訳は正ののれんの仕訳とは異なっている点に注意しておくべきです。

    正ののれんの場合、仕訳は日本の会計基準かIFRS(国際財務報告基準)を採用しているかによって変わります。

    日本の会計基準の場合、貸借対照表にのれんを無形固定資産として発生益仕訳をした後、のれんの効果が及ぶ20年以内の期間にわたって規則的に償却していきます。

    そしてIFRSを採用している場合、のれんを毎期ごとに減損テスト(いうなれば時価評価)を行い、価値が著しく下がっていた場合は貸借対照表ののれんを減損処理します。

    負ののれんの場合、どちらのやり方を使ってもあまり結果は変わりません。

    ただ、負ののれんは仕訳の際に、「一括利益計上処理」の記載区分で処理します。

    さきほどもお伝えしたように、負ののれんは本質的には違うとはいえ、買い手にとっては利益でもあります。

    そのため、そのまま利益として処理すれば負ののれんの仕訳は完了です。

    正ののれんのように、償却していく必要はありません。

    のれんと節税

    ここではのれんの節税効果についてお伝えしていきます。

    のれんは会計処理と同様に、正と負で税務処理にも違いがあります。

    正ののれんの場合、税務処理では損金として扱われ、資産調整勘定として処理していきます。

    これは日本の会計基準、IFRSのいずれを採用していても変わりません。

    負ののれんの場合、差額負債勘定調整として扱っていき、そのまま5年かけて益金にしていきます。

    ここまで読んでいただければわかるように、正ののれんは買い手にとっての「損金」、負ののれんは「益金」として扱われます。

    この場合、買い手にとって節税効果が期待できるのは正ののれんです。

    また、M&Aをどのような手法で行うかによって節税効果が変わることがあります。

    この点は税務や会計の知識が必要になるため、専門家と相談しておくようにしましょう。

    負ののれんの事例

    ここでは実際に負ののれんが発生したM&Aの事例についてお伝えしていきます。

    RIZAP

    負ののれんが発生したことによって、経営状態が一気に転落した事例として有名なのは、やはりRIZAPの事例でしょう。

    RIZAPは2018年に負ののれんが顕在化し、赤字に転落しました。

    RIZAPは赤字経営の会社を優先して買収するようなM&Aを行っていましたが、これによる負ののれんの発生益を利用して、会社の業績が好調であるように見せていました。

    RIZAPの利益の内、負ののれんの発生益が3分の1を占めていたなど、その依存度はかなり依存度が高くなっています。

    そしてそれが裏目に出たためにRIZAPは赤字に転落しました。

    そもそもRIZAPは赤字経営の会社を優先して買収するM&Aは、その会社の経営状態を再建できることが前提の手法です。

    しかしRIZAPは経営の再建に失敗し、負ののれんが丸々リスクに顕在化したために、莫大な損失を発生させてしまいました。

    本来RIZAPはこのような事態に陥る前に、一度M&Aをやめ、経営再建に務めるべきでしたが、負ののれんの発生益に依存したために、このような結果を招いてしまったといえます。

    このような事例は、負ののれんの発生益が本質的な利益ではないことを如実に示しているでしょう。

    伊勢丹×三越

    2008年に、伊勢丹と三越は、共同株式移転により、三越を買収する形で三越伊勢丹ホールディングスを設立しました。

    この際、700億円という莫大な負ののれんが発生しています。

    元々三越は銀座の一等地に土地を所有しているなど、資産価値が高いうえに、両社はインカムアプローチの一つであるDCF法を利用したことが、この負ののれんが発生した原因です。

    日本郵政

    日本郵政は2015年にオーストラリアの物流子会社のトールを買収しました。

    この際、日本郵政は多大な正ののれん代を加味した6000億円でトールを買収したことがかなり話題になりました。

    しかし、2017年になると状況は一転、日本郵政は4000億円の減損処理を発表し、巨額の損失を被ることになりました。

    これは、いうなれば正ののれんが負ののれんに転化してしまい、さらにそのリスクが顕在化してしまったケースだといえます。

    そもそも日本郵政のトール買収は、ゆうちょ銀行が買い戻した株の売り上げである1.3兆円の内、退職給付債務の清算を終えた後に発生した6000億円をつかいきることも目的に含まれていました。

    つまり、6000億円の価格はあらかじめ既定路線で決定されていたものであり、綿密な査定で算出された数字ではないわけです。

    そして十分な査定を行わないままトールを買収し、加えてトールをさらに成長させるような経営戦略を行わなかった結果、日本郵政は巨額の損失を生み出す結果になりました。

    このように負ののれんは事後的に発生するようなこともあります。

    まとめ

    負ののれんは買い手となる会社にとっては、一見利益のように見えるものですが、あくまで一時的な発生益に過ぎず、その本質は潜在的なリスクだといえます。

    そのため、負ののれんが発生した際には、適切な対処を行い、リスクを取り除けるような経営に取り組む必要があります。

    それを理解せずに発生益に依存するようなことになれば、RIZAPのような失敗を招くことになるでしょう。

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