M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年11月18日公開事業承継
障害者福祉施設の事業承継とは?承継方法や流れ・成功のポイントを徹底解説!
障害者福祉施設が事業承継に失敗して倒産が相次ぎ、利用者が困っている状況が生まれています。障害者福祉施設の事業承継にはどのような注意点があるのでしょうか。この記事では、障害者福祉施設の事業承継の流れや、成功させるための注意ポイントなどを詳しく解説します。
目次
障害者福祉サービスの概要
障害者福祉サービスでは、廃業や倒産する事業所も出ています。
社会的に弱い立場になりがちな障害者が利用者である障害者福祉サービスは、廃業や倒産に至る前に事業承継の可能性を探ったほうがいいのはいうまでもないでしょう。この記事では、障害者福祉サービスでの事業承継について詳しく解説します。
障害者福祉サービスとは
障害者福祉サービスとは、障害者総合支援法に基づいて、障害を持つ人に向けて、介護給付もしくは訓練等給付のサービスを提供するものです。
介護は、介護が必要だとされた障害者に対して提供する介護サービスです。訓練等給付では、自立した社会生活を送ることを目的として、仕事やスキルを身につけるための支援を行います。
障害者福祉サービスの現況
障害者と障害児に対する福祉サービスの利用者数は、平成30(2018)年4月が112万6,000人だったのが、令和3(2021)年4月には131万9,000人となり、ニーズが増加しています。
一方、2020年の障害者福祉サービスの倒産、休業、解散件数は、2018年には93件、2019年には136件、2020年にも127件と、増加傾向にあります。その理由は、安易な新規参入の結果、事業を失敗する事業所が増加しているのが原因のようです。
参考:厚生労働省「障害福祉分野の最近の動向」 東京商工リサーチ「2020年「障害者福祉事業」倒産と休廃業・解散調査」
障害者福祉サービスの事業承継動向
障害者福祉サービスでの事業承継にはどのような動向があるのかみていきましょう。
売り手のニーズ
事業承継で障害者福祉サービス事業を譲渡したいと考えている側としては、経営難や人材不足が大きな要因となっています。
例えば、当初予定していたよりも利用者を集めることが難しく赤字経営が続く事業所がみられます。
また、児童発達支援管理責任者などの事業の継続に必要な有資格者が相次いで離職してしまうことで、採用コストがかかることなどが、経営を圧迫してしまい、事業の継続が難しくなる事業所が相次いでいます。
買い手のニーズ
障害者福祉サービスを事業承継で譲り受けたいと考えている側のニーズとしては、規模の拡大や、経営の多角化などの目的があるようです。
M&Aで同業者が買収を希望する場合には、規模の拡大による経営の効率化が目的となります。異業種からの参入である場合には、障害福祉事業に新規参入をするために、すでに経営実績のある障害者福祉サービスを買収する例がみられます。
障害者福祉サービスの事業承継が重要な理由
障害者福祉サービスの事業承継が重要な理由をみていきましょう。
従業員の解雇を防げる
後継者問題や事業の悪化を理由に、障害者福祉サービスを廃業することになってしまったら、従業員は全員解雇しなければいけません。
すぐに次の仕事を見つけられる人もいるでしょうが、中にはなかなか次の仕事が見つからずに迷ってしまう人も出てしまう可能性があります。
事業承継に成功すれば全ての従業員の雇用を継続することができます。事業承継は、長年事業を支えてくれた従業員の生活を守るためにも重要なものなのです。
倒産時や廃業時における出費を回避できる
廃業する場合には、解雇する従業員への退職金や建物や設備の処分費用を経営者が負担しなければいけません。
金融機関からの借入に対して経営者の個人保証がついていれば、廃業後も返済が続く可能性があります。
しかし、事業承継に成功すれば、従業員の雇用も建物や設備も債務も、基本的に後継者に全て譲ることができるので、廃業をする時のコストの負担や債務の支払い義務を回避できます。
事業承継であれば、廃業や倒産よりも事業承継した方が経営者の経済的な負担は少なくてすむでしょう。
利用者のサービス継続利用
障害者福祉サービスを廃業することになれば、その施設を利用していた利用者は他の施設に移るしかありません。
しかし、障害者福祉サービスでは障害の種類や程度によって必要となるサービスが異なり、人口が少ない地域では近隣に同じようなサービスが受けられる施設があるとは限りません。
利用者の中には、行き場がなくなってしまって困ってしまう人が出てしまう可能性もあります。
事業承継に成功して障害者福祉サービスの提供を継続することができれば、利用者も利用を継続できます。利用者のことを考えれば、廃業よりも事業承継の方がメリットが大きいのはいうまでもないでしょう。
売却資金の獲得
従業員承継もしくは第三者への売却であるM&Aでの事業承継を選択した場合には、経営者は障害者福祉サービスを売却した売却資金を手に入れることができます。
売却金から事業承継の手数料と税金を差し引いた売却益は、経営者が自由に使えるので、引退後の生活費や新規事業のための資金に充てることも可能です。
障害者福祉サービスの事業承継の方法とその流れ
障害者福祉サービスを事業承継する方法は、経営者の子供や孫といった親族を後継者にする親族承継、事業所の役員もしくは従業員を後継者にする従業員承継、第三者に売却するM&Aの3つの方法があります。それぞれの流れをみていきましょう。
親族・従業員へ事業承継をする場合
事業所内で後継者の育成を行う親族承継と従業員承継は同じ流れで進めます。
- 経営者が事業承継の必要性を認識する
- 経営の見直しと経営改善の実施
- 事業承継計画の策定
- 事業承継計画の実行(後継者の育成、事業の引き継ぎ)
事業承継の準備は、経営者自身が事業承継の必要性を認識することから始まります。いつ、誰に、何を、どのように引き継ぐのかといったことをまとめた事業承継計画を策定し、後継者育成に入ります。その後、時期を見ながら徐々に経営権や資産を引き継いでいきます。
M&Aで事業承継をする場合
第三者に事業所を売却するM&Aは次のような流れで進めます。
- M&Aの専門家への相談
- 売却先の選定
- トップ面談と交渉
- 基本合意書締結
- デューデリジェンス(買収側によるリスク調査)
- 最終交渉と最終契約書の締結
- クロージング
障害者福祉サービスの事業承継を成功させるポイント
障害者福祉サービスの事業承継を成功させるための注意ポイントです。
計画を立てて準備を進める
事業承継には時間がかかります。後継者育成が必要な親族承継と従業員承継は、育成に5年から10年程度必要です。M&Aも検討開始からクロージングまで1年以上かかるのが一般的です。
経営者は自らが経営から身を引くべき時期が来ることを認識して、その時期から逆算して事業承継の準備を進めるようにしましょう。
自社の強みをアピールできるよう分析しておく
事業承継が成功するかは、後継者が引き継ぎたいと思える事業所の状態であるかどうかが重要です。事業所の経営状況が後継者に引き継いでもらえる状態かを確認し、必要に応じて経営改善を行いましょう。
また、後継者が引き継ぐメリットとなる、自社の強みを分析して、しっかりとアピールできるように準備しておくことも大切です。
事業承継完了後に関係者への報告を行う
M&Aで第三者へ売却する場合には、従業員や取引先への報告は最終契約書締結後に行うように注意しましょう。
最終契約書締結前に、M&Aの噂が広がってしまうと、事業所の売却に対する不安から、従業員の退職や取引先からの取引停止を招く恐れがあります。
そのような事態を避けるためにも、M&Aの実施を公表できる段階になる前に情報流出が起きないように、情報管理は厳密に行うことが重要です。
また、公表できる段階になったら、事業承継後の待遇や取引について丁寧に説明して、関係者に理解してもらうように努めましょう。
M&Aの専門家に相談を行う
事業承継を成功させるためには、事業承継全般に詳しいM&Aの専門家に必ず相談をするところから始めましょう。
事業承継を実施するためには、法律や財務などの高度な知識が必要となるために、障害者福祉サービスの経営者だけでは難しい点がいろいろと出てきます。
親族承継と従業員承継の場合には事業承継計画の策定や実行で、M&Aの場合には売却先探しやデューデリジェンスへの対応などで、専門家の手助けが必要となることが多いようです。
M&Aの専門家であれば、事業所の状況を聞いた上で、どの事業承継方法を選ぶべきなのか、といったところから親身になって相談に乗ってくれます。まずは、専門家への相談から始めることをおすすめします。
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障害者福祉サービスのM&A・事業承継事例3選
障害者福祉サービスでM&Aが実施された事例をみていきましょう。
QLSホールディングスが障がい者グループホームを事業承継した事例
2023年11月21日に、保育事業や介護福祉事業などを手掛ける株式会社QLSホールディングスから、同社の連結子会社の株式会社エルサーブが、株式会社AKが運営していた障がい者グループホーム事業「g-port」を譲受けることが発表されました。
同日に株式会社AKの破産手続開始決定がされて、QLSに事業譲渡の打診があったことから、譲渡先が見つからなかったときの社会的影響などを鑑みて、事業承継に応じたとのことです。
manabyがエーシーイーが行う就労移行支援事業などを事業承継した事例
2023年11月16日に、就労移行支援などを行う株式会社manabyから、宮城県刈田郡蔵王町にあるエーシーイー株式会社の就労移行支援事業、就労継続支援事業、障がい児通所支援事業に係る事業所を譲り受ける、事業譲渡契約書を決議したことが発表されました。
この事業承継により、manabyは東北エリアにサービス提供範囲を拡大できる他、就労移行支援などのノウハウを持つ人材を確保できるために、同社の事業成長に資すると判断したとのことです。
リネットジャパングループがアニスピホールディングスを事業承継した事例
2023年3月1日に、リサイクル事業などを展開するリネットジャパングループ株式会社から、障がい者向けグループホームを全国展開する株式会社アニスピホールディングスの全株式を取得して、完全子会社化することが発表されました。
リネットでは、小型家電リサイクル事業で知的障がい者の雇用を推進しており、環境と福祉を連携させる取り組みを行ってきました。この事業承継により、この連携モデルの構築が加速化し、株主価値の拡大に寄与するとのことです。
障害者福祉サービスの事業承継まとめ
障害者福祉サービスは経営が大変なところが多く、自分の子供には継がせたくないと事業承継をせずに廃業を選択する事業所が増加しているようです。しかし、利用者を置き去りにした安易な配慮はできる限り避けるべきでしょう。
事業承継には、親族承継以外にも、従業員承継やM&Aという選択肢もあるので、まずはM&Aの専門家に事業所の将来について相談してみることから始めることをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。