2020年11月30日公開会社・事業を売る

類似企業比較法を計算例付きで解説!メリット、必要なデータ

類似企業比較法とは、対象会社と類似している上場企業を複数社選定し、類似会社のデータから倍率計算を行う方法です。本記事では、類似企業比較法を計算例付きで解説します。また、類似企業比較法のメリットや、類似企業比較法に必要なデータについてもご紹介します。

目次
  1. 類似企業比較法とは
  2. 類似企業比較法の計算方法と計算例 
  3. 類似企業比較法を使うメリット 
  4. 類似企業比較法を使うデメリット 
  5. 類似企業比較法に必要なデータとは 
  6. 類似企業比較法に必要なデータの各メリット・デメリット
  7. まとめ
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類似企業比較法とは

類似企業比較法とは

類似企業比較法とは、対象会社と類似している上場会社を複数社選び出し、類似会社の数値から倍率計算を行うことで会社の価値を導き出す方法です。

例えば、比較対象の上場会社が当期純利益5億円、時価総額50億円で倍率が10倍と評価された場合に、対象会社の当期純利益が1億円であれば、時価総額は10億円になると想定する方法です。

具体的な計算方法は後述しますが、実際には複数の上場企業を選定して中央値を導き出し、倍率計算を行います。

類似企業比較法の計算方法と計算例 

類似企業比較法の計算方法と計算例

本章では、類似企業比較法の計算方法を計算例とともに解説します。まずは、以下のように企業価値算定を行う企業と類似した上場企業を選定し、データを取得します。
 
  時価総額 当期純利益 簿価純資産
上場企業A社 30億円 3億円 20億円
上場企業B社 40億円 4億円 25億円
上場企業C社 50億円 4億円 40億円
算定対象会社   2億円 10億円

続いて、取得したデータから倍率計算を行います。
  時価総額/当期純利益 時価総額/簿価純資産
上場企業A社 10.0倍 1.5倍
上場企業B社 10.0倍 1.6倍
上場企業C社 12.5倍 1.25倍
中央値 10.0倍 1.5倍

なお、倍率計算には中央値ではなく平均値を使うこともありますが、平均値の場合は取得するデータによっては大きく上振れたり下振れたりする可能性があるため、実務では中央値を用いることが多くなっています。

類似企業から倍率を算出したら、企業価値を算定する会社の当期純利益と簿価純資産から、株式価値を算出します。

すると、当期純利益×中央値 2億円×10.0倍=20億円、簿価純資産×中央値 10億円×1.5倍=15億円であるため、(20億円+15億円)/2=17.5億円となり、類似企業比較法によって、算定を行った会社の企業価値は17.5億円となります。

しかし、算定を行った会社の規模が比較した上場企業よりも小さい場合は、算定結果から10%~30%ほど割り引いた数字を相場とすることがあります。

子の場合、上記の算定例では、17.5億円から20%割り引くことで、14億円が最終的な企業価値となります。

【関連】配当還元法で非上場株式の企業価値評価【計算式あり】

類似企業比較法を使うメリット 

類似企業比較法を使うメリット

類似企業比較法を用いるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、主なメリットを2つ紹介します。

【類似企業比較法を使うメリット】

  1. 企業価値を簡単に算定できる 
  2. 市場価値との比較ができる 

1.企業価値を簡単に算定できる

類似企業比較法のメリットは、比較する上場企業を選別して算定に用いるデータさえ揃えることができれば、算定方法が簡単な点です。

前述の計算例のように、類似企業比較法の計算自体は難しいものではありません。そのため、データがあれば専門家でなくても計算することができ、算定した数字もわかりやすい点が類似企業比較法のメリットです。

企業価値評価法のひとつであるインカムアプローチは計算が難しく、専門家による算定が必要となるので、計算の簡単さでという面では類似企業比較法が便利です。

2.市場価値との比較ができる

類似企業比較法は比較対象となる企業が複数あるので、算出した数字が市場において割高なのか割安なのかを客観的に比較することができます。

企業価値評価法のひとつであるインカムアプローチは理論的には精緻にできていますが、事業計画書などを基に対象企業の将来性を数字に落とし込むため、客観性に不安があるという点がデメリットでもあります。

その一方で、類似企業比較法(マーケットアプローチ)やコストアプローチは客観性に優れています。

【関連】年買法を徹底解説!中小企業のM&A向けの企業価値評価方法

類似企業比較法を使うデメリット 

類似企業比較法を使うデメリット

類似企業比較法のデメリットのひとつは、類似した上場企業の選定が難しい点です。類似した上場企業の選定は、適切でありかつ合理的な説明がつくものでなければなりません。

しかし、まったく同じ上場企業が存在する可能性はかなり低いことから、どこまでの違いを許容するかなどの判断が重要となります。

また、対象企業の事業内容がニッチであったりユニークであったりする場合、事業内容そのものでは類似企業比較法が適用できないケースもあります。そのような場合は、事業内容以外の要素で類似性をみつけなければなりません。
 

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類似企業比較法は、評価する前提の設定によって結果が大きく変わる可能性があるため、実務で類似企業比較法を使う場合は、他の企業価値算定方法と組み合わせるなどして、欠点を補う必要があります。

企業価値算定を正確に行うには、専門家によるサポートが必要です。M&A総合研究所では、豊富な経験を持った専門家が企業価値算定を行いますので、安心してお任せいただけます。

また、M&A総合研究所では着手金や中間報酬をいただいておりません。M&Aが成立するまで手数料をいただかない完全成功報酬制の手数料体系となっているので、M&Aが成立するまで安心して手続きを進めていくことができます。

無料相談は随時受け付けておりますので、企業価値算定やM&Aをご検討の際は、M&A総合研究所までお気軽にご連絡ください。

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類似企業比較法に必要なデータとは 

類似企業比較法に必要なデータとは

類似企業比較法で企業価値算定を行う際には、複数のデータをもとに検証していくケースが一般的です。本章では、類似企業比較法に必要なデータについて解説します。

1.類似企業の選定とそのルール 

類似企業比較法で類似企業を探す際は、まず事業内容の類似性を根拠に幅広く上場企業を集めた後、事業内容以外の要素を含めて絞り込んでいく方法が一般的です。

事業内容が類似している上場企業をある程度集めたら、次は財務類似性で選定していきます。類似企業比較法で重要なのは、どこまで類似性を求めるのかという点です。

類似性を求めすぎると選べる企業は少なくなり、類似企業比較法の精度が落ちてしまいます。逆に幅を広げすぎても類似企業比較法の精度は落ちてしまうことになり、どのレベルで調整するかが重要です。

どのレベルで調整するかは類似企業比較法を適用する企業によって違い、場合によっては類似企業比較法は適用できないと判断することもあります。

2.評価する企業の想定株価補正とそのルール

類似企業比較法で企業価値算定を行う際は、以下のデータを参考にすることがあります。

  1. 売上高倍率 
  2. EBITDA倍率 
  3. EBIT倍率 
  4. PER倍率 
  5. PBR倍率

1.売上高倍率

売上高倍率はPSR(株価売上高倍率)とも呼ばれ、時価総額を年間の売上高で割ったものです。一般的に、売上高倍率は0.5倍以下で割安、20倍以上で割高とされています。

ただし、類似企業比較法で上場企業と比較する場合は、利益率だけで比べると判断を誤りかねないため、類似企業比較法を売上高倍率で評価する際は、ほかの指標と組み合わせるなどの対応が必要です。

2.EBITDA倍率

EBITDA(イービットダー)倍率は、営業利益+減価償却費という簡単な式で求めることができます。

類似企業比較法でEBITDAを用いる際は、EV/EBITDA(イーブイ・イービットダー)倍率を参考にすることがあります。

EV/EBITDA(イーブイ・イービットダー)倍率は、事業価値(EV)がEBITDA(イービットダー)の何倍であるかを評価する指標です。

つまり、企業を買収した際に、何年で買収に投資した資金を回収できるかの目安にすることができます。

EV/EBITDA(イーブイ・イービットダー)倍率の一般的な平均は8倍〜10倍ともいわれていますが、その平均倍率は業種や企業規模によって大きく変わります。

そのため、類似企業比較法でEV/EBITDA(イーブイ・イービットダー)倍率を用いる際は、比較する企業の選別を丁寧に行う必要があります。

3.EBIT倍率 

EBIT(イービット)倍率は、営業利益とほぼ同義といえる指標です。実際には、税引前当期純利益または経常利益に支払利息を足し、受取利息を引くことで算出することができます。

EBIT倍率を類似企業比較法で用いる際は、EBITマージンを算出することがあります。EBITマージンとは、EBITを売上高で割った倍率のことで、企業の収益力を測ることができます。

EBITマージンは業界によって大きく違い、EBITマージンが高い業界では10%を超えますが、EBITマージンが低い業界ではマイナスになっているケースもあります。

4.PER倍率 

PERは、1株当たり株主価値を1株当たり当期純利益で割ることで算出できます。PER倍率を類似企業比較法で用いる際も、類似会社を選定して中央値や平均値を算出し、当期純利益を乗じることで株主価値を導き出します。

一般的に、PER倍率は15倍前後が平均とされています。ただし、PER倍率の割安・割高だけで単純に比較すると判断を誤る可能性もあります。

PER倍率が低くても、その後収益力が下がっていく企業があれば、逆にPER倍率が高くてもその後収益力が上がっていく企業もあります。

つまり、その時点で割安か割高かはその後の成長性にもよるため、類似企業比較法でPER倍率を用いる際は、ほかの指標も参考にすることが重要です。

5.PBR倍率

PBR倍率とは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを評価する指標です。一般的に、PBR倍率は1倍を下回れば割安、1倍を超えれば割高と判断されます。

ただし、PER倍率の場合と同じく、割安・割高だけで単純に比較すると判断を誤る可能性があります。PBR倍率が割安水準でもその後さらに業績が悪化し、結果的に割高だったという可能性があります。

逆に、割高水準であっても、その後の成長性によってはまだ割安水準であった可能性もあります。PBR倍率も類似企業比較法で用いる場合は、ほかの指標とともに検証する必要があります。

3.類似企業の倍率算定とそのルール 

類似企業比較法を用いる際は、類似企業の数値に異常値がないかを確認することが重要です。場合によっては、数値が異常に高い値を示すことがあります。

異常値を排除するには、まず極端な数値を示している上場企業がほかにあるかを探し、そのような企業がみつかったら、どのような要因でその数値を示しているのかを確認します。

例えば、EV/EBITDA(イーブイ・イービットダー)倍率の場合、類似企業が多額の負債を抱えていて、経営再建中であれば数値が異常値を示すことがあります。そのような企業は類似企業比較法には適さないと考え、対象から外すなどの対応が必要です。

4.株主価値の算定とそのルール 

株主価値とは株主に帰属する価値であり、事業用資産+非事業用資産−有利子負債で求めることができます。

株主価値と時価総額を比較することで、対象企業の株価が割安か割高かの判断材料にすることが可能です。

例えば、株主価値が時価総額よりも高ければ対象企業は割安と判断でき、株主価値が時価総額よりも安ければ対象企業は割高と判断できます。

ただし、株主価値はあくまで理論値であり、個別の企業の状況をすべて反映しているとはいえないため、株主価値を類似企業比較法で参考にする場合は、他の指標もあわせて検証する必要があります。

【関連】EV/EBITDA倍率とは?目安の倍率8倍は高い、安いどっち?

類似企業比較法に必要なデータの各メリット・デメリット

類似企業比較法に必要なデータの各メリット・デメリット

類似企業比較法で用いるデータにはそれぞれメリット・デメリットがあります。本章では各データのメリット・デメリットを紹介します。

  1. 売上高倍率
  2. EBITDA倍率 
  3. EBIT倍率 
  4. PER倍率 
  5. PBR倍率 

1.売上高倍率

売上高倍率はPSR(株価売上高倍率)とも呼ばれ、時価総額を年間の売上高で割ったものです。PSRは赤字や債務超過の会社でも評価できる点が特徴です。

そのため、スタートアップやベンチャー企業など、現在は赤字や債務超過でも、今後高い成長性が見込まれる企業を評価する際に有効な指標です。

ただし、上場企業には赤字や債務超過の会社が少ないこともあり、
類似企業比較法で類似上場企業を選定するのが難しいというデメリットもあります。

2.EBITDA倍率

EBITDA(イービットダー)倍率は、営業利益+減価償却費という簡単な式で求めることができます。

EBITDA倍率はキャッシュフローに似た性質を持っている点、資本構成に影響されない点など、類似企業比較法を用いる際に便利なメリットを持っています。

そのため、類似企業比較法では、事業価値であるEV(イーブイ)をEBITDA(イービットダー)で割るEV/EBITDA(イーブイ・イービットダー)倍率がよく用いられます。

前述のように、EV/EBITDA(イーブイ・イービットダー)倍率は買収に投じた資金を何年で回収できるかの目安とすることができるため、類似企業比較法で用いるだけでなく、投資家が株式投資を行う際にも参考にすることの多い指標です。

3.EBIT倍率 

EBIT倍率は営業利益にほとんど近い指標であり、EBITDA倍率とは減価償却費を加えるかどうかの違いがあります。

EBIT倍率は企業の収益力を中心に評価できるので、類似企業比較法で用いる際は、収益力は高くても多くの負債を抱えているベンチャー企業など、成長性の高い企業を正当に評価する際に便利な指標です。

4.PER倍率 

PER倍率はEV/EBITDA倍率に比べると類似企業比較法では使いにくい評価指標ではあるものの、場合によっては役に立ちます。PERは1株当たり株主価値を1株当たり当期純利益で割ることで算出できます。

PER倍率は、類似企業比較法をで評価する対象企業が上場した場合、どのくらいの株価になりそうかを想定する際に便利な指標です。

また、PER指標は類似企業比較法の際に用いる以外にも、個人投資家がどの上場企業に投資するか検討する際によく用いられています。

5.PBR倍率 

PBRとは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを評価する指標です。PBRは純資産が少ない企業ほど高い数値が出やすいので、スタートアップやベンチャー企業ほど割高な数値になることが多くなります。

そのため、PBR倍率を類似企業比較法で用いる際は、PERとは逆に成熟した業種・企業で用いる方が的確な数値が出やすくなります。

まとめ

まとめ

本記事では類似企業比較法の計算方法や必要なデータなどについてご紹介してきました。

類似企業比較法とは、企業価値の算定を行う会社と類似している上場企業を複数社選定し、類似会社のデータから倍率計算を行うことで企業価値算定を行うアプローチ方法です。

【類似企業比較法のメリット】

  1. 企業価値を簡単に算定できる 
  2. 市場価値との比較ができる 

【類似企業比較法に必要なデータ】
  1. 売上高倍率 
  2. EBITDA倍率 
  3. EBIT倍率 
  4. PER倍率 
  5. PBR倍率 

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