M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年5月28日更新節税
M&Aの減税措置を解説!中小企業の優遇税制、受けられる控除を紹介【2024年最新版】
2024年度の税制改正が行われ、M&Aに関するいくつかの減税措置が施行されました。今後は減税措置を活用することで、コストとリスクを抑えてM&Aを行えます。本記事では、M&Aの減税措置の概要や実施された理由、2024年度税制改正の内容を解説します。
目次
M&Aの減税措置【2021年】
2021年4月に行われた税制改正では、M&Aに関するさまざまな減税措置が施行されました。
今回の減税措置をうまく活用すれば、今までより低コストでシナジーの高いM&Aが可能になります。この章では、減税措置や税制改正の基礎的知識を概観します。
M&Aの減税措置とは
M&Aの減税措置とは、M&Aの買収費用や設備投資費用の税金を減税することで、M&Aの活性化を目指すことです。近年、国はM&Aや事業承継を促すために、減税を始めとするさまざまな支援措置を講じています。
親族内での事業承継を促進するための贈与税・相続税の減税措置は以前から行われていましたが、2021年の税制改正ではM&Aの減税措置も実施して中小企業の活性化を目指すのです。
2021年度のM&A税制改正
税制の改正は毎年行われ、まず年末に「税制改正大綱」という骨子となる案が作られ、それをもとに国会で審議して翌年4月に施行されます。
2021年の税制改正大綱は2020年12月に公開され、M&Aの税制改正案も盛り込まれました。内容はM&Aの買い手企業が買収を行いやすいように減税するもので、可決・成立し2021年4月から施行されています。
この減税によって買い手の買収リスクがかなり下がったので、これからM&Aを検討している場合は内容を熟知し、積極的に活用していくとよいでしょう。
M&Aの減税措置の対象者
主な対象者は中小企業になります。中小企業は、経営資源の集約化による再構築によって、生産性向上や会社基盤を強めることが欠かせないので、減税措置がM&Aを促すため検討されているのです。
ここでいう中小企業者は、中小企業等経営強化法の中小企業者などで、租税特別措置法の中小企業者に該当する必要があります。
M&Aの知識や経験がない中小企業は多く、資金力も低いケースが少なくありません。この措置は、中小企業をメインとするM&Aに、大きな影響を与えるといえます。
M&Aの減税措置を利用するメリット
今回のM&Aによる減税措置は中小企業がメインであり、経営資源の集約化によって、生産性向上などを見込める計画の認定を受けた中小企業が、計画に基づいたM&Aを行ったときに活用できることがメリットです。
認定を受けた中小企業は、中小企業経営強化税制の利用や所得拡大促進税制上乗せ要件の認定がいらない措置を受けられる点もメリットになります。
2024年度税制改正の概要
政府と与党は、2024年度の税制改正で中小企業のM&A(合併・買収)に関する税負担を軽減し、後継者不足問題の解消を図っています。
中小企業をM&Aした場合に、株式取得額の70%を損金として計上できる税制措置を拡充し、買収した株式の取得額の最大100%を税務上の費用(損金)として計上できるようになります。従業員が2000人以下の中堅企業も、この税優遇を受けられるようにします。
M&Aの税制改正が行われた理由
今回の税制改正によるM&Aの減税措置が行われた主な理由は、事業承継問題や内部留保の活用など以下の4つがあります。この章では、これらの減税の各理由について見ていきましょう。
【M&Aの税制改正・減税措置が行われた理由】
- 中小企業の事業承継問題
- 企業の内部留保の増加
- M&Aにより売上や労働生産性が上がるデータがある
- ウィズコロナ・ポストコロナ社会への対応
中小企業の事業承継問題
2020年代は今まで中小企業経営を担ってきた団塊世代が引退する時期で、後継者への事業承継がうまくいくかが今後の日本経済を大きく左右します。
後継者が見つからず中小企業が廃業してしまうと、多くの雇用とGDPが失われるとともに、中小企業が持っている技術やノウハウといった目に見えない財産も消失するでしょう。
かつては経営者の息子などが後継者となり会社を存続させることが多かったですが、近年は親族内承継が少なくなっており、事業承継したくても後継者がいないケースが増えています。
そこで国は以前からM&Aによる事業承継を推進し、支援機関の設置などを行ってきました。今回の減税措置も、M&Aによる事業承継を推進する政策の一環という意味合いがあります。
企業の内部留保の増加
近年は人件費削減や法人税の減税などで、企業の内部留保が増加傾向です。かつては内部留保が増えると設備投資などに回されましたが、近年は設備投資もあまり行われず内部留保が増加し続けています。
内部留保は会社にとって貯金のようなものなので、ある程度貯めておくことは重要です。しかし、現在、日本の企業は内部留保を貯めすぎて有効活用できておらず、国としては経済の活性化のために内部留保の活用を促す政策が必要です。
今回施行されたM&Aの減税措置は、内部留保の活用を促す狙いもあります。貯め込んだ内部留保でM&Aを行い、事業の発展や雇用の創出ができれば経済の活性化につながるでしょう。
M&Aにより売上や労働生産性が上がるデータがある
経済産業省や中小企業庁の調査によると、M&Aを行った企業は、行わない企業より売上や労働生産性が上がる傾向があると示されています。
そのため、税制改正による減税でM&Aを促せば、企業の売上や労働生産性の底上げが期待できます。
ウィズコロナ・ポストコロナ社会への対応
新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の生活様式が大きく変化しました。企業はこの「新たな日常」に対応し、業態やビジネスモデルを変えていく必要があります。
自社単体では業態転換が難しくても、M&Aで他社と協働すれば実現できる場合もあるでしょう。今回の税制改正による減税措置は、ウィズコロナ・ポストコロナ社会への対応を促す意味合いもあります。
M&Aの減税措置による中小企業の優遇税制【2021年】
今回の税制改正では、主に以下3つの減税措置が実施されました。この減税は全てのM&Aに適用されるのではなく、計画書を提出して認定を受けた中小企業のみが対象となります。
【M&Aの減税措置による中小企業の優遇税制】
- 設備投資減税
- 人材投資減税
- 経営資源集約化税制
設備投資減税
M&Aを行う前は、売り手側・買い手側がそれぞれ独立した仕入れ・製造販売システムを持っていますが、M&A後はそれを統一して効率化を目指します。両社が持っている技術やノウハウを融合して、新商品の開発を目指すこともあるでしょう。
これらの目標を実現するためには、設備投資にしっかりとお金をかけることが不可欠です。しかし、買収に多くの資金を投入したために、設備投資にお金をかけられないケースも多くみられます。
2021年度税制改正大綱に盛り込まれたM&Aの設備投資減税は、M&Aの効果を高める目的で行う設備投資に対して減税を行い、よりシナジーの高いM&Aを促す制度です。
具体的には、設備投資に投じた額の10%(または7%)を税額控除、または全額を即時償却できます。
人材投資減税
M&Aを成功させるには、技術やノウハウの共有、顧客や販売網の統合に加えて、売り手側企業の従業員をうまく買い手側企業になじませることが重要です。
売り手側企業の従業員がM&Aに反発して離職してしまい、M&Aが失敗するのはよくみられるケースですが、こうした失敗を回避するには、給与面の待遇をよくすることが効果的です。
M&Aにともなって新たな人材を雇い、シナジー効果の獲得を目指すこともあるでしょう。2021年度税制改正大綱に盛り込まれた人材投資減税は、人材に対する投資を行いやすくするための制度です。
給与などの支払総額が前年比1.5%または2.5%以上増えた場合、増加分の15%または25%をそれぞれ税額控除できます。
経営資源集約化税制
M&Aでは、買い手が売り手の財務をよく把握しないまま買収したために、買収後に問題が発覚してトラブルになることも少なくありません。
特に、簿外債務や偶発債務といった隠れ負債は、M&A後に発覚すると大きな損害です。こういったトラブルを防ぐために、M&Aでは締結前にデューデリジェンスを行い、隠れ負債がないかあらかじめ調査します。
しかし、隠れ負債は調査して全てわかるものではなく、売り手企業自身が把握しきれていなかったり、なかにはM&Aを成立させるために負債を隠したりする売り手もいます。
こういったリスクがあると、たとえ魅力的な売り手企業があったとしても、買い手としてはM&Aの実行を躊躇してしまうでしょう。2021年度税制改正大綱に盛り込まれた経営資源集約化税制は、隠れ負債などM&Aのリスクを軽減するための制度です。
この制度では、買収費用の最大70%を準備金として損金算入し、M&A後に隠れ負債が発覚した場合は準備金で補填します。これなら簿外債務が発覚しても買い手が損をしないので、M&Aを行いやすくなるでしょう。
準備金の期限は5年間で、5年間準備金が使われなかった場合は、6年目から5年間かけて20%ずつ益金算入して取り崩します。
その他の税制改正の一例
この章では、その他の税制改正の一例について見ていきましょう。
現在、中小企業におけるM&A・事業承継の滞りや新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、税制の適用期限における延長の検討が行われ、利用できる税制が追加されたり支援対象が拡充されたりしています。
進められている税制改正案の一例として、「地域未来投資促進税制の拡充と延長」があります。これは、適用期限を2年間延長し、
地域経済のサプライチェーン強化に資する事業を支援対象に広げるものです。
「中小企業防災と減災投資促進税制の拡充と延長」も税制改正案の一例で、適用期限を2年間延長し、対象設備の追加(感染症対策のサーモグラフィなど)といった内容になっています。
M&Aで活用できる節税対策
この章では、M&Aで活用できる節税対策について見ていきましょう。
役員退職金の活用
役員退職金の活用は、M&Aで活用できる節税対策です。売却側が対象会社の株式を有して対象会社の役員を務めているケースでは、役員退職金を生かして所得税を減らせます。
M&Aを行う前に対象会社が売却側の役員へ役員退職金〇円を支払い、合意したM&Aの対価△円から役員退職金〇円を引いた金額でM&Aを行う流れです。
役員退職金を支払うと、現金が社外へ流れるので、その分企業価値が減ります。売却側は最初に退職金を得ているので退職所得を得て、その後、株式売却益を獲得しているので譲渡所得を得ています。株式譲渡にかかる所得の税率は20.315%ですが、退職所得が大きくなるようにし、節税を図るのです。
役員退職金を多くするケースでは、株式譲渡所得よりも税金が大きくなる場合もあるので、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
M&A・組織再編における税制適格要件のクリア
合併や会社分割でM&Aや組織再編を行う際には、税制適格かどうかに分けられます。税制適格要件をクリアすると、資産や負債を帳簿価格で引き継ぐことができ、売却損益が発生しないため、課税されません。このようなM&Aでは、節税のために税制適格の方法がよく使われます。
一方、税制適格要件を満たさないM&Aは、非適格吸収合併などと呼ばれます。税制非適格の場合、資産や負債を時価で引き継ぐため、売却損益が発生して課税されます。
税制適格のM&Aや組織再編には、適格新設合併、適格吸収合併、適格吸収分割、適格新設分割、適格株式交換、適格株式移転などがあります。
法人株主の節税方法
法人株主の節税方法は、文字通り、法人株主に限ったM&Aで活用できる節税対策です。
法人株主が、子会社株式や投資有価証券を売却するケースがあります。この場合、株式売却による売却益が生じるタイミングと、多くの経費を計上するタイミングを合わせることで、法人税などを節税できるでしょう。
M&Aの減税措置に関する相談先
税制改正によるM&Aの減税措置を活用してM&Aを行いたいとお考えの際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。
M&A総合研究所では、経験の豊富なM&Aアドバイザーが、親身になって案件をフルサポートいたします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
M&Aの減税措置に関して無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
M&Aの減税措置まとめ
2021年度の税制改正により、M&Aに関するさまざまな減税措置が実施されました。今後はこれらの減税措置の内容を把握し、効果的にM&Aを実施していくことが重要になるでしょう。
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