2022年6月7日更新会社・事業を売る

企業再生ファンドとは?仕組み、事例、一覧や業務内容を解説

企業再生ファンドは、投資家から集めた資金を用いて経営不振に陥った企業の立て直しを行い、事業再生を通じて多額の利益を得ることから「ハゲタカ」とも呼ばれています。企業再生ファンドの仕組みや、M&A・IPOの関係、企業再生ファンドの主要企業などを解説します。

目次
  1. 企業再生ファンド
  2. 企業再生ファンドとは
  3. 企業再生ファンドの仕組み
  4. 企業再生ファンドの事業承継支援
  5. 企業再生ファンドの業務内容や年収
  6. 企業再生ファンドの一覧
  7. 企業再生におけるハゲタカファンド
  8. まとめ
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企業再生ファンド

株式に投資するファンドは、ベンチャーキャピタルだけではなく、バイアウトファンドや企業再生ファンドも、株式投資を行うファンドの一種です。「ハゲタカ」とも呼ばれる企業再生ファンドは、事業再生を通じて多額の利益を獲得します。

この記事では、企業再生ファンドの実態を分かりやすくお伝えします。

企業再生ファンドとは

まず最初に、企業再生ファンドとはどのようなものなのかをご説明します。企業再生ファンドとは、投資家から集めた資金を用いて、経営不振に陥った企業の立て直しを行うファンドです。民間の企業再生ファンドのみならず、国が運営する「地域経済活性化支援機構」も企業再生ファンドの一種です。

未公開企業に投資する場合は、広義の意味で「プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)」に含まれます。プライベート・エクイティ・ファンドには、他にも「ベンチャーキャピタル」や「バイアウトファンド」などがあります。

各投資対象企業再生ファンドは経営不振の企業に投資する一方、ベンチャーキャピタルは設立したての企業、バイアウトファンドはある程度軌道に乗り出した企業を投資対象としています。企業再生ファンドは、投資する対象がベンチャーキャピタルやバイアウトファンドとは異なります。

投資リスクが高く適切な判断力が必要

企業再生ファンドの投資対象となるのは、経営不振に陥っている企業が対象となり、本来であれば投資の対象から外れる先へ投資することになります。つまり、投資リスクが通常の投資よりも高いということであり、適切な判断力が求められます

しかし、単に経営不振に陥っているという理由だけで投資先を選択したのでは、投資リスクだけが高くなってしまうことになります。そのため、その判断を支えることになる専門的な知識も必要となるのです。

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地域経済活性化支援機構(企業再生支援機構)とは

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企業再生ファンドの仕組み

企業再生ファンドは、経営不振の企業に投資して、どのように利益を獲得しているのでしょうか?ここでは、企業再生ファンドの仕組みについてご紹介していきます。

まず、企業ファンドは投資家から集めた資金を用いて、再生の可能性が高い企業を選別し、その会社の株式を割安で購入します。投資対象となるのは、新規事業の失敗や債務超過などに陥って企業経営が厳しくなっている会社であり、以下のような企業価値の高い会社が選ばれやすいようです。

  • 本業の収益力が高い
  • 優れた技術やノウハウを持っている

細やかな調査により、再生の可能性が高いと判断されると、その会社の株式を購入し、不採算事業の売却や専門家の派遣・コスト削減を通じて企業価値の増大を図ります

状況に応じた再生方法を実行する

事業再生に際しては、主に以下の2つの再生方法があります。

  • ターンアラウンド
  • ワークアウト

まず、「ターンアラウンド」というのは、事業を方向転換させて再生を図る方法です。一方で「ワークアウト」は、リストラやサイジングによって再生を図る方法であり、どちらの方法を用いるかは、ケースごとに判断します。

そして、事業再生の達成により、十分に企業価値が上昇した時点で、企業再生ファンドは株式公開やM&Aにより、エグジットを実施します。企業価値の向上に伴い、株価も当初より上昇しているため、M&Aや株式公開により多額の売却益を獲得できます。

最後に、獲得した株式の売却益の中から、投資家に利益を還元するというのが企業再生ファンドの仕組みです。なお、企業再生にはM&Aが関係することも少なくありません。

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M&A投資と投資ファンドの役割

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企業再生ファンドの事業承継支援

事業承継は、経営者自身で実行することもありますが、M&A仲介会社などにサポートしてもらうことが少なくありません。ここでは、企業再生ファンドから見た事業承継に関して解説します。

(1)企業再生ファンドから見た事業承継の類型

企業再生ファンドでは、主に「攻撃型」と「防衛型」という2種類の事業承継に取り組んでいます。「攻撃型」の事業承継とは、株式公開(IPO)やM&A等、さらなる成長を目指すために行う事業承継です。大手企業の傘下に入り、安定的な経営資本のもとで自社のみでは実現できない成長を図ります。

一方で「防衛型」の事業承継とは、経営者が高齢であるにも関わらず後継者が見つからない企業が、会社を維持するために行う事業承継です。後継者が存在しないため、第三者へのM&Aにより事業承継を図ります。

その企業が廃業することで、サプライチェーンに悪影響が生じ得る場合には、企業再生ファンドが積極的に介入します。

(2)企業再生ファンドに事業承継をサポートしてもらうメリット

企業再生ファンドに事業承継をサポートしてもらうメリットには、以下の2つあります。

  • 事業承継と再生を同時に実現できる
  • M&A側の事業承継にも対応できる
では、これらのメリットについて、具体的な効果を見ていきましょう。

①事業承継と再生を同時に実現できる

企業再生ファンドの本業は、経営不振に陥っている事業を再生させることであり、事業の再生に事業承継が必要と判断されると、それについてもサポートしてくれます。そのため、企業再生ファンドを起用すれば、質の高い事業再生のノウハウを用いて、事業承継と再生を同時に実現できるのです。

②M&A側の事業承継にも対応できる

企業再生ファンドは、M&Aの買い手とのネットワークを豊富に持っています。企業再生ファンドに依頼すれば、後継者不在の企業でも買い手を見つけやすくなりますので、事業再生と同時に依頼しても、スピーディーに対応してくれます。

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事業承継とは?方法や事業承継税制・補助金、M&Aでの活用について解説

企業再生ファンドの業務内容や年収

ここで、企業再生ファンドに就職したい方に対し、企業再生ファンドの業務内容や年収についてご紹介します。

(1)企業再生ファンドの業務内容

企業再生ファンドの主な業務内容は、以下の3つです。

  1. 投資案件の開拓
  2. エグゼキューション(バリュエーションやデューデリジェンス)
  3. 事業再生
まずは、これらの具体的な業務内容を見ていきましょう。

①投資案件の開拓

いくら企業再生ファンドといえども、基本的には投資銀行やコンサルティングファーム、銀行などから投資案件を紹介してもらいます。しかし、すべての案件が紹介というわけではありません。企業が公開している情報や財務状況を確認し、自ら投資の提案を行う場合もあります。

投資実行までには数年間かかるケースもあるため、根気強い説得が必要となります。

②エグゼキューション(バリュエーションやデューデリジェンス)

企業再生ファンドが行う業務には、エグゼキューションというものがあります。このエグゼキューションとは、バリュエーションやデューデリジェンスのことをいい、バリュエーションとは、投資先の企業価値を算出することであり、企業の将来性や資産価値などを考慮します。

デューデリジェンスとは、ビジネスや財務、法務などの観点から、相手企業のリスクを洗い出すことです。これにより、簿外債務などのリスクがないかをあらかじめ把握することができます。

③事業再生

投資案件の開拓をし、その後にエグゼキューションを経て実際に投資をし、そこから本来の目的である事業再生に向けて、経営戦略の再構築や財務状況の改善を行います。企業再生ファンドが利益を得るうえで、この業務がとくに重要な業務となります。

(2)企業再生ファンドの年収

企業再生ファンドの年収は、平均で800万円~1,600万円程度と言われています。数あるファンドの中でも、結果次第で年収が大きく変動するのが特徴です。そのため、事業再生を数多く成功させれば、年収が2,000万円を超える可能性もあります。

※関連記事

事業承継ファンドの活用とメリット・デメリット

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企業再生ファンドの一覧

ここでは、企業再生ファンドの売上高や成約件数などのランキングを考慮し、とくに有力なファンドを3社ご紹介します。

コールバーグ・クラビス・ロバーツ

コールバーグ・クラビス・ロバーツは、世界三大PEファンドの一つと言われている会社であり、ヘッジファンドや不動産投資も手がけています。アメリカのニューヨークに拠点を置くこのファンドは、レバレッジド・バイアウト(LBO)による買収を得意としています。

人気小説「ハゲタカ」では、悪役ハゲタカファンドとして登場したことでも有名です。

RHJインターナショナル(旧リップルウッドホールディングス)

リップルウッドは、現在ではRHJインターナショナルとなっていますが、1995年にアメリカのニューヨークで設立された企業再生ファンドです。リップルウッドは日本でも活動した時期があり、日本テレコムや日本コロムビアなどの買収や売却に携わったことで一躍有名となりました。

ブラックストーン

ブラックストーンは、前述したコールバーグ・クラビス・ロバーツと並んで、世界最大級の企業再生ファンドです。企業再生の業務のみならず、M&Aアドバイザー業務などにも裾野を広げています

※関連記事

LBOとは?仕組みやスキーム、メリット・デメリットや事例をわかりやすく解説

 

企業再生におけるハゲタカファンド

企業再生ファンドは、日本では「ハゲタカファンド」とも呼ばれています。ここでは、企業再生におけるハゲタカファンドの意味と事例をお伝えします。

(1)ハゲタカファンドとは?ハゲタカファンドの意味

企業再生ファンドは、なぜ「ハゲタカファンド」と呼ばれているのでしょうか?その理由は、経営が悪化している企業を安値で買い叩く姿が、禿鷹(ハゲタカ)を連想させるからです。その呼ばれ方から悪役として見られがちのハゲタカファンドですが、事業再生のノウハウや分析力は素晴らしいです。

(2)ハゲタカファンドによる企業再生の事例

ここで、ハゲタカファンドによる企業再生の事例を4つ見ていきましょう。

事例①:銀行からの債権買収

バブル崩壊後の1990年代、ハゲタカファンドによる企業買収が活発化しました。平成の不景気の中で各銀行がバルクセールを行った際には、「ローンスター」や「サーベラス」が銀行から債権を買収しました。外資系のファンドによる企業再生の事例は多く存在しますが、近年は少なくなりつつあります。

今後の景気次第では、ハゲタカファンドの活動が再び活性化する可能性もあります。

事例②:役職員によるMBO

とある会社(A)の役職員が、MBO(自社株などの買収により独立する手法)を行うことを目的とし、「リサ・パートナーズ」がサポートした事例です。まず最初の段階として、会社(A)の役職員による出資会社(B)を設立。その後、金融機関から買収に必要な資金を借入しました。

しかし、金融機関からの借入だけでは買収資金をすべて用意することができなかったことから、リサ・パートナーズも融資を行い、最終的には役職員出資の会社(B)と既存の会社(A)が合併して、MBOが完了となりました。

事例③:老舗企業の再生支援

こちらも、リサ・パートナーズが行った事例です。再生対象となった会社は老舗の企業であり、その会社は大口の取引先との契約が打ち切りになったことから業績が悪化したことで、老舗企業のメインバンクから再生の依頼がありました。

再生にあたり、当面の運転資金のためにまずはリサ・パートナーズがDIPファイナンスによって資金繰りを安定させ、そのうえでシナジー効果が見込める買い手を探し、無事に売却が成功して、老舗企業の再建が完了となりました。

事例④:資金供給と再生支援計画のサポート

この事例で再生支援対象となった企業は、リーマンショックによって業績が悪化したことで、資金繰りに困窮していました。これもリサ・パートナーズが携わった事例であり、メインバンクの継続的な支援を受けつつ、リサ・パートナーズがDIPファイナンスにより運転資金の供給を行いました。

資金繰りが安定したところで、再生計画の策定や金融機関からの合意、実際の再生支援開始までをサポートした事例です。

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MBOを活用した事業承継

まとめ

今回は、企業再生ファンドについて解説しました。「ハゲタカ」とも呼ばれる企業再生ファンドは、投資家から集めた資金を用い、不採算事業の売却などの手法を使って経営不振に陥っている企業の立て直しを図るファンドです。

キャピタルゲインを目的とした単純な投資ではなく、適切な判断力と専門的な知識をもとに、再生によって企業価値や株価を高くし、その後に売却をするという投資なため、成功した際の利益は非常に大きくなります。では最後に、この記事の要点をお伝えします。

企業再生ファンドに事業承継を支援してもらうメリット 事業承継と再生を同時に実現でき、M&A側の事業承継にも対応可能
企業再生ファンドの業務内容 ・投資案件の開拓
・エグゼキューション(バリュエーションやデューデリジェンス)
・事業再生
企業再生ファンドの年収 平均800万円~1,600万円程度(結果次第で大きく変動)
企業再生ファンドのランキング(一覧) 1.コールバーグ・クラビス・ロバーツ
2.RHJインターナショナル(旧リップルウッドホールディングス)
3.ブラックストーン
企業再生におけるハゲタカファンドとは 経営が悪化している企業を安値で買い叩く姿が禿鷹(ハゲタカ)を連想させることから「ハゲタカファンド」と呼ばれている

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