2022年10月21日更新資金調達

事業再生ファンドとは?用語の意味を解説

事業再生ファンドとは、中小企業再生ファンドとも呼ばれる投資事業有限責任組合です。この記事では、事業再生ファンドについて、事業再生ファンドの組織構成や支援内容、メリットやデメリット、用語の意味などを解説するので、参考にしてください。

目次
  1. 中小企業経営と事業再生ファンド
  2. 事業再生ファンドとは
  3. 事業再生ファンドの組織構成
  4. 事業再生ファンドの支援内容
  5. 事業再生ファンドの支援プロセス
  6. 事業再生ファンドのメリットとデメリット
  7. 事業再生ファンドのまとめ
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中小企業経営と事業再生ファンド

中小企業経営と事業再生ファンド

会社経営を潤沢な自己資金で行っている企業は、上場企業を含めてもごくわずかしかありません。特に一定規模の中小企業や、先行投資型事業を行っている中小企業の場合、運転資金がショートしやすく、経営が維持しきれずに泣く泣く廃業に追い込まれる会社もあります。

しかし、その中には、財務面さえうまく機能すれば、事業そのものにはある程度の展望が描ける会社も数多く含まれています。そこで昨今は、事業発展に可能性を残している中小企業に対し、資金的な支援や経営改善支援を実施して再生を図る制度が導入されるようになりました。

それが、官民連携ファンドである事業再生ファンドです。本記事では、中小企業の経営支援策である事業再生ファンドの詳細に迫ります。

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事業再生ファンドとは

事業再生ファンドとは

事業再生ファンドとは、投資事業有限責任組合であり、中小企業再生ファンドとも呼ばれます。事業再生ファンドは、中小企業への支援を行う前提で金融機関や地方公共団体から出資を受けており、その出資金を、該当の中小企業が再生するための経営資金となるよう事業再生ファンドが支援として投資しているのです。

投資の体裁は、株式取得か金銭債権などになります。つまり、中小企業の支援名目ではありますが、ファンドとしての投資事業という側面もあるのです。したがって、支援を受けた中小企業の経営が回復した場合、金銭債権であれば企業側は、その利益によって事業再生ファンドに返済をします。

事業再生ファンド側が株式を取得していた場合は、株式を転売し株式公開実施後の株売却をもって、報酬と成します。いずれにしても、経営に苦しむ中小企業側としては、支援を受けたいと思うでしょう。

しかし、事業再生ファンドは、全ての中小企業が簡単に利用できるわけではありません。対象となるのは、事業そのものは十分な利益を得られるはずが、債務などで資金難となったために業績が危うくなっている会社です。

その判定をくだすのは、事業再生ファンド側です。すでに手の施しようがないレベルと判断されれば、事業再生ファンドの支援投資対象にはなりません。

投資ファンドとは

ファンドには、先述した再生ファンドだけでなく、投資ファンドなどがあります。企業の譲り受けなどにより企業の経営にかかわり、対象企業の企業価値を高めることを目的とするファンドが、投資ファンドです。企業価値を高め、配当や株式の譲渡益を得ることがメインの目的です。

再生ファンドは、経営不振や経営破綻の企業をメインに投資しますが、投資ファンドの対象は経営不振の企業だけではありません。投資対象の主な企業を非上場企業とするケースでは、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)といいます。

ハゲタカファンドとは

株式などの資産を安く買い叩き、高値で売却するファンドの通称が、ハゲタカファンドです。他者から利益を奪うイメージがあるので、ハゲタカファンドといいます。

経営不振や経営破綻の企業への投資にもよく見られるでしょう。

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事業再生ファンドの組織構成

事業再生ファンドの組織構成

事業再生ファンドは、投資事業有限責任組合として組成されています。そこには出資者=組合員がいますが、組合員には無限責任組合員(GP=General Partner)と有限責任組合員(LP=Limited Partner)の2種類があります。

無限責任組合員は、業務執行組合員とも呼ばれ、事業再生ファンドにおける債務について、自分の出資額とは関係なく無限で弁済責任を負う組合員です。大概は投資専門会社が就任します。その責任性ゆえ、対象中小企業に対してさまざまな経営支援業務を直接行います。

有限責任組合員は、弁済責任を負う金額が自分の出資額分だけの組合員です。事業再生ファンドでは、地域の金融機関、信用保証協会、事業会社、地方公共団体、独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資して組合員となっています。

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事業再生ファンドの支援内容

事業再生ファンドの支援内容

事業再生ファンドの主たる支援内容は、投資としての資金提供だけではありません。事業再生ファンド側としても、投資が成功する確率を高めるため、該当の中小企業に対し、でき得る限りの支援を準備して実行します。

事業再生ファンドは、ケースごとに条件はさまざまであり、行われる支援内容も異なります。ここでは、一般的な事業再生ファンドでよく見受けられる4つの支援内容について、具体的に見ていきましょう。

①再生計画の策定

会社経営は、一度不安定な状況に陥ってしまうと、再生は難易度も高く時間もかかります。そこで、事業再生ファンドは中小企業再生支援協議会と連携し、具体的な再生計画を立てます。中小企業再生支援協議会とは、各都道府県に設置されている国の公的機関です。

中小企業診断士や公認会計士などの専門家を交え、該当企業の現状把握・分析を行い、再生までの道筋を立てます。事業再生ファンドから資金を得ても、今までの経営の仕方を繰り返すのであれば、再生はあり得ません。

再生計画の策定にかかわった専門家とは、いつでも話ができる環境にあります。過去の経営でどこに問題があったのか、何を改めなくてはいけないのか、行ってはいけないことは何なのかなど専門家の意見に耳を傾け、常時アドバイスを受ける姿勢が必要です。

②資金支援

再生計画が決定したら、それに紐づいた資金が投資されます。その際、事業再生ファンドは投資の代償として、対象企業が発行した株式を買い取ったり、新株予約権を引き受けたりするなどの方法を取るのです。

投資された資金は、再生計画で定められた使い道に沿って用います。

③債権買い取り

前述の運転資金提供ではなく、該当企業の債務先から、その債権を買い取ることで投資の代わりとします。あるいは、運転資金提供と合わせて債権買い取りもするケースもあるでしょう。どちらになるかは、該当企業の経営状態次第です。

債務から解放されれば、事業収益だけで十分に経営が再生される見込みがあれば債権買い取りだけとなり、債務がなくなっても当面の運転資金が必要であれば、両方が実行されます。

④ハンズオン支援

経営が窮地に陥っている中小企業の場合、その経営手法において何らかの問題点があるものの、それが何であるか経営陣が気づけていない可能性があります。そうなると、せっかくの再生計画があっても、その遂行過程で適切な行動が取られないかもしれません。

そこで、事業再生ファンドでは、経営の補佐役・アドバイザーとなる人材をその会社に常駐させる支援行動を実施することもあります。それがハンズオン支援です。ハンズオン支援では、場合により、送り込む人材を経営陣の一員とさせることもあります。

⑤M&Aによる事業再生

事業再生ファンドでは、該当企業の経営体制を抜本的に改革するため、M&Aを促し実行させることもあります。その場合に最も多く用いられるM&A手法は、事業売却です。該当企業が多角経営として複数の事業を行っているとき、その中に不採算部門があれば経営を圧迫します。

そこで、その不採算部門を事業売却して、該当事業資産を換金化しつつ、主力事業への経営資源の集中化を図り、事業再生への道を歩ませる意図で実施されます。

M&Aは事業再生、企業再生の観点でも活用できる経営手法ですが、実施する際は専門知識も必要になるため、M&A仲介会社に相談するとよいでしょう。

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事業再生ファンドの支援プロセス

事業再生ファンドの支援プロセス

事業再生ファンドにおける、具体的な経営支援のプロセスについて紹介します。一般的なモデルケースとして、事業再生ファンドに案件が持ち込まれる段階のところから、順を追って見ていきましょう。

①中小企業再生支援協議会への相談

経営困窮状態にある中小企業自身、またはその中小企業に融資を行っている金融機関などから、中小企業再生支援協議会に対し経営支援の相談が持ち込まれます。事情詳細を聞いた中小企業再生支援協議会は、事業再生ファンドに案件候補として紹介します。

そして、事業再生ファンド内で出資している組合員による協議を経て、事業再生経営支援を実施する対象企業が決められるのです。

②調査と計画

事業再生支援を実施するには、再生計画の策定が必要です。そのために、会社の現状、経営が不安定になった原因などを細かく追求する調査が行われます。この調査プロセスをデューデリジェンス(Due Diligence)と呼びます。

デューデリジェンスは、M&Aでも使われる用語です。M&Aも一種の投資行為ですから、対象企業について入念に調査を行いましょう。M&Aでも事業再生ファンドでも、デューデリジェンスは公認会計士、中小企業診断士その他の専門家が徹底的に調査を実施します。

調査内容に基づき、該当企業の再生計画が策定されます。

③再生計画の実行

次は、策定した再生計画の遂行です。合わせて、投資資金の投入や債権買い取りなども行われます。各プロセスのチェックは、無限責任組合員である投資会社が逐一行い、計画が問題なく進捗しているか、入念に管理します。

④再生計画の完了

対象企業が再生計画の着地点に無事到達すれば、再生計画は完了です。この再生計画によって得られた利益が事業再生ファンドに分配されます。計画が予想に反して進まなかった場合は、新たな事業再生責任者に受け継がれ、継続して事業再生が行われる可能性もあるでしょう。

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事業再生ファンドのメリットとデメリット

事業再生ファンドのメリットとデメリット

経営に窮している中小企業にとっては、救いの神のような事業再生ファンドです。しかし、そこにはメリットもありますが、デメリットもあります。この章では、事業再生ファンドのメリット、デメリットの具体的な内容を見ていきましょう。

事業再生ファンドのメリット

事業再生ファンドが適用されたときに得られるメリットは、信用保証協会の協力を得られることです。通常、業績が悪い企業であれば、信用保証協会とのつながりが生まれる可能性は、まずありません。

しかし、事業再生ファンドの出資者である信用保証協会は、当事者として該当企業になります。再生計画の実行中も、場合によっては再生がかなった後も、保証協会との関係性があることによって、経営上の資金繰りで優位なサポートを受けられるポジションを得られるのです。

事業再生ファンドのデメリット

事業再生ファンドのデメリットは、業績回復後の投資の回収方法にあります。具体的な投資実行方法として株式の取得を行っている場合、事業再生ファンド側としては、投資の回収方法は株式を売却するしかありません。

対象企業側が事業再生ファンドの望む価額で株式を買い戻せればいいですが、それが不可能であれば、株式は転売されます。相当の比率となる株式の売却は、その後の経営方針を大きく左右するので、状況次第では大きなデメリットといわざるを得ません。

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事業再生ファンドのまとめ

事業再生ファンドのまとめ

事業再生ファンドが経営支援先に選ぶのは、事業そのものの収益性には十分な力があると判断された企業のみです。逆にいえば、本業が全くの不振といった企業では再生支援が得られません。資金難による苦し紛れの相談では、無駄足となるでしょう。いかなるときも、本業をしっかり行うことが肝要です。

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