2020年8月12日公開会社・事業を売る

M&A、事業承継における内部監査の役割とは?不正リスク低減と係争回避

内部統制・内部監査とは、会社が組織的に機能するために必要なルールや仕組みのことです。日常的な経営はもちろんのこと、M&Aの実行の際も組織としての地盤がとても重要になります。本記事では、M&A・事業承継における内部統制・内部監査の役割を解説します。

目次
  1. 内部統制・内部監査とは
  2. 中小企業が内部統制・内部監査を持つ意義と準備
  3. M&A、事業承継における内部監査の役割とは?
  4. M&A、事業承継において内部統制が担う役割
  5. 内部統制・内部監査による不正リスク低減
  6. 内部統制・内部監査による係争回避
  7. 内部統制・内部監査はM&A、事業承継後も重要
  8. まとめ
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内部統制・内部監査とは

内部統制・内部監査とは

内部統制・内部監査とは

内部統制・内部監査は、会社を適切に運営するために必要な仕組みのことです。中小企業においてはあまり必要性がないものですが、会社の規模が大きくなるにつれて重要性は増していきます。

会社の健全な経営に必要なものですが、実はM&A・事業承継のシーンにおいても欠かすことができません。不正リスク低減や係争回避などにより、適正なM&A取引を実現させやすくなります。

本記事では、M&Aを検討している方に向けて、内部統制・内部監査の概要やM&A・事業承継における役割について詳しく解説します。

内部統制とは

内部統制とは、会社を組織的に機能させるためのルール・仕組みのことです。経営者の主導により全社員共通のルールを制定することで、会社が一丸となって事業活動を行えるようになります。

ルール・仕組みと聞くと難解な印象を受けますが、書類チェックにおける見落とし防止のダブルチェックや、情報伝達が正しく行えているかの確認作業など、業務効率を底上げするための細かな取り決めの集合体です。

特に注目されるポイントは、構成する目的と要素です。適切に機能させるために、以下のものの全てを取り決めた上で実行しなくてはなりません。

【内部統制の目的】

  1. 業務の有効性及び効率性・・・業務の効率化を図り、収益性を向上させる仕組みの構築
  2. 財務報告の信頼性・・・財務諸表に深く影響する情報の信頼性の確保
  3. 法令等の遵守・・・事業活動に関わる法律の遵守の促進
  4. 資産の保全・・・資産を適切に管理し、保全を図る仕組みの構築
【内部統制の要素】
  1. 統制環境・・・会社の健全な運営のために、経営者及び従業員の意識を高めること
  2. 統制活動・・・経営者が示す目的を確実に実行するだけのプロセスが存在していること
  3. リスクの評価と対応・・・内部統制の目的の達成を阻害するリスクへの対応
  4. 情報と伝達・・・内部統制実行のために必要な情報を関係者に伝達する仕組みの確立
  5. モニタリング・・・内部統制が機能しているかチェック(内部監査)すること
  6. IT対応・・・事業活動に必要なIT分野への対応やその準備

内部監査とは

内部監査とは、組織内部の者による機能チェックのことです。内部統制を構成する6つの要素の中の「モニタリング」に該当しており、健全な事業活動を行う上で欠かすことができないものです。

特に注目される点は、客観的な立場によるチェックが行われるという点です。自主的な監査のみだと情報の粉飾やチェック事項の見逃しなどのリスクが想定されるため、内部の人間が他の部署から独立した立場で監査することが求められています。

基本的に任意の監査とされていますが、2006年の会社法の改正により、上場企業は内部監査の設置が必須となりました。会社としての規模が大きくなると、業務上の不正防止や業務の効率化のための内部監査の重要性が増すためです。

中小企業が内部統制・内部監査を持つ意義と準備

中小企業が内部統制・内部監査を持つ意義と準備

中小企業が内部統制・内部監査を持つ意義と準備

上場企業は内部監査の設置が義務付けられている反面、中小企業は監査の設置は任意とされています。経営者が不要と判断すれば設置する必要はないのですが、中小企業にとっても内部統制・内部監査は重要性が高いものです。

中小企業における内部統制・内部監査の重要性とはどのようなものなのでしょうか。この章では、中小企業が内部統制・内部監査を持つ意義と準備について詳しく解説します。

中小企業が内部統制・内部監査を持つ意義

中小企業が内部統制・内部監査を持つ意義は、組織的な仕組み作りをして業績の向上を図るためです。内部統制・内部監査で組織的な仕組み作りができれば、営業や資金繰りなど、あらゆる面で業務を効率化させることができます。

特に中小企業は経営者の力量に強く影響される傾向が強いです。経営者による一貫した方向性は大切ですが、個人に依存しすぎる属人的な体制だと社内全体の機能低下を招く可能性があるので、内部統制で組織的に機能させる必要があります。

また、内部統制を実行している企業は、財務面における信頼性を確保できるというメリットも大きいです。M&Aにおいては会社の財務面が重要視されるので、内部統制・内部監査によって保証された財務データの信用性は会社の価値評価に直結します。

中小企業が内部統制・内部監査を持つ準備

中小企業が内部統制・内部監査を持つ準備は、複数の社員で業務を分担させることから始めます。特定の業務における個人個人の比重が大きくなると、どうしても見落としなどのミスが多くなってしまいます。

内部統制の一環として、複数人で業務を共有するとダブルチェックの実施や財務面の透明性の確保など、見落としや不正を未然に防ぐ効果を期待できます。

また、M&A・事業承継のための内部統制・内部監査の場合は、内部統制計画の策定も重要です。M&A・事業承継のタイミングに合わせて内部統制・内部監査を進めていく必要があるので、通常よりも綿密に計画を進めていかなくてはなりません。

会社の規模次第では、数年単位の時間がかかることも珍しくありません。M&A・事業承継の時になって慌てないためにも、早期から内部統制・内部監査に着手しておくことが大切です。

M&A、事業承継における内部監査の役割とは?

M&A、事業承継における内部監査の役割とは?

M&A、事業承継における内部監査の役割とは?

M&A・事業承継における内部監査の役割は、ビジネスアドバイザーとしての情報提供です。内部統制の機能が働いていることを証明するために、独立性と客観性に長けた内部監査による情報を活用します。

この時の内部監査の具体的な役割は買収側と売却側で異なります。内部監査には内部統制の機能チェックという共通した目的はありますが、それぞれの役割の違いについてみていきます。

買収による内部監査の役割

買収による内部監査の役割は、M&A買収のプロセス策定です。買収対象の選定プロセスの評価や企業価値の創造のための経営陣の取り組みなどを通して、企業の成長ビジョンとの整合性があるかをチェックすることができます。

また、デューデリジェンスによるリスク調査の役割もあります。財務や人事などの面からリスク調査を行いつつ企業価値を算定して、買収対象を取得することで得られるシナジー効果を正確に判定します。

買収側の内部統制が適切なものでなかった場合、内部監査によって潜在的リスクを正確に把握することができます。M&A後に不要なリスクを抱え込むことがなくなるので、重要な役割であるといえます。

【関連】買収監査(デューデリジェンス)とは?意味やM&Aでの活用、必要書類を解説

売却による内部監査の役割

売却による内部監査の役割は、企業価値が損なわれるリスクの低減です。M&Aによる売却タイミングに合わせて内部統制に影響する潜在的リスクを洗い出すことで、企業価値を損なうことなく、M&Aの売却に臨むことができます。

また、M&A交渉中における内部統制の変化にも対応することができます。交渉中に何かしらの要因で会社の価値が変動すると交渉が滞ったり破断したりするリスクがありますが、内部監査であればリスクと統制の評価によって柔軟に対応することが可能です。

M&A、事業承継において内部統制が担う役割

M&A、事業承継において内部統制が担う役割

M&A、事業承継において内部統制が担う役割

M&Aが企業の経営戦略の一環として広く浸透しつつある今、内部統制による組織的な仕組み作りが強く求められています。

この章では、M&A・事業承継における内部統制が担う役割を、「不正リスクの低減」と「係争の回避」の二つに焦点をあてて解説します。

不正リスクの低減

M&Aにおける不正リスクとは、買収対象の会社の不正のことを指します。分かりやすい例としては、賄賂による不正な取引関係や反社会的勢力との交友、不透明な資本関係・組織体制などが挙げられます。

こうした関係はM&A買収後も引き継ぐことが一般的です。買収後に発覚して関係を清算するにしても大きなリスクを伴うため、買収側としてはなんとしても避けなくてはならない事態です。

内部統制はこれらの不正リスクを低減させる方法として重宝されています。M&Aの買収段階で発見することができれば、買収の中止や買収後の統合プロセスの検討を計画的にすすめておくことができます。

【関連】M&Aのリスクとは?売り手・買い手のリスクやリスクマネジメント方法を解説

係争の回避

M&Aにおける係争とは、M&Aにおける買収側と売却側が裁判の場で争うことを意味します。争いの争点は、前述の不正リスクを巡ってのものや契約書における各種条項など、多岐に渡ります。

特に契約書においてはそれぞれの定義が曖昧なことで係争に発展することも珍しくありません。内部統制によって細かな取り決めを行っておくことで、係争を事前に回避することができます。

内部統制・内部監査による不正リスク低減

内部統制・内部監査による不正リスク低減

内部統制・内部監査による不正リスク低減

内部統制・内部監査による不正リスクの低減効果を得るためには、適切な手順を踏まなくてはなりません。この章では、不正リスクを低減するためにやるべき事項を解説します。

【内部統制・内部監査による不正リスク低減】

  1. M&A対象会社の現状把握
  2. 潜在的リスクの洗い出し
  3. ガバナンスに関する方針の決定
  4. 内部統制の整備
  5. 内部監査(モニタリング)

1.M&A対象会社の現状把握

内部統制・内部監査によるリスク低減は、M&A対象会社の現状把握から始めます。対象の実態を把握していなければまともにM&A交渉を進めることもできないので、とても重要な工程になります。

M&A対象会社の現状を把握する方法は、専門家の派遣による調査です。相手方から提出されている資料だけでは形だけの内部統制に過ぎませんので、直接確認を取りながら内部統制・内部監査を進めていきます。

2.潜在的リスクの洗い出し

M&A対象会社の実態を把握したら、潜在的リスクを徹底的に洗い出します。各リスクに対応するためには、まず全ての潜在的リスクを把握しなければなりません。

全ての潜在リスクを洗い出したら、高リスクと低リスクに仕分けしてリソースを効率的に配分します。緊急性の高いリスクに関しては多くのリソースを割くことで適切な対応を取りやすくなります。

3.ガバナンスに関する方針の決定

ガバナンスとは、会社が自分自身でルール・仕組みを作り、体制を構築することです。前述の仕分けしたリスクへ対応するために、大まかな方針を決定します。

コンプライアンス(法令)から大きく逸脱するものではありませんが、特に海外M&Aを実行する際は、内部統制・内部監査により独自の判断基準を設けておくことが重要になります。

4.内部統制の整備

続いて、M&A対象会社の内部統制の整備です。自社の定めた方針と対象会社の内部統制が大きく異なるものである場合、内部統制の変更あるいは追加が必要になります。

例えば、対象会社の抱えているリスクがカルテル(自由競争を避けた独占行為)の場合、該当業界の会合への参加に関する取り決めや価格協定などの実態の把握と変更が欠かせません。

5.内部監査(モニタリング)

内部統制における内部監査は、監査の主体を親会社から子会社へ移す方法も検討されています。客観性と独立性の高い子会社からの監査であれば、内部統制を正しく機能させられる可能性が高くなります。

【関連】M&AサポートにおけるM&A仲介業者の役割や売却事例/買収事例をご紹介

内部統制・内部監査による係争回避

内部統制・内部監査による係争回避

内部統制・内部監査による係争回避

M&Aを進めていくと何かしらの問題から係争に発展することがあります。内部統制・内部監査は、係争を回避あるいは係争になった時の備えとして重要な役割を果たします。

この章では、内部統制・内部監査による係争回避のためにやるべき事項を解説します。係争になってしまってからでは取り返しが付かないことも多いので、事前に確認しておきましょう。

【内部統制・内部監査による係争回避】

  1. 契約書の条項に関する定義確認
  2. 係争になった場合の備え
  3. M&A取引価格の調整
  4. M&A取引価格の調整に対する異議申し立て
  5. M&A仲介会社選びが大切

1.契約書の条項に関する定義確認

M&Aの交渉を進めていく上で様々な契約書を締結することになりますが、特に最終的な交渉内容を記載することになる最終契約書においては定義確認を行っておくことが大切です。

また、係争の可能性を下げるためにその都度必要となる定義を差し込むことも検討します。○○を基準に決定するという定義がされていたとしても必ずも明確であるとは限らないため、各条項の定義について精査しなくてはなりません。

2.係争になった場合の備え

内部統制・内部監査により係争回避を徹底していたとしても係争が起こることはあります。係争が起きた場合、M&A交渉に使った資料が重要なポイントになりますが、資料へのアクセス権限がないと閲覧することができず、相手側の不正を証明することができません。

そのため、M&A交渉中やクロージング後における各資料のアクセス権限に関して、事前に明確化させておくことが大切です。

3.M&A取引価格の調整

M&A買収の際は、相手側が抱えるリスクに応じて取引価格の調整を行いますが、係争になった場合は初期に提示した取引価格を覆すことが難しくなることがあります。

係争を不利な状態で進めることになるため、最終的には相手側のリスクを認識しながらも高値掴みしてしまうことになりかねません。係争が起こることを前提として価格調整を進める必要があります。

4.M&A取引価格の調整に対する異議申し立て

取引価格の調整で係争になった場合は、異議申し立てをする側に証明責任が生じます。その際は、取引価格に関連する資料や人が重要になるので、資料へのアクセス権限確認や担当者に対する準備が大切です。

特に資料のアクセス権限については、アクセス権限自体を巡って係争になることもあります。内部統制・内部監査であらゆる可能性を考慮することで、万全の体制でM&Aを実行することができます。

5.M&A仲介会社選びが大切

M&Aを進行する上でとても重要な役割を果たす存在が、M&A仲介会社です。係争になった場合も、仲介人であるM&A仲介会社の主導で証明に使用可能な資料や証言者の特定を行うことが多いです。

内部統制・内部監査を視野に入れたM&Aにおいては、M&A仲介会社に求められる水準は非常に高くなります。M&Aにおける高い専門性や財務に長けた専門家などの条件を満たさなければ、内部統制を取り入れたM&Aの仲介役をこなすのは難しいでしょう。

【関連】M&A実績の豊富な仲介会社

内部統制・内部監査はM&A、事業承継後も重要

内部統制・内部監査はM&A、事業承継後も重要

内部統制・内部監査はM&A、事業承継後も重要

内部統制・内部監査は、M&A・事業承継後のPMI(統合プロセス)においても重要です。内部統制・内部監査により社内のルール作りを徹底することで、M&Aのシナジー効果を最大限に発揮することができます。

M&Aは異なる企業文化で働いてきた従業員同士の衝突が問題になることもありますが、内部統制・内部監査で統一されたルールの下であれば、従業員同士の衝突リスクも抑えることができます。

従業員の流出を避けて定着させることができれば、企業の安定と成長に繋げることができます。内部統制・内部監査でシナジー効果を正しく創出して、結果的にM&A・事業承継が成功する可能性が高まります。

内部統制・内部監査を取り入れたM&Aでおすすめの相談先

内部統制・内部監査を取り入れたM&A・事業承継を検討の際は、M&A総合研究所にご相談ください。公認会計士や経営コンサルに長けた専門家が複数在籍しているので、内部統制・内部監査を適切に行うことができます。

内部監査によりM&A先が抱えている不正リスクを察知して係争回避を徹底します。特に争点になりやすい価格調整においても、M&A経験豊富な公認会計士が適切な企業価値評価を行って徹底的にサポートします。

M&Aで想定される全てのリスクを洗い出した上で適切な対応を図ります。M&Aの成約前から入念に計画を進めておけるので、PMI(統合プロセス)も安心して実行することができます。

料金体系は完全成功報酬制を採用しています。支払う手数料は成功報酬のみなので、M&A進行中に何度も費用が発生することはありません。

無料相談は24時間体制でお受けしています。内部統制・内部監査を取り入れたM&Aなら、M&A総合研究所にご連絡ください。

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まとめ

まとめ

まとめ

内部統制・内部監査は、M&A・事業承継においても重要な役割を果たすものです。内部統制の機能を内部監査でチェックする流れを構築することで、より組織的な仕組みを形成することができます。

内部統制の重要性は中小企業も例外ではありません。内部統制の実施で高めた会社の価値は、M&A・事業承継の際も有利に働くことが期待できます。内部統制に早期から着手しておくと良い結果が得られやすくなるでしょう。

【買収における内部監査の役割】

  • M&A買収のプロセス策定
  • デューデリジェンスによるリスク調査

【売却における内部監査の役割】
  • 企業価値が損なわれるリスクの低減
  • M&A交渉中における内部統制の変化への対応

【内部統制・内部監査による不正リスク低減】
  1. M&A対象会社の現状把握
  2. 潜在的リスクの洗い出し
  3. ガバナンスに関する方針の決定
  4. 内部統制の整備
  5. 内部監査(モニタリング)
【内部統制・内部監査による係争回避】
  1. 契約書の条項に関する定義確認
  2. 係争になった場合の備え
  3. M&A取引価格の調整
  4. M&A取引価格の調整に対する異議申し立て
  5. M&A仲介会社選びが大切

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