M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年12月1日更新会社・事業を売る
M&Aの提案書の作り方!売却を成功させるためのコツ、記載事項を解説
M&Aの提案書はM&A相手と情報交換をする上で大切な資料です。自社の企業価値や強みを伝え、譲受側がM&Aの実施を決断できる情報を提供する必要があります。今回は、M&Aの提案書の作り方と売却を成功に導くためのコツを解説します。
目次
M&Aの提案書とは
M&Aを成功に導くためには、自社とのシナジー効果が見込める譲受企業と出会うことがポイントです。
しかし、数百万社とある企業のなかから候補を絞るのは簡単なことではありません。高いシナジー効果かつ好条件の相手をみつけるためには的確な情報交換が必要です。
その際に重要なポイントになるのがM&Aの提案書です。この章では、M&Aの提案書の種類や必要性について解説します。
M&Aの提案書の種類
M&Aの提案書は「企業概要書」と「提携提案書」の2つに分けられます。いずれも情報提供やM&Aの意思を示すための資料として重要な役割を持ちます。
【M&Aの提案書の種類】
- 企業概要書
- 提携提案書
企業概要書
企業概要書は譲渡企業から譲受企業へ提供する提案書です。企業の詳細な情報を記載して、譲受企業が譲渡企業を譲り受けることで得られるメリットを提示することが目的の資料です。
企業概要書は定められた規格はありませんが、社名・沿革・役員構成などの基本概要や、財務状況・技術・保有設備などの内部情報まで、幅広く記載することが一般的です。
なお、近年は異業種間のM&Aも増加しています。自社が属する業種への理解を深めやすくするため、業界や市場環境の分析を詳細に記載することもあります。
提携提案書
提携提案書は譲受企業から譲渡企業へ提供する提案書です。M&Aの動機や目的を記載して、譲渡企業に対して譲り受けの意向を示すことが目的の資料です。
主な記載内容はM&Aで得られるシナジー効果やM&A後の戦略・ビジョンなどです。事業領域や技術・ノウハウ等などの経営資源を列挙して、シナジー効果を明確化させることがポイントになります。
M&Aの目的や戦略が伝わらない内容だと、相手に与える印象が悪くなる可能性もあります。受け入れてもらいやすくするためにも、作成の際は譲渡企業の分析を徹底しておく必要があります。
M&Aを実行するために重要な資料
企業情報は、決算書などの既存資料からでもある程度は把握することが可能です。しかし、適正な企業価値を測るためには詳細な情報が必要になるため、提案書の作成・提供が必要不可欠となっています。
M&Aの判断材料が不足していると検討期間が長くなり、M&Aの長期化に繋がりやすくなります。検討中に内部環境や外部環境が変化するとM&Aの意思が揺らいでしまい、交渉の中止や白紙化という結論に至ることも珍しくありません。
提案書のやり取りで円滑な情報交換を行えていれば、成約に至らなかった場合も短時間で次の相手探しを行うことができます。
自社のことを把握する上でも必要
どのような企業も、業界や市場で生き残ってきただけの強みを持っています。自社の強みをアピールするためには、まず内部環境を分析して自社のことを把握しておくことが大切です。
M&Aの提案書は内部環境の分析を兼ねることができます。自社の強みやM&Aの目的、相手に求めていることを書面にしておくことで、自社の意見や姿勢を明確化できます。
提案書に記載すべき情報は多いため作成に手間はかかりますが、その後の相手探しや交渉の時間を短縮する効果も期待できます。M&Aを検討する際はまず提案書の作成から準備することをおすすめします。
M&Aの提案書の作り方と売却を成功させるためのコツ
M&A相手に効果的に提案するためには、M&A提案書の作成に関していくつか押さえておくべきポイントがあります。この章では、M&Aの提案書の作り方と売却を成功させるためのコツを解説します。
IM(企業概要書)の作り方
企業概要書に記載すべき内容は多いので、順序立てて作成する必要があります。主な流れは下記のようになります。
【IM(企業概要書)の作り方】
- M&Aの専門家へ相談
- 秘密保持契約の締結
- 情報収集・業界調査
- 企業価値評価
M&Aの専門家へ相談
企業概要書の作成はM&Aの専門家に依頼することが一般的です。そのため、M&A提案書を作成する際はM&A仲介サポートを依頼する専門家を探すことから始めます。
M&Aの専門家はさまざまですが、特におすすめの相談先はM&A仲介会社です。数多くの譲渡企業と譲受企業を引き合わせて成約に導いている専門家なので、M&Aの提案書の作成も任せることができます。
秘密保持契約の締結
秘密保持契約とは、当該取引で知りえた秘密情報の第三者への開示や目的外使用を禁ずる契約のことです。専門家によって「機密保持契約」や「守秘義務契約」と呼称することもあります。
本契約の目的は秘密情報の漏洩を防止することにあります。M&Aを検討している事実や詳細な経営状況が漏洩すると譲渡企業・譲受企業の双方に影響があるため漏洩防止に努めます。
主な記載内容は秘密情報とする基準や範囲、有効期間です。規模・業種によって記載すべき内容が変わってくるため専門家と相談しながら決めていく必要があります。
なお、第三者への開示に関しては仲介する専門家は対象から除外することが一般的です。M&A仲介会社とは秘密情報を含めたやり取りを行い、M&Aを進めていきましょう。
情報収集・業界調査
情報収集は企業概要書の作成に必要な資料を集めます。企業の組織図や従業員数、所有する資産などを1つの資料にまとめます。
業界調査は譲り受け意欲のある企業を探すために行います。業界内の直近の譲り受け事例を調査して、対象企業が求めている事業内容や技術を把握します。
企業価値評価
企業価値評価は企業価値や株式価値を算出するための方法です。非上場企業は明確な市場価値が存在しないため、企業価値評価で大体の価値を把握する必要があります。
企業価値評価の方法は、時価純資産法や類似企業比較法、DCF法などさまざまなものがあります。いずれも正しい計算方法ですが、算出される結果は異なるため場面によって使い分ける必要があります。
算出された値はM&A価格交渉の土台となります。適正な値を算出するために専門性と客観性が求められるため、M&Aの専門家に依頼することが一般的とされています。
ここまでの流れが済んだら企業概要書の作成に移ります。必要な情報は出揃っているので順番に埋めていく形になります。
提携提案書の作り方
続いて譲受企業から譲渡企業に提供する提携提案書の作り方です。一般的な手順は以下のようになっています。
【提携提案書の作り方】
- M&Aの専門家へ相談
- 秘密保持契約の締結
- 情報収集・業界調査
- 譲渡企業の分析
M&Aの専門家へ相談
提携提案書の作成には、M&Aの専門家のサポートが必要不可欠です。というのは、専門家を介したほうが新しい情報を入手しやすくなり、訴求力の高い提案書を作成しやすくなるためです。
情報不足のまま不特定多数の同じ内容の提案書を送付しても、期待する回答が返ってくる可能性は低いといえるでしょう。
提携提案書の作成でおすすめの相談先はM&A仲介会社です。数多くのM&A仲介を行うM&A仲介会社は、譲渡企業の情報が集中しやすいので条件の合う企業の紹介も受けやすくなります。
秘密保持契約の締結
M&Aでは提案書の提供の前に秘密保持契約を締結します。譲渡側より提供される企業概要書は譲渡企業の秘密情報が含まれるため、秘密保持契約を締結して情報漏洩しないことを誓約します。
M&Aが正式に成約する前にM&Aを検討している事実が漏れると、憶測を含む情報が錯綜して従業員の辞職や、取引先との取引の停止などの弊害が想定されます。
従業員や取引先は譲渡企業の大切な資産なので、譲り受けを検討する譲受企業にとっても大きな損失です。譲渡企業・譲受企業の双方が安心してM&A交渉を行うためにも、秘密保持契約の締結は必須です。
秘密情報の基準や範囲の他、漏洩した場合の対応策なども記載されます。違反者には故意・過失に関わらず責任が問われるので、慎重に確認しておく必要があります。
情報収集・業界調査
提携提案書で最も重要なポイントはシナジー効果に関することです。想定されるシナジー効果が明確になっていないとM&Aの目的すら曖昧になるため、譲渡企業からの合意を得にくくなります。
両社が前向きに検討するためには高いシナジー効果を明確化させておくことが大切です。そのためにも情報収集・業界調査を徹底して具体性のある提案書にまとめます。
譲渡企業の分析
シナジー効果を明確化させるためには譲渡企業の分析が欠かせません。譲渡企業の製品・サービスや技術・ノウハウを分析して、自社の経営資源との組み合わせで得られるシナジー効果を提示します。
例えば企業名を変えるだけで通用するような内容だと譲渡企業側に熱意が伝わりづらくなります。譲渡企業が独自に持つ強み・魅力を積極的に取り上げて、シナジー効果に関連付けることがポイントになります。
譲渡企業の分析は、簿外債務の有無を確認するうえでも役立ちます。M&A後に想定外の債務が発覚するとシナジー効果を創出できなくなる恐れがあるため、事前の徹底した分析も大切です。
提携提案書の記載事項
提携提案書は譲渡企業に納得してもらえるような内容にすることが重要です。提示すべき内容として、以下のような項目を盛り込むと良いでしょう。
- 会社概要
- M&Aを提案する理由
- 戦略ビジョン
- 両社にとって期待されるシナジー
- M&A後の対象会社の位置付け
提携提案書で最も重要なのは、M&Aによるシナジー効果です。期待されるシナジー効果が明確でなければ、 M&Aが成約しても最終的に望ましい結果が得られません。提案をする際、根拠も含めた具体的な内容を記載するようにしましょう。
例えば、譲渡企業の商品やサービス、取引先、技術、ノウハウなどを列挙し、自社が持つ経営資源との掛け合わせでどのようなシナジー効果が得られるなどの根拠を提示するのが大切です。両社にとって意義なM&Aである具体的な提案がされることで、両社が前向きに議論できるでしょう。
M&Aの提案書作成における失敗例
M&Aにおいて提案書を作成したものの、失敗する原因は主に2つが考えられます。
1つ目は、M&Aの目的が不明確であることです。M&Aの目的は譲受企業へ熱意を示すための重要なポイントです。目的が曖昧なままだと相手側に不信感を与えてしまい、それ以上取り合ってもらえなくなる可能性が高いでしょう。
したがって、M&Aにとって何を達成するのか、以下の内容を明確にしておくことが重要です。目的がはっきりしていない場合は、提案書作成前にさらなる検討が必要になります。
2つ目は、譲渡企業の分析ができていないことです。譲渡企業の分析を正確に把握していないと、M&Aの検討が難しくなるでしょう。提案に進む以前に譲受企業にとって、譲渡企業の「魅力」「実現可能性」などの観点から提案するのも重要です。
M&Aの提案書は専門家に相談して作成すべき理由
M&Aの提案書には決まったフォーマットがないので、自社内で作成することも可能です。しかし、M&Aを検討する多くの企業は、専門家に相談したうえで提案書の作成に臨んでいます。
【M&Aの提案書は専門家に相談して作成すべき理由】
- 企業情報を分かりやすく資料にまとめる必要がある
- M&Aの提案書は作成に時間がかかる
- M&Aの提案書は客観性も重要
企業情報を分かりやすく資料にまとめる必要がある
提案書の情報は誰がみても分かりやすいように、資料にまとめる必要があります。提案書の作成経験が豊富な専門家に相談したほうが、完成度の高い資料を作りやすくなります。
また、中小企業の場合は経営者の頭にしか企業情報が入っていないこともあります。経営者と専門家のやり取りで企業情報を書面化しておくと、M&A以外のビジネスシーンでも活用しやすくなります。
M&Aの提案書は作成に時間がかかる
提案書の作成は情報収集や内容を練るために時間がかかります。作成の際は日常業務も並行して行うため、経営者にかかる負担が大きくなります。
特に企業概要書は、直前に提供するノンネームシートとは違い、数十枚以上の書類を作成します。初めて作成する場合は1ヵ月前後かかることも珍しくありません。
M&Aが長期化しやすい要因は相手探しやデューデリジェンスとされており、その分、資料作成などの事務作業はできる限り短縮することが好ましいとされています。
M&Aの提案書を速やかに作成することができれば相手探しにも早めに移行できるので、早期成約を目指す時ほど専門家のサポートが必要不可欠です。
M&Aの提案書は客観性も重要
M&Aの提案書は相手企業にみてもらうことを前提とした資料です。相手に熱意を伝えるためには物事を客観的に捉えることが求められます。
自社内で提案書を作成すると、主観的な評価によってアピールしたい事業の部署が隔たるなどの弊害が想定されます。
専門家の客観的な評価を受けて作成すれば、譲受企業が求めている物や社会的に価値の高い物をピンポイントでピックアップすることが可能です。
自社が持つ本来の魅力・強みを効果的にアピールできるので、好条件の相手が見つかりやすくなりM&Aの成功率も高まります。
M&Aの提案書の作り方に関する相談先
企業概要書や提携提案書は雛形を用いて作成することも可能です。しかし、記載すべき内容は企業の状況や業種に応じて変わるため、雛形を使った提案書では高い訴求力は期待できません。
M&Aの提案書の作成についてお悩みの際は、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。会社が置かれている状況を考慮し、客観的な立場から作成された提案書はM&A相手に対して的確にアピールできるようになります。
M&A総合研究所は、中堅・中小企業のM&A仲介を手掛けるM&A仲介会社です。数多くの企業の相談・仲介を請け負っており、提案書作成のサポートも行っております。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
M&Aや提案書の作成に関して無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
M&Aの提案書の作り方まとめ
M&Aの提案書はM&Aを検討するうえで重要な役割を持つ資料です。提案書の完成度がM&Aの成否に直結するため、慎重に作成する必要があります。
提案書の作り方やコツに不安がある場合は、専門家に協力を仰ぐことをおすすめします。専門的知見によるアドバイスを受けて作成した提案書はM&A相手に熱意を伝えやすくなります。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。