M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年5月8日更新会社・事業を売る
M&Aの買収金額とは?ランキングや買収市場動向を解説
M&Aによる買収は日本においても大企業だけのものではなく、中小企業でも実施されるようになっています。また、日本企業が海外の企業とM&Aを行うケースも増加中です。買収の金額は企業の規模によってさまざまですが、ここでは高額の事例をランキングで紹介します。
目次
買収金額ランキングを発表!
日本国内と海外のM&Aによる買収金額ランキングを見ていく前に、まずは近年のM&Aの状況について確認しておきましょう。
会社の規模で買収金額はさまざま
M&Aの買収金額は会社の規模によってさまざまです。近年件数が増えている中小企業の間で行われているものは数千万円から数十億円のものがほとんどですが、小規模の会社のM&Aとなると数百万円の買収金額になることもあります。
一方で大企業のM&Aは金額も巨額になることが多く、買収や合併、株式交換、会社分割などさまざまな手法で行われます。
経営戦略や会社再編として行われるケースが多く、買収や合併によるシナジー効果を期待したものや事業拡大を期待するものも多く見受けられます。
海外企業とM&Aを実施する企業も増加
買収金額が巨額になるM&Aは国内の会社間で行われるものもありますが、グローバル化が進み、日本の大企業が海外の企業とM&Aを実施することも増えています。
たとえば、2018年に巨額のM&Aとして話題となった武田薬品工業とシャイアーのケースは、日本とアイルランドを拠点としている会社の間で実施されたM&Aです。大企業は、企業そのものの強化も考えますが、海外進出が念頭にある場合は海外の企業ともM&Aを実施しようとすることもあります。
大企業のM&Aの取り扱いは大手銀行や証券会社が行っており、買収発表後、半年から1年以上をかけて成約を目指す取引も珍しくありません。買収金額が数兆円規模になることもあり、成功報酬だけでも数億円となるでしょう。
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M&Aによる巨大企業買収ランキング〜世界編(2018年版)
それでは、M&Aによる買収金額ランキングを見ていきましょう。まず、海外企業のランキングは以下のようになっています。
- 906億ドル(約9兆8,000億円)
- 768億ドル(約8兆3,000億円)
- 670億ドル(約7兆2,000億円)
- 618億ドル(約6兆6,000億円)
- 586億ドル(約5兆8,600億円)
今回は、世界と日本における巨額M&Aをランキングで紹介します。M&Aは成立時と買収発表時で金額が異なる場合が多く、買収金額については大まかな数字としてお考えください。
1位・906億ドル(約9兆8,000億円)
買収金額1位は906億ドルで、日本円に換算するとおよそ9兆8,000億円です。このM&AはオランダのユニリーバNVとイギリスのユニリーバPLCによるものです。
ともに一般消費財メーカーで食品や洗剤、ヘルスケア用品、トイレタリーなどの商品の製造、販売を行っており、世界的にも知名度が高い会社です。もともとはイギリスの石鹸会社だった「リーバ・ブラザーズ」とオランダのマーガリン会社だった「マーガリン・ユニ」が1930年に経営統合して設立された会社です。
ユニリーバは、多国籍企業で世界各地に拠点があります。この2社は、オランダのユニリーバがイギリスのユニリーバを買収することを2018年3月に発表し、2018年内に実現する予定で計画を進めました。
そして、2018年12月にオランダのロッテルダムに本社機能をまとめ、1930年から続いた2本社制から1本社として持株会社制に移行しています。
2位・768億ドル(約8兆3,000億円)
2位の買収金額は768億ドルで、日本円に換算するとおよそ8兆3,000億円になります。日本の武田薬品工業とアイルランドのシャイアーによるM&Aとなりますが、これについては日本編で詳しく取り上げます。
3位・670億ドル(約7兆2,000億円)
3位の買収金額は670億ドルで、日本円に換算するとおよそ7兆2,000億円になります。この取引は、アメリカのシグナが同国のエクスプレス・スクリプツを買収したときの金額になります。
2018年3月8日に、アメリカの医療保険会社シグナがPBM(薬剤給付会社)のエクスプレス・スクリプツを520億円(日本円でおよそ5兆6,000億円)で買収するとしていました。
しかし、エクスプレス・スクリプツはおよそ150億ドルの負債を抱えており、その負債額もシグナが引き受けるとしたために、買収金額が670億ドルとなりました。この取引は、2018年末までに成約を完了するものとして交渉が進められて実現しました。
アメリカは日本とは異なり、社会保険制度が任意の加入となっているため貧困層は加入できない場合があります。このような医療保険制度の違いから個別に民間の医療保険に加入する人も多く、シグナは医療保険の加入者数も多く大手医療保険会社としての役割が大きくなっています。
PBMは製薬会社と価格交渉をするという役割があり、医薬品の値引き交渉などもできるのです。これによってシグナは保険金の支払いを少なくして、最終的には収支の改善をしたいという思いがあります。
それに加えて、保険金の支払いが減れば保険料の引き下げにもつながるので消費者へのアピールともなります。また、アマゾンのヘルスケア部門への参入も医療保険業界や医療業界の懸念材料となっており、サービスや交渉力の強化、コスト削減が必要となっています。
そういった背景があったため、シグナは670億ドルという巨額の資金を投じてでもエクスプレス・スクリプツの買収を実現させたのです。
4位・618億ドル(約6兆6,000億円)
4位の買収金額は618億ドルで日本円に換算するとおよそ6兆6,000億円になります。エナジー・トランスファー・エクイティがエナジー・トランスファー・パートナーズと合併という形で買収を行い、その後、会社名をエナジー・トランスファーLPと変更しています。
エナジー・トランスファー・エクイティはアメリカ国内で小規模な天然ガスパイプラインを事業内容としており、1995年に設立されたテキサス州に本社を構える会社です。2018年10月にエナジー・トランスファー・パートナーズとの合併を完了させ、アメリカの広い範囲を販路として広げることができました。
合併による買収によって、強い資産基盤と天然ガス、NGL、原油、精製製品の生産の安定と消費者へのサービス向上が期待できます。また、投資家に対して魅力のある事業であることをアピールすることで資産調達にも期待が高まります。
5位・586億ドル(約5兆8,600億円)
5位の買収金額は、586億ドルで日本円に換算しておよそ5兆8,600億円。アメリカのTモバイルがスプリントを買い取って合併しています。ともに通信事業を行っており、携帯キャリアではスプリントがアメリカでシェア3位、Tモバイルが4位となっています。
1位と2位はAT&T、Verisonとなっており、この2社に対抗してシェアを広げることも目的となっています。さらに、次世代の5Gネットワークの構築なども推進しようという意向があります。
この合併により、スプリントはTモバイルの100%子会社となり、合併した後も社名はTモバイルのままになります。スプリントはソフトバンクの傘下にありましたが、今回の合併によって傘下ではなくなりました。
しかし、ソフトバンクは新たなTモバイルのおよそ27%の株式を保有することになります。そのほかの株式はおよそ41%をドイツテレコムが保有し、残りは一般の株主が保有しています。
M&Aによる巨大企業買収ランキング〜日本編(2018年版)
続いて、日本が関わるM&Aについて、近年の主な事例を買収金額が高額なものから紹介します。以下が日本企業が関連するM&Aのランキングです。
- 6兆8,000億円
- 8,060億円
- 7,330億円
- 7,000億円
- 6,438億円
紹介する内容は買収が表された事例であり、実際にはまだM&Aが成立していないものもあります。また、金額についても報道された時期などによって変動がありますが、目安の金額として掲載しています。それでは、それぞれの事例について詳しく見ていきましょう。
1位・6兆8,000億円
1位は世界編でも触れましたが、日本の武田薬品工業とアイルランドのシャイアーによるもので、買収金額は6兆8000億円になります。一部の報道では7兆円としているところもあります。日本国内の会社ではこれまでにない巨額の金額が投じて買収が行われました。
これによって、製薬会社の売上高ランキングで世界8位のとなりました。また、ガン、消化器、精神神経の分野に加えて、症例の少ない病気の分野も加えることで、事業の拡大を期待したものでもあります。
今回の買収については「グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーとなるための変革を加速させる」としており、症例の少ない病気の分野で全体の75%の売上高を見込んでいます。
武田製薬はしばらく新薬の発表を行っていないことから、新薬の研究開発を優先するとしています。その中でも、シャイアーが持つ血友病に関する治療薬が、中外製薬の「ヘムライブラ」にシフトしてシェアを広げる可能性があり、減損のリスクを懸念する意見もあります
血友病をはじめ、難病とされる病気に対する製薬会社の競争は厳しいものとなると予測されます。武田薬品工業はシャイアーの買収によって財務的なリスクは伴うものの、研究開発費を4,000億円と見通しており、他社との競争力を高めるとしています。
2位・8,060億円
イタリアのマリエッティ・マレリと日本のCKホールディングスによるもので、買収金額は8,060億円。マリエッティ・マレリはフィアット・クライスラー・オートモービルの自動車部品の子会社になります。
CKホールディングスは、カルソニックカンセイの親会社となる会社です。この2社は、買収後に「マリエッティ・マレリCKホールディングス」と社名を変更すると発表しています。
今回のM&Aは事業統合によるもので、成立すると、世界ランキングで7位になる独立系の自動車部品メーカーとなります。売上高は152億ユーロ(日本円でおよそ2兆円)としています。
事業統合を行った後は、規模、財務基盤、製品ライン、事業エリアを互いに補うことが可能となり、世界中の顧客をターゲットにしたグローバルな事業展開が期待できます。
また、世界各国におよそ200か所以上の工場や研究開発センターを構えることになり、顧客に対しても人材やプロセス、革新的な新製品の開発に投資ができるとしています。
3位・7,330億円
日本のルネサス・エレクトロニクスとアメリカのインテグレーテッド・デバイス・テクノロジーのM&Aで買収金額は7,330億円とされています。
インテグレーテッド・デバイス・テクノロジーは半導体メーカーで、通信、コンピューター、一般向け機器などで使用する低消費電力での高性能アナログ・デジタル混在半導体部品の設計、製造を主な事業としています。
2018年9月にルネサス・エレクトロニクスは買収を発表して、完全子会社化を目指しました。アナログ・ミックスドシグナル企業の買収によって、補うことができる製品ラインナップを拡大して事業の成長を推進するものとしています。
両社が持つそれぞれの技術を組み合わせればIOTやビッグデータ処理などの拡大や高速化する情報処理の要求に答えることが可能で、網羅的にソリューションできる技術を提供しようとしています。今回の買収によって電子機器性能、効率性向上やソリューションの提供力を強くしていく方針です。
また、海外の需要にも答えるマネジメントやオペレーションを速めていく考えもあるようです。財務にも大きな成長が期待でき、優秀な人材の確保などもメリットとなるとしています。
4位・7,000億円
日本の日立製作所とスイスのABBグループによる事業買収によるもので、買収金額は7,000億円とされています。2018年12月に日立製作所がスイスのABBグループの電力システム事業の買収を発表しました。
日立製作所はこれまでもM&Aを実施してきましたが、過去の事例と比べても最も多い金額を投じての事業買収となりました。世界でも電力事業にかかわる環境は変革期を迎えており、電力システム事業は重要な項目となります。
そのような中で日立製作所は、海外への展開を加速させる電力システム事業の買収を敢行しました。この買収によって日立製作所は電力システム事業で世界ランキング1位となり、海外への事業拡大を行ったことになります。
ABBグループは電力システム事業を完全に分社化して、2020年前半までに日立製作所が80%の出資をすることになっています。さらに、その後は完全子会社にするとしています。
5位・6,438億円
2018年7月に日本の大陽日酸がアメリカのプラクスエア(Praxair)の欧州事業を買収したM&A事例で、買収金額は50億ユーロ(約6,438億円)となっています。
プラクスエアはドイツの産業ガス大手「リンデ(Linde)」との合併を計画しており、アイルランドに新たに持株会社「Linde Public Limited Company」を設立。合併に際して各国の競争法当局の承認を得るために欧州事業の戦略的な売却を計画し、売却先を探していました。
買収の目的は「業界再編が進む中でグローバル競争力を高め、確固たる地位を確立するため」としており、そのビジョンの実現に向けて大きく前進する手段として、戦略的な意義を併せ持つ絶好の投資機会と考えているようです。
今回の買収で対象となるプラクスエアの欧州事業は、ドイツ、スペイン、ポルトガル、イタリア、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、オランダ、ベルギーの産業ガス事業と、イギリス、アイルランド、オランダ、フランスの炭酸ガス事業、およびヘリウムに関連した事業となっています。
M&Aによる買収市場動向
近年のM&Aの動向について、トムソン・ロイター社の統計データをもとに世界と日本国内に分けて確認しておきましょう。
世界のM&A動向
世界のM&Aによる買収市場の動向は、2018年通年の買収価格が4兆ドルを上回り、トムソン・ロイターが統計を取るようになった1980年以来、最高額となっています。また、2017年と比較すると19%増加しており、第3四半期にはすでにおよそ4兆ドルを超える勢いがありました。
2018年第4四半期は第3四半期と比べてM&A買収件数が5%下落し、2018年通年で見ると2017年よりも8%下落となっています。しかし、高額M&A買収件数については、前年の2017年と比較すると51%増加しており、5億ドルを超えるM&Aは全体の38%を占めています。
また、M&Aが活発に行われた業種は、エネルギー・電力、ハイテクやヘルスケアとなっています。エネルギー部門については、2017年と比較すると2018年は52%増加しており、統計開始以来最高の数値となっています。ハイテクに関しては2018年のM&A全体の13%、ヘルスケアは11%です。
2019年は第3四半期のM&A総額が前年比16%減の7,290億ドルと、四半期ベースの統計では2016年以降で最低の数字となっています。米中貿易戦争の影響による先行きの不透明感などが影響しているものと考えられます。
日本のM&A動向
日本のM&Aによる買収市場動向は2017年と比較して162.3%増加し、39.3兆円となっています。この数値は1980年の集計開始以来、一番の金額です。
なかでも買収金額が1,000億円を超えるM&Aは57件あり、総額で30.9兆円となっています。2018年の全体のM&Aも3,818件と過去最高の件数です。
M&Aが活発に行われた業種は、ヘルスケアが全体の24.3%、通信事業は18.3%となっています。これは、世界的に見ても巨額M&Aとなった武田薬品工業とシャイアーの事例の影響を大きく受けています。
日本国内の企業同士のM&Aも多くありましたが、海外企業とのM&Aが目立ち、グローバル化が進んでいることも2018年の傾向でした。アメリカ企業とのM&Aが活発に行われており、中国や東南アジアの企業とのM&Aも活発になっているようです。
2019年も日本企業のM&Aはさらに活発に行われており、国内企業のM&A総数は4,088件で前年比6.2%増加。3年連続で過去最多を更新しています。
M&Aの買収金額ランキング(2018年版)
巨額M&Aにおいては、大手銀行や証券会社がアドバイザーとなって交渉が行われることがほとんどです。日本国内案件のアドバイザー買収金額のランキングは以下のようになっています。
- 三菱UFJモルガン・スタンレー
- ゴールドマン・サックス
- JPモルガン
- エバーコア・パートナーズ
- 野村證券
1位の三菱UFJモルガン・スタンレーは、取り扱い買収金額の合計が24兆5,202億円。市場占有率は62.4%、案件数は59件となっています。
2位はゴールドマン・サックスで、金額が22兆7,487億円。市場占有率57.9%、案件数37%。次いで3位はJPモルガンで金額が18兆5,042億円、市場占有率47.1%、案件数19件です。
4位はエバーコア・パートナーズで金額が14兆8,074億円、市場占有率37.7%。案件数4件。5位は野村證券で金額が14兆3,001億円、市場占有率36.4%、案件数120件となっています。
これらの順位は公表案件で買収金額の合計を基準としています。やはり、高額のM&Aについては大手の証券会社がアドバイザーとなり取引が行われていることがわかります。
※関連記事
M&Aにおける銀行の役割
まとめ
M&Aの買収金額は、大企業になれば当然金額も大きくなります。2018年のM&Aでは、日本の武田薬品工業とアイルランドのシャイアーが日本国内だけでなく、世界レベルで見ても大きなM&Aとなりました。
日本国内の企業が海外の企業とM&Aを行うケースも増えていますが、M&Aの買収市場はアメリカがけん引している状態が続いています。しかし、日本でもM&Aは大企業だけのものではなくなってきており、中小企業の会社間でも実施されることが増えています。
中小企業のM&Aは、公表されることがほとんどないので年間の総額や案件数ははっきりとわかるデータはありませんが、近年は年々事例が増加傾向にあり、今後も増えていくでしょう。
この記事の内容をまとめると以下のようになります。
・M&Aの買収金額は?
→会社の規模によって数百万円から数兆円までさまざま
・世界で最高額の買収は?
→オランダのユニリーバNVとイギリスのユニリーバPLCによるもので約9兆8,000億円
・日本企業が関わるもので最高額の買収は?
→武田薬品工業とアイルランドのシャイアーによるもので、買収金額は6兆8000億円
・日本企業が関わるM&Aの近年の動向は?
→2019年まで3年連続で過去最多の総数を記録
・大規模なM&Aはどのように実施されている?
→大手の証券会社がアドバイザーとなっている
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