M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年1月27日更新会社・事業を売る
秘密保持契約(NDA・CA)
秘密保持契約(NDA・CA)とは、取引の際に情報漏洩を防ぐために締結されるものです。M&Aにおいても社内の秘密情報を提供することになり、非常に重要な役割を果たします。本記事では、秘密保持契約(NDA・CA)の意味や、締結前の注意点を解説します。
秘密保持契約(NDA・CA)とは
秘密保持契約(NDA・CA)とは、取引の際に開示する情報を目的外使用しないことを誓約する役割を持つものです。
M&Aの際、売り手は自社の企業価値をアピールするために、保有する技術・ノウハウや従業員の個人情報などを買い手に対して開示します。
これらの秘密情報が漏洩すると多大な損害を被るため、秘密保持契約(NDA・CA)を締結することが一般的です。
秘密保持契約(NDA・CA)は「片務型」と「双務型」の2種類があります。それぞれ発揮する効果が異なるので、違いを正しく把握しておくことが重要です。
片務型
片務型は、取引に関わる当事者の片方のみが秘密を保持する義務を負う契約です。自社のみが情報を提供する(相手から情報を受け取る必要がない)取引の際に利用されます。
具体例としては、共同開発等で片方が一方的に技術提供を行う時などです。共同開発のために開示された情報を第三者に開示したり、共同開発以外の目的で使用したりすることを制限します。
双務型
双務型は、取引に関わる当事者の両者が秘密を保持する義務を負う契約です。相互に情報を提供する取引の際は双務型で契約します。
M&Aにおいては、M&Aの取引自体が秘密情報となります。M&Aを検討していることが外部に漏れてしまうと、株価への影響や従業員の動揺が考えられるためです。
両者が公平な立場でM&A取引を進めるためにも、M&Aの秘密保持契約(NDA・CA)は双務型で締結することが一般的です。
秘密保持契約(NDA・CA)の意味・目的
秘密保持契約(NDA・CA)が必要とされる理由や、契約すると発生する効力はどのようなものなのでしょうか。この章では、秘密保持契約(NDA・CA)の意味・目的について解説します。
秘密保持契約(NDA・CA)を交わす意味・目的
M&Aなどの企業間取引において、自社の秘密情報を開示する場面では秘密保持契約(NDA・CA)を交わす必要があります。
秘密保持契約(NDA・CA)は、健全な取引を行うために非常な重要な役割を持つものです。ここでは、主な意味・目的をみていきましょう。
【秘密保持契約(NDA・CA)を交わす意味・目的】
- 情報漏洩対策
- 目的外使用対策
- 責任の所在の明確化
1.情報漏洩対策
企業間取引においては原則として秘密保持の義務はありません。自社の事業の根幹をなすような重要な情報が相手方の不備で外部に漏洩しても、損害賠償を請求することができなくなってしまいます。
M&A取引における売り手は、自社の企業価値の関わる情報のすべてを買い手に提供するため、情報の扱い方により慎重になる必要があります。
2.目的外使用対策
M&Aにおける情報を提供する理由は、自社の企業価値を相手方に正しくアピールするためです。
独自の技術や従業員の個人情報をM&A以外の用途で悪用されると自社が大きな損害を受けることもあるので、秘密情報の利用範囲を定めておき、開示する情報を守りましょう。
3.責任の所在の明確化
相手方の不備により情報漏洩した時に責任を追求するためにも、秘密保持契約(NDA・CA)を交わします。
また、損害賠償を請求する権利という目的はもちろんのこと、抑止力としての役割も果たします。
秘密保持契約(NDA・CA)を交わすタイミング
秘密保持契約(NDA・CA)は秘密情報を提供する前に締結する必要があります。M&Aにおける売り手は初期段階で自社情報を提供することになるため、M&Aプロセスの初期段階(M&A仲介会社等との契約段階)で交わすことが一般的です。
秘密保持契約(NDA・CA)を交わしたら取引先の選定・交渉等、本格的にM&Aに着手していきます。
秘密保持契約(NDA・CA)を違反した場合
秘密保持契約(NDA・CA)の内容に違反した場合、違反によって生じた損害の賠償責任が発生する可能性があります。
もし民事裁判に発展した場合、争点は「違反によって生じた損害額」になることが多いです。
実際に損害額を証明することは難しいため、開示者は損害賠償金を明記しておくことが推奨されます。
秘密保持契約(NDA・CA)のご相談はM&A総合研究所へ
M&Aにおける秘密保持契約(NDA・CA)は、非常に重要な役割を持ちます。適切な契約書を作成しなければトラブルに発展することもあるので、専門家に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所は、主に中小・中堅規模のM&A案件を支援するM&A仲介会社です。M&Aの知識・実績豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っております。
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秘密保持契約(NDA・CA)の内容
M&Aなどの企業間取引を円滑に進めるために、秘密保持契約(NDA・CA)の締結は必須です。秘密保持契約(NDA・CA)には法的な内容を含む条項を多数記載する必要があるため、雛形を利用することが一般的になっています。
インターネットで「NDA 雛形」などと検索すれば法律事務所や専門家による多数の雛形が出てきますが、それぞれの立場から改良されているものがほとんどであるため、そのなかから目的に合ったものを選ぶことが大切です。
ここでは、秘密保持契約(NDA・CA)を作成するうえで、参考となる汎用的な雛形を紹介します。秘密保持契約(NDA・CA)を作成する際は参考にしてください。
秘密保持契約(NDA・CA)の雛形
○○株式会社(以下「甲」という)及び☓☓株式会社(以下「乙」という)は,以下のとおり,秘密保持契約を締結する。
第1条(定義)
本契約における「秘密情報」とは、本件業務において開示した情報のうち、「秘密情報」である旨を明示した技術上、営業上の情報をいう。
但し、次の各号に該当する情報に関しては例外とする。
① 開示を受けた時点で、既に公知であった情報
② 開示を受ける前に、既に保有していたことが証明できる情報
③ 本件業務とは関係なく、第三者より正当に入手した情報
④ 開示を受けた後、自己の責めによらずに公知となった情報
第2条(秘密情報の管理)
1 甲及び乙は、本件業務の目的以外で、秘密情報を使用してはならない。
2 甲及び乙は、本件業務の範疇を超えて、秘密情報を複製してはならない。
3 甲及び乙は、秘密情報を管理する責任者を定め、書面をもって責任者の指名及び連絡先を相手方に通知する。
第3条(返還義務等)
1 甲及び乙は、次の各号に該当する場合、秘密情報を速やかに返還しなければならない。
① 相手方から請求を受けた場合
② 秘密情報が不要担った場合
③ 期間満了又はその他の事由により、本契約が終了した場合
2 前項に定める場合において、秘密情報が自己の記録媒体に含まれ、返還が困難な場合、甲及び乙は、相手方の指示に従い、該当する秘密情報又は記録媒体を速やかに破棄、又は消去しなければならない。
第4条(損害賠償等)
甲及び乙は、相手方の秘密情報を開示するなど本契約の条項に違反した場合、これを賠償しなければならない。自己の従業員又は元従業員が、本契約に違反して損害を与えた場合も同様とする。
第5条(有効期限)
1 本契約の有効期限は、本契約締結日から満○年間とする。
2 本契約の期間満了○ヶ月前から、本契約の継続について協議を行う。
3 契約継続の合意が得られた場合、本契約と同一条件をもって有効期限を延長できるものとする。
第6条(協議事項)
本契約に定めのない事由が生じた場合、甲及び乙は、協議のもと、友好的に解決するよう合理的な努力をするものとする。
第7条(管轄)
本契約から又は本契約に関連して紛争が生じた場合、○○地方裁判所を管轄裁判所とする。
〇〇年○月○日
甲 住所 〇〇
社名 〇〇
代表者 〇〇
乙 住所 〇〇
社名 〇〇
代表者 〇〇
上記の雛形を利用することで手軽に秘密保持契約書を作成できますが、インターネット上に公開されている雛形をそのまま使う行為は危険もあります。
秘密保持契約書は、M&Aの手法などのそれぞれの事情に合わせて作成しなければならないため、汎用的な契約書を使ってしまうとトラブルを招く要因にもなってしまいます。作成した契約書は、契約前に専門家のチェックを受けてください。
秘密保持契約(NDA・CA)締結前の注意点
秘密保持契約(NDA・CA)は、取引に関わる当事者それぞれが自社に有利になるように契約内容を改変することが考えられます。
記載されている内容を正しく把握しておかないとと取り返しがつかないことになってしまうこともあるため、締結前には下記のポイントに注意しておきましょう。
【秘密保持契約(NDA・CA)締結前の注意点】
- 作成された条件を確認する
- 契約期間に関して注意
- 秘密を保持する内容
- 管轄の裁判所について
1.作成された条件を確認する
条件が「片務」か「双務」によって秘密保持契約(NDA・CA)が発揮する効力が大きく異なります。
取引そのものが秘密情報となるM&Aにおいては双務型で契約することが一般的です。相手方より提案された条件が片務になっていないか締結前に必ず確認するようにしましょう。
2.契約期間に関して注意
秘密保持の義務を負う期間を明記しておくことで契約期間が有効の間、秘密情報を守ることができます。
情報の開示者としては秘密情報を守る期間を無期限にしたい気持ちがありますが、受領者にとっては大きなリスクとなってしまうため、ある一定の期間を設けることが一般的です。
秘密情報の性質により1年~5年の範囲内で双方が納得する形で決めることが一般的です。
3.秘密を保持する内容
M&Aの際に開示する情報の中で何を秘密情報とするのかを明確化します。
開示者であれば技術・ノウハウや従業員の個人情報等の守るべき情報が含まれているか、受領者であれば不要なものまで秘密情報に含まれていないかを確認しておく必要があります。
4.管轄の裁判所について
秘密保持契約(NDA・CA)の内容に違反して民事裁判に発展した場合、予め決めておいた裁判所で裁判を行います。
遠方の裁判所の場合、裁判の度に生じる遠征費用も馬鹿にできません。双方が納得できるように取引相手との中間地点にある裁判所を管轄とすることが一般的です。
まとめ
秘密保持契約(NDA・CA)は、取引の際に開示する情報を守るために当事者間で契約するものでした。
M&Aにおいては双方が責任を持つ「双務型」を契約することが一般的となっており、記載内容や違反時の賠償責任等を把握しておく必要があります。
【秘密保持契約(NDA・CA)を交わす意味・目的】
- 情報漏洩対策
- 目的外使用対策
- 責任の所在の明確化
【秘密保持契約(NDA・CA)締結前の注意点】
- 作成された条件を確認する
- 契約期間に関して注意
- 秘密を保持する内容
- 管轄の裁判所について
経済産業省の雛形を活用することで自力で契約書を作成することも可能ですが、出来上がるものはあくまで標準的な契約書です。実用的な契約を用意するためには、M&A内容や相手方との交渉内容を反映させたものでなければいけません。
秘密保持契約(NDA・CA)の内容に不備があるとトラブルに発展することもあるため、締結前に確認しておく必要があります。秘密保持契約(NDA・CA)の契約書を自社で用意する場合もしくは相手方が用意する場合においても専門家を介することをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。