2022年11月30日更新会社・事業を売る

TMK(特定目的会社)とは?SPCとの違い、設立の手順を徹底解説

TMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)などの言葉を聞くことがありますが、これらはわかりにくい部分がある用語です。この記事では、TMK(特定目的会社)とは何か、SPC(特別目的会社)との違いや設立の手順などを解説します。

目次
  1. TMK(特定目的会社)とは?
  2. TMK(特定目的会社)とSPC(特別目的会社)との違いとは
  3. M&AとTMK、SPCの関係性とは
  4. TMK(特定目的会社)設立の手順とは
  5. M&Aの相談におすすめの仲介会社
  6. TMK(特定目的会社)のまとめ
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TMK(特定目的会社)とは?

これまで、ソフトバンクによるボーダフォンの買収やライブドアによるニッポン放送の買収未遂といった大規模M&Aが話題になりましたが、これらのM&AにはTMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)と呼ばれる法人が重要な役割を果たしました。

中小企業でも、従業員への事業承継で株式を買い取らせる場合にTMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)を利用することがあります。

TMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)は、普通の株式会社とは違う性質を持つのでわかりにくい部分も多いです。TMK(特定目的会社)とSPC(特別目的会社)の相違点もわかりにくいかもしれません。

そこでこの章では、TMK(特定目的会社)とは何かについて、その定義や活用されるシーンなどを解説します。

TMK(特定目的会社)の定義とは

TMK(特定目的会社)の定義を理解するためには、まず特別目的事業体(SPV)を知っておく必要があります。特別目的事業体(SPV)とは、資金調達や資産の証券化など、ある特別な目的のために設立する事業体のことです。

そして、TMK(特定目的会社)とは特別目的事業体(SPV)の1種で、資産の流動化のために設立される社団法人のことです。不動産など流動性の低い資産を証券化し、得た利益を投資家に配分するなどの業務を行います。

通常の株式会社と違い、製品やサービスを製造して利益を上げるといった営業活動は行わないのが大きな特徴です。TMK(特定目的会社)はあくまでも資産の受け皿としてのみ存在し、実際の業務はアセットマネージャーなど外部の組織が行うのも特徴です。

TMK(特定目的会社)が活用されるシーン

TMK(特定目的会社)は資産を流動化するための会社ですが、具体的にどのようなシーンでTMK(特定目的会社)が活用されているのでしょうか。主なシーンとしては、LBO(レバレッジドバイアウト)でM&Aを行う場合など、以下の4点が挙げられます。

  • LBO(レバレッジドバイアウト)によるM&A
  • MBO(マネジメントバイアウト)による事業承継
  • 資産のオフバランス化・財務体質の改善
  • 資産を倒産から守る

LBO(レバレッジドバイアウト)によるM&A

M&AでTMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)が活用されるのは、LBO(レバレッジドバイアウト)と呼ばれる手法が使われる場合です。

LBO(レバレッジドバイアウト)とは少ない資金で大規模なM&Aを行うための手法で、買収する事業が将来生み出す利益を担保に資金調達し、その資金で会社を買収します。

その資金調達の受け皿として、TMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)が活用されることがあります。

MBO(マネジメントバイアウト)による事業承継

従業員を新しい経営者に据える親族外事業承継では、株式を買い取る資金をいかに捻出するかが問題です。給与を主な収入としている従業員が、株式を買い取れるほどの自己資金を持っていることはまれです。

MBO(マネジメントバイアウト)は従業員が株式を買い取る資金を作るための手法で、TMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)に資金調達をさせて、その資金で株式を買い取ります。

資産のオフバランス化・財務体質の改善

不要な資産を減らしてオフバランス化し、財務体質を改善するためにTMK(特定目的会社)を活用するケースもあります。

不動産が負債として重荷になっている場合、TMK(特定目的会社)へ不動産を売却すれば財務体質の改善が可能です。不動産をTMK(特定目的会社)へ売却すれば貸借対照表から除外でき、TMK(特定目的会社)への売却なら、賃料収入などの権利は持ち続けられます。

資産を倒産から守る

TMK(特定目的会社)に資産を移転すれば、会社が倒産しても移転した資産はTMK(特定目的会社)のものとして残ります。資産を倒産から守るというのも、TMK(特定目的会社)が活用されるシーンの1つです。

【関連】LBO(レバレッジド・バイアウト)とは?仕組みやスキーム、メリット・デメリットや事例をわかりやすく解説| M&A・事業承継の理解を深める

TMK(特定目的会社)の課税とは

TMK(特定目的会社)は税制の面で優遇措置が講じられています。法人税法では配当を損金に算入できませんが、TMK(特定目的会社)の根拠となる資産流動化法では、一定の条件を満たせば損金算入できると定められています。

登録免許税と不動産取得税が軽減されるのも、TMK(特定目的会社)の有利な面です。ただし、この軽減は2021年3月末までの措置で、これ以降も措置が延長されるかは未定です。

このように、TMK(特定目的会社)は課税について一定の優遇がされている一方で、連結納税制度が利用できないなど株式会社に比べて不利な部分もあります。

株式会社との違いとは

株式会社とTMK(特定目的会社)の違いとして、まず根拠となる法律が違うという点が挙げられます。株式会社は会社法で規定されていますが、TMK(特定目的会社)は「資産の流動化に関する法律(資産流動化法)」によって規定されています

株式会社は事業を行い利益を上げるのが大きな目的ですが、TMK(特定目的会社)は利益を上げるための事業を行えません。TMK(特定目的会社)は、設立当初に策定した資産流動化計画に沿った業務のみを行います。出資者の違いも、株式会社とTMK(特定目的会社)の違いの1つです。

株式会社では株主の出資が資本金となりますが、TMK(特定目的会社)では特定社員と優先出資社員が出資します。特定社員とは株式会社でいう発起人にあたる人で、優先出資社員とは株式会社でいう株主にあたる人です。

また、株式会社は解散しない限りずっと存在できますが、TMK(特定目的会社)は資産流動化計画に記載された事業が終了したら解散する点でも異なります

  株式会社 TMK(特定目的会社)
根拠となる法律 会社法 資産の流動化に関する法律(資産流動化法)
目的 事業を行い利益を出す 資産の流動化
出資者 株主 特定社員・優先出資社員
解散のタイミング 任意解散や破産 資産流動化計画に記載された事業の終了時

TMK(特定目的会社)とSPC(特別目的会社)との違いとは

TMK(特定目的会社)と並んでよく出てくる用語にSPC(特別目的会社)がありますが、両者は名前も似ているので違いがよくわからない方も多いでしょう。

SPC(特別目的会社)とは、特別目的事業体(SPV)のうち法人格を持つものをいいます。SPC(特別目的会社)のうち、資産流動化法にのっとって作られた法人がTMK(特定目的会社)です。

特別目的事業体(SPV)は、TMK(特定目的会社)とSPC(特別目的会社)の両方を含み、さらに法人ではない事業体もすべて含みます。

SPC(特別目的会社)は、特定の目的のために設立するのであれば会社法・資産流動化法どちらも使うことが可能です。そして、特に資産流動化法で作った会社をTMK(特定目的会社)と呼びます

ただし、TMK(特定目的会社)とSPC(特別目的会社)の用語の使い方にはややあいまいな部分もあり、両者を同じ意味で使う場合もあるので注意が必要です。

【関連】特別目的会社(SPC)とは?メリット・デメリット、設立の手順をわかりやすく解説| M&A・事業承継の理解を深める

M&AとTMK、SPCの関係性とは

TMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)は、M&Aの資金調達手段として利用できる関係性があります。買収する側の企業がTMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)を設立し、TMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)が資金調達をして譲渡企業を買収した後、譲渡企業と合併するのが一般的なスキームです。

この買収方法はLBO(レバレッジドバイアウト)と呼ばれ、大規模な買収を行う時に用いられます。LBOはTMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)と譲渡企業が合併し、資金調達による負債を譲渡企業側が負うのが大きな特徴です。

TMK(特定目的会社)設立の手順とは

TMK(特定目的会社)の設立手順は株式会社の手順と違う部分があるので、手続きを理解しておくことが重要です。この章では、TMK(特定目的会社)とSPC(特別目的会社)の設立の手順、設立する場合の条件とは何かを解説します。

TMK(特定目的会社)の資産流動化法による設立、SPC(特別目的会社)の会社法による設立をそれぞれみていきましょう。

  TMK SPC
資本金の最低金額 少なくとも10万円が必要 1円から可
内閣総理大臣への届出 あり なし
登録免許税の金額 3万円 ・株式会社の場合は少なくとも15万円必要
・合同会社なら6万円以上
定款印紙 必要 ・合同会社の場合は必要なし
・株式会社でも電子定款の場合は不要
役員 取締役1人・監査役1人 ・株式会社:取締役1人
・合同会社:社員1人
会計監査法人の設置 必要な場合あり ・株式会社:大会社のみ必要
・合同会社:不要

TMK(特定目的会社)を設立する場合の条件とは

資産流動化法にもとづいてTMK(特定目的会社)を設立する場合の条件は、上の表に示したとおりです。会社法にもとづくSPC(特別目的会社)の設立に比べて、10万円以上の資本金が必要なこと、内閣総理大臣への届出が必要なこと、定款印紙が必要なこと、監査役の設置が必要なことが注意点です。

一方で、登録免許税は会社法によるSPC(特別目的会社)に比べて安くなっています

SPC(特別目的会社)を設立する場合の条件とは

会社法にもとづいたSPC(特別目的会社)の設立は、TMK(特定目的会社)に比べてやや簡便です。例えば、通常の株式会社と同じように資本金は1円から可能となっており、監査役の設置も義務ではありません。合同会社の場合または株式会社でも電子定款の場合は、定款印紙が不要な点もメリットです。

一方で、登録免許税が高額になる点は、TMK(特定目的会社)と比べた場合のデメリットだといえます。

M&Aの相談におすすめの仲介会社

TMK(特定目的会社)やSPC(特別目的会社)を利用したM&A・事業承継は有効な手段ですが、設立の手順やスキームが難しく、資金調達もうまくいくとは限りません。M&A・事業承継を行う際は、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けることで成功率も上がります。

M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業のM&Aを手がける仲介会社です。さまざまな業種でのM&A実績があるアドバイザーが、親身になってクロージングまでフルサポートいたします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を随時受け付けていますので、M&A・事業承継をお考えの経営者様は、電話かメールで気軽にお問い合わせください。

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TMK(特定目的会社)のまとめ

TMK(特定目的会社)はわかりにくい部分もありますが、うまく活用すればM&Aや事業承継など幅広い場面で効果を発揮します。TMK(特定目的会社)とは何かを理解しておくと、より幅広い経営戦略を練ることが可能です。

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