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人材派遣・人材紹介業のM&A・事業承継の動向は?事例や案件も紹介!

人材派遣・人材紹介業界では、ITの進展やコロナ禍の影響などにより、事業譲渡・株式譲渡・事業承継が盛んに実施されています。人材派遣・人材紹介における事業譲渡・株式譲渡・事業承継のメリットやポイント、事業譲渡・株式譲渡での引き継ぎ手続きを解説します。

目次
  1. 人材派遣・人材紹介業界の現状
  2. 人材派遣・人材紹介業界の今後の動向予測
  3. 人材派遣・人材紹介業界の事業譲渡・事業承継・M&A動向
  4. M&A・事業承継で評価が高い人材派遣・人材紹介会社の特徴
  5. 人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継では人材獲得のノウハウが大切
  6. 人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡によるM&A・事業承継のポイント
  7. 人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡によるM&A・事業承継のポイント
  8. 人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継の案件例
  9. 人材派遣・人材紹介会社のその他のM&A手法
  10. 人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて
  11. M&A・事業承継時におすすめの相談先
  12. 人材派遣・人材紹介のM&A・事業承継まとめ

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人材派遣・人材紹介業界の現状

人材派遣・人材紹介業界は、現在どのような問題に直面しているのでしょうか。この章では、人材派遣・人材承継業界が抱える3つの問題について解説します。

  1. 知名度がないと優秀な人材の獲得が難しくなっている
  2. 法改正により義務化された項目への対応が厳しい
  3. 多くの業種・職種での人手不足によって人材関連サービスの需要が拡大している

①知名度がないと優秀な人材の獲得が難しくなっている

人材派遣・人材紹介会社が優秀な人材を獲得できるかどうかは、会社の知名度に左右される部分もあります。世間一般に知られている人材派遣・人材紹介会社であればスキルの高い人材も集まりやすいですが、知名度がなければ優秀な人材がなかなか集まらないというのが現状です。

人材派遣会社は事業所数が減少傾向にあるため、利用者からみると選択肢が狭まってしまい、人材派遣など別の働き方を選択するケースも考えられます。人材派遣会社の利用者数が少なくなれば、より人材(特に優秀な人材)を集めにくい状況になってしまいます。

②法改正により義務化された項目への対応が厳しい

平成27年に労働者派遣法が改正され、特定労働者派遣と一般労働者派遣事業の区分けがなくなり、労働者派遣事業として一本化されました。

特定労働者派遣事業は、現在得ている許可で平成30年の9月29日までは事業を続けることができ、一般労働者派遣事業も許可の有効期間内であれば事業継続が認められています。

この猶予期間以降、人材派遣・人材紹介会社は新しい基準を満たさなければ労働者派遣事業を続けることはできません。

新基準では、労働者派遣事業はすべて許可制となり、キャリアアップなど教育訓練も義務付けられました。それ以外にも「3年ルール」と呼ばれる派遣期間規制が設けられ、同じ派遣先(組織単位)に対する同一労働者の派遣期間は3年が上限となりました。

法改正によって義務化された項目のなかには、すぐに対応することが厳しいものもあり、新基準をクリアできないために事業の継続を諦めたケースもみられます。

③多くの業種・職種での人手不足によって人材関連サービスの需要が拡大している

人材派遣業界は、さまざまな業界や職種で人材ニーズが高い状態が続いており、全体として安定した成長を見せています。特に、ITエンジニアなどの専門職への需要が増加しているのが目立っており、IT関連のスキルを持つ人材の派遣依頼が増えています。また、従来から就業者数の多い一般事務職においても、依然として安定した需要が見られ、業界全体として堅調な推移を維持しています。

日本における人手不足の要因として、以下の5つが挙げられます。

  • 少子高齢化の進行
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れ
  • 労働力の需要と供給の不均衡
  • 人材の流動性の低さ
  • 労働者の海外流出

厚生労働省が発表したデータによれば、2023年10月時点で日本の総人口は約1億2,435万人ですが、2060年には1億人を割り込み、約9,615万人まで減少する見通しです。この間、65歳以上の高齢者の割合は増え続け、2070年には総人口の約40%を占めると予測されています。

これにより、社会を支える15〜64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどり、労働力不足がさらに深刻化していくことが懸念されています。今後、人材派遣業界としても働き方の多様化や高齢者の積極的な雇用拡大など、人口構造の変化に対応した現実的な施策を講じることが急務といえます。

参考:矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2023年)」

人材派遣・人材紹介業界の今後の動向予測

人材派遣・人材紹介業界で事業譲渡や株式譲渡などのM&Aを検討している場合は、業界動向を把握しておくことが大切です。この章では、人材派遣・人材紹介業界の今後の動向を予測します。

人材派遣・人材紹介業界の市場規模は今度も拡大する見込み

2023年度の人材関連ビジネス主要3分野(人材派遣業、ホワイトカラー向け人材紹介業、再就職支援業)の市場規模は、事業者の売上高ベースで前年度比7.3%増の9兆9,107億円に達すると予測されています。

今後も依然として多くの企業で深刻な人手不足が続いており、業種や企業規模を問わず、人材確保を目的とした人材関連サービスのニーズが高まることが見込まれています。そのため、人材業界全体におけるサービス需要の増加が期待され、各業界が引き続き活発な動きを見せることが予想されます。

参考:矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2023年)」

外国人労働者や高齢労働者の増加

人材派遣・人材紹介業界では、外国人労働者と高齢労働者が増加しています。厚生労働省「外国人雇用状況」によると、外国人労働者は令和元年10月時点でおよそ166万人に達しており、前年の同じ月と比べるとおよそ19.9万人も増えています。

近年は外国人を新卒で採用する企業も増えており、いずれは中途採用も増加していくと予測されているため、人材派遣・人材紹介会社は企業の要望に応えられるよう、外国人労働者の確保も必要になってきています。

高齢労働者の増加による人材派遣・人材紹介会社の変化もあると考えられます。少子高齢化が進むなかでは若手人材の確保に注力しがちですが、限られた若者から必要人材数を確保することは難しい問題もあります。

豊富な経験を有した高齢労働者の採用に積極的に取り組んでいる企業も増えてきているため、人材派遣・人材紹介会社はニーズに対応すべく、高齢労働者の派遣・紹介に注力していくのではないかと考えられます。

雇用サイクルの長期拡大

現在の高齢者雇用安定法では、定年を65歳未満としている企業は、定年制度の廃止・定年を65歳まで引き上げ・継続雇用制度(65歳まで)の導入、3つのいずれかの措置を講じなければならないとされています。

少子高齢化が進む日本では高齢者も長く働ける環境が必要であるというのが主な理由ですが、高齢者のなかには健康上の理由などからフルタイム勤務や継続雇用を希望しないケースもあります。

そのような場合、働き方の選択肢として人材派遣・人材紹介会社の利用が考えられます。このような現状から、人材派遣・人材紹介業界ではスキルや経験豊富をもつ高齢者人材を確保し、雇用サイクルの長期拡大に対応していくものとみられます。

人材派遣・人材紹介業界の事業譲渡・事業承継・M&A動向

人材派遣・人材紹介業界では、生き残りをかけた競争が激しくなっています。自社の抱えている人材や対応事業(業種)だけでは競争に打ち勝てない場合、M&Aを行って自社の弱みを補完する動きもある状況です。

人材派遣・人材紹介業は、外国人労働者・高齢労働者の増加や雇用サイクルの長期拡大といった現状への対応を迫られています。このような問題を解決する手段として、株式譲渡や事業譲渡といったM&Aを活用するケースは今後さらに増加すると予測されます。

M&Aが活性化すれば相手先もみつかりやすくなるため、人材派遣・人材紹介業界でM&A・事業承継を検討しているのであれば、よいタイミングだといえるでしょう。

M&A・事業承継で評価が高い人材派遣・人材紹介会社の特徴

人材派遣・人材紹介業界のM&A・事業承継で、買い手企業から高い評価を得ている会社にはどのような特徴があるのでしょうか。この章では、人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継で、高い評価を得やすい傾向にある会社の2つの特徴を紹介します。

  1. 様々な業種に対応する人材を保有していること
  2. 介護士・その他有資格者などの人材を保有していること

①様々な業種に対応する人材を保有している

さまざまな業種に対応できる人材を保有している人材派遣・人材紹介会社は、買い手企業からの評価が高くなる傾向にあります。人材派遣・人材紹介会社を利用する企業によって、対応業種や求められるスキルの程度は異なるため、多様なニーズに応えられるよう人材を確保しておく必要があります。

そのような理由により、さまざまな業種に対応できる人材を保有していることは、M&A・事業承継での評価が高まりやすい特徴の1つです。人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継を検討している場合は、多様な業種に対応できる人材や高い技術・スキルを有する人材確保へ取り組んでおくことが大切です。

②介護士・その他有資格者などの人材を保有している

介護福祉士などの有資格者を保有していることも、人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継で高い評価を得やすい特徴の1つです。

高齢化が進む日本では介護事業のニーズはさらに高まると予測されるため、介護福祉士や社会福祉士など有資格者を保有している人材派遣・人材紹介会社は高い評価を得られる傾向にあります。

医療や福祉だけでなく、各業種の勤務に欠かせない資格者を保有している人材派遣・人材紹介会社は、高い評価を得られやすくなります。

人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継では人材獲得のノウハウが大切

人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継をよりよい条件で成立させるためには、いかに人材獲得のノウハウを持っているかという点もポイントです。ここでは、今後ニーズが高まると考えられる人材の獲得ノウハウを解説します。

外国人留学生などの人材獲得のノウハウを持っている

近年は国内の人材不足と経済の国際化により、企業は積極的に外国人労働者を雇用するようになっています。

厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」によれば、外国人留学生を含む外国人労働者数は、平成29年は約128万人でしたが、平成30年は約146万人、令和元年は約166万人と年々増加しています。

そのような背景により、外国人労働者の現地採用が可能なスタッフがいたり、日本文化を学べる研修制度などが確立できていたりする人材派遣・人材紹介会社は、M&A・事業承継で高い評価を得やすくなります。

介護・医療などの有資格者を獲得するノウハウを持っている

厚生労働省職業安定局「人手不足の現状把握について」をみると、2009~2017年はどの年度でも医療・福祉業の求人数はほかの業種より高くなっており、慢性的な人手不足であることが読み取れます。

医療や福祉(特に介護)は、精神・肉体的な負担が大きいなどの理由から離職率も高く、人材の確保が難しい業種といわれています。

介護事業は今後の成長が見込まれている市場であるため、新規参入する企業がさらに増加すれば、有資格者の確保は今よりも厳しい状況になると考えられます。

そのため、人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継では、介護・医療などの有資格者確保のノウハウを持っていればよりよい条件で成立する可能性が高まると考えられます。

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡によるM&A・事業承継のポイント

人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継では、株式譲渡や事業譲渡がスキームとして用いられることが多いですが、それぞれどのようなポイントを意識して進めればよいのでしょうか。この章では、人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡を行う際のポイントを解説します。

人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡する際の注目点

人材派遣・人材紹介会社のM&Aで事業譲渡を用いる場合は、現在の労働者派遣法で定められている雇用条件や就業規定が自社の状況が適合しているかをよく確認しておくことが重要です。

前述したように、労働者派遣法は2015年に大きく改正されているため、派遣期間(同じ事業への派遣は3年まで)、有期労働契約社員(同じ事業に5年以上派遣されている)に対する無期雇用契約への移行対応など、さまざまな条件が加わっています。

見直しが必要な場合は法律に関する専門知識が必要となるため、弁護士あるいは弁護士が在籍しているM&A仲介会社へ相談しながら進めましょう。

人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡によるM&A・事業承継の事例

ここでは、実際に行われた人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡事例を紹介します。

リンクアンドモチベーションによるiDAへの子会社の人材派遣事業の譲渡

2021年11月12日、リンクアンドモチベーションは、子会社であるリンクスタッフィング(東京都中央区)が行っている人材派遣事業をiDA(東京都渋谷区)に譲渡することを決定し、吸収分割契約を締結しました。

この吸収分割は、リンクスタッフィングが分割会社となり、iDAがその事業を引き継ぐ形で行われます。

リンクアンドモチベーションは、企業の組織力を高める「モチベーションエンジニアリング」を基盤に、コンサルティング、クラウドサービス、採用支援、投資・組織人事支援といった幅広い事業を展開しています。一方、リンクスタッフィングは営業・販売職に特化した人材派遣や紹介予定派遣を行い、iDAはファッション業界に特化した人材ビジネスを展開しています。

今回の事業譲渡により、リンクアンドモチベーションはリンクスタッフィングの人材紹介事業に経営資源を集中させ、さらなる事業強化を図る方針です。また、グループ全体で育成した人材を再配置することで、人材紹介事業の収益性を一層高めることを目指しています。

国内人材派遣事業の譲渡に関するお知らせ

わらべや日洋HDによるソシアリンクの一部事業の譲渡

2021年1月18日、わらべや日洋ホールディングスは、子会社であるソシアリンク(東京都新宿区)について、事業撤退と一部事業の譲渡を行うことを発表しました。

わらべや日洋ホールディングスは、グループ全体の経営管理を担い、コンビニエンスストア向けの弁当やおにぎり、総菜といった商品を開発・製造し、物流まで一貫したサプライチェーンを構築しています。

ソシアリンクは、労働者派遣や職業紹介、業務請負、さらに外国人研修といった事業を手掛けていましたが、今回の事業撤退および譲渡決定は、グループ全体の事業を「選択と集中」させることで企業価値をさらに向上させるための施策です。

これにより、わらべや日洋ホールディングスはコア事業への経営資源を集約し、今後の成長戦略をより明確にする方針を示しました。

当社子会社の事業撤退および一部事業譲渡に関するお知らせ

事業譲渡に適した人材派遣・人材紹介会社とは

事業譲渡の場合は法人格はそのまま残せるため、複数の事業を営んでいる人材派遣・人材紹介会社に向いています。人材派遣・人材紹介会社の事業譲渡では、買い手側企業は自社では人材確保が難しい業種の人材派遣・人材紹介事業に強みを持っている会社を高く評価する傾向にあります。

自社にそのような強みがあったり採用ノウハウを有していたりする場合や、ほかに注力したい事業がある場合は、事業譲渡が適しているといえるでしょう。事業譲渡の手続きや注意点などは、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

【関連】事業譲渡・売却の手続きの流れは?目的や実施するタイミング・スケジュールも詳しく解説

人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡によるM&A・事業承継のポイント

人材派遣・人材紹介会社のM&Aでは、事業譲渡ではなく株式譲渡が用いられることもあります。この章では、人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡を行う際のポイントを解説します。

人材派遣・人材紹介会社を株式譲渡する際の注目点

事業譲渡とは違い、株式譲渡では会社の経営権を移行します。株式譲渡は包括承継となるため、権利や義務だけでなく負債や不要な資産も、買い手企業はそのまま引き継ぐことになります。

株式譲渡の場合、買い手側企業は簿外債務の有無や負債状況などを事前によく調査しておくことが重要であるため、デューディリジェンスを徹底して行う必要があります。

デューディリジェンスは財務だけでなく、法務などあらゆる分野に渡りますが、専門家に依頼して行うため時間だけでなく費用も当然掛かります。すべてのデューディリジェンスを行うのは現実的に難しいため、M&A仲介会社などと相談しながら範囲を決めるとよいでしょう。

【関連】簿外債務とは?リスク、買い手の注意点をわかりやすく解説

人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡によるM&A・事業承継の事例

ここでは、実際に行われた人材派遣・人材紹介会社の株式譲渡事例を紹介します。

パーソルテンプスタッフによるヒューテックの株式を譲受

2024年5月31日、パーソルテンプスタッフはヒューテック(佐賀県武雄市)と株式譲渡契約を結び、6月3日付でヒューテックおよびその子会社であるビジネス・サービスの株式を取得しました。

パーソルテンプスタッフは、事務職を中心とした人材派遣・紹介サービスを全国規模で展開する総合人材サービス会社です。九州エリアにも複数拠点を持ち、パーソルファクトリーパートナーズ株式会社と連携し、製造・軽作業領域のサービスを提供しています。

ヒューテックは佐賀県内でトップシェアを持つ地域密着型の人材派遣会社で、製造・事務職の派遣を主に行っています。今回の譲渡により、ヒューテックはパーソルグループの事業基盤を活用し、佐賀・福岡・長崎・熊本での事業強化を図り、さらに製造・軽作業分野のサービス拡大や地域雇用創出に取り組んでいく方針です。

佐賀県の地域密着型の人材派遣会社 ヒューテックと株式譲受契約を締結 ~ 佐賀を中心に福岡・長崎・熊本エリアの人材育成・地域雇用の創出を目指す ~

戸田建設がグリーン・サポート・システムズの全株式を譲受

2023年12月、戸田建設はグリーン・サポート・システムズのすべての株式を取得し、子会社化しました。

戸田建設は、建築・土木、地域開発・都市開発事業、不動産事業、再生可能エネルギーなどによる発電事業を行う企業です。グリーン・サポート・システムズは、人材派遣業、人材紹介業を行う企業です。

今回のM&Aにより、グリーン・サポート・システムズのノウハウを活用し、優秀な人材獲得、人材派遣事業の拡大を目指します。

グリーン・サポート・システムズ株式会社の完全子会社化について

UTグループが水戸エンジニアリングサービスの全株式を譲受

UTグループ株式会社が水戸エンジニアリングサービス株式会社の全株式を譲受し、完全子会社化した事例です。

製造業向け人材派遣業などを手掛けるUTグループは、2020年7月、エレベーター関連のエンジニア派遣・請負事業を営む水戸エンジニアリングサービスの株式をすべて取得しました。水戸エンジニアリングサービスは日立グループの子会社です。

この株式譲渡は、UTグループと日立グループとの関係強化、技術者派遣の領域を広げた企業価値向上を目的として行われました。なお、株式譲渡価額は非公開となっています。

水戸エンジニアリングサービス株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

アルプス技研がデジタル・スパイスの全株式を譲受

2020年6月、株式会社アルプス技研は、株式会社デジタル・スパイスの全株式を取得すると発表しました。

アルプス技研は技術者の派遣事業などを手掛けており、デジタル・スパイスはソフトウエア開発・技術者派遣事業などを手掛けています。

この株式譲渡は、アルプス技研がデジタル・スパイスを傘下に加えることで、ノウハウ共有などのシナジー効果獲得、企業価値の向上を目的として行われました。なお、株式譲渡の価額は非公表となっています。

株式会社デジタル・スパイスの株式取得(子会社化)に係る株式売買契約書締結のお知らせ

株式譲渡に適した人材派遣・人材紹介会社とは

株式譲渡は会社の経営権を移行する手法であるため、現経営者が引退したい場合などに適しています。

前述のように株式譲渡は包括承継であるため、後継者がいないために事業承継ができない場合や自社の経営資源だけでは成長と発展が難しい場合などにも、有効な方法です。

自社の従業員の雇用も維持されるうえ、経営者は売却益を得られるのも株式譲渡のメリットです。なお、株式譲渡の手続きや注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連】株式譲渡の手続きの流れ!手順・必要書類・注意点も徹底解説

人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継の案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継の案件例をご紹介します。

【九州/無借金経営】製造業向け人材派遣業

大手製造工場との取引があり、売り上げは拡大基調です。創業から間もない状況ですが、すでに安定的な売り上げを確立しています。

エリア 九州・沖縄
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 事業の集中と選択

【九州/無借金経営】製造業向け人材派遣業(その他サービス等) | M&A総合研究所

【高収益/優良取引先多数】人材派遣業×映像制作業

大手テレビ局と直接取引口座を保有し、主要番組の制作を担当しています。ネット番組やWebコンテンツ制作、YouTubeの動画制作やチャンネル運営も可能です。

エリア 関東・甲信越
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 1.2億円(応相談)
譲渡理由 資金調達

【高収益/優良取引先多数】人材派遣業×映像制作業(その他サービス等) | M&A総合研究所

【東北】施工管理技士 / 建設系人材派遣業

地元の大手建設会社への取引をメインに行う、建設系人材派遣会社です。施工管理技士や、事務等の派遣業を手掛けています。

エリア 東北
売上高 5000万円〜1億円
譲渡希望額 5000万円〜1億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【東北】施工管理技士 / 建設系人材派遣業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

人材派遣・人材紹介会社のその他のM&A手法

人材派遣・人材紹介会社のM&Aでは事業譲渡や株式譲渡が用いられることが多いですが、それ以外の手法で行われるケースもあります。

例えば、会社分割・第三者割当増資・株式交換などの方法を用いて、人材派遣・人材紹介会社のM&Aが行われたケースも見られます。

M&Aを行う際にどの手法を用いるのが最適なのかは自社の状況や目的などによっても違ってくるため、M&A仲介会社など専門家に相談しながら進めていくことがおすすめです。

人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡・株式譲渡する際の引き継ぎ・手続きについて

人材派遣・人材紹介会社を事業譲渡または株式譲渡する際は、どちらの手法を選択するかによって、必要な引き継ぎや手続きが変わってきます。

どのような手続きが必要になるかを事前に把握しておくことで、M&A・事業承継後の経営をスムーズに進めることが可能です。ここでは、M&A・事業承継それぞれの引継ぎや手続きのポイントを解説します。

事業譲渡の引き継ぎと手続き

事業譲渡は個別承継であるため、契約や権利がそのまま引き継がれることはありません。従業員の雇用契約や取引先との契約の場合、相手の同意を得たうえで個別に契約を再度結ぶ必要があります。

権利や許認可も引き継ぐことはできないため、事業に必要な許認可がある場合は、買い手企業が保有していなければ取得が求められます。

人材派遣・人材紹介業を営むためには、労働者派遣事業許可が必要です。取得が必要な場合は申請にかかる時間を考慮しておかないと、事業譲渡後にスムーズな事業運営ができないため注意しましょう。

【関連】事業譲渡・売却の手続きの流れは?目的や実施するタイミング・スケジュールも詳しく解説

株式譲渡の引き継ぎと手続き

株式譲渡は権利・義務もそのまま引き継ぐ包括承継であるため、特別な引継ぎ手続きは基本的に不要です。

従業員の雇用契約や取引先との関係も株式譲渡では維持されるため、買い手側企業が改めて契約を結ぶ必要もありません。株式譲渡の流れや株主名簿書き換えなどの必要な手続きは、以下の記事でわかりやすく紹介しています。

【関連】株式譲渡の手続きの流れ!手順・必要書類・注意点も徹底解説

M&A・事業承継時におすすめの相談先

人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先を3つご紹介します。

金融機関

最近では、金融機関がM&A支援に特化した専門部署を設置する例が増えています。特に、投資銀行やメガバンクといった大手金融機関は、ファイナンシャルアドバイザー(FA)として積極的にM&Aサポートを行い、買収資金の調達や戦略的アドバイスなどで重要な役割を果たしています。

これらの金融機関を利用する利点として、資金調達に関する高度なアドバイスを受けられるほか、事業承継における株式移転などの課題解決にも貢献できる点が挙げられます。

さらに、専門部署を介することで、M&Aに精通したプロフェッショナルと繋がることができるのも大きなメリットです。

ただし、留意点として、これらの大手金融機関は大規模なM&A案件を中心に扱う傾向が強く、中小企業の案件には対応できないこともあります。そのため、支援機関を選定する際は、自社の規模やニーズに見合ったところを選ぶことが大切です。

また、アドバイザーへの報酬が高額になるケースもあるため、契約前にコスト面を十分に確認することが求められます。

公的機関

近年、事業承継やM&Aに関する公的機関の相談体制が充実してきました。

「事業承継・引継ぎ支援センター」は、後継者問題に直面する中小企業のサポートを目的とし、全国47都道府県に展開された窓口です。ここでは、事業承継やM&Aに関する情報提供、専門的なアドバイス、さらには企業同士のマッチング支援など、幅広いサポートを無料で受けることができます。地方企業でも利用しやすく、専門家の知見に基づく信頼性の高いサポートが得られる点が大きな利点です。

また、個人事業主も相談の対象となっており、必要に応じてM&A仲介会社や各種専門家の紹介を受けることも可能です。ただし、民間のM&A仲介会社に比べると、対応のスピードやサポート内容に限界がある場合もあるため、利用時にはその点も念頭に置く必要があります。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の売買手続きを総合的に支援する専門機関です。売却企業と買収企業の双方と契約を結び、交渉の調整、相手先の選定、取引の進行管理、企業価値の評価(バリュエーション)、書類作成など、M&Aの各ステージにおいて全面的なサポートを提供します。

彼らの主な役割は、売り手と買い手のニーズを調整し、双方が納得できる条件を見出すことです。また、広範なネットワークを活用し、最適な取引先を紹介することでM&Aの成立率を高めることに長けています。特に、M&Aの経験が少ない企業に対しては、具体的なアドバイスを提供し、取引がスムーズに進むようサポートを行います。

ただし、仲介会社によっては、着手金や中間報酬が発生する場合があるため、コスト面での負担がネックになることもあります。費用を抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを導入している仲介会社を検討するのも一つの方法です。

【関連】M&Aの相談先9選!メリットデメリットや選び方とよくある相談内容を紹介
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人材派遣・人材紹介のM&A・事業承継まとめ

人材派遣・人材紹介業界は、人材確保の難しさや法改正で義務化された項目への対応が難しいなどの問題を抱えています。今後は、外国人労働者や高齢労働者への対応強化もますます必要になることから、解決手段としてM&Aが活用されるケースは増加すると考えられます。

人材派遣・人材紹介会社のM&A・事業承継を検討している場合は、よりよい条件・タイミングで行えるよう、計画的に準備を進めておくことが大切です。

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