M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年12月1日更新会社・事業を売る
営業譲渡とは?手続きやメリット、事業譲渡との違い、税務を解説
営業譲渡は、会社の一部の事業を他社に引き継ぐM&A手法です。買い手側には節税やシナジー効果発揮、売り手側には組織を整理できるメリットがあります。この記事では、営業譲渡の手続き方法やメリット、事業譲渡との違いなどを解説します。
目次
営業譲渡とは
営業譲渡とは、事業譲渡とも呼ばれ、会社の事業の一部を他社に譲渡するM&A手法のことです。M&Aと聞くと、会社同士が合併したり、ある会社が別の会社を吸収・買収したりするイメージを持つかもしれません。しかし昨今では、会社の事業の一部だけを譲渡する営業譲渡も、メジャーな手法の1つです。
大企業が負債を抱えたり、大赤字になったりした場合、一部の部門をほかの企業に売却するのも営業譲渡の1種です。営業譲渡で取引される対象は、事業に関わる従業員やシステム・ノウハウ・資産・負債・取引先との関係など、有形・無形のものが包括されます。譲渡内容の範囲は、売り手と買い手の当事者間で自由に決定できるため、中小企業のM&Aでは多く利用されています。
営業譲渡が完了すると、売り手側の経営者は事業に関わる一切の権利を失います。法律 (会社法))上の制約 (競業避止義務) を受け、同一市町村内では同一営業を再開することができなくなる点に注意が必要です。
営業譲渡には、煩雑なプロセスが必要です。実施の際は専門家にアドバイスを受けながら手続きするのがよいでしょう。営業譲渡をお考えの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーが多数在籍しており、営業譲渡をフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
営業譲渡と事業譲渡の違い
ここでは営業譲渡の意味や、事業譲渡との違いをみていきましょう。結論として、営業譲渡は事業譲渡とほとんど同じです。事業に必要な資産や負債をほかの会社に譲渡(売却)します。
その際、売り手は譲渡された事業の支配権を完全に失います。ここまでを踏まえると、営業譲渡は事業譲渡とほぼ変わりありません。
営業譲渡は商法で使われていた言葉ですが、会社法の試行に伴い事業譲渡の名前に変更されました。M&Aや組織再編のように会社法・商法が適用される場面では、事業譲渡の言葉を使うのが一般的になりました。
ただし、商法が適用される場面では営業譲渡の言葉が用いられます。そのため、営業譲渡と事業譲渡はほぼ同じ意味で、混同しても極端な問題があるわけではありません。
法律上、会社法では事業譲渡、商法では営業譲渡として使いわけるのが一般的です。旧会社法でも営業譲渡の言葉が使われていましたが、今では事業譲渡と呼ばれています。法務手続きを進める際には区別しましょう。
営業譲渡と株式譲渡の違い
営業譲渡と株式譲渡の違いは、手続きの工数です。株式譲渡の場合は、株式の移転が基本となっているため、簡単な手続きで完了します。
しかし、営業譲渡の場合は対象となる雇用・資産・契約など、それぞれ同意を得なければならないため手続きが煩雑です。
営業譲渡と株式譲渡にはこのように違いがありますが、一般的に手続きが迅速に行われる株式譲渡で売買取引が進められ、株式譲渡での売買が難しい場合は、営業譲渡を選択するケースが多いです。負債の多い会社の場合は、営業譲渡を選択するケースが多いです。
営業譲渡と会社分割の違い
営業譲渡と会社分割の違いは、承継の際に行われる契約の手続きです。営業譲渡は、売り手側が一部あるいは全部の事業を買い手側へ特定承継する手法のため、譲渡対象となる契約の承継に対し、それぞれ契約先の同意が必要になります。
一方、会社分割は、売り手側が対象事業の一部または全部を分割し、買い手側へ吸収分割もしくは新設分割します。包括承継であり、契約や義務もすべて引き継げるため、個別の契約は不要です。
営業譲渡のメリット
会社における一部の事業を売買する営業譲渡だからこそ、得られるメリットがあります。多くのステップが必要ですが、メリットを期待して実施を考える経営者が多いです。ここからは、営業譲渡のメリットを買い手側と売り手側にわけて解説します。
買い手側のメリット
買い手側の営業譲渡のメリットは、下記のとおりです。
- 不要なものを受け継がなくて済む
- 節税になる
- シナジー効果が期待できる
それぞれのメリットについて、順番に解説します。
不要なものを受け継がなくて済む
営業譲渡における買い手側の最大のメリットは、事業を譲渡する際に不要であると判断したものを受け継がなくて済む点です。買収や吸収には、会社を丸ごと入手できるメリットがある反面、会社の負債(特に簿外負債)や不必要な資産まで引き継いでしまうデメリットもあります。
売り手会社の短所も受け継いでしまうので、新しいトラブルが発生しかねません。一方、営業譲渡では、契約で決定された資産や負債しか引き継がないように調整可能です。不要なものをあらかじめ取り除いたうえで、譲渡を受けられます。
不要な資産には余計な税金がかかりますが、コストを増加させる負債を契約の過程で取り除けるのは営業譲渡の利点です。
節税になる
営業譲渡を実施する際には節税が可能です。ただし、営業譲渡は資産の受け渡しでもあるため、通常のM&Aでは発生しない不動産取得税や登録免許税などの税金が発生し、高コストに思えるかもしれません。
しかし、営業譲渡を実施した買い手は、営業権(のれん代)に相当する金額を5年間均等償却すれば、損金として計上すると法人税を節税できます。投資に費やしたお金に対して、一定以上の節税効果を得ることが可能です。節税目的で営業譲渡を実施するなら、専門家に試算してもらうと安心です。
シナジー効果が期待できる
M&A全般にいえますが、営業譲渡を通じて買い手側へのシナジー効果が期待できます。 営業譲渡では、売り手側からピンポイントで欲しいシステム・ノウハウ・設備などを受け継げるので、会社の不足資源を効率的に補完可能です。
新事業を始める際に、低コストで設備やノウハウを整えられます。会社全体の買収と比べるとスケールこそ小さいです。しかし、買い手側が求めている要素を、低コストかつピンポイントでそろえられるのは営業譲渡特有のメリットといえます。
売り手側のメリット
売り手側の営業譲渡のメリットは、下記のとおりです。
- 会社の組織を整理できる
- 過剰債務を切り離せる可能性がある
- 負債があっても譲渡先を見つけやすい
それぞれのメリットについて、順番に解説します。
会社の組織を整理できる
営業譲渡は、会社組織を整理できる機会です。「会社内の事業で役割が重複している」「非中核事業に不要なコストがかかっている」「負債が増加している」など、問題を抱える事業を営業譲渡で切り離せます。
具体的には、会社全体の業績に悪影響な要素を取り除くのが可能です。不要な事業を営業譲渡で切り離せば、会社全体における経営サイクルの円滑化や負債の軽減などの効果を得られます。営業譲渡なら自社に残したいものを選択可能ですから、調整しやすい点もメリットです。
過剰債務を切り離せる可能性がある
過剰債務を抱えている会社が営業譲渡を活用すれば、存続させたい事業を債務から切り離せる場合もあります。過剰債務によって重要な事業を失いたくない会社にとって、営業譲渡は非常に有用な手段です。しかし、そのような事情で営業譲渡を実施する場合には、借入先の金融機関から許可を得る必要があります。
許可を得ていない状態での営業譲渡は違法行為となり、詐害行為として営業譲渡そのものを無効化されることは知っておかなければなりません。最悪の場合、訴訟問題に発展する可能性もあるので、金融機関から許可を受けてから営業譲渡を実施するのが良いです。
過剰債務と事業の切り離しを行う際に少しでも不安な点があれば、専門家のもとで正しい手続きを踏みましょう。
負債があっても譲渡先を見つけやすい
営業譲渡では、売り手は売却したい事業を譲渡し、残したい資産や事業は売却せずに手元に残せるメリットがあります。しかし、株式譲渡の場合は会社全てが売却対象となり、買い手側は負債も含めて引き継がなければならず、躊躇(ちゅうちょ)する可能性があります。事業譲渡は、負債があっても譲渡先を見つけやすいです。
営業譲渡のデメリット
営業譲渡にはさまざまなメリットがありますが、見過ごせないデメリットもあるので確認しましょう。営業譲渡のデメリットは買い手側・売り手側に共通して存在します。
買い手側のデメリット
買い手側の代表的なデメリットは下記の2つで、いかに発生させないかが重要です。
- 営業譲渡は手続きが煩雑である
- 顧客・従業員・取引先が離れる可能性がある
これらのデメリットを事前に押さえておくことは非常に重要です。それぞれのデメリットについて、順番に解説します。
手続きが煩雑である
営業譲渡の最大のデメリットは手続きが煩雑である点です。営業譲渡は買収と違い、一部の事業の所有者だけが変わります。事業に関係する顧客・従業員・取引先との契約関係が一度白紙に戻されてしまい、契約などの手続きをやり直さなければなりません。
この手続きが非常に煩雑であるため、買い手側や売り手側にとって手間になる可能性が高いです。加えて、行政からの許認可が必要な事業であると、その許認可も再度取得しなければいけません。手続きに時間がかかってしまうと、新事業が停滞する可能性があります。
顧客・従業員・取引先が離れる可能性がある
営業譲渡では、顧客・従業員・取引先との契約関係を一度リセットし、再締結が必要です。それをきっかけに、顧客・従業員・取引先が離れてしまうリスクがあります。この手続き自体が手間であるため、顧客が嫌がるケースも少なくありません。
営業譲渡に対して不満を持っている従業員や取引先が契約を拒否するリスクもあります。結果として想定していたシナジー効果が得られないだけでは済まず、新たなトラブルの原因にもなりかねません。
M&Aの手法全般にいえますが、異なる企業文化・価値観を持つ組織との統合は容易ではありません。それぞれが1つになることで、新たなトラブルの火種になるリスクもあります。営業譲渡の際には、綿密な協議や従業員との連携が必要不可欠でしょう。
売り手側のデメリット
売り手側の代表的なデメリットは下記の2つです。
- 競業禁止規定の制約を受ける
- 譲渡益が発生すると法人税が課される
これらのデメリットについて、順番に解説します。
競業禁止規定の制約を受ける
営業譲渡した場合売り手側は、競業避止義務が発生します。営業譲渡を行った後20年間は、同一の区域内や隣接する市町村で同じ事業を行うのが禁止されています。競業避止規定は法的拘束力も伴いますので、違反した場合は罰則がある点に注意しましょう。
譲渡益が発生すると法人税が課される
営業譲渡により譲渡益が発生した場合、譲渡益法人税が30%程度課税されます。譲渡益が多くなればなるほど税金の額も増え、負担になる可能性があります。
営業譲渡の手続きと流れ
ここでは、営業譲渡の手続きと流れを解説します。営業譲渡は事業譲渡と同じですから、基本的には事業譲渡の手続きの流れと変わりません。各プロセスは下記のとおりです。
- 営業譲渡の決定
- 譲渡先・譲受先の会社の選定
- 交渉
- 基本合意契約の締結
- デューデリジェンス
- 取締役会決議
- 条件交渉
- 事業譲渡契約の締結
- 株主総会による特別決議
- クロージング
専門家に任せる前に自分で大まかな流れを知っておけば、スムーズに進めていけます。それぞれのステップについて、順番に解説します。
①営業譲渡の決定
まずは営業譲渡の実施の決定から開始します。営業譲渡の目的を精査し、それ以外にも有効的な手法がないかを検討しましょう。あくまで営業譲渡はM&Aにおける手法の1つであり、目的を達成するうえでほかの手段を活用できる可能性も高いです。
現時点の経営状況から考えて本当に営業譲渡を行うべきか吟味しましょう。そもそも営業譲渡(事業譲渡)は株式譲渡と比べて、手続きが多い煩雑な手法です。例えば、雇用や取引先との契約関係を取り直す必要があり、当事者である会社によっては労力がかかります。
営業譲渡が適切な方法かどうか分析するのが大切です。その際、M&AをサポートしてもらうM&A仲介業者やM&Aアドバイザリーの協力を得ることも考えましょう。営業譲渡の目的を明確化した後は、スキームを設計してから営業譲渡の実行に移っていきます。
②譲渡先・譲受先の会社の選定
営業譲渡の実施が決定したら、譲渡先・譲受先となる会社を選定します。譲渡先・譲受先の会社を選ぶときは、相手の財務状況や経営戦略などを細かく分析し、ロングリストを作成するのです。その後、ショートリストを作成して候補を絞り込んでいく流れとなります。
そして、有力な候補が確定してからそれぞれにアプローチをかけ、具体的な交渉に入っていきましょう。このプロセスは基本的にM&A仲介業者とともに行うのがほとんどです。自社のみで最適な譲渡先・譲受先とマッチングするのは難しいため、専門家にサポートを依頼した方が効率がよいでしょう。
③交渉
譲渡先や譲受先の会社を選定したら、有力候補との交渉に移ります。営業譲渡を実行するか否かは、譲渡価格などの条件を交渉していくステップです。このプロセスでM&Aアドバイザリーの協力を依頼しているなら、その業者が代行します。
相手が営業譲渡に興味を示した場合、必要があれば秘密保持契約を締結してお互いの会社の情報を開示し、さらにトップ対談で意思を確定させていく流れです。秘密保持契約の締結は必須と考えておいた方がよいでしょう。
なぜなら、営業譲渡の実施が確定していない段階でさまざまな情報が漏れてしまうと、問題になりやすいためです。営業譲渡について互いに合意できるなら、次のステップに進みます。
④基本合意契約の締結
交渉して当事者である会社同士が営業譲渡の合意をとり、なおかつ意思疎通に問題がなければ基本合意契約を結びます。基本合意契約は営業譲渡の確定を示す契約です。契約では、互いに合意した事項やデューデリジェンスの期間、対価を支払う時期などを明記します。基本合意契約を締結すれば、両社が営業譲渡を前向きに考えられるでしょう。
⑤デューデリジェンス
基本合意契約を締結後、営業譲渡の実施に向けてデューデリジェンスを行います。デューデリジェンスは営業譲渡に限らず、M&Aにおける重要な監査プロセスです。
デューデリジェンスでは、当事者である会社(主に譲渡する売り手側)を財務・税務・法務などの観点から実地調査し、リスクを洗い出します。税理士・公認会計士・弁護士などの専門家と協力して実施する作業です。
もしも営業譲渡を実施するなら、売り手と買い手にかかわらずデューデリジェンスには力を入れましょう。実施後のトラブルになるリスクを大きく減らせるはずです。
⑥取締役会決議
デューデリジェンスを行い、問題がなければ取締役会決議で営業譲渡の実施を正式に決めます。具体的には、営業譲渡について取締役会決議をとらなければなりません。取締役会決議が終了次第、営業譲渡の実施に向けて詳細な条件を確定する段階に移ります。
⑦条件交渉
営業譲渡の実施が正式に決まったら条件交渉します。条件交渉は、営業譲渡におけるさまざまな手続きの詳細を決めるプロセスです。営業譲渡は会社売却と異なり、事業を譲渡する手法となります。事業の取引先や従業員との契約、事業に必要な許認可などを取り直さなければなりません。
営業譲渡では譲渡する資産や負債を選べ、譲受先が承継したくない資産と負債を除くことも可能です。作業が多いことから営業譲渡は手続きが煩雑になりやすいとされています。しかし、条件交渉に不備があるとトラブルになりかねないので、専門家のもとで時間をかけて手続きを行いましょう。
⑧事業譲渡契約の締結
基本的に営業譲渡は事業譲渡と呼ばれるため、デューデリジェンスや条件交渉が終了次第、問題がなければ取締役会決議をとった後に事業譲渡契約を締結します。その際、売り手となる会社は、自社の情報や契約内容が正しいことを証明する表明保証を行わなければなりません。
万が一、表明保証による内容が事実と異なっていた場合は、損害賠償が発生する可能性もあるので注意しましょう。専門家のもとで正しく表明保証を行うべきです。
⑨株主総会による特別決議
営業譲渡で譲渡される事業が会社にとって重要だったり、すべての事業を譲渡したりするなら、株主総会で特別決議をとらなければなりません。営業譲渡が発生し、効力が発揮される日までに株主総会を開催します。
議決権の過半数を持つ株主が出席したうえで、3分の2以上の賛成を得る特別決議をします。ただし、譲渡する事業が純資産額の5分の1のみである場合や、完全支配関係にある会社同士の営業譲渡であるケースは、株主総会をスキップが可能です。
⑩クロージング
事業譲渡契約を締結して株主総会で特別決議を得られたら、残りの手続き(不動産の移転や従業員との再契約など)を完了させるクロージングに移ります。クロージングを終えたら営業譲渡の手続きは完了ですが、その後の経営統合には注意を払っておきましょう。
営業譲渡に限らず、M&Aは成約すれば終わりではなく、その後の経営統合をいかにスムーズに完了させるかが重要です。この際、M&Aのプロセスで体力を使い果たして経営統合をおざなりにすると、想定したシナジー効果を獲得できません。
営業譲渡はシナジー効果が発揮されてこそ完了します。特に買い手は統合作業に時間をかけ、決して油断しないようにしましょう。以上が、営業譲渡(事業譲渡)を行うために必要な10個のステップです。
営業譲渡の注意点
営業譲渡を実際に行う際には、デメリットに加えていくつかの注意点を踏まえておく必要があります。営業譲渡、すなわち事業譲渡における注意点は下記のとおりです。
- 承継するものの協議は慎重にする
- 専門家のサポートを得る
これらの注意点を押さえておけば、営業譲渡が成功する可能性は非常に高まります。それぞれの注意点について、順番に解説します。
①承継するものの協議は慎重にする
営業譲渡は承継対象を契約の範囲内で選別できます。買い手となる会社の立場からは、経営の支障になる負債や資産を承継したくないのは当然であり、売り手となる会社の立場ではなるべく負債や不要な資産を承継してほしいと考えがちです。
営業譲渡を含め、M&Aでは買い手と売り手の主張はすれ違いやすいものであるため、お互いがどこで譲歩するかを慎重に協議する必要があります。お互いの交渉力が問われる場面なので、少しでも不安があるなら専門家に仲介してもらうことを検討しましょう。
②専門家のサポートを得る
営業譲渡は手続きが煩雑になりやすく、売買価額の細かい計算が必要になるなど専門的な知識が必要です。営業譲渡を行う際は、専門家のサポートを得るのがおすすめです。例えば、M&A仲介業者・FA・経営コンサルタント・弁護士・公認会計士・税理士などです。
包括的承継をする手法と違って、契約の範囲内で承継するものを細かく決めたり、従業員との雇用契約を結び直したりする必要があります。場合によっては、許認可の再取得にも対応しなければなりません。その際、専門家のサポートがあればミスを防ぎやすく、円滑に営業譲渡を進められます。もちろん、契約関係のチェックをするうえでも有効です。
営業譲渡・M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A仲介実績豊富なアドバイザーが専任体制で、M&Aを丁寧にサポートします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
営業譲渡の時価と売買価額
営業譲渡における事業の価格は時価や売買価額が影響する場合も少なくありません。例えば、第三者と実施する営業譲渡では時価と売買価額を同じ金額にしますが、場合によっては時価より売買価額を大きくし、寄付金を加味した金額で売買価額を設定する場合もあります。
時価だけでなくのれんを加味して売買価額を決めるケースも見られるのです。事業の価格は事業価値がベースですが、会社同士の都合にあわせて売買価額が調整されることもあります。
営業譲渡の価格算出方法
営業譲渡は会社が行っている事業を売買するものなので、営業譲渡の価格は売買される事業それ自体の価格です。事業の価格は事業価値といわれており、企業価値から金融価値(事業外の資産価値)を差し引いたものです。事業価値の算定にはさまざまな手法があります。
「事業の価値を出すのだから、単純に収益だけを見ればいいのでは?」と感じるかもしれませんが、事業はそれ自体が立派な資産であると同時に、成長性を秘めています。事業価値を算定するなら、事業の成長性や将来のキャッシュフロー、資産の時価などを考慮しなければなりません。
企業価値の算定のようにコストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチなどの手法を組み合わせ、最も適切に算定された価値を事業価値としましょう。その際、使用する手法のメリット・デメリットを踏まえておくのが大切です。
例えば、コストアプローチは帳簿上の資産を参照して事業価値を把握できますが、その事業の将来性が価値に反映されません。これに対して、インカムアプローチは事業の将来的な収益の変化や成長性を加味できる手法ですが、将来の事柄をベースにして価値を算定するため、主観的な評価になりがちです。
一方、マーケットアプローチは実際にあった取引を参照する手法で、客観性を担保できます。しかし、実施する営業譲渡と類似した事例を見つけにくいデメリットがあります。事業価値の算定を行う際は、各手法のメリット・デメリットを適切に把握しましょう。営業譲渡の価格算出方法には、以下が挙げられます。
- 時価純資産額
- 時価総負債額
- DCF法
- 超過収益還元法
- 利益年倍法(年買法)
それぞれについて、順番に説明します。
時価純資産額
資産などにおける会社の価値を時価で評価する方法です。すべての資産を算出した後に、負債の項目(未払い給与、退職金給与引当金、賞与引当金、偶然債務など)の額を時価から差し引いて求められる方法です。
時価総負債額
貸借対照表の負債が時価とかけ離れている場合があります。その乖離(かいり)をなくすため、有利子負債額などを時価で算出する方法です。時価総負債額は、時価純資産額などの算出する際に用いられます。
DCF法
DCF法は、ある資産や金銭的価値をそれらが将来的に生み出すキャッシュフロー全体に対して、リスクを勘案した割引率・キャッシュフローの予測期間・現存価値などをシミュレーションして勘案し、現時点の企業価値とする評価方法です。収益還元法ともいいます。のれんや将来の期待を反映する評価として合理的とされています。
超過収益還元法
将来期待できる実際収益(フリーキャッシュフロー)から期待収益を差し引いたものが、超過収益還元法です。通常は導き出された営業権譲渡の価格が高い場合に活用されます。超過収益還元法の利用する場合は、詳細な事業計画書を用意する必要があります。
利益年倍法(年買法)
利益年倍法(年買法)は、時価純資産価額に過去数年分の営業利益を加算して求められる手法です。年数は任意で決められるため、企業間で決定しますが、一般的には3~5年とされています。比較的簡単に計算できる方法であり、理解しやすい特徴があります。
営業譲渡の税務上の取り扱い
ここでは、営業譲渡の税務についてお伝えします。営業譲渡と事業譲渡はほとんど同じものであるため、実際にお伝えするのは事業譲渡の税務です。営業譲渡の税務において注意しておきたいのは、課税される税金となります。
株式譲渡のような一般的なM&Aの手法とは異なり、営業譲渡では法人税のみならず消費税が課税されます。法人税と消費税のそれぞれ税務の取り扱いは、下記のとおりです。
- 法人税の税務上の取り扱い
- 消費税の税務上の取り扱い
それぞれについて、順番に確認していきましょう。
①法人税の税務上の取り扱い
法人税の税務上の取り扱いは、営業譲渡を行った際に発生した譲渡価額によって変わります。譲渡価額は、営業譲渡を行った事業年度の益金の額に算入され、営業譲渡直前の帳簿価額は損金の額に算入されます。
その際、譲渡価額が営業譲渡を行う直前の帳簿価額より高い場合、帳簿価額を超えている部分の金額が譲渡益として扱われ、法人税の課税対象です。ただ、営業譲渡を行う当事者の会社間の関係が完全支配関係であり、一定の要件を満たしているならばグループ法人税制が適用されます。グループ法人税制が適用されると、譲渡損益を繰り延べることが可能です。
②消費税の税務上の取り扱い
営業譲渡は会社内の事業を売買する行為ですが、会社売却と違って事業は資産として扱われるため、通常の資産を譲渡する際と同様に消費税が発生します。営業譲渡では課税資産と非課税資産を分類し、消費税を確かめておくのが必要です。
営業権(のれん)は課税資産に含まれるので注意しておきましょう。消費税によって譲渡価額が大きく変わることもあるため、消費税を正確に算定しておくのが好ましいです。ただ、各財産の対価の額が明確ではなく資産や負債を一括して売買価額を決定している場合は、課税資産と非課税資産の時価を案分した金額を用いるのが一般的な方法です。
税金の事柄は非常に難しいので、専門家に相談を受けながら節税対策を考えていくとよいでしょう。営業譲渡の価格がどう決まるか、気になった人も多いはずです。引き続き、営業譲渡の価格も触れていきます。
営業譲渡で譲り受けた償却資産の減価償却
営業譲渡で譲り受けた償却資産の減価償却も知っておくべきです。営業譲渡で事業が所有している償却資産を譲受する場合もあり、中古の償却資産は減価償却されます。減価償却の際、減価償却には下記の計算式を用います。
【法定耐用年数を一部経過している場合】
- (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
【法定耐用年数をすべて経過している場合】
- 法定耐用年数×20%
いずれも1年未満の端数を切り捨て、2年未満は2年として計算します。
営業譲渡契約書と注意ポイント
事業譲渡契約の契約書(営業譲渡契約書)を作成する際には、注意が必要です。契約書はインターネット上で検索すればひな型が見つかるため、簡単に作成できます。契約書には、下記の項目を記載しなければなりません。
- 営業譲渡を行う当事者
- 譲渡される事業
- 譲渡される財産
- 対価
- 従業員の譲渡の有無や処遇
- 表明保証
- 営業譲渡を行う前後の尊厳事項
- 金銭的補償(損害賠償)
- 解除(契約を解除する事由)
契約内容に食い違いがあると、後でトラブルにつながりかねません。曖昧であると解釈がわかれてしまうこともあります。契約書は具体的に記載するように努めるとともに、弁護士などの専門家にもチェックしてもらいましょう。
営業譲渡における債務
営業譲渡における債務は、交渉過程で譲渡する資産から除くことが可能です。株式譲渡や合併では、売り手となる会社を包括的に承継するため、すべてを受け継いでしまいます。簿外債務などが含まれ、トラブルに発展するケースも少なくありません。
しかし、営業譲渡は債務のみならず、承継したくない資産や従業員を契約で決められます。譲渡したい負債や資産を買い手の会社に承継させることも可能ですが、譲渡価額に影響するかもしれないので注意しましょう。
営業譲渡のまとめ
営業譲渡は事業譲渡とほぼ同じ意味で使われるため、同一視しても問題はありません。営業譲渡はメリットが多いですが、手続きが煩雑になりやすい手法です。実施の際は、理想的な結果を得るためにも、M&Aアドバイザリー・税理士・会計士などの専門家から協力を得ましょう。
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