M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月30日更新資金調達
税制適格ストックオプションとは?メリットや有償・非適格との違い
税制適格ストックオプションの要件は厳しいものの、導入により得られるメリットは大きいです。この記事では、税制適格ストックオプションの要件や、税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションの違いなどを解説していきます。
目次
税制適格ストックオプションとは
ストックオプションを活用する企業は増加していますが、税務に関する知識が曖昧な人は多いです。
この記事では、ストックオプションを有効活用する際に知っておくべき「税制適格ストックオプション」について、わかりやすく解説していきます。
まずは、税制適格ストックオプションとはなにか、基本的な内容から確認していきましょう。
ストックオプションの概要と導入するメリット
ストックオプションとは、事前に設定された価格(権利行使価格)で株式を購入できる権利です。「株を安く購入する権利」と考えてもらえれば、理解しやすいかと思います。
ストックオプションを付与された従業員や役員は、株価が上昇した時点で権利行使・売却することで、権利行使価格と株価の差益を享受できます。
つまり、自身の頑張りによって会社の株価を上昇させれば、そのぶん多額の利益を手に入れられます。
なお、仮に会社の業績が思うように上がらず、株価が権利行使価格よりも低い場合は、従業員は権利行使をする必要はありません。
このように、ストックオプションを与えられた従業員は、会社の成長がそのまま自身の利益に繋がるため、高いモチベーションを持って働くことができるようにもなります。
ストックオプション導入により、会社側と付与される従業員や役員双方に大きなメリットがもたらされます。
ストックオプションの種類
一口にストックオプションと言っても、その種類は様々です。まず、ストックオプションは大きく分けて「無償」と「有償」の2種類に分けられます。
さらに無償ストックオプションは、税制適格か税制非適格かによって更に分類可能です。つまりストックオプションは、下記の通り分類されます。
- 税制適格ストックオプション(無償)
- 税制非適格ストックオプション(無償)
- 有償ストックオプション
各種類ごとに、課税される税金や仕組みが異なりますが、この中で一番従業員に対してメリットの大きいストックオプションが「税制適格ストックオプション」です。
税制適格ストックオプションは2重課税が起こらない
通常のストックオプションは、権利行使をした際と売却の際で二回税金を収める必要が出てきます。
しかし、税制適格ストックオプションは、「利益が生じた際の課税が売却時点まで繰り延べられる」といった優遇措置を受けられるのです。
つまり、課税のタイミングが「株を売却した時」の一度だけになり、権利行使の際に税金を払う必要がなくなります。
これが、税制適格ストックオプションが従業員に対して一番メリットが大きいと言われる理由です。
M&Aの場合ストックオプションの扱いはどうなる?
M&Aの際にストックオプションは扱いに困ることがあります。売り手となる会社にストックオプションがあった場合、それをどう扱うかは、買い手となる会社に委ねられるのです。そのため、買い手と売り手が協議してストックオプションの扱いを取り決めなければなりません。
M&A時におけるストックオプションの取り扱いについては、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
税制適格ストックオプションの要件
ここからは、税制適格ストックオプションの要件をご紹介します。
メリットを享受する為には、下記要件をクリアしなければなりません。
- 発行携帯
- 付与対象者の要件
- 権利行使価格・限度額
- 権利行使期間
- その他要件
それぞれ順番に解説していきます。
⑴発行形態
まず、ストックオプションが無償で発行されることが第一の要件です。この要件には、役務提供の対価として発行されたものも含まれています。
無償発行される事に加えて、ストックオプションの譲渡を禁止することも要件に含まれるため、付与された人物がストックオプションを使わなければ、税制適格とはなりません。
⑵付与対象者の要件
ストックオプションの付与対象者は、自社や関連会社の役員または従業員である必要があります。役員であっても、監査役や会計参与に対しては付与できないため注意が必要です。
更に監査役等以外の役員でも、発行済株式数のうち3分の1超(公開会社は10分の1超)を保有する者は税制適格の対象外となります。
⑶権利行使価格・限度額
権利行使価格は、ストックオプション付与契約時の株価以上の権利行使価格となる必要があります。
当たり前の話になってしまいますが、権利行使価格が契約時の株価よりも低いと、ストックオプションを付与した段階で利益が発生するのです。
それだと、従業員としては「頑張って業績を上げて、株価を高めよう」というモチベーションに繋がりません。
なお、従業員のモチベーション向上を考慮すると、極力ストックオプションの権利行使価格は低く設定することがベストです。
例えば契約時の株価が100円であれば、権利行使価格は101円という感じで、適格要件を満たしつつ極力低く設定しましょう。
年間権利行使価額が1,200万円を超えない事も要件となります。超えてしまうと超えた金額分だけでなく、権利行使価額の全額に課税が生じるので要注意です。
⑷権利行使期間
税制適格要件をクリアする為には、付与決議から2年~10年以内の間に、権利を行使しなければなりません。
2年以内もしくは10年を超えた場合は、税制非適格ストックオプションとなります。
⑸その他の要件
上記以外にも、細かい税制適格要件が設定されています。会社法に反しない形での付与や証券会社との契約、法定調書の提出が要件です。
また、以下の記事ではストックオプションで発生する税金について紹介しているので、併せてご確認ください。
税制適格ストックオプションと非適格ストックオプションの違い
上記の要件を満たすことができない場合、「税制適格ストックオプション」を認めてもらうことはできません。
その場合は、「非適格ストックオプション」という形でストックオプションが付与されます。
税制適格ストックオプションの課税
税制適格ストックオプションでは、権利行使後に株式を売却した時点で課税が発生します。
株式売却時には、「権利行使価格と売却価格の差額×株式数」分だけ譲渡所得が生じ、その譲渡所得に対して20.315%の所得税等が課税されるのです。
通常の株取引と同様、申告分離課税により譲渡所得の金額に対して一律の税率で課税されます。
20.315%の税金のうち5%分は住民税であり、所得税とは納税するタイミングが異なるのでご注意ください。
申告分離課税である上に税率が一定である為、税負担は比較的軽いです。
税制非適格ストックオプションの課税
「税制非適格ストックオプション」では、株式売却時点に加えて権利行使時にも課税されます。
また、税制非適格の場合、課税タイミングのみならず権利行使時の税金種類の観点でも非常に不利です。
給与所得に対しては累進課税により課税される為、差額が大きいほど多額の税金が持って行かれます。
最大で5割程度の税金を取られる事だけでなく、「実際には現金を得ていないにも関わらず課税される」点が難点です。
権利行使と同時に株式を売却しなければ、納税する資金が不足する恐れがあるでしょう。
税制適格ストックオプションと有償ストックオプションの違い
ここからは、税制適格ストックオプションと有償ストックオプションの違いを解説していきます。
両者の相違点
「税制適格ストックオプション」と「有償ストックオプション」の違いは、ストックオプションを取得する際の費用に違いがあります。
通常、ストックオプションは無償で従業員や役員に付与されるのです。
しかし、有償ストックオプションの場合は、付与対象者である従業員や役員が、一定金額を支払わなければなりません。
この点が、「税制適格ストックオプション」と「有償ストックオプション」の最大の違いです。
両者の共通点
有償ストックオプションの場合は、株式売却時のみ課税が生じます。
つまり、有償ストックオプションと税制適格ストックオプションは、課税タイミングの面で共通しているのです。
付与対象者(従業員・役員)は、最初に費用を払えば、税制適格と同じ条件でストックオプションを利用できます。
そのため、有償ストックオプションは、税制適格オプションの要件を満たせなかった時に利用されることが多いです。
税制適格要件を満たせない場合でも、有償ストックオプションを導入すれば、役員や従業員は二重の課税を負う必要がないといえるでしょう。
税制適格ストックオプションの課税と確定申告
ここからは、税制適格ストックオプションにおける確定申告について、権利行使時点と株式売却時点に分けて解説していきます。
権利行使時点
税制適格ストックオプションでは、記事内でも解説している通り、権利行使時点では税金は発生しません。
確定申告は、自身の「所得金額」に基づいて納税額を申告・納付する手続きです。
そのため、権利行使時点では所得に変化は無いため、確定申告は不要ということになります。
株式売却時点
一方、株式売却時点では、税制適格か否かに関係なく、譲渡所得に対する課税が発生します。
つまりストックオプションの種類が何であっても、確定申告は必須です。
税制非適格ストックオプションであれば、確定申告時に必要となる書類は通常の株取引と同様です。
対して、税制適格ストックオプションの場合には、通常の株取引に要する書類に加えて、適格要件を満たす旨を証する書類が必要となるでしょう。
その場合は、ストックオプション付与契約書のコピーや計算明細書等を証明書類として提出します。
【Q&A】ストックオプションに関する疑問点と回答
最後に、ストックオプションに関するよくある疑問点に回答していきます。
- 退職者のストックオプションはどうなるのか?
- ストックオプションのデメリットは?
- ストックオプションの導入が向いている企業とは
一つずつ確認していきましょう。
退職者のストックオプションはどうなるのか?
退職者のストックオプションは、無効になります。
ただし、それは退職者が「ストック・オプション放棄」についての同意書にサインした場合のみです。
通常、従業員が退職する際は、ストックオプションの放棄に関する書類にサインを入れてもらうことになっています。
しかし、サインがない場合は、従業員が退職したとしても、ストックオプションの権利は残ったままとなるわけです。
つまり、仮に退職者が元の職場に復帰した場合、その権利を行使することができるようになるでしょう。
ストックオプションのデメリットは?
ストックオプションにはメリットが多いですが、デメリットもあります。
特に注意すべきは次の2つです。
- 業績が伸びないと社員のモチベーションが低下する
- 権利行使後に社員が辞めてしまうリスクがある
それぞれ見ていきましょう。
業績が伸びないと社員のモチベーションが低下する
ストックオプションを付与された従業員は、業績を上げて、会社の株価を高めることが大きなモチベーションになります。
そのため、業績が思うように伸びない場合、社員のモチベーション低下は免れません。
権利行使後に社員が辞めてしまうリスクがある
ストックオプションの権利を行使して、そのまま社員が辞めてしまうリスクもあります。
特に、ストックオプションを目当てに入社した社員などは、ストックオプションによる利益を手に入れた後に、そのまま会社を離れてしまうケースも多いです。
ストックオプションの導入が向いている企業とは
ストックオプションの導入が向いている企業は、すでに上場している起業か、今後上場を目指しているベンチャー企業のどちらかです。
というのも、ストックオプションは、株式を自由に売ることができなければ、付与されていても意味がありません。
そのため、すでに上場しているか、今後上場する予定がなければ、ストックオプションを導入するメリットが無いのです。
まとめ
今回は、税制適格ストックオプションに関して説明しました。
税制適格ストックオプションの要件は厳しいものの、導入により得られるメリットは非常に大きいです。
税制非適格ストックオプションであると、課税タイミングが二重に発生する上に、現金が無い状態で納税しなくてはいけません。
付与対象者にとってメリットが全く無いため、ストックオプションは税制適格要件を満たした上で導入しましょう。
様々な事情で税制適格要件をクリア出来ない場合は、有償ストックオプションの導入がオススメです。
最初に払い込みが必要とはなるものの、特に条件を満たさなくても税制適格ストックオプションのメリットを享受できるのも覚えておきましょう。
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