M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年11月15日更新業種別M&A
訪問介護のM&A・事業承継の動向!事例や案件例・成功のポイントも解説
近年、訪問介護は、国が推し進める地域包括ケアシステム実現のための重要な業種で、今後M&A・事業承継が活発化すると予想されます。訪問介護のM&A・事業承継に関して、業界動向・手続きの流れ・売却相場・成功のポイントを事例から解説します。
目次
訪問介護の現状
訪問介護業界のM&A・事業承継を行うには、業界の現状を把握したうえで、適切な手法や売買先を選ぶ必要があります。訪問介護業界の現状としては、要介護の高齢者数が年々増加・介護給付費も膨張と抑制の必要性など、以下の5つが挙げられます。この章では、これら5つのポイントを解説します。
要介護の高齢者数は年々増加
要介護の高齢者数は年々増加しており、この傾向は当分の間続くと考えられます。厚生労働省が公表している「介護保険事業状況報告」によると、65歳以上の第1号被保険者の要介護認定者数は、2003年が約370万人であるのに対して、2015年は約607万人です。
また、2022年度末時点では要介護認定者数694万人、第1号被保険者は681万人です。
訪問介護においては、事業者数は35,612 事業所であり、居宅サービス事業所の中で事業所数が最も多いです。また、令和3年度訪問介護の累計費用は1兆562億円であり、前年度比1.1%増と増加傾向が続いています。
今後この増加傾向にいかに対応していくかが、訪問介護業界の大きな課題とされています。
参考:厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)
厚生労働省 「令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況」
厚生労働省 「介護給付費等実態統計」
厚生労働省 「令和3年度 介護給付費等実態統計の概況」
介護給付費の膨張と抑制の必要性
訪問介護の報酬はほとんどが介護給付費から支払われるため、介護給付費の制度が十分に維持されることが重要です。しかし、近年は高齢化によって介護給付費が膨張しています。
令和5年度の費用額累計は11兆513億円となっており、令和4年度と比較すると3,227億円(2.9%)増加しており、介護給付費をいかに抑制していくかが重要な政策課題です。
参考:厚生労働省「介護給付と保険料の推移」
厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況(令和5年5月審査分~令和6年4月審査分)」
介護報酬のマイナス改定による影響
介護報酬は定期的に改正されており、プラス改定の年とマイナス改定の年があります。2024年の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。
訪問介護は介護報酬の改定の影響を大きく受ける業種であるため、マイナス改定による影響の考慮は重要です。
近年の介護報酬では「地域包括ケアシステム」を推進しており、訪問介護などの在宅介護サービスを充実すべきとの考えで進められています。この傾向は訪問介護業界にとってプラス要因ですが、改正は業界動向や物価などを総合的に勘案して決めるため、仮にマイナス改定になった場合の対策を考えておくことも重要です。
報酬に見合わない業務の影響で人材不足
訪問介護などの介護職は低賃金かつ重労働な業種とされており、離職率が高く常に人材不足の状態に陥っています。訪問介護の売上は介護報酬頼みであり、今後とも従業員の賃金が大幅に改善される可能性は低く、人材不足の問題を根本的に解決するのは難しい状況です。
人材不足による事業者間での従業員の奪い合いも深刻な問題で、人員不足がさらなる労働環境の悪化を招く悪循環が見られます。
人材不足の要因
訪問介護など介護職の人材不足の主な要因としては、以下の2点が挙げられます。
- 有資格者でないと従事が不可能
- 介護報酬が算定されない時間が多く存在する
公益財団法人 介護労働安定センターの調査(2021年実施)によると、訪問介護労働者のうち月給制で働く人の平均月給額は223,122円です。
介護業界の賃金は決して高いとはいえず、その要因のひとつに「介護報酬が算定されない時間が多い」点が挙げられます。
介護報酬は介護サービスの提供時間をもとに算定されるため、訪問介護のように算定時間に含まれない移動時間が多い介護職の場合、賃金を上げることが難しいのが実情です。
倒産件数の年々増加
報酬の安さ・人材不足などの問題により、倒産してしまう訪問介護事業者も増えています。
2023年の「老人福祉・介護事業」における倒産件数は122件に達し、過去2番目の高水準を記録しました。その中でも「訪問介護事業者」の倒産は67件で、過去最多を大きく上回りました。また、倒産以外にも休廃業や解散した介護事業者は510件となり、こちらも過去最多となりました。これにより、介護業界全体の厳しい状況が浮き彫りになっています。
高齢化が進む中、介護業界は既に厳しい時期に突入しており、2024年度の介護報酬は1.59%の増加となったものの、人手不足や競争の激化が経営安定の障害となっています。特に、小規模な事業者では業績悪化や先行き不透明な状況が続き、毎年600社以上が市場から撤退している現状です。
参考:東京商工会議所「介護事業者の倒産は 過去2番目、休廃業 ・ 解散は 過去最多の 510件 人手不足、物価高で「訪問介護」の倒産は最多更新」
訪問介護のM&A・事業承継の動向
訪問介護業界の競争は激しいですが、高齢化により今後も需要は増えると推測されるため、異業種からの参入を含めたM&A・事業承継が活発に行われているのが現状です。異業種からの参入以外では、新規エリアへの進出・人材の確保などを目的に、訪問介護事業者をM&A・事業承継で買収する事例が多く見られます。
今後、中小零細の訪問介護事業者は厳しい状況が続くものと見られ、経営難からM&A・事業承継により大手へ売却する事例も増えると考えられます。また、経営者の高齢化を受けて、訪問介護事業者のM&Aによる事業承継も今後増える見込みです。
①有資格者しか従事できない
訪問介護は、利用者の自宅に訪問し1対1でサービスを提供する必要があります。
サービスを提供できる人は介護の基礎知識が身についていることや一定の有資格者であり、他の介護事務所のように無資格者が働ける業界ではありません。
②介護報酬が算定できない時間が多い
訪問介護の介護報酬は、介護サービスを提供している時間に応じて算定されます。
そのため、一回の訪問あたりのサービス提供時間が短くなればなるほど算定額は少なくなる傾向にあります。介護報酬は時間に大きく左右されてしまうため、安定した事業展開が難しい点があります。
③雇用体系
訪問介護ではサービスの提供時間に合わせて報酬の計算を行う「登録ヘルパー」という雇用体系があります。
多くのヘルパーさんが「登録ヘルパー」の雇用体系で働いていますが、正社員になる場合は「登録ヘルパー」として働くことができません。異動もしくは転職するのが一般的ですので人材確保が困難となっています。
訪問介護のM&A・事業承継の流れ
本章では、訪問介護をM&A・事業承継する際の、手続きの流れを解説します。クロージングの具体的な手続きなどは、手法により異なりますが、ほとんどの部分はM&A手法に関わらず共通しています。
①専門家の選定・相談
M&Aを行うには、まずM&A仲介会社などM&Aの専門家に相談する必要があります。M&A仲介会社の中には、介護事業に強みを持っていたり、介護・医療・薬局に特化していたりする仲介会社も存在するため、こうした機関に相談すると良いでしょう。
ただしM&A仲介会社を選ぶ際は、サービス内容を総合的に判断すると良く、たとえ介護に特化していないM&A仲介会社であっても、自社に相応しいと感じた機関に相談することをおすすめします。
②M&A・事業承継先の選定・交渉
M&A仲介会社は、まず訪問介護の経営者から経営状況や希望する条件などを聞き、希望に合うM&A事業承継先先の候補を洗い出します。その中にM&A先候補として相応しい会社があれば、その会社の経営者に連絡して交渉を持ちかける流れです。
③M&A・事業承継先のトップと面談
面談するM&A・事業承継先候補が固まったら、相手企業の経営者と実際に会ってトップ面談を行います。この時点では、まだ複数候補との同時交渉が可能であるため、複数の会社と面談し最も相応しい会社を相手先に選定することも可能です。
④基本合意書の締結
トップ面談が円滑に進み、大まかな合意内容が固まったら、基本合意書を締結して合意内容を書面にします。この時点で、買い手には独占交渉権が発生し、売り手は複数の買い手候補と同時に交渉できなくなる決まりです。
⑤買収側によるデューデリジェンスの実施
基本合意書を締結したら、買い手は売り手企業を買収に関する問題点を確認するために、デューデリジェンス(買収監査)を行います。一般的に、デューデリジェンスは、財務・税務・法務に関して行う場合が多いです。
訪問介護は労働条件が厳しい組織が多いため、上記に加えて、労務デューデリジェンスを実施する場合もあります。
⑥最終契約書の締結
デューデリジェンスの結果を加味して、基本合意書の内容をベースに最終的な契約内容を詰めます。もしもデューデリジェンスで、簿外債務や法務・労務上の問題が発覚した場合は譲渡価格の引き下げ交渉を行ったり、致命的な問題が見つかった場合は交渉を破談にしたりするケースもあります。
最終契約書の締結をもって、法的効力が発生しM&Aが確定します。
⑦クロージング
クロージングとは、最終契約書の内容にもとづいて具体的にM&Aを実行することです。例えば、株式譲渡では株主名簿の書き換え・対価の支払い、事業譲渡では事業資産の譲渡などを行います。
訪問介護のクロージングで注意したい点は、訪問介護事業者の許認可の引き継ぎについてです。事業譲渡でM&Aを行った場合は許認可の引き継ぎを行えないため、譲受企業が新規取得する必要があります。
訪問介護のM&A・事業承継の売却価格相場
M&Aの譲渡価格は、大手の案件でなければほとんどの場合で非公開ですが、マッチングサイトでは売り案件の譲渡希望額が公開されているため、これを見て大まかな相場観の推測は行えます。
これらを見ると、訪問介護の譲渡希望額は老人ホームより安い傾向があり、売上高の1倍を下回っている案件が多いです。訪問介護のM&A・事業承継の相場は一概に断定できないものの、老人ホームに比べると介護施設が必要ないため、それだけ譲渡価格が安くなっている可能性があります。
訪問介護のM&A売り案件の例は、以下のとおりです。
売上高 | 譲渡希望額 | 譲渡希望額÷売上高 | |
事例1 | 1,000万円~3,000万円 | 300万円~500万円 | 0.1~0.5 |
事例2 | 5,000万円~1億円 | 7,500万円~1億円 | 0.75~2 |
事例3 | 6,000万円 | 2,000万円~ | 0.33~ |
事例4 | 6,500万円 | 1,000万円~ | 0.15~ |
事例5 | 1,200万円 | 300万円~ | 0.25~ |
また、老人ホームのM&A売り案件の例は、以下のとおりです。
売上高 | 譲渡希望額 | 譲渡希望額÷売上高 | |
事例1 | 3,000万円~5,000万円 | 1億円~2.5億円 | 2~8.3 |
事例2 | 1億円~2億円 | 7,500万円~1億円 | 0.38~1 |
事例3 | 1億円~2億円 | 3,000万円~5,000万円 | 0.15~0.5 |
事例4 | 1億8,000万円 | 3億2,000万円~ | 1.8~ |
事例5 | 7,000万円 | 2億5,000万円 | 3.6~ |
簡単な相場の計算方法
訪問介護のM&A相場は立地や利益額により異なります。また、最終的な売買価額は、売却側と買収側の交渉で決まります。その交渉で金額のたたき台として用いられるのが、売却側の企業価値評価です。簡易的に用いられる企業価値評価方法として、以下の計算式があります。
- 時価純資産額+営業利益(直近3年間の平均)×3~5年
時価純資産額とは、貸借対照表にある保有資産と負債を時価に換算し、資産額から負債額を引いた金額です。営業利益に掛ける年数が変数となっている理由は、売却企業の特性(企業の希少性、業績の度合い、買収側の評価など)に応じた分を勘案する意図があります。しかし通常は「3」年が用いられます。
訪問介護をM&A・事業承継するメリット
訪問介護のM&A・事業承継では、M&A・事業承継によりどのようなメリットを得たいのか明確にしておくことが重要です。主なメリットとしては、後継者問題の解決や従業員の雇用確保など、以下の5つが挙げられます。
譲渡側メリット | 譲受側メリット |
・後継者問題の解決 ・従業員の雇用を確保 ・大手グループの傘下に入り経営を安定 ・個人保証や担保の解消 ・売却・譲渡益の獲得 |
・人材・拠点の確保 ・エリアシェアの拡大・獲得 ・規模拡大によるスケールメリット |
譲渡側のメリット
①後継者問題の解決
経営者が高齢になっても親族や社員に適切な後継者がおらず、経営は順調なのに廃業してしまうケースがよくあります。しかし、たとえ親族や社員に後継者がいなくても、M&Aであれば幅広く後継者候補を探すことが可能です。
②従業員の雇用を確保
訪問介護事業所を廃業すると、そこで働いていた従業員は解雇されてしまいますが、M&Aで売却すれば従業員の雇用を確保できます。
廃業を検討している訪問介護事業所は買い手を見つけにくい点に問題があるものの、例えば、新規エリアに進出したい買い手であれば、経営状態が悪くてもそのエリアの事業所を買収する可能性が想定されます。
③大手グループの傘下に入り経営を安定
訪問介護業界は異業種の大企業が参入するケースが多く、例えば、不動産会社の三菱レジデンスや化学メーカーの旭化成などが介護事業に参入しています。以前は、外食産業のワタミが介護事業に参入した事例も話題になりました。
中小の訪問介護事業者が大手グループの傘下に入れば、安定した経営基盤を得られます。
④個人保証や担保の解消
中小の訪問介護事業所では経営者が個人保証や担保を提供しているケースが多いですが、個人保証は会社の倒産が経営者個人の破産に結びつくため、経営者にとって大きなプレッシャーです。個人保証や担保のプレッシャーから解放される点も、訪問介護のM&Aのメリットのひとつです。
⑤売却・譲渡益の獲得
訪問介護事業所をM&Aで売却すれば、売却益・譲渡益が手に入ります。譲渡益を手に入れるためにM&Aを行うというのも有力な選択肢です。ここで獲得した譲渡益は、新たな事業への投資や、経営者の引退後の生活費に充てられます。ただし、事業譲渡の場合は、譲渡益が経営者個人に入らない点に要注意です。
譲受側のメリット
①人材・拠点の確保
同業者同士のM&Aではノウハウを持った人材の獲得を行うことができます。また、他業種からの参入であっても拠点や利用者を獲得できるためコストをかけず事業を始めることができます。
②エリアシェアの拡大・獲得
同業者である訪問介護サービスを行っている企業がM&Aを行うことで、介護サービスの提供エリアや顧客エリア拡大を図ることができます。さらに、地域に根付いている企業であればM&Aの効果をより見込めるでしょう。
③規模拡大によるスケールメリット
対人援助である介護はそのもの業務の効率化は難しいことも多いですが、コストの削減であったり事務や事業の一部を共同化することは可能です。
訪問介護のM&A・事業承継を成功させるポイント
ここでは、訪問介護のM&A・事業承継を成功させるポイントを、それぞれの立場に分けて紹介します。
譲渡側のポイント
訪問介護のM&A・事業承継により譲渡を行う際は、以下のようなポイントを押さえておくと、成功率を高められます。
資産価値の確認
M&Aの譲渡価格にはのれんなどの無形資産も大きく影響を与えますが、基本となる要素は純資産額です。そのため、訪問介護のM&Aを行う際は、時価純資産がどれほどなのか、事前に見積もっておくことが大切だといえます。
特に、訪問介護と並行して老人ホームなどの施設介護を運営している場合は、設備や不動産価値を確認しておくことが重要です。
経営状況の確認
経営状態の良し悪しは、いかなる業種のM&Aでも成否に大きな影響を及ぼします。訪問介護事業者の経営状況をあらかじめ確認することで、経営状況に合ったM&A戦略を練ることが可能です。
従業員の流出を防ぐ
訪問介護事業は人材不足が深刻であり、買い手は人材の獲得を目的にしているケースが多くみられます。
そのため、売り手側としては、従業員の流出を防いで人材を確保しておくことが、M&Aの成功率の向上につながります。
顧客離れを防ぐ
M&Aの買い手は、売り手側が持っている顧客を獲得したいと思っているケースが多く見られます。そのため、売り手としては、顧客離れを防ぐことで、買い手にとって魅力的なM&A候補になれる可能性があります。
M&Aの専門家に相談する
M&Aは適切な専門家に相談して、サポートを受けながら進めていく必要があります。M&A仲介会社などの専門家に相談することが、訪問介護のM&Aの成功率を高めるために大切です。
譲受側のポイント
行政関係の手続きおよび折衝
訪問介護事業を手掛けるには介護保険の給付が必要不可欠であり、給付を受けるには行政から介護サービス事業者として指定を受けなければなりません。
もしもM&Aを行った結果として、行政からの指定が取り消されてしまえば、M&Aによる譲受のメリットが無くなってしまいます。そのため、M&Aを行う際は、基本合意契約書の締結後、行政に今後の手続きなどの相談を持ちかけると良いでしょう。
市場を把握した上で事業計画を立てる
訪問介護を含む、介護業界は介護報酬改定の影響を大きく受けています。訪問介護の場合は移動時間が算定時間に含まれません。マイナス改定がなされれば、さらに影響も大きくなると考えられます。
買収を検討する際は業界の市場動向を見極め、タイミングを誤らないことが重要です。介護報酬の改定タイミングは3年に1度ありますが、マイナス改定となった場合の対策もたてておくことが大切です。
買収後の将来価値を予想する
買収後の将来価値を予測しておくことも重要です。自社にとってどのようなシナジーが見込めるのか、事業展開はどう進めるのかなどを検討し、買収価格が回収できるまでの期間を予想することで、高値つかみを防ぐことができます。
訪問介護のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている訪問介護のM&A・事業承継の案件例として、神奈川県の訪問介護、居宅介護支援、通所介護事業をご紹介します。
小規模ながらも地域に根付いた経営から、トップラインは安定しています。20年以上の実績から地域では知名度もあります。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 5000万円〜1億円 |
譲渡希望額 | 〜1000万円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継)、事業存続に対する不安 |
訪問介護のM&A・事業承継事例
本章では、訪問介護のM&A・事業承継事例の中から、最近行われた以下の14例を紹介します。
ケア21によるトチギ介護サービスの訪問介護事業の承継
2023年10月2日、ケア21はトチギ介護サービスの訪問介護事業の譲受契約を締結しました。譲受対象には、訪問介護事業所と居宅介護事業所各1拠点が含まれます。
ケア21は全国主要都市で幅広く介護サービスを提供しており、トチギ介護サービスの文京区事業所の取得により、既存の近隣事業所との連携が強化され、地域の利用者ニーズへの対応力が向上します。さらに、営業や人材確保の面でも一体運用によるシナジー効果が期待され、企業価値向上が見込まれています。
日本ホスピスHDによるノーザリーライフケアの完全子会社化
2022年12月19日、日本ホスピスホールディングスは、連結子会社ノーザリーライフケアの株式を追加取得し、完全子会社化することを決定しました。
日本ホスピスホールディングスは在宅ホスピスサービスやホスピス住宅事業などを展開しており、ノーザリーライフケアは住宅型有料老人ホームや訪問介護を運営しています。今回の株式追加取得は、札幌市内を中心に施設開設を推進し、グループ経営の効率化を図る目的で行われました。
ケア21によるシィノンのM&A
2022(令和4)年4月、ケア21は買収によりシィノンの全株式を取得し完全子会社化しました。使用スキームは株式譲渡、取得価額は非公表です。
ケア21は、訪問介護・デイサービスをはじめとするさまざまな介護事業と保育サービス事業、生活支援事業、ダイニング事業、不動産事業、障がい者雇用事業などを行っています。
シィノンは、大阪府豊中市にて地域密着で訪問介護事業を手掛ける企業です。ケア21としては、同一エリアでのシェア拡大、事業の効率化などのシナジー効果により、事業展開が強化できると判断しました。
ツクイホールディングスによるアカリエのM&A
2022年4月、ツクイホールディングスは買収によりアカリエの全株式を取得し完全子会社化しました。使用スキームは株式譲渡、取得価額は非公表となっています。ツクイホールディングスは、介護事業、福祉機器リース事業、IT事業、人材事業などを行うグループの持株会社です。
アカリエは、神奈川県横浜市における介護事業、IT事業人財関連事業などを行っています。ツクイホールディングスとしては、アカリエのグループ入りにより、介護事業におけるICTの利用促進、IT基盤の強化、神奈川県における介護サービスの拡充などが図れると判断しました。
ケア21によるひまわり医療介護サービスのM&A
2022年4月、ケア21はひまわり医療介護サービスの一部事業を譲受しました。譲受したのは訪問介護・居宅介護支援事業、取得額は非公表です。
ケア21は、訪問介護・デイサービス事業、保育サービス事業障がい者雇用事業など、さまざまな事業を展開しています。譲渡側のひまわり医療介護サービスは、東京都荒川区内で訪問介護事業・居宅介護支援事業を行う企業です。
荒川区はケア21にとって未展開エリアですが、同社の近隣事業所と連携により多くの顧客ニーズへの対応が可能であり、営業・人事面でのシナジー発揮にも期待できるとしています。
ニチイ学館によるプラティアのM&A
2022年3月、ニチイ学館は買収によりプラティアの全株式を取得し完全子会社化しました。使用スキームは株式譲渡、取得価額は非公表です。
ニチイ学館は、医療関連事業、介護事業、保育事業、ヘルスケア事業、教育(語学)事業、セラピー事業などを行っています。
プラティアは、子会社2社とともに大阪を中心に東京、神奈川、千葉、山梨、岐阜で介護付有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、訪問介護サービス、居宅介護支援サービスなどを行っている企業です。
プラティアの子会社化によりニチイ学館は、一挙にグループホーム20施設、有料老人ホーム3施設、訪問介護2拠点、通所介護1拠点、居宅介護支援2拠点を傘下に加えました。
ソラストによる日本エルダリーケアサービスのM&A
2020年10月、ソラストは、日本エルダリーケアサービスの全株式を取得し、完全子会社化しました。ソラストは医療・介護・保育などをトータルに提供している会社で、日本エルダリーケアサービスは訪問介護・通所介護などを運営している会社です。
身体機能の維持向上を重視したサービスの充実、および高齢化社会へのニーズ対応が、本件M&Aの目的とされています。
ケアサービスが広域社会福祉会の訪問介護事業を譲受
2020年9月、ケアサービスは、広域社会福祉会の訪問介護事業を譲受する契約を締結しました。譲渡予定日は2020年11月1日とされています。
ケアサービスは訪問介護や福祉用具レンタルなどを手がける会社で、広域社会福祉会は訪問介護事業を営む会社です。事業エリアの拡大やサービスの充実などが、本件M&Aの目的とされています。
ヒノキヤグループ子会社が介護事業の一部をソラストへ譲渡
2020年8月、ヒノキヤグループの子会社であるライフサポートは、ソラストへ介護事業の一部を譲渡することを決定しました。譲渡実行日は、2020年12月1日とされています。
ライフサポートは、訪問介護・有料老人ホーム・保育所運営などを行う会社です。成長が期待できる事業へ資源を集中することで、ヒノキヤグループの成長を目指すことが、本件M&Aの目的とされています。
ツクイがアサヒサンクリーンの訪問介護事業を譲受
2020年4月、ツクイは、アサヒサンクリーンの訪問介護事業を譲受しました。
ツクイは訪問介護や老人ホームなどを運営する会社で、アサヒサンクリーンは訪問介護やグループホームなどを展開している会社です。訪問介護事業の拡大と地域戦略の推進が、本件M&Aの目的とされています。
ソラストによる恵の会のM&A
2020年3月、ソラストは、恵の会の株式を取得して子会社化しました。恵の会は、大分県を中心に訪問介護や有料老人ホームなどを運営する会社です。ソラストは日本の全エリアで事業所を運営することを目指しており、本件M&Aにより事業所のなかった大分県での事業展開を果たしています。
訪問介護のM&A・事業承継時におすすめの相談先
訪問介護のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
近年、金融機関がM&Aサポートに特化した部門を設ける動きが活発化しています。特に、投資銀行やメガバンクといった大手金融機関は、M&Aの資金調達や戦略策定といった幅広いサポートを提供するファイナンシャルアドバイザー(FA)としての役割を担い、取引を円滑に進める支援を行っています。
このサポートにより、企業は資金確保や事業承継といった複雑な課題にも対応でき、専門家のアドバイスを受けることで取引の成功率も向上します。
ただし、大手金融機関は大規模な案件を優先する傾向があるため、中小企業が十分な支援を受けられないケースもあります。そのため、企業は自社のニーズに合った支援機関を慎重に選ぶことが重要です。また、アドバイザリー報酬が高額になる場合が多いことから、事前に費用面の確認を行うことが欠かせません。
公的機関
近年、事業承継やM&Aに対する公的なサポート体制が急速に拡充されています。全国の47都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されており、後継者不足に悩む中小企業向けに、事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイス、企業間のマッチング支援を無料で行っています。
この体制により、地方にある中小企業も専門的な支援を受けやすい環境が整備され、個人事業主へのサポートも強化されています。また、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介を受けることも可能です。
ただし、民間の仲介会社と比較すると、対応のスピードや柔軟性に限界があるため、その点を理解した上で活用することが大切です。こうした公的支援機関は、事業承継やM&Aを検討している企業にとって、非常に有力な選択肢の一つとなっています。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の売買プロセスを総合的に支援する専門機関です。売却側と買収側の双方に向けて、適切な取引先の選定から交渉サポート、進行スケジュールの管理、企業価値の査定、契約書作成など、幅広いサービスを提供し、交渉条件の調整を通じてスムーズな取引成立をサポートしています。
特に、豊富なネットワークを駆使して理想的な取引相手を見つける点で高い成功率を誇ることが大きな強みです。加えて、M&Aに不慣れな企業に対しても実務的なアドバイスを行い、取引が円滑に進むように支援します。
ただし、仲介会社の利用には着手金や中間報酬といった費用が発生する場合もあるため、あらかじめコストを確認しておくことが重要です。費用を抑えたい場合は、成功報酬型の仲介会社を利用することも一つの選択肢です。
訪問介護のM&A・事業承継まとめ
本記事では、訪問介護のM&A・事業承継に関する情報を取り上げました。介護業界は高齢者の増加や大手の参入などの影響により、今後もM&Aが活発化すると見込まれています。M&Aを行う際は、その手法や流れを理解しておくことが大切です。
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