M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年10月14日更新業種別M&A
LPガス業界のM&A・事業承継の動向!最新事例やメリット・課題も解説
LPガス業界のM&A・事業承継の動向から積極的に買収を行う企業を紹介します。需要の減少・市場規模の縮小・エネルギー間での競争激化・人材不足などの問題を抱えるLPガス業界では、企業買収による業界再編が進行中です。LPガスのM&A・事業承継を検討している方は必見です。
目次
LPガス業界の課題・展望
総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会 資源開発・燃料供給小委員会 液化石油ガス流通ワーキンググループ「中間とりまとめ~LPガスの商慣行是正に向けた対応方針~」
出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/sekiyu_gas/ekika_sekiyu/pdf/20240419_1.pdf
LPガスの国内需要は、地方での人口減少やガス機器の省エネ化、オール電化住宅の普及などの影響で減少傾向にあります。
さらに、近年の暖冬や省エネルギーの進展、新型コロナウイルスの影響で経済活動が縮小し、コロナ前と比べて需要が約1割減少しました。今後は徐々に需要が回復すると予想されていますが、コロナ前の水準である1,400万トンには届かず、約1,300万トン程度にとどまる見込みです。
参考:総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会 資源開発・燃料供給小委員会 液化石油ガス流通ワーキンググループ「中間とりまとめ~LPガスの商慣行是正に向けた対応方針~」
LPガス業界でM&A・事業承継が進む3つの理由
エネルギー間での競争の激化・都市ガスの完全自由化などによるLPガス市場の縮小など、LPガス業界ではさまざまな問題を抱えており、それらを解決するためにM&Aや事業承継積極的に行われています。
実際に、伊藤忠エネクスホームライフ関西と大阪ガスLPGの合併や、昭和シェル石油・コスモ石油・住友商事・東燃ゼネラル石油のそれぞれのLPガス事業の統合など、大手企業の間での業界再編が進んでいる状況です。
また、家庭用に電気とガスを合わせて販売することを目的に電力会社によるガス会社の買収なども見られます。本章では、LPガス業界でM&A・事業承継が進む理由を詳しく解説します。動画でも解説しておりますので、併せてご覧ください。
- 業界全体の高齢化が深刻なため
- 経営者の後継者探しに難航しているため
- 市場規模の縮小化が進んでいるため
LPガス業界のM&Aについては、下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
①業界全体の高齢化が深刻なため
近年、LPガス販売業者の経営者だけでなく、従業員の高齢化も進んでいます。高齢を理由に経営を継続できなくなった卸売会社や小売会社では、事業や会社を残すために売却やM&Aを実施するケースが増えている状況です。
②経営者の後継者探しに難航しているため
LPガス業界で後継者探しが難航する理由の1つに、LPガス業界の人気の低さが挙げられます。重労働で低賃金なため、若い労働者からの人気がなく、多くの事業者が後継者となる若く優秀な人材の育成を行えない状況にあります。
そのため、後継者のいない卸売業者や小売業者では、売却やM&Aが頻繁に実施されており、業界再編が進んでいる状況です。
③市場規模の縮小化が進んでいるため
LPガスの市場規模は縮小傾向にあり、特にLPガスの需要の約43%を占める一般家庭用のLPガスの販売業者の市場縮小が深刻です。家庭用LPガスの市場規模の要因として、都市ガスの普及・ガスの自由化・オール電化住宅の増加などが挙げられます。
経営が厳しくなった小売業者などでは、従業員の保護・事業の継続などを目的に、売却・M&Aなどを実施しています。
LPガス業界のM&A・事業承継の事例【2024年最新】
近年におけるLPガス業界のM&A・事業承継の事例をピックアップしてご紹介します。
日本海ガス絆HDによる北雄ホームサービスの完全子会社化
2024年7月10日、日本海ガス絆ホールディングス(日本海ガス絆HD)は、北雄ホームサービスの株式を取得し、完全子会社化しました。日本海ガス絆HDは、ガスやインフラ設備、総合エネルギー事業を展開しており、北雄ホームサービスは富山県高岡市を中心にLPガスや灯油の販売、住宅設備やリフォーム工事を行う企業です。
今回のM&Aにより、日本海ガス絆HDはグループの経営資源を効果的に活用してシナジー効果を強化し、地域に根ざした提案とサービスをさらに充実させることを目指しています。
SMBCキャピタル・パートナーズによるアクアクララレモンガスHDなど2社の株式取得
2024年7月1日、SMBCキャピタル・パートナーズ(SMBCCP)は、アクアクララレモンガスホールディングスとアクアクララの全株式を取得しました。SMBCCPは、事業再編などの転換期にある企業の株式を取得し、企業価値の向上を目指す投資会社です。
レモンガスはLPガスの販売、アクアクララは宅配水の製造販売を手掛けています。今回のM&Aにより、SMBCCPは三井住友銀行のネットワークを活用し、対象会社グループの顧客基盤の拡大や地域社会への貢献を図ります。
大丸エナウィンによるクサネンの子会社化
2022年6月29日、大丸エナウィンは、クサネンの株式を取得し、連結子会社化することを決定しました。取得後の所有割合は59.39%となります。
大丸エナウィンは、近畿圏を中心にLPガスや住宅設備機器の販売、ミネラルウォーターの製造・宅配、在宅医療機器のレンタルなどを行っている企業です。一方、クサネンは、LPガス販売や住宅リフォーム、ガス機器・オール電化機器の販売を手掛けています。
今回のM&Aにより、大丸エナウィンは滋賀県での事業拡大と強化を目指しています。
LPガスのM&A・事業承継に積極的な企業一覧
市場規模の縮小に備えて、経営基盤を強化のための業界再編が進んでいるLPガス業界では、大手の事業者を中心に積極的に買収やM&Aが行われています。この傾向はLPガス業界内のみに留まらず、エアゾールや太陽光発電・不動産などの他業種にも広がっている状況です。
本章では、LPガス業界内外で積極的に買収を行っている下記の会社と買収事例を紹介します。
- 静岡ガス
- 東邦ガス
- 伊藤忠エネクス
- カメイ
- 西部ガス
- TOKAIホールディングス
①静岡ガス
静岡ガスは、LPガスの販売・発電および電力の販売、リフォーム・ガス機器の販売、ガス工事など、静岡を中心にガス関連の事業を幅広く展開している企業です。
静岡ガスでは、電気・ガスの完全自由化・少子高齢化・生産拠点の再編などによるLPガス業界の競争激化に備えて、積極的に買収やM&Aを行っています。
2013年には御殿場ガスを、2018年には島田瓦斯を、そして2019年には中遠ガスを買収しています。
中遠ガスの買収
静岡ガスは2019年2月、連結子会社であった中遠ガスの買収を行い、完全子会社化しました。中遠ガスは、掛川市を中心にLPガスの販売やガス機器の販売などを行う、地域に根差したガス会社です。
買収により完全子会社とすることで、中遠ガスの主戦場である掛川地域での事業の展開に力を入れ、両社のシナジー効果による事業の拡大を目指しています。
また、中遠ガスとしても、大企業である静岡ガスによる買収で、経営基盤を強化できるうえに、静岡ガスのノウハウを生かした事業展開が可能です。
島田瓦斯の買収
2018年3月、静岡県の大手ガス会社「静岡ガス」が、同じく静岡県の「島田瓦斯」というガス会社の株式の過半数(55.8%)を取得しました。これにより、島田瓦斯は静岡ガスの子会社になりました。
島田瓦斯は、1957年に設立された古くからの会社で、静岡県島田市を中心にガスを供給してきました。最近では、静岡ガスからもガスを受け取っています。
静岡ガスの狙いは、島田瓦斯のネットワークを使って、家のリフォームや電気の販売を増やすことです。さらに、島田瓦斯の地域での信頼と、静岡ガスの技術と提案の力を組み合わせることで、もっと多くの家庭で天然ガスを使ってもらいたいと考えています
②東邦ガス
東邦ガスは、名古屋市に本社を構えるLPガスなどのエネルギー事業やリフォーム事業などを営む会社です。愛知県・三重県・岐阜県などを中心に広いエリアでガス事業を展開しています。
電気の完全自由化を受けて、2016年には小売電気事業にも参入するなど、LPガスの市場縮小に備えた事業計画を進めています。
また、主要事業であるLPガスや都市ガスの強化のために、関連事業者を積極的に買収し事業拡大を実行しています。
ヤマサの買収
2018年12月、東邦ガスは、ヤマサとヤマサの子会社7社(ヤマサ總業・ヤマサ共和ライフ・リピックス・ヤマサリビング・マサハイエース・ヤマサユーランド・ヤマサ総合サービス)を株式譲渡により買収し、完全子会社化しました。
ヤマサグループは、名古屋市を中心にLPガスなどのエネルギー事業やリフォーム事業などを展開している会社です。
同地域で同様の事業を展開しているヤマサグループの買収を実行したことで、相乗効果による将来的な会社の成長と更なる地域の発展への貢献を期待しています。
③伊藤忠エネクス
伊藤忠エネクスは、ガス・石油・電気などのエネルギー事業を展開する伊藤忠商事の子会社です。関東や関西、中部地域でのLPガスの卸売、小売事業の強化のため、大阪ガスとの合弁会社エネアークを設立するなど、積極的に業界再編に取組んでいます。
また、電力小売事業への参入や工場向けの電熱供給事業への参入、熱供給事業への参入など、M&Aによる事業の拡大を進めています。他業種の企業買収なども積極的に行っており、伊藤忠エネクスのノウハウを活用した事業展開を行っています。
大阪カーライフグループの買収
伊藤忠エネクスは、2014年5月に大阪カーライフグループの株式51.95%を取得・買収し子会社化しました。大阪カーライフグループは、全国最大規模の日産自動車系カーディーラーである日産大阪を保有しています。
この買収により、伊藤忠エネクスのカーライフ部門で行っている、ガソリン・灯油・軽油などの販売を強化し、カーライフに関わる総合的な事業の展開を目指しています。
④カメイ
カメイは、仙台市に本店を構えるLPガスや石油などのエネルギー事業やカーライフ事業を展開する会社です。
LPガスの小売事業を行う最上ガスや、介護事業を展開するオアシーズ、調剤薬局を営むエムシーエスエイやエム・ファーマシーなど、業界内外で買収を積極的に行い、事業拡大を続けています。
最上ガスの買収
2019年1月、カメイは、山形県でLPガスの小売事業を展開する最上ガスの全株式を取得し、完全子会社化しました。山形県でのLPガス販売エリア拡大・強化および、家庭用のLPガス販売事業の強化を図ることを目的としています。
最上ガスは従業員数11人・資本金1000万円・売上130百万円のLPガス小売業者ですが、山形県新庄市を中心にLPガス事業を展開し、地域住民からの安心と信頼がある地域に根差した会社です。
東北一のガスエネルギー事業部を有するカメイによる買収で、カメイの持つ独自のノウハウとのシナジー効果を期待し、経営基盤の強化を図り安定した経営を目指しています。
⑤西部ガス
西部ガスは、福岡市に本社を置く、LPガスやガス機器の販売などを行っている会社です。福岡・長崎・熊本を中心にガスを供給しています。
これまでに西部ガスは、LPガスの事業強化のために、久留米ガスや大牟田ガスの株式を取得してきました。
ガス事業以外でも、不動産会社・建築会社・調理職人要請学校などさまざまな業界で買収やM&Aを積極的に行い、事業の拡大を続けています。
他業種の買収により、現在では、ガスエネルギー事業以外の分野での売上げ比率が約半分に高まっています。
古川工務店の買収
現在、西部ガスが特に力を入れているのは、不動産事業の規模の拡大です。2019年2月には、福岡県の都市部でマンション・福祉施設・事務所などの施工を行っている吉川工務店を買収しました。
吉川工務店は、高い施工能力を持つ総合建設業が特徴の地域に根差した優良企業です。この買収により、西部ガスは、不動産事業の強化を図り、今後は賃貸マンション・ホテル・温浴施設の施工などの建築事業・不動産事業を拡大していく予定です。
⑥TOKAIホールディングス
TOKAIホールディングスは、LPガスなどのエネルギー事業をはじめ、住宅関連事業・情報通信事業など多角的な経営を行っている会社です。
静岡県に本社を構え、東海エリアを中心にエネルギー事業を展開していますが、LPガスの小売事業に関しては東海エリアだけではなく中国地方や九州地方にまで進出しています。
TOKAIグループとして、岡山県の情報通信事業者や岐阜県の建築事業者など、さまざまな事業者の買収を積極的に実施し、継続的な事業の拡大を進めています。
ベトナムLPガス販売事業者の買収
2020年7月、株式会社TOKAIホールディングスの子会社「株式会社TOKAI」が、ベトナムの2つのガス会社、MIEN TRUNG GAS JOINT STOCK COMPANYとV-GAS PETROLEUM CORPORATIONの株式を、それぞれ45%ずつ買い取ることを決定しました。
これらのベトナムのガス会社は、ベトナムの大手ガス販売企業「PETRO CENTER CORPORATION」の子会社です。この取引により、株式会社TOKAIホールディングスはベトナムのガス市場へ進出し、ガス事業の売上をさらに増やし、利益を上げることを目指しています。
フジプロの買収
2024年3月22日、TOKAIホールディングスの連結子会社であるTOKAI(静岡県静岡市)は、株式会社フジプロ(神奈川県茅ケ崎市)の株式を取得する契約を締結しました。
TOKAIは、LPガスや宅配水などのリテール事業を全国で展開しており、今回の株式取得は、LPガス事業のさらなる拡大を目的としています。
フジプロは神奈川県を中心にLPガス事業を展開しており、TOKAIグループの一員となることで、経営資源の強化や営業・配送・保安面での連携が期待されています。また、この買収は、TOKAIグループの中期経営計画「収益基盤の拡大」に基づくもので、神奈川エリアでの営業体制を強化し、事業拡大と効率化を図る狙いがあります。
LPガス会社をM&A・事業承継により買収する3つのメリットと目的
近年、LPガス業界では、販路の拡大・コストの削減を目的としたLPガス会社同士での買収・M&Aや業界内での合併による組織改編などが積極的に行われています。
特に、都市ガスの完全自由化・オール電化住宅の増加などによる市場規模縮小の影響を受ける小売業者では、経営を安定させるための有効な手段としてM&A・事業承継を利用しています。本章では、LPガス会社を買収するメリットと目的を詳しく解説します。
- 増販が行える
- スケールメリットを生かせる
- 事業エリアを拡大できる
①増販が行える
LPガス業界内で買収を実施すれば、単純にLPガスの販売契約数が増えるため、より多くのLPガスを販売することが可能です。また、例えば、家庭用のLPガスを販売する小売業者間の買収では、経営・経理・総務のような管理部門の業務を一本化でき、コストの削減を行えます。
さらに、契約数の増加による増販で、売上と利益の増加を期待できます。買収により経営基盤を強化することで、市場縮小の中でも安定した事業を行えるようになります。
②スケールメリットを生かせる
LPガス事業者間での買収では、LPガスの取扱量が増加するため、スケールメリットによるコストの削減が可能です。
特にLPガスの輸入や生産を行う元売業者では、LPガスの保管基地・輸入船など、大型の設備を保有しているケースが多く、管理費・整備費・燃料費など非常に高額なコストがかかっています。
買収後には、基地の相互利用や輸入船の共同運航などによるスケールメリットの活用により、コストの大幅な削減を行えて、経営基盤の安定化を図れます。
③事業エリアを拡大できる
事業エリアの拡大も、LPガス業者間での買収やM&Aで得られる大きなメリットの1つです。買収以前には販売エリアではなかった地域の事業者を買収することで、事業エリアを拡大できます。
買収を行わず独自に新規エリアを開拓するには、地域の住宅事業や都市ガス普及率などの情報が必要となるうえに、LPガスの需要が減る中で契約を取るには大きな労力・コストが必要です。
一方で、地域性を十分に理解し、多くの契約を持っているLPガス小売業者を買収すれば、その会社が持つノウハウを生かしつつ、事業エリアを拡大できます。
実際にLPガスの小売事業者の中には、社歴が長く地域に根差した経営を継続している優良な企業が数多くあり、M&Aの相手として高い評価を得ています。
LPガス会社をM&A・事業承継により買収する3つのデメリット
LPガス会社の買収には販売エリアの拡大など、さまざまなメリットがあることを解説してきましたが、下記のようなデメリットがあることも忘れてはいけません。
- 顧客離れが増える可能性がある
- 担保価値が低い
- 追加の投資が必要になる可能性がある
本章では、それぞれのデメリットの詳細を解説します。デメリットを理解し、大きなリスクを回避することが買収成功の大きなポイントです。
①顧客離れが増える可能性がある
LPガス業者買収のデメリットの1つに、買収後の顧客離れによる収益性の低下が挙げられます。家庭用のLPガスは、都市ガスと比べてガス料金が高いため、多くの既存顧客には「LPガスから安価な都市ガスやオール電化に切り替えたい」といった潜在的なニーズがあるのです。
そのため、買収による体制の変更・料金の変更・サービス内容の変更などがあれば、顧客離れが進む可能性があり注意が必要です。
②担保価値が低い
LPガス工場などの買収には多額の資金が必要になる一方で、不動産としての担保価値が低いため、資金リスクが高いこともLPガス業者買収のデメリットの1つです。担保価値が低い主な理由としては、土壌汚染の可能性などが考えられます。
例えば、豊洲にある東京ガスの都市ガス製造工場跡地では、ベンゼンなどによる深刻な土壌汚染が大きな問題となりました。万が一LPガス工場の跡地に土壌汚染が発見されれば、土壌の除染には多額の費用がかかることから地価が路線価よりも大幅に低くなるために、担保価値が低くなると考えられます。
③追加の投資が必要になる可能性がある
買収される会社の中には、設備管理や設備投資に資金を費やせないようなLPガス業者もあります。ずさんな設備管理によるガス設備の劣化や設備の老朽化などの問題を抱えている場合は、買収後に多額の設備投資費用が必要となる可能性もあるため、設備投資用の資金計画を立てたうえで買収しなければなりません。
また、設備を健全化するために、予想以上の資金が必要となる可能性もあるため、設備面を買収前に十分に確認しておくことが重要です。
LPガス会社のM&A・事業承継の相場
M&A・事業承継の相場を知っておくことで、不当に安い価格での買収を避けられるとともに、M&Aが自社にとって最適な戦略かどうかの判断材料になります。
LPガス業界のM&A・事業承継では、一般的に株式譲渡と事業譲渡の二つの手法がよく使われます。これらの取引の大まかな相場は、次のように計算できます。
- 株式譲渡の場合の価格=「時価純資産額+過去2年から5年の営業利益」
- 事業譲渡の場合の価格=「時価事業純資産額+過去2年から5年の事業利益」
業界の特性や企業の状況によって、利益を何年分加算するかは異なりますが、通常は2年や3年分を用いることが多いです。
LPガス会社のM&A・事業承継で有利な条件で譲渡するコツ
LPガス会社を有利な条件で譲渡する際に知っておきたいコツとして2つをピックアップし、順番に解説します。
黒字経営を目指す
会社を売却する際、必ずしも黒字である必要はありません。しかし、買い手にとって財務状況は重要な評価基準の一つです。黒字の経営は魅力的に映ります。
経営が苦しく、M&Aを考えている場合でも、黒字にするのが難しい状況であっても、経営の健全化を目指して努力することは価値があります。そうすることで、買い手を見つけやすくなります。
実践的なアプローチとしては、短期的と中期的な目標を設定し、段階的に改善を目指すことがおすすめです。
簿外債務・偶発債務をチェックする
簿外債務とは、会社の貸借対照表には現れないものの、将来的な支払い義務や損失の可能性を含むリスクです。これは、特に現金主義の会計でよく見られます。また、 偶発債務とは、現実にはまだ発生していないが、将来一定の条件が成立した場合に発生する債務の総称です。
会社を売却しようとする売り手は、これらの潜在的なリスクについて事前に詳細な調査を行い、その結果を買い手に提供する必要があります。
一方で、買い手は、企業買収の際に財務デューデリジェンスを通じてこれらの簿外債務を特定しようとします。このプロセスでは、財務だけでなく、法務や税務に関わる潜在的なリスクも検討されるため、これらの領域での調査も同時に進めることが一般的です。
LPガス会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先
LPガス会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
最近では、金融機関がM&A支援に特化した部門を設置する動きが加速しています。特に投資銀行や大手メガバンクでは、M&Aのファイナンシャルアドバイザー(FA)として、企業間取引を円滑に進めるため、資金調達や戦略策定のサポートを行っています。
こうした専門的なサポートを活用することで、企業は資金調達や事業承継などの複雑な課題に対しても効率的に対応でき、専門家のアドバイスを受けることで、取引成功の可能性が高まる利点があります。
しかし、大手金融機関は規模の大きいM&A案件を優先する傾向が強く、中小企業が十分な支援を受けられないこともあります。そのため、企業は自社の規模やニーズに合った支援先を慎重に選ぶ必要があります。また、アドバイザリー費用が高額になるケースもあるため、事前に費用の確認とコスト計画をしっかり立てておくことが重要です。
公的機関
近年、事業承継やM&Aに対する公的支援体制が大幅に拡充されています。全国各地に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業を対象に、事業承継やM&Aに関する情報提供や専門的なアドバイスを行うとともに、企業間のマッチング支援を無料で提供しています。
この支援により、地方の中小企業でも手軽に専門的なサポートを受けることが可能です。さらに、個人事業主も対象となっており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介を受けることもできます。
ただし、民間のM&A仲介会社に比べると、対応のスピードや柔軟さに限界がある場合があるため、その点は注意が必要です。それでも、公的機関は、事業承継やM&Aを検討している企業にとって、信頼できる支援先となるでしょう。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の売買に関わるプロセス全体を支援する専門機関です。売り手と買い手の双方に対して、最適な取引相手の紹介や交渉のサポート、スケジュールの管理、企業価値評価(バリュエーション)、契約書作成など、幅広いサポートを提供しています。彼らの役割は、両者の希望や条件を調整し、円滑に取引が進むよう仲介することです。
特に、豊富なネットワークを生かして、理想的な取引先を見つけることに長けており、M&A成功の確率を高める役割を担っています。経験の少ない企業に対しても、実務的なアドバイスを行い、取引をスムーズに進めるサポートを行います。
ただし、仲介会社を利用する際には、着手金や中間金といった手数料がかかることがあり、コスト負担が発生することもあります。費用を抑えたい場合は、成功報酬制の仲介会社を選ぶとよいでしょう。
LPガスのM&A・事業承継まとめ
本記事では、LPガス会社のM&A・事業承継を解説してきました。多くの会社が積極的にLPガス会社の買収を実施しており、今後もLPガス業界でのM&A・事業承継は増えていくことが予想されます。
LPガス会社のM&A・事業承継にはさまざまなメリットもありますが、深刻な問題を引き起こすようなデメリットもあるので、専門家に相談して慎重に進めていくようにしましょう。
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