2024年10月20日更新会社・事業を売る

M&Aの完全成功報酬とは?メリット・デメリットを徹底解説

M&Aの完全成功報酬は成約まで手数料がかからない料金体系です。その魅力的なメリットから採用する仲介会社が増えていますが、デメリットについても把握しておく必要があります。支払う手数料を試算するためにも、M&Aの完全成功報酬について見ていきましょう。

目次
  1. M&Aの完全成功報酬とは
  2. M&Aの一般的な料金体系でかかる費用
  3. M&Aの完全成功報酬のメリット・デメリット
  4. 完全成功報酬制のM&A仲介会社の選び方
  5. M&Aを行う際は完全成功報酬の仲介会社がおすすめ
  6. まとめ

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M&Aの完全成功報酬とは

M&Aの完全成功報酬とは、M&Aの料金体系の1つです。着手金や中間金等の手数料は発生せず、M&Aが成約した段階で初めて手数料が発生する料金体系です。

M&Aが成約しなかった場合は手数料を払わなくて済むことから、急速に普及が進み、完全成功報酬制を採用するM&A仲介会社が増えつつあります。ただ、完全成功報酬ならではのデメリットも存在しており、安易に選択するのは危険です。

一般的なM&A仲介での料金体系との違い

一般的なM&A仲介での料金体系との違いを紹介します。完全成功報酬制の手数料は成功報酬のみと言いますが、実際に一般的な料金体系と比較するとどのくらい変わるのでしょうか。

そこで、着手金等が発生する一般的な料金体系と完全成功報酬制を一覧表にしました。それぞれにかかる費用の違いについて参考にしていただけると幸いです。
 

  一般的な料金体系 完全成功報酬制
相談料 1万円前後 無料
着手金 50万円前後 無料
月額報酬 30万円前後/月 無料
中間報酬 成功報酬の10~30% 無料
成功報酬 レーマン方式 レーマン方式
デューデリジェンス費用 50~200万円前後 無料
その他費用 10万円前後 無料

この結果を見ると、完全成功報酬制の手数料は非常に安いことが分かります。金銭的負担を抑えたい方にとっては完全成功報酬制は最適な料金体系です。

【関連】M&Aの手数料を比較!種類やリテイナーフィー、レーマン方式、成果報酬について解説

M&Aの一般的な料金体系でかかる費用

M&Aの料金体系は、M&Aの進行に合わせて手数料が発生するタイプが一般的です。この章では、それぞれの手数料について解説します。

【M&Aの料金体系】

  1. 相談料
  2. 着手金
  3. 月額報酬
  4. 中間報酬
  5. 成功報酬
  6. デューデリジェンス費用
  7. その他費用

相談料

M&Aの相談内容は、「M&Aの方向性」や「取引相手が見つかる可能性」等が一般的です。企業がおかれている状況に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。

この段階ではM&Aの実施すらも決定していませんが、知見のある専門家による対応を受けるため、一定の相談料が発生します。相場は1万円前後です。

なお、近年は相談料を無料とするM&A仲介会社が増えています。実績を積み重ねている仲介会社ほど、相談料を無料にしている傾向が強く、力量を計る判断材料の1つとして活用することができます。

着手金

M&A仲介会社に正式な依頼をすると、本格的にM&Aに着手することになり着手金が発生します。

M&Aに着手すると初期段階から「企業概要書の作成」や「業界動向調査」等を進める必要があるため、これらに対して着手金があてられることになります。

相場はM&Aの規模次第で大きく変動します。中小規模M&Aであれば50万円前後が一般的です。大規模M&Aの場合は数百万円を超えることも珍しくありません、

なお、あくまで着手金として請求されるものであり、M&Aが成約しなかった場合も返金されません。成約を保証するものでもないため、費用として割り切らなければなりません。

月額報酬

他の手数料はM&Aの進行度に応じて発生しますが、月額報酬は毎月の決められたタイミングで発生する特徴があります。

月額報酬の用途はアドバイザーやコンサルタントの活動費です。M&Aを進行するための資金を安定的に供給するために設けられている手数料です。相場は30万円前後/月です。

M&Aの進行に関係なく毎月発生するため、M&Aの交渉が長引くほど依頼者の金銭的負担は増加します。この仕組みに疑問を抱く声が年々強くなっており、月額報酬を採用する仲介会社は急速に減りつつあります。

中間報酬

M&Aの交渉がある段階まで進むと基本合意書を締結します。売り手と買い手の双方が現段階の交渉内容に合意していることを示すための書面で、今後のスケジュールを円滑に進める働きを持ちます。

この段階においてもM&Aの成約が確定したわけではありませんが、M&Aが一段落したこともありインセンティブとして発生します。

相場は成功報酬の10~30%です。基本的に成功報酬の先払いという意味合いが強く、相応の価格が成功報酬から差し引かれて安い設定にされていることが多いです。

ですが、仲介会社によっては成功報酬に含まないケースもあるため、中間報酬を採用する仲介会社に依頼する場合は確認しておくことが大切です。

成功報酬

基本合意書の締結から大きな問題が発生せずに交渉が落ち着くとM&A成約です。M&Aサポートの成果である成約をもって成功報酬が発生します。

成約と同時に発生するものなので、M&Aが失敗した場合は支払う必要はありません。

相場は取引価格にレーマン方式の料率を乗じた金額が一般的です。
 

  • 5億円までの部分・・・5%
  • 5億円超~10億円までの部分・・・4%
  • 10億円超~50億円までの部分・・・3%
  • 50億円超~100億円までの部分・・・2%
  • 100億円超・・・1%

【関連】レーマン方式とは?成果報酬の設定や計算方法、種類、契約書を解説

デューデリジェンス費用

取引対象の価値・リスクを調査する活動のことです。買い手側が資料と実態の差異を確認するために専門家を派遣して徹底的に調査します。

デューデリジェンス費用の発生タイミングは基本合意書の締結から間もなくです。

実施範囲はM&A規模に応じて変動することになるため、相場も安定しない傾向にあります。定額ではなく時給制にする仲介会社も存在するので、依頼前に確認しておきましょう。

その他費用

M&Aは、ここまで解説した費用以外にも様々な費用がかかります。代表例は契約書の作成費用です。

M&Aは進行に合わせて「秘密保持契約書」や「最終契約書」等の様々な契約書を作成・締結します。これらの作成費を請求するM&A仲介会社も存在します。

他の仲介手数料と比較すると安い費用ですが、いくつも重なると大きな負担となることもあります。M&Aにかかる経費として考えておく方が良いでしょう。

【関連】会社売却の手数料の相場やかかる費用を徹底解説!

M&Aの完全成功報酬のメリット・デメリット

M&Aの完全成功報酬は、金銭的負担を抑えられる料金体系です。そのメリットは大きく幅広く活用されるようになってきていますが、デメリットが存在しているのも事実です。

この章では、M&Aの完全成功報酬制のメリット・デメリットを見ていきましょう。

M&Aの完全成功報酬のメリット

まずはM&Aの完全成功報酬のメリットから見ていきます。

【M&Aの完全成功報酬のメリット】

  1. M&Aの交渉中にかかる費用負担がない
  2. 売却の可能性・売却金額などが正確に分かる
  3. 結果を求めて交渉などを行う
  4. 幅広いネットワークからベストの交渉先を選定
  5. M&Aにかかる費用がわかりやすい

1.M&Aの交渉中にかかる費用負担がない

M&Aは各プロセスで専門家の知見を必要とするため、M&Aの進行に合わせて様々な費用・手数料が発生します。

成約するか確証のないM&Aに対して、次々と手数料を支払うことは金銭的・精神的に負担が大きく、依頼者の悩みの種となっています。

一方の完全成功報酬の場合は、成約まであらゆる手数料が発生しません。M&A費用の資金調達等に時間を取られることなく、M&Aの交渉に集中することができます。

2.売却の可能性・売却金額などが正確に分かる

完全成功報酬制のM&A仲介会社が利益を獲得するためには、M&Aを成約させるしかありません。

中途半端なサポートを行うと自分自身の負担となるため、成約させるために売却の可能性や売却金額について事前に説明を行います。

依頼者はこの2点を把握することで計画的なプランを立てることが可能となり、M&Aが成功する可能性も高くなります。

3.結果を求めて交渉などを行う

M&Aの交渉はM&A仲介会社が主導で進めることになりますが、最終的な決定権はそれぞれの依頼者にあります。

依頼者にとって交渉内容が納得のいくものでなければ、M&Aは成約せず、仲介会社も成功報酬を獲得することもできません。

M&Aの進行にかけた労力を無駄にしないためにも、依頼者が納得できる結果を重視して交渉を進める特徴があります。

4.幅広いネットワークからベストの交渉先を選定

完全成功報酬制の場合、着手金が不要であることからM&Aのハードルが大きく下がり、多くの企業がM&Aを検討しやすくなります。

依頼者にとっては交渉先の選択肢が増えることになり、満足のいく結果が得られやすくなるという好循環にあります。

5.M&Aにかかる費用がわかりやすい

完全成功報酬制の支払う手数料は成功報酬のみというシンプルな料金体系です。様々な手数料が入り乱れて複雑になることがないので、M&Aにかかる費用が初期段階から分かりやすいという特徴があります。

M&Aの費用が分かると、顧客はM&A後の具体的な計画を立てやすくなります。

売り手の場合は売却益の運用方法です。株式譲渡の売却益は経営者(株主)に支払われ、新事業の立ち上げ資金やセミリタイア後の生活資金等の個人的に使うことができます。

買い手の場合は仲介手数料以外に買収費用も用意しなければならないため、費用の試算が難しくなる傾向にあります。M&A後の事業計画を安定させるためにも、M&A費用を把握しておくことが大切です。

【関連】M&Aの費用

M&Aの完全成功報酬のデメリット

続いてM&Aの完全成功報酬のデメリットです。

【M&Aの完全成功報酬のデメリット】

  1. 着手がスムーズにいかない可能性がある
  2. 顧客にとって実りがない結果を出す可能性がある
  3. 仲介会社として発展材料に使われる可能性がある

1.着手がスムーズにいかない可能性がある

一般的な料金体系の場合、着手金をM&Aの初期費用にあてることで、円滑に着手することができます。

ですが、完全成功報酬制の場合は、着手金の支払いがないことで様々な手続きに遅れが生じてしまう可能性があります。

また、成約まで利益を獲得することができないため、成約の望みが薄い案件は後回しにされてしまうケースも見受けられます。

2.顧客にとって実りがない結果を出す可能性がある

利益の獲得を急ぐことで、顧客が不利な条件でもM&Aを強行してしまうケースがあります。

成約に関する決定権は顧客側にありますが、専門家の強い意思に対して反論することも難しく、交渉内容に納得しないまま成約となるケースも珍しくありません。

また、売り手と買い手の間でも優劣を付けるM&A仲介会社が存在します。買い手はリピーターの見込みがあるため、買い手に有利に交渉を進められてしまう可能性があります。

売り手は不当な条件を突きつけられて、辛い判断を強いられてしまうケースに注意が必要です。

3.仲介会社として発展材料に使われる可能性がある

M&A仲介会社の中には、M&A案件をキープする目的で顧客を集めているところもあります。

成約に向けた積極的な行動は起こさずに「条件の合う取引相手が見つかったらマッチングさせる」という考えのもと、とにかく沢山の案件を集めておき、発展材料として活用されてしまいます。

M&Aは時間がかかるほど状況が変化していくものであるため、悪質な仲介会社に遭遇してしまうと甚大な被害を受けることになります。

完全成功報酬制のM&A仲介会社の選び方

近年、M&Aの料金体系に完全成功報酬制を採用している仲介会社が急速に増えつつあります。完全成功報酬制というだけで決断することも難しく、相談先に迷うことも多くなっています。

そこでこの章では、完全成功報酬制のM&A仲介会社の選び方をまとめています。選び方の基準が分からないという方は参考にしていただけると幸いです。

【完全成功報酬制のM&A仲介会社の選び方】

  1. 料金体系がわかりやすい
  2. 自社の業種や規模のM&A実績がある
  3. 幅広いネットワークがある
  4. 担当者との相性が良い

1.料金体系がわかりやすい

まずは料金体系を分かりやすく明記しているかどうかが大切です。完全成功報酬制と思って依頼したものの、実際は様々な手数料を請求されてしまうというケースも珍しくありません。

多くの仲介会社は公式サイトに料金体系を明記しているはずなので、そちらで確認すると分かりやすいです。

また、成功報酬を算出する基準価格についても注意が必要です。基準価格が移動資産となっている場合は株式価値に加えて負債も合わせた価格が基準となります。

譲渡価格ベースと比較すると負債の分だけ成功報酬が高くなってしまうことになるので、レーマン方式の基準価格についても確認が欠かせません。

2.自社の業種や規模のM&A実績がある

M&A仲介会社は、大規模M&AやクロスボーダーM&Aを得意とするところもあれば、中堅・中小規模を専門に請け負うところも存在します。仲介会社選びの際は得意とする規模に着目することも大切です。

また、業種についても同じことが言えます。該当業種に精通していなければ、M&A実施タイミングの見極めや取引先の選定も満足に行うことができません。

業種や規模については、M&A仲介会社が自社サイトで公開している実績で確認することができます。

3.幅広いネットワークがある

M&Aを進める上で重要になるのが、取引先の選定に活用するネットワークです。M&A仲介会社が保有するネットワークが強固なものであれば、幅広い候補先から取引先を探すことができるようになります。

M&A仲介会社がどのような繋がりを持っているかどうかに注目してみると判別しやすいです。

4.担当者との相性が良い

M&A仲介会社に依頼すると専属アドバイザーが担当につきます。M&Aの全体的な進行をサポートという役割を持っており、成約するまで繰り返しやり取りを行うことになります。

この担当者との相性が悪いと、うまく意思疎通が図れずにM&Aの進行に支障が出てしまうこともあります。担当者との相性が悪いと感じたら、交代を申し出るか、M&A仲介会社を変更することも検討してみるとよいでしょう。

M&Aを行う際は完全成功報酬の仲介会社がおすすめ

M&Aにおける一般的な料金体系は、着手金を始めとした様々な費用を必要とするもので、M&A規模によっては総額1000万円(成功報酬を除く)を超えることも珍しくありません。

多くの手数料を取られてしまうと、M&Aの本来の目的達成が困難になってしまうことも多く、費用はなるべく抑えたいのが本音です。

一方、完全成功報酬制は支払う手数料が成功報酬のみとなっており、最終的に支払う手数料が安い特徴がある料金体系です。

こうした点を踏まえると、M&Aの際は完全成功報酬制の仲介会社がおすすめです。

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まとめ

M&Aの完全成功報酬制について見てきました。成約するまで手数料が発生しないことから、支払う手数料の総額が安い特徴を持っていました。

特に初期費用を抑えたいと考える方は、完全成功報酬制の仲介会社を選ぶことでM&Aが成功する可能性も高くなります。

完全成功報酬の仲介会社を選ぶ際は、本記事で紹介した仲介会社の選び方のポイントを参考にしていただけると幸いです。

【M&Aの料金体系】

  1. 相談料
  2. 着手金
  3. 月額報酬
  4. 中間報酬
  5. 成功報酬
  6. デューデリジェンス費用
  7. その他費用
【M&Aの完全成功報酬のメリット】
  1. M&Aの交渉中にかかる費用負担がない
  2. 売却の可能性・売却金額などが正確に分かる
  3. 結果を求めて交渉などを行う
  4. 幅広いネットワークからベストの交渉先を選定
  5. M&Aにかかる費用がわかりやすい
【M&Aの完全成功報酬のデメリット】
  1. 着手がスムーズにいかない可能性がある
  2. 顧客にとって実りがない結果を出す可能性がある
  3. 仲介会社として発展材料に使われる可能性がある
【完全成功報酬制のM&A仲介会社の選び方】
  1. 料金体系がわかりやすい
  2. 自社の業種や規模のM&A実績がある
  3. 幅広いネットワークがある
  4. 担当者との相性が良い

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