M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新会社・事業を売る
MアンドAとは?目的、手法、メリットや株価への影響【事例あり】
事業承継や経営基盤の強化、人材確保などを目的に、中小企業間のMアンドAが積極的に実施されており、MアンドA件数は増加傾向にあります。本記事では、MアンドAとはどのようなものか、MアンドA手法やメリット・デメリットのような基礎知識を詳しく解説します。
目次
MアンドAとは?
MアンドAとは、Mergers and Acquisitionsの略で、会社売却や会社合併などのことをいいます。M&Aと表されることも多いです。
会社をまるごと売却する株式譲渡や不採算部門のみを売却する事業譲渡、2社を1社に統合する吸収合併など、MアンドAにはさまざまな手法があります。
そのなかでも、株式譲渡や事業譲渡がMアンドAの代表的な手法として、多くの企業に利用されています。MアンドAスキームの詳細については後で詳しく解説します。
MアンドAの現状
日本のMアンドA件数は1990年代後半から急激に増加しています。2008年のリーマンショックの影響で、MアンドA件数が減少していた時期もありますが、2011年以降は右肩上がりに増加し、2017年には公表されている限りで、3050件のMアンドAが実施されました。
これは、1687件であった2011年の1.8倍の数字です。また、中小企業のMアンドAに関しては、公表されていないものが多いのですが、大手M&A仲介会社3社が公開しているMアンドA成約件数をみると、2017年に526件で、2012年の157件から約3倍となっています。
このことから、上場企業のような大きな会社だけでなく、中小企業間でもMアンドAが増加していることが分かります。
MアンドAの目的
会社や事業を売買するMアンドAには、買い手側や売り手側、MアンドAスキームなどによって異なるさまざまな目的があります。
例えば、経営者の高齢化による事業承継や事業の選択と集中、新規エリアや新規分野への事業の拡大、従業員の確保などです。
また、売り手企業にとっては、従業員や取引先の保護が大きな目的になっています。倒産や廃業ではなくMアンドAを選択することで、従業員や取引先の契約が継続するためです。
MアンドAの手法
MアンドAの手法は、大きく下記の4つの種類に分類されます。本章では、それぞれのMアンドA手法について詳しく解説します。
【MアンドAの手法】
- 株式取得
- 事業譲渡
- 合併
- 分割
1.株式取得
まずは株式取得について解説します。株式取得とは、対象会社の株式を取得することで経営権を譲受け、会社を買収するMアンドA手法です。株式取得にもいくつかの種類があり、細かく分類することができます。
【株式取得】
- 株式譲渡
- 新規引受
- 株式交換・移転
1.株式譲渡
株式譲渡は、代表的なMアンドA手法のひとつです。多くの会社が株式譲渡を利用して、50%以上の株式を取得し、完全子会社化や子会社化を実行しています。
買い手企業にとっての株式譲渡の目的は、事業および販売エリアの拡大や新規事業への参入などが挙げられます。
一方で、売り手企業は、大手企業の傘下に入ることによる経営基盤の強化や、経営者の高齢化などによる事業承継などを目的にしているケースが多くなっています。
2.新規引受
新規引受とは、売り手側が発行した新株を買い手側が引き受けることで、第三者割当増資や新株予約権などがこれにあたります。このうち、第三者割当増資がMアンドAの手法として利用されています。
第三者割当増資とは、既存株主以外の第三者が新株を引受ける手法で、これにより、引受け側(買い手側)と売り手側との間で資本業務提携を結ぶことになります。
第三者割当増資のみで発行株式の50%以上を取得することは稀であるため、資本提携にとどまることが一般的です。
3.株式交換・移転
株式交換や株式移転は、買い手側が売り手側の株式を100%取得し完全子会社化するためのMアンドAスキームのひとつです。
株式交換では、既存の会社が買い手企業となり、売り手企業の株式を100%取得します。買い手側は、新株予約権や発行済み株式を買収の対価に使えるため資金調達が必要ないなどのメリットがあります。
株式交換が既存の会社による株式取得である一方、株式移転は新しい会社を設立し、その会社が100%の株式を取得する方法です。株式移転は、持株会社(ホールディングス)を設立する場合などに利用されています。
2.事業譲渡
事業譲渡も株式譲渡と同様に、代表的なMアンドA手法のひとつとして多くの会社によって利用されています。
株式譲渡は株式を取得し、経営権を得ることで子会社化する方法であるのに対して、事業譲渡は株式の譲渡は伴わず、一部または全部の事業のみを譲渡する方法です。
不採算部門の整理や事業の選択と集中などを目的に実施されます。売り手側は、事業譲渡による譲渡益で会社の運転資金などを得ることができるなどのメリットがあります。
3.合併
合併とは、2社以上の複数の会社を統合し、ひとつの会社にすることです。グループ企業の再編による経営の効率化や業界再編を促すことなどを目的に行われています。
合併には、新設合併と吸収合併があります。それぞれの合併方法の違いについて詳しく解説します。
1.新設合併
新設合併は、新しい会社を設立し、その会社に既存の複数社が合併する方法です。既存の会社は全て消滅することになります。
株式譲渡のような子会社化とは異なり、合併する企業同士で1つの新しい会社となるので、密な関係を築くことができ、大きなシナジー効果を得ることができます。
一方で、会社を新設するための登記や定款の作成、許認可の再取得など、様々な手続きが必要となるため、吸収合併よりも時間や費用がかかる点がデメリットです。
2.吸収合併
吸収合併とは、合併する会社のうちのひとつが存続会社となり、他の会社を合併する方法です。
吸収される会社のことを消滅会社といい、合併と同時に消滅してしまうので、解散登記を行わなければいけません。
手続きが簡易で、スピーディにMアンドAを完了できるため、合併によるMアンドAのほとんどが吸収合併を利用しています。
多くの場合、規模が大きい会社が存続会社となりますが、小さい会社が存続会社となった事例もあります。
4.分割
分割は、会社の一部または全部の事業とそれにかかわる資産や負債、従業員などを包括的に別の会社に承継するMアンドAの手法です。
分割には新しい会社を設立し、新会社に事業を承継する新設分割と既存の会社に承継する吸収分割があります。それぞれの方法について詳しく解説します。
1.新設分割
新会社に会社の事業を承継する新設分割は、重点事業などを会社から切り離して分社化する際などに利用されています。
新設分割では、新会社を設立することになるため、一般的に、取引先や顧客との契約を結び直さなければいけません。
しかし、分割を機に不要な契約や割に合わない契約を整理することができるので、不採算事業の再編や経営立て直しのきっかけとなる可能性があります。
2.吸収分割
既存の会社に事業を承継する吸収分割は、グループ内再編で活用されています。例えば、親会社の重点事業を子会社に承継する場合や、子会社同士で事業を移す場合などに吸収分割が使われています。
資産・従業員・権利義務など、さまざまなものを承継できる点は大きなメリットですが、負債や簿外債務も承継されるというリスクもあります。
また、許認可に関しては引継がれるものもありますが、種類によっては管轄している省庁の承認が必要な場合や引継がれない場合もあるので注意が必要です。
MアンドAのメリット・デメリット
MアンドAには、前章で解説したようなさまざまな手法があり、それぞれの手法に特有のメリットやデメリットがあります。
本章では、代表的なMアンドA手法である株式譲渡や事業譲渡における、買収側目線と売却側目線でのメリット・デメリットを解説します。
買収側のメリット・デメリット
買収企業目線での代表的なメリットとしては、事業の拡大や新規事業への参入、シナジー効果などが挙げられます。一方の、デメリットには、簿外債務などを引継ぐリスクや優秀な人材の流出などがあります。
【買収側のメリット】
- 事業規模の拡大
- 新規事業への参入
- シナジー効果
- 簿外債務や偶発債務のリスク
- 優秀な人材の流出
メリット①事業規模の拡大
事業規模の拡大は、MアンドAで事業や会社を買収する大きな目的のひとつとなっています。
買収により、資産・不動産・技術・ノウハウ・顧客基盤などを獲得することで、買収側は事業規模を拡大することが可能となります。
事業規模が拡大することで、商品やサービスの低コスト化など、スケールメリットを得ることもできます。また、業界内でのシェアが拡大し、MアンドA後のイメージアップにもつながります。
メリット②新規事業への参入
新規事業への参入も、買い手企業にとって大きなメリットです。新しい事業を立ち上げて、安定した収益を上げるためには時間も費用もかかります。
しかし、MアンドAにより会社や事業を買収すれば、時間とコストを削減してすぐに収益を上げることが可能となります。
メリット③シナジー効果
シナジー効果とは、買い手企業と売り手企業の持つノウハウや技術などを共有することで、1+1以上の効果を得ることです。
例えば、売り手企業が買い手企業の技術を習得し、これまで以上の収益をあげることができる可能性もあります。
このように、MアンドAによるシナジー効果により、買い手企業とそのグループ全体での業績が急速に成長できることは、MアンドAの大きなメリットです。
デメリット①簿外債務や偶発債務のリスク
MアンドAでは、資産や不動産などを引き継ぐと同時に負債も引き継ぐことになります。帳簿に記載されている負債については、MアンドA交渉の段階で情報を得ることができるので、MアンドAの判断材料となります。
しかし、帳簿に記載されていない簿外債務や偶発債務は気付きにくいうえに、経営に大きな影響を与えます。
MアンドA後に簿外債務や偶発債務がみつかれば、経営が大きく傾く可能性もあるので、MアンドA前にしっかりとデューデリジェンスを行う必要があります。
デメリット②優秀な人材の流出
MアンドAを行うことは、従業員に大きな影響を与えることになります。組織が変わることで、労働条件の変更や社内の派閥争いなどが発生する可能性があるためです。
これにより、優秀な人材が流出するケースもあります。人口減少や少子高齢化などにより、労働力の確保が難しくなっている日本では、優秀な人材の流出は経営に大きなダメージを与えることになります。
優秀な人材の流出を防ぐためには、従業員にMアンドAについての丁寧な説明をすることが大切です。
売却側のメリット・デメリット
次に、売却側目線でのメリット・デメリットを解説します。売却側は、MアンドAを実施することで、事業承継や経営基盤の強化、従業員の保護などのメリットを受けることができます。
その一方で、従業員や取引先との関係悪化、条件に合う買い手企業がなかなかみつからないといったデメリットもあります。
【売却側のメリット】
- 円滑な事業承継
- 経営基盤の強化
- 従業員の保護
- 従業員や取引先との関係悪化
- 条件に合う買い手企業がいない可能性がある
メリット①円滑な事業承継
近年では、後継者不在により事業承継ができない会社が社会的な問題となっています。事業承継ができない会社は廃業や解散を余儀なくされますが、MアンドAにより会社を売却できれば、廃業や解散をする必要はありません。
後継者がいなくても事業承継ができ会社やその事業を維持できることは、売却側にとっては大きなメリットです。
売り手企業の経営者は譲渡益も得ることができるので、引退後の生活や新しい事業への投資に活用することができます。
メリット②経営基盤の強化
規模の大きな会社に売却された場合には、買い手企業からの支援を受けることができるため、経営基盤の強化につながります。
競争が激化している業界では、生き残るために新しいビジネスにチャレンジするなどの変化が必要ですが、収益を上げるまでには時間もコストもかかります。
MアンドAで買い手企業からのサポートがあれば、チャレンジしやすくなり、業界で生き抜くことができる可能性も高まります。
メリット③従業員の保護
業績悪化や後継者不在などの理由で倒産や廃業ということになれば、従業員を解雇しなければなりません。長く働いてきた功労者を解雇することは、経営者にとっては非常につらく可能な限り避けたい選択肢でもあります。
MアンドAにより会社売却や事業売却が成功すれば、従業員の解雇を引き継ぐこともできます。
デメリット①従業員や取引先との関係悪化
MアンドAを行うことにより、従業員や取引先との関係が悪化する可能性も秘めていることも理解しておかなければなりません。
売却側の従業員はMアンドA後の待遇が悪化するケースもあり、場合によっては解雇されることも考えられます。また、取引先との契約を切られる可能性もあります。
このような事態に陥ることを避けるためには、MアンドA交渉において従業員や取引先に対する処遇などを細かく定めておくことが重要です。
デメリット②条件に合う買い手企業がいない可能性がある
売却側にとって、条件の合う買い手企業を探すことは非常に難しいことです。従業員や取引先との関係性を保ちつつ、できるだけ高く売却したいというのが売却側の本音ですが、買収側はできるだけ安価にMアンドAをしたいと考えます。
条件に合う買い手企業を探したり、双方の条件をすりあわせるためには、MアンドA仲介会社などの専門家のサポートが役に立つことが多いです。
また、経営が傾いている会社などは希望の買い手企業はなかなか現れないので、時には妥協する必要がある場合もあります。
MアンドAの際の企業評価・売却価額の決定方法
MアンドAの売却価額を決めるためには、まずは企業価値評価を行います。企業価値を算定する際は、以下の評価方法が一般的に利用されます。
【代表的な企業価値評価方法】
- 類似企業比較法
- 時価純資産法
- DCF法
それぞれの方法には、異なる特徴やメリット・デメリットがあります。どの手法を用いるべきなのかを決めるためには、専門家への相談が効果的です。
上また、評価方法で算出された評価額がそのまま売却価額になることは稀であり、一般的には、算出された売り手企業の評価額を基準に、業界の動向や売り手企業の持つノウハウや技術、従業員などの条件を鑑みて、交渉のもと決定されます。
MアンドAの費用・会計・税金などの扱い
MアンドAにおける会計処理は、用いるMアンドA手法によって異なります。株式譲渡の場合、買い手企業は株式譲渡で取得した株式の時価や株式取得などにかかった費用、売り手企業は売却損益や株式譲渡にかかった費用などを計上します。
事業譲渡の場合は、買い手企業は譲り受けた資産と支払った対価の差額を売買損益として、売り手企業は譲渡した資産と負債および支払われた対価を計上することになります。
税金はMアンドA手法によって税率などが異なりますが、基本的に売り手企業や株主が得た対価に関して法人税や所得税がかかります。
MアンドAによる株価への影響
上場企業の場合、株価は市場が決定します。そのため、MアンドAによって力のある会社を子会社化したり、将来的な利益が期待できるといった、市場の投資家によいイメージを与えることができるMアンドAであれば株価は上昇します。
また、非上場企業の株価は、純資産・資本金・配当金などによって算出します。例えば、MアンドAにより収益性が上がって純資産や資本金が増加することになれば、結果的に株価は上昇することになります。
一方で、MアンドAに負のイメージあったり、MアンドAが失敗して経営が傾くようなことがあれば株価が下がる場合もあります。
MアンドAの流れ
MアンドAが完了するまでの流れは、用いるMアンドA手法や業界・業種、会社の規模などによって異なりますが、大まかには以下のように進みます。
【MアンドAの流れ】
- MアンドAの専門家に相談する
- MアンドA先の選定・交渉
- MアンドA先のトップと面談
- 基本合意書の締結
- 買収側によるデューデリジェンス
- 最終契約書の締結
- クロージング
1.MアンドAの専門家に相談する
まずは、MアンドAの専門家に相談します。MアンドAの専門家には、MアンドAアドバイザーやMアンドAエキスパート・会計士・弁護士などがいます。
それらの専門家が在籍しているMアンドA仲介会社や、FA(ファイナンシャルアドバイザー)がMアンドAをサポートを行っています。
専門家への相談で不明な点や疑問点を解決しておくと、円滑なMアンドAを完了させること可能となります。買収側と売却側のどちらも利用することができます。
2.MアンドA先の選定・交渉
MアンドA仲介会社などの専門家が、独自のネットワークなどを活かして、買収先候補や売却先候補を選定します。
通常は、事前に作成されたノンネームシートなどを用いて、2~3社ほどの企業をMアンドAの対象企業として選定します。
買収側と売却側の双方が、専門家のサポートのもと、候補として挙げられた企業との交渉を進め、最終的に1社に絞ります。
3.MアンドA先のトップと面談
MアンドA先の候補が決まったら、買収側と売却側のトップ同士で面談を行います。一般的に、このトップ面談では、MアンドA価額や細かい条件などの交渉は行われません。
双方の会社の現状やMアンドAへの想いを伝える場としての意味合いが強く、トップ面談で両社ともに同じ思いでMアンドAを進めることができそうであれば、本格的な交渉に移ります。
4.基本合意書の締結
本格的な交渉が開始されると、MアンドA契約の詳細を専門家のサポート下で決定していきます。
ある程度の契約内容が確定した段階で、基本合意契約を締結します。基本合意契約では、MアンドA価額・スケジュール・譲渡内容などが決定されます。
基本合意契約に法的拘束力はありませんが、MアンドA契約成立に向けて双方の認識を揃えることを目的に交わされます。
5.買収側によるデューデリジェンス
買い手企業は、基本合意契約後に売り手企業のデューデリジェンスを行います。デューデリジェンスとは企業調査のことで、売り手企業に簿外債務や偶発債務がないかなどを調査します。
MアンドA後のリスクを避けるための非常に重要なステップであり、専門的な知識が必要となる場合が多いので専門家が実施することが一般的です。
6.最終契約書の締結
デューデリジェンスに問題がなければ、最終的なMアンドA価額を決定し、最終契約書を締結します。
最終契約書には、MアンドA価額・表明保証・解除条件、補償条項などが記載されます。条件などは基本合意契約と同じである場合も多いですが、基本合意契約と異なり法的拘束力を持たせています。
そのため、契約違反などがあれば損害賠償の対象にもなります。最終契約書の締結までに、買収側は徹底したデューデリジェンスを行いMアンドAのリスクを減らすことが重要です。
一方の売却側は、売却後に損害賠償請求を受けないようにするため、虚偽のない表明保証を行う必要があります。
7.クロージング
最終契約締結後には、事業に必要な許認可の取得や取引先との再契約など、さまざまな手続きが必要です。株式譲渡の場合は売却側が株主名簿書換を行い、買収側は指定の銀行口座などに対価を振込みます。
最終契約書によって定められた手続きが完了した時点で、MアンドAがクロージングとなります。契約内容によっては、売却側の経営者が仕事の引継ぎのため、一定期間買収企業で働くケースもあります。
MアンドAの事例
これまでMアンドAの手法や流れなどを解説してきましたが、実際にはどのような会社がMアンドAを実施しているのでしょうか。この章では、2020年に実施された上場企業によるMアンドA事例を紹介します。
【MアンドAの事例】
- イエローハットによる溝ノ口自動車の全株式取得
- 三菱ケミカルのアクリル樹脂の製造・販売事業譲渡
- ソフトバンクのコンテンツ配信サービスアニメ放題の会社分割
①イエローハットによる溝ノ口自動車の全株式取得
2020年9月、カー用品などの販売を手掛けるイエローハットは、神奈川県を中心に自動車の販売や整備、修理ならびにカー用品の販売業務を手掛ける溝ノ口自動車の全株式を取得し、完全子会社としました。
イエローハットは、車検や鈑金、ボディコーティング事業の拡大に取り組んでおり、高度な自動車整備技術を有する溝ノ口自動車の買収により、イエローハットグループ全体での車検や整備技術の向上を目指しています。
②三菱ケミカルのアクリル樹脂の製造・販売事業譲渡
2020年8月、三菱ケミカルは、シャンプーなどに利用されているアクリル樹脂の製造・販売事業を大阪有機化学工業に譲渡しました。
大阪有機化学工業は、化粧品原料となるポリマーの製造販売を行っています。本事業譲渡により、頭髪化粧品用アクリル樹脂のラインナップを増やすことができ、海外進出と機能化学品セグメントの強化を目指しています。
③ソフトバンクのコンテンツ配信サービスアニメ放題の会社分割
2020年7月、ソフトバンクはアニメ専門のコンテンツ配信サービス「アニメ放題」を会社分割し、U-NEXTに承継しました。
本吸収分割では、U-NEXTはソフトバンクに250百万円の対価を支払いました。ソフトバンクは、通信事業領域・ヤフー事業領域・AIやテクノロジーなどの新領域の3つの領域に集中し、収益基盤の強化と持続的な成長を目指しています。
MアンドAで売却を行いやすい会社とは
MアンドAで売却を行いやすいのは、以下のような特徴を持つ会社です。よりよい条件で会社を売却するためには、売却しやすい会社を目指すことが重要です。
【MアンドAで売却を行いやすい会社とは】
- 借入金が少なく黒字経営
- 安定した売上高
- 市場が拡大している
- スケールメリットが効きやすい
- 継続収入がある
- M&Aの際に明確に回答
- 経営者が引退しても経営上問題がない
- ノウハウが蓄積されている
- 簿外債務などの心配がない
1.借入金が少なく黒字経営
株式譲渡などでは負債も承継されます。そのため、借入金が多いと譲渡後に買収企業の返済の負担が大きくなり、経営に影響を与える可能性もあるため、借入金が少ない会社が好まれます。
また、黒字経営であることも、会社売却に有利となります。というのは、買い手企業は買収後すぐに収益を上げることができるためです。
2.安定した売上高
売上高は前年だけではなく、長期的な結果が重要です。前年だけよくても一過性の売上げとみなされ、毎年の売上げが乱高下していると安定していないと捉えられる可能性があります。
横ばいもしくはゆるく上昇する売上げが理想的です。安定した売上げは、買い手企業によい印象を与えることができ、会社売却を行いやすくなります。
3.市場が拡大している
市場規模が拡大している業界に所属している会社は、売却しやすい傾向にあります。その理由は、市場が拡大している業界には、さまざまな業界から参入してくる企業が多いためです。
迅速に収益を上げるためにMアンドAを行う企業は多く、売り手市場となるので、売り手企業にとっては有利に交渉を進めることができます。
4.スケールメリットが効きやすい
スケールメリットとは、MアンドAにより会社の規模が大きくなることで、製品やサービスのコストを削減できることです。
同じ業界や業種に所属する会社同士のMアンドAであれば、生産ラインの共有や仕入れ量の増加などにより、製品完成までのコストを削減することが可能になります。
一方で、全く異なる業界の会社とのMアンドAでは設備などを共有できず、また技術やノウハウも活かせない場合もあるため、会社売却が難しくなることも多いです。
5.継続収入がある
継続収入とは、不動産所得や保有株式の配当など、定期的に継続して得られる収入のことです。
中小企業のなかには、不動産を所有していて個人や法人に賃貸していることもあります。その場合は、毎月家賃収入が入ることになります。
このような継続収入は、売上や業績にあまり影響を受けずに得られるため、買い手企業にとっては大きな魅力です。
6.M&Aの際に明確に回答
MアンドAの交渉を行う際には、ごまかしたりあいまいな回答ではなく明確な回答をすることが大切です。明確な回答は、買い手企業によい印象を与え、スムーズな会社売却につながるためです。
回答内容が一貫していなければ買い手企業は不信感を募らせ、MアンドA価額を下げたり最悪の場合には契約が成立しないというケースもあります。
特に、トップ面談は企業の第一印象が決まる場です。たとえ不利な内容であっても、ごまかすことなく明確に答えることが重要です。
7.経営者が引退しても経営上問題がない
ワンマン経営で、経営者がいなければ業績が悪化するような会社は、会社売却には不利になりがちです。買収により経営者が引退すれば、収益が下がることが目に見えているためです。
従業員に技術やノウハウをしっかり伝え、経営者が引退しても安定した収益を上げることができるような経営目指すことが、円満なMアンドAにつながります。
8.ノウハウが蓄積されている
MアンドAの大きな目的のひとつに、ノウハウの共有があります。買い手と売り手双方のノウハウを共有することで、単純に足し算した以上の収益を得ることができます。
そのため、買い手企業でも活用できるノウハウが蓄積されている会社は高い価値があり、売却を行いやすくなります。
ただし、ノウハウや技術は短期間で得ることは難しいため、長い年月をかけて築き上げる必要があります。
9.簿外債務などの心配がない
簿外債務がMアンドA後に発覚すると、簿外債務の額にもよりますが、買い手企業の経営に大きな影響を与える可能性があります。
簿外債務自体は法律に違反しているわけではないため、簿外債務がある中小企業も多く存在しています。
表明保証などで簿外債務がないことを明確にすることで、買い手企業は安心して買収することができます。もし簿外債務がある場合は、MアンドAを行う前にできる限り解消しておくことが大切です。
MアンドAを行う際の注意点と成功のポイント
近年、MアンドAは、上場企業や大手企業だけではなく、中小企業やベンチャー企業でも積極的に実施されています。その一方で、MアンドA契約が不成立となったり、希望のMアンドA先がみつからないなどの問題もあります。
本章では、MアンドAを行う際の注意点と成功ポイントを、買収側と売却側のそれぞれの目線で解説します。
買収側
まずは、買収側から見た、MアンドAを行う際の注意点と成功ポイントについて解説します。買収側は、MアンドAで失敗すると、経営に大きな影響がでる可能性もあるため、買収側はより慎重にMアンドAを実施する必要があります。
【買収側の注意点と成功のポイント】
- 戦略を明確化する
- さまざまな売却情報を収集して選定する
- 適切な買収金額を設定する
- シナジーの予測効果や将来性も評価する
- 統合プロセスに注意する
- MアンドAの専門家に相談する
1.戦略を明確化する
MアンドAの戦略では、自社の分析、MアンドAの目的の明確化、市場調査、MアンドA後の経営戦略案の策定、自社の財務状況の確認などを通じて、MアンドAの具体的なプランを練る必要があります。
MアンドA戦略を明確化することで、ターゲットとなる企業の絞込みが可能となり、よりリスクの少ないMアンドAとなります。
2.さまざまな売却情報を収集して選定する
MアンドAでキーとなるのは、ターゲットとなる会社の選定です。最適なターゲットを買収することで大きなシナジー効果の獲得や、効果的に営業エリアや事業の拡大ができるなど、MアンドAのメリットを享受できるようになります。
そのためには、売却情報の収集は非常に重要です。売却を検討している会社の細かな事業エリアや事業内容、取引先などの情報を収集します。
また、MアンドA交渉中はデューデリジェンスを徹底的に行い、偶発債務や簿外債務のようなリスクも見極める必要があります。
3.適切な買収金額を設定する
MアンドAでは、売り手企業はできるだけ高く、買い手企業はできるだけ安く取引したいと考えます。しかし、双方がMアンドA価額に納得しなければ、永遠に取引が成立することはありません。
適切な買収金額の設定は、円滑で迅速なMアンドAを行ううえで重要なポイントとなります。対象企業の株式や事業の価値を評価し、顧客リストや取引先・技術力・市場シェアなどから付加価値を上乗せして買収金額を決定します。
4.シナジーの予測効果や将来性も評価する
MアンドAでどのくらいのシナジー効果を得ることができ、将来的な収益がどのくらい高まるかを予測することは、MアンドAを成功させるための重要な要素のひとつです。
例えば、企業風土や企業文化などが全く異なる会社を買収しても、従業員同士が相容れずに思ったようなシナジー効果を得られないこともあります。
売り手企業の長期的な売上や利益を知り、将来性を評価するとともに、企業風土や経営理念なども見極めることが大切です。
5.統合プロセスに注意する
統合プロセスとは、MアンドA成約後に円滑に経営や組織の統合を行い、迅速にMアンドAの効果を上げるためのプロセスのことです。
丁寧に統合プロセスを行うことで、高いシナジー効果を得ることができ、収益率の向上を期待することが可能となります。
経営や組織の統合に加えて、社内制度や業務・ITシステムの統合、また、事業や業績評価制度についても見直しが必要です。
6.MアンドAの専門家に相談する
MアンドAを実施するにあたって、戦略の策定や対象企業の選定、買収価額の決定などには、専門的な知識が必要となる場合も多々あります。
また、経営を続けながらMアンドAの準備や企業選定、交渉などをスピーディに行うことは簡単なことではありません。
MアンドA仲介会社のような専門家に相談してサポートを受けることで、スムーズな企業選定や相手との交渉、取引価額の決定を行うことが可能となります。
売却側
次に、売却側から見た、MアンドAを行う際の注意点と成功ポイントについて解説します。売却側は、事業承継や経営基盤の強化、不採算部門の整理などを目的にMアンドAを行います。
MアンドAで会社や事業の売却ができなければ廃業や解散という可能性もあり、従業員や取引先に大きな影響を与えることになります。従業員や取引先を守るために、よりよい条件でのMアンドAが重要です。
【売却側の注意点と成功のポイント】
- 適切な売却価額を設定する
- 適切な売却時期・タイミングで行う
- MアンドA先を柔軟に設定する
- MアンドAの専門家に相談する
1.適切な売却価額を設定する
売却価額は、自社の株式価値や事業価値を適切な方法で算出し、それらの情報をもとに買い手企業との交渉を重ねて決定されます。
買い手側はできるだけ安く買いたいと考えるものですが、売却価額が安すぎると株主から反対され株主総会での決議が得られなかったり、創業者利益が少なくなり引退後の生活に支障をきたす可能性もあります。
専門家などの意見を聞きながら適切な売却価格を設定し、買い手企業と慎重に交渉することが重要です。
2.適切な売却時期・タイミングで行う
売却時期やタイミングによっても、MアンドA価額や条件は大きく変わってきます。例えば、経営者が突然倒れて職場復帰が困難な場合、事業承継のためにできるだけ早く会社を売却しなければならないでしょう。
急いで売却しなければならない状況にある会社は、MアンドA価額が低くとも売却する必要があるため、買い手企業に買い叩かれてしまい、結果的に悪い条件での売却になる可能性があります。
また、業界再編が活発な業界や好景気の時などは、買収企業も多くよい条件での売却が進めやすい一方で、景気が悪い時や利益・売上げが減少している時などは、買収側が有利となります。
3.MアンドA先を柔軟に設定する
会社や事業を売却するにあたっては、経営者それぞれに様々な想いがあります。例えば、「同業でなければダメ」や逆に「同業はイヤ」、そのほか「ファンド以外を希望」などさまざまです。
しかし、買い手候補の情報や経営戦略などを確認せず早々にMアンドA先を絞ってしまえば、よりよい売却は実現しにくくなります。
自社を高く評価してくれる企業と出会い、よりよい条件でのMアンドAを行うためには、MアンドA先を柔軟に設定することが大切です。
4.MアンドAの専門家に相談する
売却側の企業が独自に買い手企業を探すことも可能ですが、そのネットワークには限界があります。柔軟にMアンドA先を選定するためには、多くのMアンドA実績がある仲介会社などの専門家へ相談することが効果的です。
MアンドAを専門に扱う会社は、さまざまなエリアで多くの業界に関するネットワークやMアンドA情報を保有しているため、買い手企業の選定の幅が広がります。
また、MアンドAに関する不明点や疑問点などにも対応し、契約成立まで交渉や契約書などのサポートを行う専門家は、売却企業にとって非常に心強い存在となります。
MアンドAにかかる手数料
MアンドA仲介会社などにMアンドAの仲介を依頼した場合、仲介会社によって手数料の種類や価格は異なりますが、いずれにしても成功報酬などの手数料が必要となります。
手数料には具体的にどのような種類のものがあるのでしょうか。本章では、MアンドA専門家に支払う手数料の種類や内容について解説します。
1.相談料
相談料は、正式な依頼をする前に、MアンドAについて相談する際に必要な料金です。相談料は無料というMアンドA仲介会社がほとんどですが、なかには相談料が必要な会社もあります。
また、電話やメールでの相談を無料で受け付けていることも多いので、気軽に利用することができます。
2.着手金
MアンドAについて無料もしくは有料で仲介会社に相談した後、自社に合った会社を決めて正式に依頼することになりますが、その時にかかる手数料を着手金といいます。
着手金も無料としている仲介会社が多数あります。無料ではない場合、着手金の相場は50~200万円となっており、会社によって大きく異なることが分かります。
3.月額手数料
月額手数料とは、MアンドA仲介契約を結んでいる間は毎月かかる固定費用です。月額手数料についても不要としている仲介会社は多数存在しています。
月額手数料は、頻繁に面談を行う必要がある際にかかる人件費や関連費用に充てられます。月額手数料が不要な会社は毎月のコストが安くなりますが、面会の頻度や手続きの種類などによっては追加で手数料を徴収されるケースもあります。
4.中間金
中間金は、基本合意契約が締結できた時点で支払う手数料です。基本合意が成立した取引のほとんどが最終契約まで進みますが、なかにはデューデリジェンスなどで問題が発覚したなどにより、最終合意に至らないケースもあります。
その場合でも、支払った中間金が返金されることはありません。このような依頼者のリスクを回避するため、中間金は設定していないMアンドA仲介会社もあります。
5.成功報酬
成功報酬は、MアンドAの最終契約が締結された時点で支払う手数料です。多くのMアンドA仲介会社が、取引額に対して料率の変わるレーマン方式を採用しています。
MアンドA仲介会社によって、基準となる取引額の算定方法や料率が異なるので、正式に依頼する前に確認しておく必要があります。
ただし、MアンドA取引が最終契約まで到達しなかった場合は、成功報酬を支払う必要はありません。
6.その他諸々の手数料
紹介した手数料に加えて、デューデリジェンス費用や実務実行にかかる費用などが発生するケースもあります。
デューデリジェンスには、法務デューデリジェンスや財務・税務デューデリジェンスなどがあり、MアンドA仲介会社に依頼した場合、合わせて100~200万円程度の費用がかかります。
実務実行にかかる費用には、MアンドA先の向上や支店に赴く際の出張費や弁護士相談費用、不動産鑑定費用、登記費用などがあり、必要な時に随時支払うことになります。
どのような手数料がかかるのかについては、相談時によく確認しておくようにしましょう。
MアンドAをする際におすすめの相談先
円滑にMアンドA取引を行うためには、最適なMアンドA手法の選択や相手先の選定、MアンドA戦略の策定、基本合意契約の締結、相手との交渉、デューデリジェンスなど、さまざまな過程を的確に実施する必要があります。
これらを通常業務や経営と並行して実施するのは困難なため、専門的な知識や実績・経験のあるMアンドAの専門家に相談することが円滑なMアンドA成立のカギともなります。
M&A総合研究所には、MアンドAの豊富な知識や経験を持つアドバイザーが多数在籍しています。
案件ごとにアドバイザーが担当につき、独自のネットワークを活かした最適な企業選定からクロージングまで親身になってサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)
MアンドAについてのご相談は無料でお受けしておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。
まとめ
本記事では、MアンドA手法やメリット・デメリット、クロージングまでの流れなど、MアンドAに関する基本的な項目を中心に解説しました。
近年では、事業承継・人材確保・業界再編などを目的に、中小企業間でのMアンドAが活発に実施されています。
よりよい条件でMアンドAを成立させるためには、戦略をしっかり策定し計画的に進めていく必要があります。M&A仲介会社などの専門家に相談しながら進めると、効率的に進めることができるので、まずは無料相談などを利用してみるのもよいでしょう。
【MアンドA手法】
- 株式取得
- 事業譲渡
- 合併
- 分割
【買収側のメリット】
- 事業規模の拡大
- 新規事業への参入
- シナジー効果
【買収側のデメリット】
- 簿外債務や偶発債務のリスク
- 優秀な人材の流出
【売却側のメリット】
- 円滑な事業承継
- 経営基盤の強化
- 従業員の保護
【売却側のデメリット】
- 従業員や取引先との関係悪化
- 条件に合う買い手企業がいない
【MアンドAの流れ】
- MアンドAの専門家に相談する
- MアンドA先の選定・交渉
- MアンドA先のトップと面談
- 基本合意書の締結
- 買収側によるデューデリジェンス
- 最終契約書の締結
- クロージング
【MアンドAで売却を行いやすい会社とは】
- 借入金が少なく黒字経営
- 安定した売上高
- 市場が拡大している
- スケールメリットが効きやすい
- 継続収入がある
- M&Aの際に明確に回答
- 経営者が引退しても経営上問題がない
- ノウハウが蓄積されている
- 簿外債務などの心配がない
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