2021年4月29日更新会社・事業を売る

M&Aにおける弁護士の役割

弁護士事務所や仲介会社ではM&A案件への対応依頼に対し、豊富な経験と実績のある弁護士が対応します。ここではM&Aにおいて、弁護士がどのような役割を果たし、弁護士を活用することで依頼者にどのようなメリットがあるかについて解説します。

目次
  1. M&Aで弁護士が果たす役割
  2. M&Aにおける弁護士の独占業務
  3. M&Aの対応を弁護士に依頼するメリット
  4. M&Aの対応を弁護士に依頼した際の費用
  5. M&Aに強い弁護士を見極めるポイント
  6. まとめ

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M&Aで弁護士が果たす役割

弁護士は、M&Aのあらゆるプロセスにおいて有効的な支援を提供しています。法務デューデリジェンスや契約書の作成、M&A仲介からクロージングまで、M&Aを包括的にサポートします。また、法律のプロフェッショナルである弁護士は、M&Aでトラブルが発生した際に大きく役立ちます。

M&A案件では買い手側と売り手側が何らかの理由で対立し、訴訟に発展するケースもあります。弁護士がいれば、そのようなトラブルの一部は未然に防ぐことができ、トラブルが発生しても適切に対処できます。

M&Aにおける弁護士の役割はM&Aプロセス全体を統括しつつ、トラブルを的確に対処するサポーターといえます。ここではM&Aにおける弁護士の役割を、順に見ていきましょう。

  1. 適切な法的構成の選択
  2. 適切なM&Aスケジュールの作成と進捗管理
  3. 交渉項目の抽出と代理交渉
  4. 必要な契約書の整備
  5. 売主候補、買主候補選定へのアドバイス
  6. M&Aに必要な他の専門家の招へい

①適切な法的構成の選択

M&Aの法的構成には株式譲渡、株式移転、合併、分割などさまざまな種類があり、事業のみを売買の対象とする事業譲渡が適切なケースもあります。

企業の事業運営上の要望を満たす、または事業存続そのものを実現する方法は多く存在しますが、それぞれ法的構成が異なるうえ実施に伴うリスクも異なります

そのため、多種多様なM&Aの手法から各企業の利益にかなう方法を選択し、M&Aを滞りなく実行しなければなりません。事業運営上の課題を解決するには、M&Aの専門家である弁護士のアドバイスが必要となります。

②適切なM&Aスケジュールの作成と進捗管理

M&Aの法的構成を決定できても、M&Aをすぐに実施できるわけではありません。下準備や調査に時間をかけ無駄なく行わなければ、M&Aを終えてから何らかのトラブルや想定外の事態が発生することがあります。

M&Aの実行前後に想定外の簿外債務が発見されたり、法的手続きに想定以上の時間を要したりすると、M&A実施の目的を達成できなくなるおそれがあります。

そのため、M&Aのスケジュールは弁護士の経験に基づくアドバイスで効率的かつ有用となり、作成したスケジュールに則った進捗管理はM&Aを実行する鍵となります。

③交渉項目の抽出と代理交渉

M&Aには友好的なものからある程度交渉が必要なものまで、さまざまです。力関係が明確で希望する条件のままM&Aが進む場合は良いのですが、そうでない場合は買主候補または売主候補との交渉が必要となります。交渉の成否はM&Aの成否と密接な関係があるため、慎重に進める必要があります。

交渉に際しては交渉する項目の抽出をしたうえで、各項目のどこまで獲得したいのか、または妥協できるのか、などの交渉を依頼者に代わって実施することも期待されます。交渉は弁護士の重要な役割ですが、事前準備として交渉項目の適切な抽出も求められます。

M&Aにおける条件交渉は多岐にわたり、また項目同士が深く関連するケースもあることから、M&Aの知識や経験が豊富な弁護士への代理交渉の期待は大きいです。

④必要な契約書の整備

M&Aの条件交渉がまとまれば、契約書を締結します。M&Aの手法の選択にもよりますが、M&Aをクローズするには多くの契約書が必要となります。M&Aに強い弁護士は契約書の書式を多く持っており、M&Aの案件に応じて使い分けます

契約書でM&Aのリスクを適切に回避しなければ、M&Aが終了してからトラブルとなることもあります。

⑤売主候補、買主候補選定へのアドバイス

M&Aでは、希望の条件に合致する売主候補や買主候補を探すことは容易ではありません。しかし、相手先との相性や事業上の適合性などで、その後の当事業および当企業の明暗を分けることはいうまでもありません。

M&Aに強い弁護士は選択した売主候補や買主候補が、事業上のシナジーを適切に実現できる相手であるかどうかを、他の専門家とも連携しながら助言します。このプロセスにより、M&Aの効果を最大化できます。

⑥M&Aに必要な他の専門家の招へい

M&Aでは弁護士だけでなく、多くの専門家の関与が必要です。M&Aの案件により、財務デューデリジェンスに強い会計士や、労務デューデリジェンスに強い社会保険労務士などと連携をとりながら進めるケースもよくあります。

これらの専門家が担当する分野は、それぞれがパズルのように密接に組み合わさることで、M&A実行の効果が発揮されます。そのため専門家間の緊密な連携が、M&Aの成功に必要不可欠です。

M&Aに強い弁護士はM&Aを専門とする他の専門家とのネットワークを有しており、連携をとってサポートを行います。

※関連記事
M&Aの種類とは?契約書や専門家の種類を解説
M&Aの契約書とは?契約手順に沿って意向表明、基本合意書、最終契約書を解説します

M&Aにおける弁護士の独占業務

ここでは、M&Aにおける弁護士の具体的な独占業務についてご説明します。M&Aにおける弁護士の業務は弁護士事務所によって変わりますが、弁護士だけが行える共通の実務として以下の2つがあります。

  1. 法務デューデリジェンス
  2. 契約書作成
この2つについて、詳しく見ていきましょう。

①法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスとは、M&Aの対象となる会社や自分の会社の事業を法律の観点から監査し、法務的なリスクを洗い出す作業です。株主の履歴確認、契約書の閲覧、事業の許認可や登記関係のチェックなどが挙げられます。

また、M&Aの内容や経営統合した状況に違法性がないか確認し、同時にM&Aの当事者である買い手側・売り手側の会社に潜在的な法的トラブルがないかチェックします。

株式譲渡のように、M&Aの実行に際して株式の譲受に公的な機関を通さないものもあり、そのM&Aが法律に抵触していないか確かめるためにも法務デューデリジェンスは重要です。

②契約書作成

契約書作成も弁護士が持つ法律知識を活かして行う重要な作業です。M&Aに関する契約書は複数あり、重要なものでは秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書、関連契約書などがあげられます。契約書にはそれぞれ特定の書式があり、法律に定められた内容の記載が求められます。

契約書に不備があり無効扱いになれば、M&Aの進行に影響する恐れがあります。リスクや問題が顕在化したときの影響の大きさから、契約内容は事前に入念なチェックが必要です。

M&Aをきっかけに会社同士が訴訟に発展するケースもあり、最終契約書はクライトアントを守る重要な資料になります。

そのため、弁護士の専門的な知識・経験が役立ちます。M&Aにおける弁護士の業務には、幅広い法律知識と有効的なアドバイスを可能にする経験が必須で、それらが案件を左右するといっても過言ではありません

※関連記事
デューデリジェンスとは?目的・方法・種類

M&Aの対応を弁護士に依頼するメリット

M&Aの実行にあたり弁護士の協力を得ることは、さまざまなメリットがあります。直接的に依頼した業務の遂行のみならず、案件の成否を左右する効果ももたらします。ここでは、それらのメリットについて説明していきます。

  1. 法律の観点からサポートを受けられる
  2. 交渉のプロフェッショナルを味方に付けられる
  3. 弁護士のネットワークを利用できる

①法律の観点からサポートを受けられる

M&Aを行う際、企業やその事業に法律に反するリスクが潜在する可能性があります。そのため、法律の観点からサポートを受けられる点は、弁護士に依頼する最大のメリットです。また、M&Aは公的な機関を通さないケースがありますが、企業同士で完結したM&Aでも法律の規制は受けます

もし法律に反する事柄が見つかれば、契約自体が無効になる恐れもあります。これらのリスクで企業同士がトラブルとなり、訴訟に発展するケースも少なくありません。

このような事態を法的な観点から予防し、トラブルが発生したときに解決するためにも弁護士の存在は有益といえます。

②交渉のプロフェッショナルを味方に付けられる

弁護士は法律のプロフェッショナルであり、交渉のプロフェッショナルでもあります。裁判や調停などで交渉経験がある弁護士であれば答弁の技術と法的な根拠に基づいた主張により、効果的な説明・交渉を行うことが可能です。

また、M&Aに携わった実績が豊富な弁護士であれば経験を活かせます。そのため、より有利な条件を獲得する駆け引きに秀でていたり発生した事態の収拾が早く解決したりするなど、依頼者にとって理想的なM&Aを実現しやすくなります。

③弁護士のネットワークを利用できる

M&Aに長けた弁護士であれば、弁護士を通じたネットワークを活用できるのも大きなメリットです。M&Aでは会計士や税理士など他の専門家の力が必要になる場面がありますが、優れた専門家を見つけるのは、簡単なことではありません。

しかしM&Aに強い弁護士であれば、M&Aに長けた他の専門家とのネットワークを築いていることが多く、必要に応じてそのネットワークが利用できます。

弁護士事務所が税理士事務所、会計士事務所などと連携している場合は複数の専門家のサポートを同時に受けられ、M&A案件が成約する可能性が高まります。

M&Aの対応を弁護士に依頼した際の費用

専門家に依頼する際は、費用が気になるものです。ここでは、M&Aで弁護士に依頼するときの費用を紹介していきます。代表的なものは以下の3点です。

  1. 相談料
  2. 着手金および成功報酬金
  3. 顧問料、部分的委託費用

①相談料

弁護士事務所によっては、相談料が発生するケースがあります。初回の相談は無料、相談料は相談時間単位で発生、などとそれぞれの事務所で設定されており、高額なケースもあります。相談をする際は、その事務所の料金体系について事前に調べておきましょう

②着手金および成功報酬金

M&A仲介・支援の弁護士への報酬は、M&A実行前に着手金が発生するケースがあります。また、一定の着手金を受け取ってからM&A仲介・支援を行い、成功すれば残額を受け取る形もあります。さらに、完全成功報酬制の仲介会社もあります。

そのような業者はM&Aを成功させなければ報酬がもらえないため、効果が弱いM&Aでも無理矢理実現させるかもしれません。一方、M&Aの実績に基づき信頼を獲得した顧客基盤があるからこそ完全成功報酬制にし、クライアントの初期負担を軽減する事務所もあります。

事務所の顧客基盤やユーザー評価などを参考にして事務所を決め、依頼する予算に応じて報酬の形態を選択すると良いでしょう。

③顧問料、部分的委託費用

弁護士への依頼内容によっては、報酬の形態が多様化します。例えば、弁護士がM&Aを行っている間の法律顧問を行う場合は月額報酬になったり、法務デューデリジェンスだけを依頼する場合は実費+弁護士報酬となったりします。

例として、契約書作成やデューデリジェンスの実施に50万円から設定する事務所、1時間ごとに数万円支払う時間制の料金体系もあります。

また、緊急対応の依頼や土日祝日に作業を依頼する場合、追加請求されることもあります。そのため、あらかじめ依頼する事務所がどのような報酬形態なのか調べることが大切です。

M&Aに強い弁護士を見極めるポイント

M&Aに強い弁護士を探すには、どのようにすれば良いのでしょうか。最近は、インターネットでさまざまな弁護士事務所を紹介するサイトがあり、ひと昔前に比べると弁護士探しは容易です。

このようなものを活用すれば、M&Aに強い弁護士と巡り会う可能性が高まるでしょう。その際の基準は、下記の5点を参考にしてください。

  1. M&Aの対応実績が豊富か
  2. クローズまで一貫して案件を主導できるか
  3. 他分野の優秀な専門家とのコネクションがあるか
  4. 企業法務の知識と対応実績があるか
  5. 信頼できる人間性を持つ人物か

①M&Aの対応実績が豊富か

M&Aの法的構成や手法は多種多様であり、配慮すべきリスクも会社によって異なります。そのため、M&Aを手掛けた実績が1件ある程度では、M&A案件を適切に仕切れる弁護士とはいえません。

また、中規模事務所でM&Aの対応実績はそれなりにあっても、個人の弁護士1人あたりの対応実績は数件というケースもあるため要注意です。

弁護士として必要な知識、M&A案件に関する豊富な実績を個人的に有しているかがポイントの1つです

②クローズまで一貫して案件を主導できるか

法律事務所の規模やM&A案件の規模が大きければ大きいほど、M&Aの全体像に強い弁護士が減ります。M&Aを複数の弁護士で担当するケースでは、自分の担当分野以外のことは一切知らないというケースもあるからです。少人数で担当する中小規模のM&A案件となれば、リスクを見逃すこともあるでしょう。

その道の専門家が経験不足や全体観を持たないためにリスクを見逃し、M&Aが失敗に終わってしまいます。中小規模のM&Aでは、M&Aを最初から最後まで主導できるかどうかも重要なポイントになります

M&Aの一貫支援をご希望の場合は、M&A仲介会社にご相談いただくのも方法のひとつです。M&A総合研究所では、支援実績豊富なアドバイザーがご相談からクロージングまでフルサポートいたします。

通常、M&A取引は交渉から成立まで半年から1年程度かかるといわれていますが、M&A総合研究所ではスピーディな対応を実践しており、最短3ヶ月での成約実績も有しています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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③他分野の優秀な専門家とのコネクションがあるか

M&Aは、弁護士だけで行うものではありません。法律上のリスクを法務デューデリジェンスで回避するだけでなく、税務、会計、許認可、環境およびビジネスなど多様な側面から、M&Aが適法かつ適切であるかチェックする必要があります。

そのため、M&Aに強い弁護士は他のM&A専門家のネットワークを持ち、M&A案件に合わせて紹介や招へいが可能です。豊富なM&A専門家のネットワークを活用し、M&Aの目的を効率的かつ確実に達成する弁護士こそがM&Aに強い弁護士といえます。

④企業法務の知識と対応実績があるか

M&Aで弁護士が行うデューデリジェンスは企業の健康診断のようなもので、血圧だけ測定しても全身の健康状態の確認は不可能です。M&Aの業務に加え、たくさんの企業法務の紛争解決を実施した実績と経験が、M&Aに長けた弁護士として必要です。

そのため、常日頃からM&A業務にかかわらず企業法務を取扱い、顧問先を多く有する弁護士は、助言の内容やタイミングが適切であると客観的に判断できます。M&Aでも活躍することは間違いないでしょう。

⑤信頼できる人間性を持つ人物か

M&A特有の知識や経験、コネクションが担当弁護士に重要であることは理解いただけたのではないでしょうか。しかし全ての項目で十分な水準を満たす弁護士を見つけても、人間的に好きになれないケースもあります。その場合は、他の弁護士の活用を視野に入れましょう。

M&A案件を依頼した場合、デューデリジェンスを進める際にクライアントである企業の担当者は、弁護士と頻繁に連絡を取ります。終焉では、1日に数回連絡を取り、泊まり込みで作業をすることもあります。

そのため、相性が良くない人柄を持つ弁護士とでは双方にストレスがたまり、法的なこと以外でM&Aが滞る危険があります。コミュニケーション上のストレスやミスは、緻密な計画を伴うM&Aにおいて致命的です。

人づての評判や実際に会ったり相談したりして受ける印象など、直感的なことも大事にしながら起用する弁護士を選択しましょう。相談は気軽にできる仲介会社や事務所も増えているため、吟味しながらの決定をおすすめします。

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まとめ

M&Aにおける弁護士は、デューデリジェンスや契約書などの法的な部分をサポートする重要な役割を果たします。M&Aの際に発生するリスクを回避し、スムーズに進行するための知識、経験、人脈および信頼できる人柄を兼ね備えた弁護士に依頼することが大切です。

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