2024年2月11日更新会社・事業を売る

M&Aの動向と現状!2024年最新トレンドや代表的なM&A事例・今後の予測も徹底解説

近年、経営戦略としてM&Aを活用する企業が増加し、2019年には4,000件を超えました。2023年は特にベンチャーのM&Aは増加傾向にあり、中小企業やスモールビジネスのM&Aも活発化しています。今回は、さまざまな業界のM&A動向を解説します。

目次
  1. M&Aの最新動向【2024年】
  2. M&Aの動向【2022年の記録】
  3. M&A件数の動向
  4. 大企業とベンチャー企業のM&A動向
  5. 代表的な日本国内の大型M&A3選
  6. M&Aの予測・トレンド【2022年最新動向】
  7. 業界別M&A動向
  8. M&Aの動向まとめ

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M&Aの最新動向【2024年】

中小企業庁の報告によると、2025年までに中小企業や小規模事業者の経営者の約64%、約245万人が70歳を超える引退予定年齢に達する見込みです。問題は、これらの経営者の約半数、約127万人が後継者不在の状態であり、これは日本の企業経営者の約3分の1を占める数です。中小企業の経営者の高齢化は、時間がない状況です。

さらに、後継者が未定の127万社のうち、60万社が黒字ながらも廃業するリスクがあります。後継者の不在による中小企業の廃業が増え続けると、今後10年で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとの報告があります。この深刻な事業承継の問題に対して、第三者による事業承継、すなわちM&Aが解決の鍵とされています。

参考:中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」

M&Aの動向【2022年の記録】

近年、経営戦略の1つとしてM&Aが浸透しています。M&Aとは企業の合併買収のことで、迅速に経営戦略を遂行する手段として有益な方法です。従来は大企業のみで実施されていましたが、最近では中小企業・ベンチャー・個人事業主にもM&Aが普及しています。

そこで、本記事では、実際にM&Aの件数が増加しているのか、各業界や規模で分けてみた場合、M&Aの動向はどうなっているのかなど、最新のM&A動向を詳しく紹介します。

では2022年に行われたM&Aの動向などを見ていきましょう。

4,000件ほど行われた

まず、2022年に日本企業が関与したM&Aの公表件数は約4,000件ほどでした。

これは2年連続の最多件数を更新している数値です。2020年ごろはコロナウイルスの影響でM&Aの件数が落ち込んでいたのですが、コロナウイルスが落ち着き出してからM&Aの件数がまた右肩上がりに増えていきました。

IN-INが件数として多い

約4,000件のM&Aの中でもより多く行われたのは国内企業同士のM&A、いわゆるIN-INのM&Aでした。

IN-INは全体の約8割を占めるM&Aとなっています。また、データとして公開されていない他にもM&Aは数多く行われているため、IN-INでのM&Aの件数はさらに増えていくのではないかと予想されています。

総額11兆円のM&Aが行われた

約4,000件行われたM&Aですが、総額で11.4兆円ものお金が動いています。

ただ、昨年対比で見ると31.6%の減少となっています。多くの企業がM&Aに取り組んではいるものの小規模なM&Aが多くなり、全体的なM&A金額では昨年よりも少なくなっているというデータがありました。

M&A件数の動向

続いて、全体的なM&A件数の動向を確認します。

M&Aの実績

M&Aの件数は、1990年代までは年間500〜1,000件程度でした。しかし、2000年代に突入すると、M&A件数は急激に増加し、2006年には、年間約2,700件ものM&Aが実施され、M&Aの需要が過熱しました。

しかし、2008年9月15日にアメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻した事件(リーマン・ショック)の影響を受け、2008年〜2011年までM&Aの件数が減少し続けました。

ところが、2012年以降は再びM&A件数が右肩上がりに上昇し、2017年には過去最高となる3,000件ものM&Aが実施されました。また、2019年には、日本企業が関わった企業のM&Aの件数が4,088件、2021年には4,280件と、過去最多を更新し続けています

参考:レコフデータ「グラフで見るM&A動向」

M&A件数が増加している理由

M&Aが増加している背景には、主に下記4つの要因があります。

  1. 後継者不足、経営の先行き不安を抱える中小企業の増加
  2. 大企業の海外進出の活発化
  3. 公的機関やM&A仲介会社による支援の拡充
  4. M&Aの認知度向上による買収・売却ニーズの拡大

①後継者不足、経営の先行き不安を抱える中小企業の増加

後継者不足を解消するため、高齢化が進行するに伴い、事業承継のニーズが高まっています。とりわけ中小企業を中心に広がっており、後継者が後を継がないケースが増加しています。そのため、親族ではない第三者に会社を売却する事例が増えている状況です。

②大企業の海外進出の活発化

会社の将来性に不安を抱え、M&Aによる生き残りを図る企業も少なくありません。実際に大企業では、海外進出の風潮が強まっています。国内市場が縮小する昨今、海外進出は賢い選択です。そのため、海外進出を円滑にする手段として、M&Aの活用が広まっています。今後はさらに、M&Aの件数が増加する見込みです。

【関連】M&A件数の推移とは?国内、海外のM&A件数の推移を解説

③公的機関やM&A仲介会社による支援の拡充

日本のM&A市場の成長には、公的機関やM&Aアドバイザリー会社の支援の充実も大きく貢献しています。特に中小企業の取引が増える中、事業承継・引継ぎセンターなどの公的機関では、成約件数が顕著に増加しています。2011年にはほとんど成約実績がなかったこれらのセンターが、2018年には900件以上の成約を記録しています。

同様に、中小企業や個人の取引の増加を背景に、M&Aアドバイザリー会社もサービスを充実させています。これらの会社は、小規模案件の取り扱いや、手付金不要の案件など、よりアクセスしやすい形式へと進化しています。

このような公的機関やM&Aアドバイザリー会社の支援とサービスの拡充が、国内M&A市場の拡大を促進しているのです。

参考:中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」

④M&Aの認知度向上による買収・売却ニーズの拡大

かつては大企業の専売特許だったM&Aが、現在では個人レベルでも実施される時代へと変わりました。この変化に伴い、「M&Aマッチングサイト」と呼ばれる新しいプラットフォームが登場しました。これまでM&Aの情報は仲介会社や金融機関を通じてしか得られなかったのが、マッチングサイトでは自分で希望する条件を設定して簡単に案件を探せるようになりました。

同時に、副業が解禁されるなど、働き方にも大きな変化が見られます。これらの動きは、個人がM&Aに参入しやすくなったことを示しており、買い手の市場への参入が活発になっています。こうした流れは、日本のM&A市場の拡大に大きく貢献しています。

大企業とベンチャー企業のM&A動向

ここでは、規模別・種類別に、M&Aの動向を紹介します。

①規模別に見るM&A動向

まずは企業規模別に、M&Aの動向を解説します。

大規模なM&Aの動向

大規模なM&Aとは、大企業同士のM&Aのことです。M&Aの件数自体は増加している一方、M&Aの成約金額はピーク時と比べて減少しています。このことから、大企業同士のM&A自体は、減少している現状です。従来は大企業同士の経営統合が盛んに実施されていましたが、近年ではM&Aによる経営統合が落ち着いてきています。

なぜなら、これ以上統合を進めると、独占禁止法に抵触するおそれがあるためです。今後大企業同士のM&Aは、ピーク時ほどは盛り上がらないと考えられます。一方、地方銀行・大手メーカー・一部の業界では再編や事業売却の余地があるため、今後大企業同士のM&Aが激減するとは考えにくいです。

中規模なM&Aの動向

大企業とは対照的に、中規模な(ベンチャー企業の)M&Aは増加しています。従来、ベンチャー企業は、IPOによる資金調達を目指すことが一般的でした。しかし、IPOを目指すためには、多大な時間やコストがかかります。加えて、IPOを実現できる企業は一握りの企業に限られています。

以上の現状から、近年では、M&Aによる資金調達を目論むベンチャー企業が増えています。そのため、今後日本国内でも、M&Aによる手法が主流となる可能性が高いです。

小〜中規模なM&Aの動向

近年、中小企業やスモールビジネス(個人事業主)のM&Aは、最も件数が増加しています。その背景には、前述した通り事業承継の問題があります。従来、主流であった親族内への承継がM&Aや従業員承継に移り変わりつつある状況です。

また、中小企業やスモールビジネスのM&A件数の増加は、サポートしてくれる専門家の増加にも連動しています。これまで中小企業やスモールビジネスのM&A支援は、専門家から断られるケースが多くありました。しかし、昨今では中小企業やスモールビジネスのM&Aを積極的にサポートする専門家が増えており、M&Aの実行に踏み切る経営者が増えています。

M&A総合研究所は、中小企業・中堅企業のM&Aを専門としており、経験・知識豊富なM&Aアドバイザーがフルサポートいたします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aに関して無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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②種類別に見るM&A動向

ここでは国内外の区分に分けて、M&Aの動向を紹介します。

IN-IN型M&Aの動向

IN-IN型とは、国内企業同士のM&Aのことです。日本企業同士のM&A動向を見てみると、件数と金額で異なる動きを見せています。ベンチャー企業や中小企業のニーズの高まりを理由にIN-IN型M&Aの件数は増加している一方で、大企業同士の大規模なM&A件数は減少しているため、成約金額の総額は減少傾向です。

従来、M&Aは大企業が活用する経営戦略でした。しかし、近年では、中小企業やスモールビジネスのニーズが中心となっています。こうした近年の動向が、件数と成約金額の動きに表れています。

IN-OUT型M&Aの動向

IN-OUT型とは、日本企業が海外企業を買収するM&Aのことです。IN-OUT型M&Aの動向は、活発化の形相を呈しています。その最も大きな理由は、国内市場の縮小です。今後人口が減り続ける国内市場で利益を獲得することは益々困難となるでしょう。そのため、大企業は、海外市場に活路を見出そうとしています。

また、円高やアベノミクスによる株価上昇が後押しする形となり、結果としてIN-OUT型M&Aは近年活発になっています

OUT-IN型M&Aの動向

OUT-IN型M&Aとは、海外企業による日本企業の買収のことです。OUT-IN型M&A件数は、わずかながら減少傾向です。一方で、成約金額は急増しています。その背景には、主に中国系企業による大規模な買収があります。

最も有名な事例は、中国の鴻海によるシャープの買収です。海外企業の買収は件数こそ少ないものの、日本経済や企業に与える影響は非常に大きいです。今後経営が悪化した大企業は、こうした買収のターゲットとなる可能性が高いものと見られます。

【関連】ベンチャーのM&A成功マニュアル|実施する目的・メリット・事例を解説
【関連】クロスボーダーM&Aとは?海外企業の買収メリットや手法と事例を解説!

代表的な日本国内の大型M&A3選

ではここからは代表的な日本国内の大型M&Aを3つご紹介します。

  • 日本郵政と楽天の資本業務形態
  • ZホールディングスとLINEなどの複数企業が絡む経営統合
  • ドラッグストア同士の経営統合

それぞれご紹介します。

日本郵政と楽天の資本業務形態

70を超えるサービスを運営している「楽天」と郵便事業を全国展開している「日本郵政」が2021年に連携強化を目的としたM&Aを行いました。

M&Aの目的は以下の通りです。

  • キャッシュレスペイメント分野の連携
  • 郵便局内における楽天モバイルの申し込みカウンター設置と運営
  • 共同の配送システムや物流拠点の構築
  • 楽天から日本郵政に対してDX人材の派遣

出資額は約1,499億円とされています。

日本郵政グループと楽天グループ、資本・業務提携に合意

ZホールディングスとLINEなどの複数企業が絡む経営統合

200を超えるサービスを運営している「Zホールディングス」とメッセージアプリの送受信ができるアプリ「LINE」が事業強化と新規事業への投資を目的としたM&Aを行いました。

このM&Aにより以下の事業部分でシナジー効果が期待されています。

  • マーケティング事業
  • フィンテック事業
  • 新規事業・システム開発・集客

ZホールディングスとLINEの経営統合が完了

ドラッグストア同士の経営統合

日本全国の1,444店舗のドラッグストアや調剤薬局を展開する「ココカラファイン」と、日本全国1,755店舗のドラッグストアや調剤薬局を展開する「マツモトキヨシ」が事業のさらなる成長を目的としたM&Aを行いました。

この経営統合により、以下のシナジー効果が期待されています。
 

  • 商品の共同開発
  • 販促戦略のデジタル化

シナジー効果は約200億円とされています。

株式会社マツモトキヨシホールディングスと株式会社ココカラファインとの 経営統合に関する経営統合契約の締結のお知らせ

M&Aの予測・トレンド【2022年最新動向】

アメリカでは、スタートアップのほとんどがM&Aを通じてイグジットを行っています。そのため、日本でも創業から間もない企業がさらなる飛躍のためにM&Aを志向する傾向が増加していく見込みです。

昨今は中小企業による東南アジアでのM&Aが急増中です。中小企業のM&A件数が増えれば、M&Aのノウハウが多くの企業で蓄積されるようになります。今後ともアジアのGDP比率が高まっていけば、東南アジアのM&Aは国内市場が縮小していく日本企業にとっても早期からチャレンジすべき経営課題として重視されると考えられます。

そのほか、今後はインターネットマッチングによるM&Aを筆頭とする小規模M&Aが急増する見込みです。すでに多くの小規模M&Aが成約しており、今後は個人間におけるM&Aの方法論の確立と共有が国内で重要な課題となっています。

業界別M&A動向

最後に、業界別M&Aの動向を紹介します。今回は、特に注目すべき調剤薬局業界とホテル業界を中心に動向をお伝えします。

①調剤薬局のM&A動向

昨今、M&Aが特に活発化している業界の1つに調剤薬局があります。調剤薬局とは、医師が出した処方箋に対して医薬品を調剤・提供するお店のことです。調剤薬局の市場規模は8兆円程度で、市場自体は成長傾向にあります。

また、調剤薬局業界では、大規模なM&Aが相次いでいます。例えば、業界トップの「アインホールディングス」や「クオール」は、M&Aによって薬局の数を増加させている状況です。

さらに、中小企業の動向を見てみると、積極的なM&Aを仕掛ける企業も見受けられます。同業種同士でM&Aを実施する企業がある一方で、関連多角化を進める企業も存在します。調剤薬局ごとにM&Aの活用方法が異なる点は特徴的な動向です

②ホテル業界のM&A動向

ホテル業界も、M&A動向を語るうえで無視できない業界です。なぜなら、近年、訪日外国人旅行客数が増加しているためです。このことから、2020年には今よりも約1.5〜2倍訪日外国人観光客が増加すると試算されており、国内ホテル業界は今後も市場が拡大するでしょう。

このような背景から、大手ホテル業者が地方のホテル・旅館を買収する動向が見られます。そこには今後増える外国人旅行客の需要に備え、いち早く受け入れ態勢を整える狙いがあります。今後はホテル業界でのM&A件数が増加する見込みです。

※天変地異、ウイルス蔓延など有事の際はこの限りではありません。

③その他業界のM&A動向

最後に、その他業界のM&A動向として、代表的な業界を下表にまとめました。

情報サービス業界 規模の拡大や新サービスの開発のためのM&Aが頻繁に行われている。
倉庫・運輸関連業界 戦後から三菱倉庫・住友倉庫・三井倉庫の旧財閥系3社がトップ3を形成する時期が長く続き、順位もこの序列が不動であったが、三井倉庫によるM&Aがこの順位を塗り替えた。
医薬品卸業界 水平統合から垂直統合へのM&Aが継続的に行われている。
物流・陸運業界 宅配便の需要は今後も継続して伸びていくと予想され、需要増加の解決策としてのM&Aが注目されている。
病院業界 現在では大手プレーヤーの市場占有率は低いため、今後、業界再編の可能性が残されており、行政も業界再編を進めるべく、制度の緩和や創設を進めている。
設備工事業界 2020年のオリンピック特需が終了し、以降、多くの経営者が経営の見直しを迫られている中で、規模拡大を目指したM&Aをはじめ、海外への事業展開を行う企業が増加している。
建設業界 同一地域または隣接地域でのM&Aや、優秀な現場監督や建設業免許を獲得するために同業者の中小企業をM&Aするケース、海外展開や事業承継を目的としたケースなどが代表的。
銀行業界 1990年代後半から2001年にかけて行われた「金融ビッグバン」による大規模な規制緩和を受けて、M&Aによる業界再編が進んでいる。

M&Aの動向まとめ

全体的な動向としては、M&Aの件数は増加しており、大企業よりも中小企業やベンチャー企業に顕著に見られます。特に調剤薬局業界とホテル業界では、M&Aを利用した戦略が活発に進んでいます。また、中小企業にとっても、M&Aは無視できない選択肢の1つです。経営者ならば、M&Aの有効活用も視野に入れ、日頃からM&Aの動向にも注意することをおすすめします。

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