2021年8月8日更新会社・事業を売る

M&Aの成功は27%?コロナ禍でも失敗せずに成功確率を高める方法!

M&Aを活用する目的の変化や支援制度の充実化に伴い、近年M&Aの成功率が上昇しています。一方、M&Aの成功率を下げる要因としてデューデリジェンスの軽視や偶発債務などが問題となるケースも少なくありません。本記事では、M&Aの成功率を高める方法を中心に解説します。

目次
  1. はじめに
  2. 日本企業によるM&Aの成功率
  3. M&A成功率上昇の背景
  4. M&Aの成功率を下げる理由
  5. M&Aの成功率を低下させるリスク
  6. M&Aの成功率を高める方法
  7. M&Aの成功率を高める方法のまとめ

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はじめに

昨今のM&A件数の急増に伴い、大手企業・中小企業・ベンチャー企業・個人事業主までもがM&Aを活用する時代が訪れています。

変化の激しい現代社会において、M&Aはスピーディーに経営戦略を遂行する手段として非常に有効です。しかし、多くのメリットがある一方で、M&Aの成功率はそれほど高くありません。

そのため、M&Aは成功率を把握したうえで慎重に実施すると良いでしょう。本記事では、M&Aの成功率や成功率を上げるコツを中心に詳しく解説しています。

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日本企業によるM&Aの成功率

はじめに、日本企業におけるM&Aの成功率の実態を中心に説明していきます。

M&A経験企業にみる成功率の評価

〈全国の経営者150人に聞く2020 年最新のM&A動向〉https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000039539.html

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000039539.html

デロイトトーマツコンサルティングの「M&A経験企業にみるM&A実態調査(2013年)」によると、調査年から数えて過去5年間にM&Aによる買収・売却を実施した企業のうち約8割が、80%超の目標達成度を成功基準と設定していることが判明しました。

これに加えて、上記の成功基準を達成していた企業は36%に留まっていることもわかっています。以下の表に、調査結果をまとめました。

目標達成度を振り返ったときのM&Aの評価
成功だったと回答した企業 36%
中間だったと回答した企業 48%
非成功だったと回答した企業 16%

出典:デロイトトーマツコンサルティング「M&A経験企業にみるM&A実態調査」(2013年)

なお、2020年現在、コロナウイルスの影響により多くのM&A案件が延期・中止を余儀なくされています。当社の調査によると、2020年にM&Aによる買収を検討していた経営者のうち半数(50.0%)が延期もしくは中止を決断したことがわかりました(本項冒頭の円グラフを参照)。

また、会社や事業の売却を検討していた経営者のうち約8割が延期や中止もしくは話が具体的に進まなかったと回答しています。このようにコロナウイルスはM&A取引に多大な影響を及ぼしており、今後はM&Aの成功・失敗という評価軸にも影響を与えるものと推察される状況です。

M&Aにおける成功の定義

M&Aにおける成功率の基準はさまざまあり、一般的には売上高の増加やROA・ROEといった利益率の上昇および株価の上昇などが指標として用いられます。そのため、M&Aの成否を判断する際は、ひとつの指標に限定せず、複数の指標で総合的に判断すると良いです。

日本におけるM&Aの成功率

M&Aの成功率は2〜3割とされており、一般的には非常に低い確率といえます。1990年代後半〜2000年代前半に限定すると、M&Aの成功率はわずか2割台に留まっていました。

実際にデロイトトーマツコンサルティング合同会社がM&A経験のある日本企業162社に対して行った調査によると、過去に実施したM&Aにおいて目標を十分に達成できた企業の割合は全体の27%(2007年時点)でした。

しかし、近年は状況が変化しており、M&Aの成功率は4割〜5割まで上昇している状況です。M&Aの成功率が上昇した背景には、多くの会社の間でM&Aのノウハウが共有されるようになった点だけでなく、以前よりM&A仲介会社が増加した点も深く関係しています。

昨今はM&Aの実施が容易になってきましたが、M&Aには依然として膨大な時間と手間がかかるため、経営者のみでのプロセス遂行は困難です。

スムーズかつ確実にプロセスを進めて成功率を高めるためにも、専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

M&A総合研究所にはM&Aに関する知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、M&Aのフルサポートを行っています

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M&A成功率上昇の背景

ここでは、近年M&Aの成功率が上昇している理由について把握しておきましょう。M&A成功率上昇の背景には、主に以下2つの理由があります。

  1. M&A目的の変化
  2. M&A支援機関・制度の充実化

それぞれの理由を順番に見ていきます。

①M&A目的の変化

1990年代後半〜2000年代前半はバブル崩壊により日本経済が悪化していた時期であり、事業再生や救済・グループ再編を主な理由にM&Aが盛んに実施されていました。その結果として、財政状況が悪化している企業のM&A事例が増加したために、成功率の低下につながったと考えられるのです。

しかし、現在はバブル崩壊後とは異なり、事業拡大・海外進出といった前向きな目的によるM&Aが増えています。前向きな目的を掲げるM&Aが増えたことで、以前よりM&Aの成功率が高く推移しているのです。

②M&A支援機関・制度の充実化

1990年代後半〜2000年代前半は、M&Aが日本で活発に活用され始めた時期です。当初はM&Aに対する支援機関(アドバイザリーや仲介会社)や制度が整っていなかったために、M&Aの成功率が低く推移していたと考えられます。

しかし、現在では、M&A仲介会社やアドバイザリーの活用により成功率が上昇している状況です。

M&A総合研究所は中小・中堅規模のM&Aを主に手掛ける仲介会社で、M&Aの知識・実績豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

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M&Aの成功率を下げる理由

昨今はM&Aの成功率が上昇しているものの、依然として半数近くのM&Aは失敗しています。ここでは、M&Aの成功率を下げる理由について把握しておきましょう。M&Aの成功率を下げる主な要因は、以下の4つです。

  1. デューデリジェンスを軽視する
  2. M&A後の経営戦略が甘い
  3. M&A後の統合過程で失敗している
  4. M&Aが目的になっている

それぞれの理由を順番に見ていきます。

①デューデリジェンスを軽視する

デューデリジェンスとはM&Aを実行する相手企業の価値・リスクを調査する行為であり、M&Aプロセスの中でも特に重要な項目です。M&Aにおけるデューデリジェンスは、財務分野・法務分野・ビジネス・人事分野におけるリスクの発見を目的に実施されます。

そのため、コスト削減などを理由にデューデリジェンスをおろそかにすると、偶発債務(将来的に発生する可能性のある債務)や簿外債務など重大なリスクを見逃してしまう可能性が高まります。

デューデリジェンスにより発見されたリスクを十分に対処しなければ、将来的にリスクが顕在化してM&Aの失敗につながるため注意しましょう。

②M&A後の経営戦略が甘い

M&A後の経営戦略が甘いと、成功率が大幅に低下する原因となります。最近ではM&Aの流行に伴い、「M&Aを実行すれば会社が成長する」と安易に考える経営者の方も多いですが、M&Aのゴールは取引自体ではありません。M&Aでは、取引自体よりも買収後の経営戦略が非常に重要です。

M&Aでは、買収で獲得した経営資源を有効活用してはじめて会社の成長につながります。そのため、買収後の計画がないと当然ながらM&Aも失敗しやすくなるのです。

③M&A後の統合過程で失敗している

M&Aの成功率を下げる大きな要因のひとつに、統合過程の失敗があります。M&A後の統合計画・統合に必要なシステムなどの不備を理由に、人材・システムの統合がうまくいかず業務に支障が出るケースは珍しくありません。

特に中小企業ではM&Aの統合体制が整っていない傾向が強いため、必要に応じて外部の専門機関などの起用を検討すると良いでしょう。

④M&Aが目的になっている

M&Aによる買収は、あくまでも買収に伴うメリットの獲得を目的に行う取引です。ところが、M&Aの実施を検討するうちに、メリットの獲得ではなく買収自体に目標がすり替わってしまう企業も珍しくありません。

特にM&A担当者が在籍する規模の大きい企業では、担当者がM&Aの成約を最大の目的に設定して取引を進めているケースが度々見られます。このように本来の目的を見失ってしまえば、M&Aにおいてメリットの獲得が遠のく原因となるのです。

そのため、M&A担当者および経営者の共通認識として、「M&Aは経営課題の解決や経営戦略の達成を図って行う取引」であることを改めて把握しておきましょう。

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M&Aの成功率を低下させるリスク

ここまでM&Aを実施する当事者の行動や考え方による要因を紹介しましたが、ここではM&Aの成功率を低下させる外部要因となる以下のリスクについて説明します。

  1. 簿外債務や偶発債務
  2. 中核人材のモチベーション低下・離職
  3. のれんの過大評価

それぞれのリスクを順番に見ていきましょう。

①簿外債務や偶発債務

財務的な観点から見ると、簿外債務や偶発債務はM&Aの成功率を大幅に低下させる要因です。簿外債務とは貸借対照表に記載されていない債務のことで、未払い給与や退職給付引当金などが該当します。一方、偶発債務は今後債務に変化する可能性のある債務であり、連帯保証や訴訟リスクなどが代表的です。

簿外債務や偶発債務は、M&A後に大幅な費用を発生させて利益を圧縮するおそれのある債務です。特に偶発債務は、発生すると自社の評判を大幅に下げて甚大な被害をもたらします。

②中核人材のモチベーション低下・離職

事業の収益性を構成する要素としては、ビジネスモデルよりも人材のスキル・ノウハウが多くを占めるケースは多いです。そのため、M&Aの成功率を高くするには、経営陣・優秀な従業員・中核人物がM&A後も安定的に働ける環境を維持させなければなりません。

そのため、M&Aに伴い統合の停滞やコミュニケーション不足が生じると、中核人材のモチベーション低下につながり、最悪の場合は離職を招くおそれがあります。M&Aの際は、中核人材の動向に十分注意しましょう。

③のれんの過大評価

M&Aで計上したのれんは、最長20年以内に減価償却しなければなりません。のれん償却で生じる費用は、毎期の利益を圧迫します。仮にのれん償却で生じる費用が利益を上回れば、資金繰りが悪化してM&Aは失敗とみなされるのです。

なお、買収価格に上乗せするのれんは、ブランド力・独自の技術力など定量化できない資産で構成されます。そのため、M&Aシーンでは、のれん代を過大評価して資金繰りが悪化するおそれもあるため注意が必要です。このようにのれん代は不確実性が高いため、M&Aの成功率を下げる大きなリスクとなり得ます。

【関連】のれん償却期間とは?会計基準と税務
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M&Aの成功率を高める方法

最後に、M&Aの成功率を高めるためのポイントを5つ紹介します。

  1. 経営戦略とM&Aの一体化
  2. 徹底的なデューデリジェンス
  3. のれんの適正評価
  4. 慎重な統合
  5. 専門家へ相談する

ここで紹介するポイントを踏まえることで、M&Aの成功率向上を期待できます。それでは、それぞれのポイントを順番に見ていきましょう。

①経営戦略とM&Aの一体化

M&Aの成功率を高めるうえで経営戦略との一体化は必要不可欠です。M&Aは会社の成長を実現することが本来の目的であり、M&Aの実行自体が目的ではありません。もしもM&Aを目的としてしまうと、自社事業と無関係の事業・企業を買収してしまい、M&Aのメリットを十分に生かせない可能性が高いです。

M&Aは自社事業とのシナジー効果を考慮したうえで戦略的に活用する必要があり、M&A自体はあくまでも経営戦略を遂行するための手段に過ぎません。目的と手段を履き違えないことがM&Aの成功率を上げるポイントだといえます。

②徹底的なデューデリジェンス

M&Aの成功率を高めるには、デューデリジェンスにより可能な限りリスクを洗い出さなければなりません。デューデリジェンスを徹底的に実施すると、簿外債務や偶発債務などのリスクの発見につながります。

また、単純なリスクの回避だけでなく、発見されたリスクへの対処も行いやすくなります。そのため、デューデリジェンスの徹底的な実行は、M&Aの成功率を上昇させるポイントのひとつとなるのです。

③のれんの適正評価

のれんの過大評価は、利益率悪化や減損リスク増大を招く要因です。M&Aでは、デューデリジェンスの結果を反映させるだけでなく、現実味のある評価を下すことも大切でしょう。つまり、M&Aの成功率を上げるには、相手企業へ過度に期待しない姿勢も必要です。

④慎重な統合

M&Aが失敗する要因の中でも大部分を占めるのが、統合過程の失敗です。反対に、統合過程を重要視すると、M&Aの成功率上昇が期待できます。統合過程においては、人事・システムはもちろん評価制度の統合にも重点を置くことを忘れないようにしましょう。

⑤専門家へ相談する

最後のポイントとして、専門家への相談について紹介します。M&Aを進めるには、対象企業の所属する業界やM&Aに関する知識も必要です。具体的には、法務・税務・会計・労務など幅広い専門知識が求められます。

また、M&Aでは上記のような知識だけでなく、企業価値の算定や交渉などのシーンでは高度な経験・能力も必要です。

当事者間でM&Aを進めてしまうと無用のトラブルが生じて成功率を低下させるおそれもあるため、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

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M&Aの成功率を高める方法のまとめ

本記事では、M&Aの成功率について解説しました。M&Aの目的変化や支援制度の充実に伴い、近年はM&Aの成功率が上昇しています。しかし、上昇傾向にあるとはいえ、依然としてM&Aの成功率は40〜50%程度と低く推移している状況です。

M&Aの成功率を下げる要因にはデューデリジェンスの軽視・偶発債務などがありますが、これらの対策を実施するとM&Aの成功率を高められます。また、内部・外部要因の双方に対応すれば、納得のいくM&Aを実現できる可能性が高いです。最後に要点をまとめました。

・M&Aにおける成功の定義
→売上高の増加・ROAやROEなど利益率の上昇・株価の上昇などを元に判断する

・日本企業によるM&Aの成功率
→近年は4〜5割弱程度まで上昇(以前は2〜3割)

・M&A成功率上昇の背景
→M&A目的の変化、M&A支援機関・制度の充実化

・M&Aの成功率を下げる理由
→デューデリジェンスを軽視する、M&A後の経営戦略が甘い、M&A後の統合過程で失敗している、M&Aが目的になっている

・M&Aの成功率を低下させるリスク
→簿外債務や偶発債務、中核人材のモチベーション低下・離職、のれんの過大評価

・M&Aの成功率を高める方法
→経営戦略とM&Aの一体化、徹底的なデューデリジェンス、のれんの適正評価、慎重な統合、専門家へ相談する

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