2024年8月7日更新会社・事業を売る

M&A戦略とは?策定の手順や目的と注意点を徹底解説!

M&Aを成功させるためには戦略の構築が不可欠ですが、どのような点に注意して作成すればよいのでしょうか。この記事では、M&Aの戦略とはどのようなものか、策定する目的や策定手順、注意点、実際の経営戦略の事例を紹介します。

目次
  1. M&A戦略とは
  2. M&A戦略の重要性
  3. M&A戦略の策定方法・手順
  4. M&A戦略を策定する際のフレームワーク
  5. 買い手側のM&A戦略
  6. 売り手側のM&A戦略
  7. M&A戦略策定における注意点
  8. 中小企業のM&A戦略
  9. M&A戦略の成功事例17選
  10. M&A戦略の前提となる全社戦略とは
  11. M&A戦略まとめ

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M&A戦略とは

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのか検討するための準備や計画のことを指します。M&Aにはさまざまな形があり、入念な戦略立案を基に実行されます。M&Aを実施するにあたり、戦略がどれだけブラッシュアップされるかでM&Aの成果が変わるでしょう。

M&A戦略の策定の際には、自社を分析し市場調査をすることで分かったM&Aの目的を、戦略として具体化し相手先の検討を行います。M&Aを成功させるうえで、目的に沿った戦略立案は欠かせません。

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M&A戦略の重要性

ここでは、M&A戦略の重要性を解説します。

買い手側におけるM&A戦略の重要性

買い手側がM&A戦略を策定することは、M&Aの成功確率を上げます。M&A戦略を策定しないと、期待していた未来を実現できないだけでなく多くのリスクを抱えることとなります。

M&A戦略を立てる際に最も重要なのは、目的の明確化です。 M&Aを行う目的には、さまざまなものがあり、M&Aの目的によって、戦略や用いる手法が変わります。

具体的には、まずM&Aで達成したい目的をM&A後の事業展開に主眼を置き設定します。その際はM&Aが最適な手段なのか、ほかにも手段があるのかといった点もしっかり検討することがポイントです。

そのうえでM&Aが最適な手段だと判断したら、次はM&Aで取得したいリソースはなにか、買収にかかる費用(予算)はどのくらい確保可能か、M&A後はどのように統合していくかを検討します。

自社にとってM&Aのターゲットとなり得るイメージを作っておくことで、M&Aの戦略を立てやすいでしょう。しかし目的と合致しないM&A戦略や手法を実行すると、下記のようなデメリットが生じる恐れがあります。

  • 不要な資産や負債を抱える
  • 手続きが煩雑になる
  • 費用が余分にかかる
  • 想定していたメリットが得られない

上記リスクを回避するために、目的を明確化することで、実行すべきM&A戦略も自ずと見えてきます。加えてM&Aは、企業文化が異なる企業同士の統合です。M&Aによって何を得て、自社とどのように統合していくのかも考えましょう。  

また、コスト面に関しても検討が必要です。予算の確保はどれほど出来るのか、目的に対して買収金額が妥当かを測ることも必要です。
 

売り手側におけるM&A戦略の重要性

売り手側がM&A戦略を策定することは、希望の条件で会社を売却できるかに大きく影響します。まず、M&Aで達成したい目的はなにかを明確にする必要がありますが、その際はM&A後のビジョンを視野に入れて設定することがポイントです。

また、自社が目的を達成するためには、M&Aが最適な手段なのかもよく検討しなければなりません。ほかにも選択肢がある場合は、両者を比較したうえで考える必要があります。

M&Aが最適な手段だと判断したら、次は自社の強みはどこにあり買収ニーズはあるのか、売却できるとしたら会社全体か一部事業なのかという点の見極めも必要です。

そのほか、売却対象・売却希望時期・希望する相手・希望価額なども大まかに考えておくとよいでしょう。そのうえで、法務・財務・税務などでM&A交渉での支障となり得るリスクや問題がないかという点も客観的にみておくことがポイントです。

M&A戦略を策定せずM&Aに臨むと、譲渡金額が不当に安くなったり、不利な条件を飲まされたりするリスクがあります。また、買い手が見つからない場合もあります。

どのような目的でM&Aを行うのか、いつまでに・誰に・どのように売却するのか、財務や法務リスクなど交渉の支障となるものがないのかなど確認しておきましょう、

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M&A戦略の策定方法・手順

経営戦略からM&A戦略に落とし込む手順を紹介します。

1.自社分析を行う

まずは自社分析を行います。

自社のことならなんでもわかる!と思いがちですが、意外と自社の強み・弱みを理解していないことが多いです。M&Aにおいて戦略を策定する上でも自社分析は欠かせません。

自社分析に最適な分析方法にSWOT分析があります。この分析では自社を広く見ることで、可能性やリスクなどを把握することができます。SWOTとは、Strength:強み、Weakness:弱み、Opportunity:機会、Threat:脅威の頭文字です。自社の強みや弱み、外部環境の機会と脅威を把握することで、客観的に現状を知ることができます。

2.市場調査を行う

M&Aにおいて市場調査も必要です。

調査対象市場は必ずしも同業種であるとは限りません。競合企業になり得る企業が別業種である可能性も考慮し、市場調査を行いましょう。

3.M&Aの目的を明確にする

先述したとおり、目的を明確にすることはM&A戦略で重要なポイントです。自社の分析や市場環境を踏まえ、M&Aで何を得たいかを明確にしましょう。

買い手側としては、事業の多角化やエリア・販路の拡大、人材の獲得などがM&Aの主な目的となります。売り手側としては、後継者問題の解消や従業員の雇用先獲得、不採算事業の手放し選択と集中やイグジットなどが主な目的となります。

目的を明確にすることで、ターゲット企業であるかを判断しやすくなります。

4.戦略の具体化

M&Aの実現を図るため戦略を具体的にしていきます。

M&Aの前提条件・基本方針、対象企業、スキーム(株式譲渡、事業譲渡、合併など)、経営統合の将来設計、会計・税務上のリスク、実務上の必要プロセスなど詳細を整理していきましょう。

これらはM&Aを行うにおいて欠かせない事柄です。これらを決めつつM&Aの実現に近づいていきましょう。

5.M&Aの相手先を検討する

M&Aを行う目的や戦略などを踏まえて領域をどんどん絞り込んでいきましょう。そして、絞り込んだ後は候補先企業を20〜30社ほどリストアップします。リストアップしたものをロングリストと言いますが、ロングリストから徐々に企業数を減らしショートリストを作成するのが一般的な流れです。
 

6.想定されるリスクを事前に検討

M&Aではトラブルに対して備えておくことも大切です。

M&Aを行うまでに、資金不足にならないためにも事前にどのように資金を調達しておくか、従業員からの反発なども考えられるので、M&Aの発表タイミングや発表後のケアなど考えておきましょう。また、デューディリジェンスによってリスクの発見など想定されるリスクに関しても検討しておきましょう。

M&A戦略を策定する際のフレームワーク

アンゾフの成長マトリクス

「アンゾフの成長マトリクス」はビジネスをどのように成長させるべきかを考えるフレームワークで、「自社の商品・サービス」「ターゲットとする市場」2つから考えます。

「自社の商品・サービス」「ターゲットとする市場」は、新規(新たに生み出すもの)と既存(今持っているもの)に分けて考えることができます。
 

  新規商品 既存商品
新規市場 多角化戦略 新市場開拓戦略
既存市場 新製品開発戦略 市場浸透戦略

「アンゾフの成長マトリクス」は、ビジネスを拡大すべき方向性と必要な成長戦略を考えることができるフレームワークです。市場動向や自社の強み・弱みなどを併せて考えることで、どの市場でどの商品を売り出していくかの判断がしやすくなります。

バリューチェーン分析

自社が手掛ける事業はどれくらいの価値をどの段階で作り出しているかを調べることを「バリュー・チェーン分析」といい、これを行うことで自社の「強み」「弱み」を客観的にみることができ、事業成長のヒントを見つけることが可能です。

バリューチェーン分析では、ビジネス(事業)を下表のさまざまな段階ごとにみて、各段階での価値と想定される利益を計算します。
 

商品・サービスの運送や購入 商品の材料を仕入れる過程や適切な場所へ運ぶ方法
製造 商品を作り出す過程。素材を組み合わせて作り出す作業が含まれる
販売 完成した商品・サービスを顧客に販売する過程

ポーターの競争優位の戦略

「ポーターの競争優位の戦略」はビジネスの世界で成功するための考え方で、大きく3つの戦略があります。
 

差別化戦略 商品やサービスを他社とは違う特別なものにすることで顧客に選ばれやすくする戦略
※顧客は特別なサービスやほかとは違う特徴があると高い価格でも選ぶことがあるという考え方
コストリーダーシップ戦略 商品やサービスにかかるコストを削減することで競争相手よりも安価で提供する戦略
集中化戦略 ターゲットを特定市場や一定の顧客層に絞り込み、そのニーズに合う商品やサービスを提供する戦略

上記の戦略を理解したうえでうまく使いこなせば、自社の競争優位性向上につなげることができます。

買い手側のM&A戦略

買い手側のM&A戦略ごとに得られることや具体的な戦略を紹介します。

事業拡大におけるM&A戦略

M&Aの目的と聞いて、まずイメージするのが「事業規模の拡大」でしょう。事業規模の拡大によって、人員の増加、設備の充実、顧客の拡大、間接費の削減などを実現できることがメリットとして挙げられます。その他にも、エリア拡大戦略や小規模な同業他社を買収することでシェアを獲得するロールアップ戦略などがあります。

事業規模を拡大する際には、株式譲渡や合併などのM&A手法が用いられます。
 

 

技術・機能確保を目的としたM&A戦略

機能の確保とは、生産や調達、アフターケア、企画など、自社が欲しい機能を得ることです。最近では技術確保を目的に、戦略的なM&Aを実践するケースが増加しています。もともと日本企業は生産から流通、販売までを自社で実行する風潮がありました。しかし、全てのラインを確保するには、相当な労力と費用が必要です。

そのため、醸成した技術・テクノロジーを持つ事業や会社を、M&Aで取り込み効率的を図ります。時間を節約したうえで、経営戦略を実現可能となります。

コングロマリット化戦略経営の多角化を目的としたM&Aでは、大きなブランド戦略が可能となります。そのほか事業のポートフォリオ転換では自社の事業の成長鈍化を見据え、既存の事業とのシナジーや会社の理念や文化といった部分の相性の良い分野への進出を行うことで会社の成長を期待する戦略になります。

機能確保が目的の場合には、事業譲渡と呼ばれるM&A手法を用いるのが一般的です。次項からは、具体的なM&A戦略と、戦略立案に際しての注意点をご紹介します。

【関連】事業譲渡によるM&Aとは?株式譲渡との違い・メリット・デメリット・手続きの流れを解説!

関連事業獲得に関するM&A戦略

自社の事業と関連している事業を獲得するM&A戦略です。原料の調達から生産・加工・流通・販売までの一連の流れの中の企業を獲得する、サプライチェーン拡大の戦略と、取り扱い商品の拡大を行うラインナップ拡充の戦略があります。

サプライチェーン拡大の戦略では、自社で商流の川上の企業から川下を行うことで、効率化や業界での競争力を高めることができるのがメリットとして挙げられます。また、ラインナップ拡充の戦略では新規顧客の獲得や新たな市場価値の発見、ブランド力を高めることができます。

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売り手側のM&A戦略

売り手側のM&A戦略ごとのポイントを紹介します。

第三者事業承継

日本では少子高齢化で後継者がいないことで廃業に追い込まれる企業は少なくありません。M&Aによって第三者事業承継することによって、売却益の獲得や従業員の雇用先確保、事業やブランドを継続させることができます。

選択と集中

特定の事業に資源を集中させる戦略です。生産性の高い事業や成長が見込める事業に経営資源を集中させるために、その他の事業の売却を行います。

経営リスクの分散や売上の拡大のため多角化を行う企業は少なくありません。しかし、多くの事業を展開している赤字部門などの売り上げの悪い事業を放置することで経営効率は落ちてしまいます。そのため、経営資源を集中させることで、企業価値を高める戦略になります。

イグジット

イグジットとは、事業に投下した資金を回収することを意味します。イグジットの方法としてはIPOやM&Aがあります。

M&Aでのイグジット戦略は、IPOと比較してイグジットできる可能性が高く、イグジットまでの期間が短いです。譲渡対価を得ることができ、知名度や社会的な信頼も向上するため新規事業を行うこともできます。

M&A戦略策定における注意点

M&A戦略を策定する際には、以下に注意しましょう。

自社にあったスキーム選択

まず、M&Aを行ううえで当事者となる会社の内情に合った手法の選択、スキームの設計をしっかりと決めましょう。M&Aスキームとは、M&Aの基本的な構想、計画を示すものであり、どのような流れでM&Aを行うかの設計をすることです。

M&Aの手法は多種多様であり、それぞれプロセスや効果、メリットとデメリットが異なっています。どのM&Aの手法を選択するかによって、M&Aのスキームも変わります。M&Aのスキームに影響されるM&A手法の種類は、以下の5つです。

  1. 株式譲渡
  2. 株式交換
  3. 株式移転
  4. 合併
  5. 会社分割
このように戦略の策定は自分の会社に見合った手法の選択とスキームの設計を行うともいえます。専門家とも相談しながら、入念に検討して決めるようにしましょう。

リスクの存在

買い手であれば売り手の会社の、売り手の会社であれば自身の会社が抱えているリスクがM&A戦略の策定の妨げになることがあります。M&Aにおいて、簿外債務や訴訟、不要な資産などは経営統合の妨げや無用なトラブルの原因になります。

M&Aにおけるリスクは法務、税務、財務などさまざまな種類のものが存在しており、いずれも見過ごすことのできるものではありません。買い手・売り手のいずれにせよ、リスクの洗い出しや対策はM&A戦略の策定の段階から行ったほうがいいでしょう。

情報の守秘

M&A戦略における情報の守秘は、非常に重要なことです。そもそもM&Aを実施する情報は当事者となる会社、とりわけ売り手となる会社に大きな動揺を与えることがあります。従業員や関係する取引先など、M&Aを実施する情報はさまざまな立場の人たちに影響を与えます。

最悪の場合、競合他社が先手を打ってより有利な条件を提示してM&Aを仕掛けてくることもあり得るでしょう。そのため、M&A戦略を策定していることも含め、しかるべきときまでM&Aに関する情報は一切漏らさないようにしておくのが大切です。

M&Aを実施する情報を開示するタイミングについても、戦略の過程で決めておくようにしましょう。

M&Aはひとつの選択

M&A戦略における注意点は、「M&Aが最適な戦略なのか」という点です。そもそもM&Aは経営戦略の一つにすぎず、企業が抱える問題を解決するうえでM&A以外の経営戦略が適切なケースもあります。M&Aは成功率が3割~5割程度といわれており、決して簡単な戦略ではありません。

成功するための手間やコスト、時間もかかることを踏まえると、M&Aを行うべき目的や意義を明確にしてから戦略を策定すべきでしょう。当然、M&A以外の経営戦略が有効的と判断された場合はすぐに切り替え、別の経営戦略に着手したほうがいいでしょう。

M&A総合研究所は専門的な知識を持ったアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを活かしM&Aをサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討される際には気軽にご相談ください。

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中小企業のM&A戦略

中小企業が経営戦略の一環として、M&Aを活用する意義を考えましょう。M&Aの重要性を知らなければ、戦略的にM&Aを実行できません。経営戦略の一環としてM&Aを活用する場合、いくつかのメリットを享受できます。

時間削減

自社のリソースのみを利用してM&Aを実行する場合、経営戦略の実現には相応の時間を要します。例えば、「事業規模の拡大」といった経営戦略を実現する場合を想定しましょう。事業規模を拡大するには、M&Aを活用するケースが多いです。

工場を新しく建て、販路拡大のために営業人員を増やす施策が考えられます。しかし、経営戦略の効果が発揮されるまでには、かなりの時間がかかります。工場の新設には、早くとも半年はかかり、販路拡大に関しても、効果が発揮されるまでは時間を要するでしょう。

従来日本企業は、独自で上記経営戦略を実現していました。近年は、こうした地道な戦略実行が通用しにくくなっています。高齢化による国内市場の縮小により、企業間の競争が激化しているのが一因です。

競争が激化しているため、悠長に戦略を計画、実行していては他社に先を越されてしまいます。また、製品寿命(流行り)の短命化が進んでいるのも、一つの要因です。数年かけて事業規模を拡大しても、すでにその市場は衰退している恐れがあります。

以上の理由から、現代はスピーディーな経営戦略の実行が必要とされています。スピーディーな経営戦略を実現する手段として、M&Aは最適です。M&Aは、しばしば「お金で時間を買う」行為といわれます。M&Aを戦略的に活用すれば、欲しい経営資源をすぐに手に入れられます。

リスク回避

製品寿命の短命化や国内市場の縮小に伴い、低リスクで事業を拡大させる経営戦略も求められるようになりました。自社のリソースのみで戦略を実現する場合、時間のみならずリスク面でもデメリットがあります。

事業規模を数年かけて拡大した結果、市場が衰退していた場合、それまでかけた時間や費用、労力が全て水の泡となります。事実上、経営戦略の失敗を意味します。しかしM&Aを活用すれば、低リスクで検証することが可能です。

例えば、新規市場への進出が目的としましょう。「すでに市場で成功している企業の買収」を、M&A戦略として実行します。その企業を取り込むことで、リスクを回避することが可能です。むしろ、有利な立場で新規事業を始められます。

売り手側もM&Aによって、低リスクの戦略実行を実現できるでしょう。例えば、自社内に採算が取れていない事業があったとします。その事業を売却してすることで、事業継続によって生じうる、資金繰り悪化のリスクを回避できます。

以上の通りM&Aは、効率的な経営戦略を実現するうえで、必要不可欠なツールです。

【関連】M&Aのメリット・デメリットとは?買い手・売り手ごとのメリット・M&A戦略策定・手法別の効果を紹介

目的の初志貫徹

M&Aを成功させるには、最初に決めた目標を達成することが鍵です。契約を結ぶことや事業の譲渡を行うことは、あくまでその手段です。

しかし、M&Aの取引は複雑で時間がかかるため、時には本来の目的を見失いがちです。小さな条件の交渉にこだわるあまり、大きな目標を見失う「木を見て森を見ない」状態になることもあります。

だからこそ、交渉を進める中で、何度も目標を思い出し確認することが大切です。そうすることで、M&Aを成功に導くことができます。

M&A戦略の成功事例17選

ここではM&A戦略の成功事例を紹介します。

①ウエルシアHDによる東電パートナーズの子会社化

2024年7月、ウエルシアホールディングスは東電パートナーズの全ての株式を取得しました。

ウエルシアグループは、調剤・カウンセリング・介護を主軸としたビジネスモデルを確立し、展開しています。東京電力HDの子会社です。
東電パートナーズは、介護事業をメインに事業を行っています。

今回のM&Aにより、サービスの向上と新しい価値提案を行い、企業の進化を目指します。

②東洋テックによるアムス・グループ3社の完全子会社化

2024年5月、東洋テックは、アムス・グループ3社のM&Aを実施しました。

東洋テックは、セキュリティサービスとビル総合管理を主軸として事業を行っています。アムス・グループは警備業務を主軸とした事業を行っています。

今回のM&Aにより、両社が一緒になることでシナジーの創出を図るとともに警備業務の人員不足の緩和を目指します。

③日立造船による伊Schmack Biogas Srl社とのM&A

2024年3月、日立造船はスイスの子会社を通じて、イタリアのSchmack Biogas Srl社を子会社化したと発表しました。

子会社となったSchmack Biogas Srl社は、2006年の設立以降バイオガス事業を一貫して手掛けており、イタリア・ベルギー・ギリシャなどでバイオガスプラントのEPC(設計・調達・建設)や事業開発に携わっています。

欧州のなかでも特にイタリアはバイオガス・バイオメタンが多く利用されており、欧州委員会の計画「REPowerEU」が公表されたことで今後も市場は拡大する見込みです。

日立造船グループは、バイオガスの欧州エリアでの自社運営事業拡大に向け、2023~2025年度までで約400億円の投資を計画しています。

本M&Aもその戦略に沿ったものであり、日立造船グループは自社のバイオガス・バイオメタン技術を生かし、今後さらなる需要の増加に貢献していくとしています。

参考:日立造船グループ(Hitachi Zosen Inova)が イタリアのバイオガス企業を子会社化

④イズミによるサンライフのM&A

2024年1月、イズミはサンライフの株式を取得し子会社化することを発表しました。イズミは、広島を拠点にし、中四国・九州地方を中心に「ゆめタウン」や「ゆめマート」などの大型ショッピングセンターを展開している企業です。

サンライフは大分県内において、地域密着型の食品スーパーとして、お客様からのご支持を得られるよう努め、サービスや商品の品質向上に力を注いでおります。豊富な品揃え、高品質・鮮度の商品、リーズナブルな価格、親切なサービスを提供し、地域の皆様に快適なショッピングを実現しています。

イズミは中四国・九州地方にドミナント戦略を行っていましたが、大分市が空白地となっていました。今回のM&Aにより物流や販促などの効率化や地域に適した商品展開など、さまざまな点でシナジーが見込まれるとしています。

株式会社サンライフの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

⑤ニデックによるTAKISAWAへのTOB

2023年7月、ニデックは工作機械の製造・販売を手掛けるTAKISAWAの完全子会社化を目的としてTOBを実施することを発表しました。

ニデックは車載用部品・精密小型モータ・光学製品などの製造・販売を手掛けており、近年は事業拡大・強化のために積極的にM&Aを行っています。

TAKISAWAは主にマシニングセンタや旋盤を製造・販売を手掛けており、技術力の高さに強みのある企業です。ニデックは同社の旋盤技術力を活用して工作機械事業の強化につなげるとしています。

本TOBは11月に完了しており、買付後のニデックの株式所有割合は86.14%となりました。また、ニデックはTAKISAWAの完全子会社化を目指して今後も手続きを進めていくとしています。

参考:株式会社 TAKISAWA(証券コード:6121)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ

⑥ニデックによる米Houma Armature WorksへのM&A

2023年7月、ニデックはアメリカの子会社ニデックモータを通じ、Houma Armature Works社を子会社化したと発表しました。ニデックは車載用部品・精密小型モータ・光学製品などの製造・販売を手掛けており、近年は事業拡大・強化のために積極的にM&Aを行っています。

Houma Armature Works社は、発電機・産業機器向けモータ・制御システムの修理・販売・製造などを行う企業です。

ニデックはHouma Armature Works社を子会社化することで、アメリカ湾岸地域のサービス拠点を拡充し事業強化とシナジー発揮を目指すとしています。

参考:米国 モータ・発電機関連サービス企業 Houma Armature Works の 持分取得完了と新子会社概要

⑦ゼンショーHDによる北米及びイギリスのすしチェーンのM&A

2023年6月、ゼンショーホールディングスはSnowFox Topco Limitedの全株式を取得することを発表しました。ゼンショーホールディングスは、日本一の店舗数を誇り、代表的な牛丼チェーン「すき家」やファミリーレストラン「ココス」「ビッグボーイ」「ジョリーパスタ」、100円寿司チェーン「はま寿司」など、国内外に約10,000店舗展開しています。

SnowFoxは北米とイギリスを中心に、寿司のテイクアウト店など約3,000店舗を展開し、また寿司の製造卸売業も手がける企業です。

今回のM&Aの買収金額は874億円とゼンショーホールディングスのM&Aは過去最高額です。新型コロナウイルス禍後の経済再開に伴い、海外の外食事業の需要が回復を見込み企業拡大を期待するとしています。

SnowFox Topco Limited の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

⑧ゼンショーHDによる独Sushi Circle GastronomieのM&A

2023年5月、ゼンショーホールディングスはドイツのSushi Circle Gastronomie GmbH社を子会社化すると発表しました。

ゼンショーは、「すき家」「ココス」「はま寿司」などフードサービスチェーンを展開するグループです。Sushi Circle Gastronomie GmbH社は、寿司テイクアウト店と回転寿司店を運営しており、2022年12月時点の店舗数は合計228店となっています。

ゼンショーはSushi Circle Gastronomie GmbH社の子会社化により、店舗運営機能・食材調達・物流などのシナジー発揮が狙いです。今後はSushi Circleのさらなる事業拡大を目指すとしています。

参考:Sushi Circle Gastronomie GmbH の株式取得に関するお知らせ

⑨日本電産コパル電子による緑測器のM&A

2023年3月、日本電産(現:ニデック)子会社の日本電産コパル電子は、東京都羽村市の緑測器を完全子会社化すると発表しました。

日本電産コパル電子は日本電産子会社の電子部品メーカーで、半固定抵抗器・スイッチ・小型精密モータ・圧力センサなどの開発製造および販売を手掛けています。

子会社となった緑測器は、電子部品とポテンショメータの開発製造および販売を行う企業です。現在、日本電産コパル電子はセンシング事業に注力しており、本M&Aによってポジションセンシング事業を自社グループが手掛けるセンシング事業の新たな柱とする狙いがあります。

参考:当社子会社による株式会社緑測器の株式取得に関する譲渡契約締結のお知らせ

⑩ゼンショーHDによるロッテリアのM&A

2023年2月、ゼンショーホールディングスは子会社を通じてロッテリアを完全子会社化すると発表しました。ロッテリアは全国にファーストフード店「ロッテリア」を358店舗展開(2023年1月時点)しています。

ゼンショーは、「すき家」「ココス」「はま寿司」などフードサービスチェーンを展開するグループです。ゼンショーは以前からM&Aによる事業拡大を積極的に行っています。

本M&Aによって、自社の店舗運営機能・物流・食材調達などを活用し、ロッテリアの事業拡大を図ることが主な目的です。また、ブランド名「ロッテリア」はM&A後も一定期間継続する予定だとしています。

参考:株式会社ロッテリアの株式取得に関するお知らせ

⑪SHIFTによるクラブネッツのM&A

2023年12月、SHIFTは渋谷区のクラブネッツを完全子会社化すると発表しました。子会社となったクラブネッツは、顧客囲い込みのノウハウに強みがあり、LINEによる販促サービスやポイントシステム事業をグループで展開しています。

SHIFTはソフトウェアテストなどの品質保証サービス事業を行う企業です。近年は成長戦略「SHIFT3000」の実現に向け、M&Aも積極的に行い事業強化を進めています。

本M&Aの一環で行われたものであり、「SHIFT3000」の早期実現には売れるサービス作りの強化が不可欠だと判断し、クラブネッツのノウハウやツールが事業成長の加速につながるとして本M&Aに至りました。

参考:株式会社クラブネッツ株式取得(子会社化)及び 株式会社バリューワンの孫会社化に関するお知らせ

⑫三菱地所による日本リージャスホールディングスのM&A

2022年12月、三菱地所はティーケーピー傘下のTKPSPV-9号が保有する、日本リージャスホールディングスの全株式を取得し子会社化することを発表しました。

三菱地所は近年の多様な働き方に対応し、オフィス事業のパイオニアとして、センターオフィスやサービスオフィス「xLINK」、個室型ワークブース「テレキューブ」、ワーケーション施設「WORK×ation Site」など様々なワークスタイル・ライフスタイルをサポートする商品・サービスを提供しています。今年4月には「フレキシブル・ワークスペース事業部」を新設し、10月には丸の内に2つのフレキシブルオフィスを開設する計画を発表しています。

日本RegusHDは、IWG plcから提供を受け、日本において「Regus」「SPACES」などのブランドを172施設で展開しているフレキシブル・ワークスペース事業の国内トップランナーです。TKPグループが2019年にIWGより日本国内の運営・開発権を取得し、独占的パートナーとなりました。


新型コロナウイルス禍で柔軟な働き方が広がり、テナント企業の獲得競争が激しくなっています。三菱地所は買収によりシェアオフィス事業を強化し、新たな働き方の提案やビルの競争力の強化を目指すとしています。

株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

⑬木曽路による大将軍のM&A

2022年9月、木曽路は大将軍を吸収合併し、完全子会社化することを発表しました。

木曽路はしゃぶしゃぶをメインとして高単価のチェーン展開を行う業態です。大将軍は千葉県に本社を置き高価格な「大将軍」中価格「くいどん」を展開する焼肉チェーンの企業です。

木曽路は冬に売り上がる一方で、焼肉は夏に売り上げが大きくなるため、会社業績の季節変動を抑えることや仕入などの効率化を狙いとしています。

当社完全子会社の吸収合併に関するお知らせ

⑭リクルートHDによる英Blackstone Point LTDとのM&A

2019年7月、リクルートホールディングスはイギリスの子会社を通じ、Blackstone Point LTD社を完全子会社化すると発表しました。

Blackstone Point社は、求人広告を自動最適化するプラットフォーム「ClickIQ」の運営を手掛けています。AI技術を活用した「ClickIQ」は、企業が求人広告を最適な費用でだすことができ、求職者ではないが企業が求めるスキルを持つ人材にアプローチするこ
とが可能です。

リクルートHDはBlackstone Point LTD社の子会社化により、ClickIQと同社のAI技術を活用して求人企業へのマッチングサービスの強化を図るとしています。

参考:ClickIQ運営会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

⑮楽天による朝日火災海上保険株式会社の子会社化

2018年4月、楽天株式会社は朝日火災海上保険株式会社を子会社化したと発表しました。

楽天は楽天エコシステムを活かし、保険事業の拡充に注力しています。朝日火災との緊密な協力関係のもと、親和性の高い商品ラインナップや他事業者とのアライアンスを通じ、一層の成長を目指すとしています。

朝日火災海上保険株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

⑯マネックスグループによるコインチェックの完全子会社化

2018年4月、マネックスグループはコインチェックの全株式を取得することを発表しました。

マネックスグループは最先端の技術を駆使し、アメリカ、香港、オーストラリアでも証券事業を展開するなど、グローバルに展開する総合金融機関です。

コインチェックは2018年1月26日の不正アクセスによるNEMの不正送金を受け、関東財務局から業務改善命令を受けており、経営管理態勢や内部管理態勢の改善に努めています。当社としては、同社の改善に全面的にバックアップし、お客様が安心してご利用いただける環境を構築していく考えとしていました。

M&A後、コインチェックは暗号資産業界の盛り上がりとともに事業を拡大し、2022年3月期の収益は前年同期比の3.8倍となる255億円を記録しました。

株式取得によるコインチェック株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

⑰大和ハウス工業によるサイバーダインとの資本業務提携

大和ハウス工業株式会社は、総合住宅メーカーの大手として知られている企業で、医療・介護施設向けのソリューションやスポーツ施設の運営も手掛けています。

2008年7月、将来の市場展開を考慮し、ロボット開発を専門とするベンチャー企業、サイバーダインと資本業務提携を結びました。

サイバーダインは筑波大学の研究者が立ち上げた会社で、人間の身体機能を補助するロボットスーツ「HAL」を開発しています。大和ハウス工業は、ロボット技術の需要が医療や介護施設などで高まると見込み、サイバーダインとの提携を通じて「HAL」のリースやレンタル事業を独占的に取り扱う代理店となりました。これにより、同社はさらに多角的な事業展開を目指しています。

大和ハウス工業とCYBERDYNE株式会社(サイバーダイン株式会社)は、ロボットスーツ事業に関する総代理店契約を締結しました。

M&A戦略の前提となる全社戦略とは

全社戦略とは、持続的な競争上の優位性を確立するための方針をいいます。自社が手掛ける事業について、どのように経営資源を振り分けるかを決めるもので、経営戦略を立てるうえで非常に重要となります。

事業の組み合わせをどのようにするか、どの事業領域を伸ばして会社を成長させるのかなどを決定するだけでなく、事業の縮小や撤退も含まれます。

事業には、誕生期・成長期・成熟期・衰退期といったライフサイクルがあり、市場環境が大きく変化するなかで事業が永久的に成長し続けるのは非常に難しいことです。

一つの事業しか手掛けていない場合、その事業が衰退してしまうとそのままいけば廃業する可能性も高くなります。会社を継続的に運営し、さらに成長させていくためには、新たな分野を模索して事業構造の転換を図ることも必要です。

M&A戦略を立てるうえでは、まず事業ポートフォリオの方向性と新規事業を明確にすることが前提となります。事業ポートフォリオの方向性を検討する際は、事業セグメント別の売上や利益の割合を、将来、どのように変えていくかを計画していくとよいでしょう。

M&A戦略まとめ

今回はM&Aの戦略について紹介しました。迅速な経営戦略が求められる現在、M&Aの活用はとても賢い選択肢です。M&Aを利用すれば、「お金で時間を買う」ことが可能です。本来ならば時間がかかるところを、はるかに短時間で戦略を実行できます。

現代の経営者にとって、M&Aの活用は無視できない選択肢です。M&Aの戦略を考える際、まずはM&Aを行う目的を明確にする必要があります。M&Aの目的が不明瞭であると、実行すべきM&A戦略がわかりません。目的によって、実施すべき戦略や用いるべきM&A手法は異なります。

まず初めに、M&Aの目的を明確化しましょう。目的が明確になったら、自社の目的に合わせてM&A戦略を実行します。M&A戦略の立案は、思い立ってすぐにできるものではなく、今後を左右する重大な局面なので、入念に戦略を構築するのが大事です。

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