M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年10月14日更新会社・事業を売る
企業価値の算定方法は?企業価値を高めるポイントも解説
M&Aの過程で重要なポイントの1つが、企業価値の算定です。企業価値の算定方法には3種類あり、インカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチと呼ばれています。この3つのアプローチの特徴を十分に理解し、よりよいM&Aを成功させましょう。
企業価値とは
企業価値とは、その会社が持つ経済的な価値を意味します。つまり、その会社の収益力や保有資産を金額で表したものです。
M&Aでは、企業価値を基準に買収価格を決定し、さまざまな算定手法を使って企業価値を算定します。算定した企業価値に、買い手が考える価値を考慮して買収価格を決定します。M&Aの買収価格を決めるうえで、企業価値の算定は必要不可欠なプロセスです。
株主価値との違い
企業価値と類似する言葉に、株主価値があります。株主価値とは、企業価値から負債を差し引き、株主に帰属する価値を求めたもので、「企業価値のうち、株主の取り分」を意味します。
多くの企業は債権者に返済すべき債権を抱えていることから、企業価値と株主価値は必ずしも一致しません。
事業価値との違い
事業価値とは企業の事業活動から生じる価値のことです。別名、『EV(エンタープライズバリュー)』とも呼ばれます。
事業活動からもたらされる価値のことで、純資産価値に加えてのれん(営業権)と呼ばれる超過収益力や貸借対照表に計上されない無形資産・知的財産価値も該当します。事業価値はあくまでも企業価値の一部に過ぎず、企業価値と事業価値は一致しない点を把握しておきましょう。
企業価値の算定が必要な理由
2005年2月に起きたネット企業による敵対的買収事件によって、「M&A」という言葉が日本に広まりました。今やM&Aは大企業のみならず、中小企業がM&Aを実施するケースも増加しています。中小企業にとってM&Aは、事業承継問題の解決に非常に有効な手段です。
M&Aは、自社が得意としている事業分野に対して集中的に経営資源を投下する「選択と集中」の実現にも大変有効な手段です。ただし、M&Aを実行するには多大な労力と時間が必要となり、さまざまな手続きが必要不可欠です。買い手探し、デューデリジェンスなど、実施すべきことは多岐にわたります。
M&Aの過程で特に重要なプロセスが、企業価値の算定です。企業価値を算定することで、M&Aの取引価格を判断する材料として活用できます。
企業価値の算定方法
企業価値の算定方法は、大きく分けて3種類あります。
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
- コストアプローチ
この3つはそれぞれ特徴が異なるため、どの算定方法を使用するかで使う場面や目的が変わります。目的や場面に合わせて、適切な算定手法を用いることが重要です。動画でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。
インカムアプローチ
ここからは、インカムアプローチの概要を取り上げます。
特徴
インカムアプローチとは、企業の将来的な収益性をベースにする企業価値の算定方法です。具体的には、将来稼ぐと予想されるキャッシュフロー(お金の流れ)や利益を用いて算出します。
正確な企業価値に近づけるためには、緻密な事業計画と高精度な市場環境の予測が必要不可欠です。将来得られるキャッシュフローは、事業計画や市場環境の予測をベースに算出します。事業計画や市場予測次第で、算定される企業価値は大きく変動することを意味します。
算定方法
インカムアプローチにはDCF法と配当還元法があります。1つ目の算定方法はDCF法です。DCF法とは、将来的なフリーキャッシュフロー(FCF)を基準に、企業価値を算定する方法です。フリーキャッシュフローとは、企業が事業活動から獲得した資金のうち自由に使うことができる資金のことを意味します。
企業価値の計算過程では、加重平均資本コスト(WACC)と呼ばれる割引率を用いて、FCFを現在価値に割り引きます。M&Aをはじめとして、多くの場面で用いられている状況です。2つ目の算定方法は配当還元法です。配当還元法は、期待される配当金額をベースにした算定方法です。主に、中小企業のM&Aや事業承継の場面で用いられています。
メリット
1つ目のメリットは、インカムアプローチを用いると将来の収益力を反映した企業価値を算定できることです。企業同士の相乗効果や規模拡大により得られる将来的な収益性を目的にM&Aが実施されるため、理にかなった企業価値を算定できます。
2つ目のメリットは幅広い場面で活用できることです。将来の収益力を反映するため、M&A以外の場面でも活用できます。設備投資、事業投資、企業経営の重要な場面で活用できる点は非常に大きなメリットです。買収形態や資金調達方法の違いで、節税効果を反映することも可能です。
デメリット
1つ目のデメリットは、主観的で論理的な根拠のない算定結果になりやすいことです。あくまでも将来的な予測をベースに企業価値を算定しているため、算定者の主観的な企業価値になる可能性が高いです。インカムアプローチを使用する際は、公平な第三者に企業価値の算定を依頼することをおすすめします。
2つ目のデメリットは、存続しない企業には適用できないことです。インカムアプローチによる算定方法は、経営の存続を前提にしています。将来的な事業計画がない企業もしくは将来的な利益が見込めない企業に対して利用しても、必然的に企業価値が0となります。計算が複雑で時間がかかってしまう点にも要注意です。
活用方法
インカムアプローチは幅広く活用可能です。M&Aはもちろん、事業投資などにも利用できます。特に大企業のM&Aでは、非常に使い勝手のよいアプローチです。一方、創業間もないベンチャー企業の場合には、不確実性の高い算定結果となる可能性があります。存続しない企業に対する適用はできません。
評価ポイント
キャッシュフローを予測するためには、業界の現状や背景などとの矛盾が生じないように考慮する必要があります。企業価値算定の場合は、キャッシュフローの予測期間は5~10年で、非事業資産(特にキャッシュ)の見積もりがポイントです。非事業資産とはFCFの増加に直接関与しない資産のことで、現預金・遊休地・投資目的の有価証券などをさします。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチの概要を取り上げます。
特徴
マーケットアプローチとは、市場取引をベースにする企業価値の算定方法です。「市場で取引されるとすると、この企業はいくらの価値がつくか」といった視点で算定した方法です。市場で取引された場合にどの程度の企業価値になるかを算定します。
具体的には、類似する企業や取引事例を見つけて比較します。このアプローチでは、いかに類似する企業や事例を見つけられるかが重要です。市場を参考にするため、比較対象が正確であるほど客観性の高い企業価値の算定が可能です。
算定方法
マーケットアプローチの算定方法には、市場株価法・類似会社比準法・類似取引比準法の3つの方法があります。
1つ目は市場株価法です。市場株価法は、過去数ヶ月(1カ月〜3カ月)の平均株価をベースに企業価値を算定します。短期的な市場の影響を軽減したうえでの企業価値が算定できる方法です。市場株価を参考にするため、上場企業にのみ適用できます。
2つ目が類似会社比準法です。類似会社比準法とは、評価対象と事業内容が類似する企業を基準に企業価値を算定する方法です。
マルチプル法とも呼ばれるこの方法では、類似会社のPER(株価収益率)やEBITDA(営業利益に減価償却費を足したもの)などの指標を活用して算出します。非上場企業がM&Aを行う際、市場株価法に替わる方法として用いる手法です。
以下の動画で弊社M&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法について解説しておりますので、是非ご覧ください。
3つ目は類似取引比準法と呼ばれる方法です。類似取引比準法は、過去に実際行われたM&A事例を基準に企業価値を算定する方法ですが、M&Aと類似する事例を見つけることは難しくそれほど活用されていません。
メリット
客観的に企業価値を算定可能な点が、マーケットアプローチの最大のメリットです。マーケットアプローチは市場取引をベースに算定しているため、他の算定方法よりも客観性が高く説得力のある企業価値となります。M&Aの交渉過程でも、算定した企業価値に説得力を持たせられます。
インカムアプローチが適用しにくい企業にも適用が可能なこともメリットの1つです。赤字企業やベンチャー企業に対しても適用できます。
デメリット
マーケットアプローチの1つ目のデメリットは、市場の影響を受けやすいことです。市場取引を基準にしているため、企業価値が市場の状況に影響を受けやすいです。政治や国際情勢次第で市場(株価)は大幅に変動します。その結果、妥当な企業価値とはかけ離れた算定結果となる可能性もあります。
2つ目のデメリットは、将来的な収益性を加味しにくいことです。あくまでも市場との比較による算定のため、将来的な収益性を反映しにくくなります。市場では将来への期待を加味したうえで取引が行われていますが、マーケットアプローチでは評価企業の将来性に関しては考慮できません。
活用方法
マーケットアプローチは、主に非上場ベンチャー企業に用いられます。ベンチャー企業がM&Aを活用する場合はインカムアプローチを活用しにくいため、類似する企業や取引を参考に企業価値を算定する例がほとんどです。もちろん市場株価法など、上場企業を対象にすることも可能です。
評価ポイント
比較対象とする企業の選定が、最大のポイントです。マーケットアプローチを行う際は類似の商品やサービスの平均価格を知っている必要があるため、活用する際は専門家に相談しましょう。市場を理解したうえで会社の価値を決めるのであれば、業界や評価に詳しい専門家のサポートが必要です。
コストアプローチ
コストアプローチの概要を取り上げます。
特徴
コストアプローチとは、貸借対照表の純資産をベースにする企業価値算定方法です。貸借対照表とは資産・負債・資本を一覧表にしたもので、企業の財政状態を明らかにするために作成される計算書のことです。
純資産とは、貸借対照表の資産から負債額を差し引いた部分をさします。コストアプローチは、貸借対照表の数値のみで企業価値の算定が可能で、M&Aの実行可否を判断するために用いられることもあります。
算定方法
コストアプローチの代表的な算定方法には、清算価値法、再調達原価法、時価純資産価額法、簿価純資産価額法の4つがあります。
清算価値法とは、全資産の売却額から負債の金額を差し引いた残額(正味売却価額)をベースに算出する方法です。清算価値法は、売り手の会社の消滅・解散が前提なので、株式価値より清算価値が高い場合に利用されます。 コストアプローチ自体、事業が廃業する(=清算される)状況で使われるケースでよく使われる方法ですので、事業を廃業する会社にとっては利便性が高い方法です。
2つ目の再調達原価法とは、 現時点での価値をベースに算出する方法です。再調達原価は、会社が所持している資産・負債を再度設立するために必要になるであろう投資金額を表したものです。
通常この手法は、M&Aの買い手側が望ましい買収価格を決定するケースや、売り手側がM&Aが自社にとって必要かどうかを判断するケースで使用します。再調達原価を算定することで、M&Aを実行すべきかどうかの判断が可能です。
3つ目の時価純資産法とは、資産すべてを一度時価に換算した後に負債を差し引いて算定する方法です。時価として示された純資産から、支払手形・営業債務(支払手形や買掛金等など)を引いて企業価値を算出します。この方法では、未計上のすべての資産と負債を時価として換算します。
4つ目の簿価純資産法は、貸借対照表に記載された資産の合計から株式価値を計算する方法です。純資産を株式価値に当てるやり方なので、発行済みの株式数がわかればすぐに企業価値を導き出せます。そのときに必要な修正を加えて計算する場合は、「修正簿価純資産法」と呼ばれます。貸借対照表をもとに進行するため、極めて簡便な方法です。
このように、企業価値の算定は企業次第で大きく変動します。算定方法も複雑で、何を利用すればいいかわからない方も多いです。
M&Aにお悩みの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には・専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
メリット
客観性の高い企業価値を算定できる点が、コストアプローチの最大のメリットです。貸借対照表の記載事項をベースにしているため、客観的な算定が可能です。貸借対照表に虚偽がない限り、誰が計算しても同じ算定結果を得られます。
簡単に企業価値を算定できる点もメリットです。純資産額を見るだけで簡単に企業価値を算定することができるため、他の方法とは違い専門的な知識も必要ありません。
デメリット
コストアプローチは、将来的な収益力をまったく含まない点がデメリットです。マーケットアプローチは市場全体の期待を反映したものですが、コストアプローチは将来的な収益力を反映しない方法です。将来性を重視するM&Aには向いていません。
コストアプローチを使用すると、企業価値が低くなりやすいです。将来的な収益性を含まないため、企業価値が低くなる可能性が高いです。M&Aの売り手にとって、最も不利になる可能性が高い手法といえます。
活用方法
コストアプローチは、M&Aにそれほど向いていない手法です。しかし、経営不振の中小企業M&Aでは用いられるケースがあります。コストアプローチは客観的な企業価値を算定できる方法ですので、廃業により経営を継続しない企業の価値算定に向いています。
評価ポイント
適切な時価の算定ができないため、資産の査定がポイントです。M&Aと同時に会社が消滅する場合には、将来の収益性を踏まえる必要がないため、コストアプローチを使用するのがベストです。一方で、売り手会社の事業を継続させる場合、コストアプローチは決して適切な手法とはいえません。
企業価値を上げる方法
企業価値が高ければ、当然高い値段で会社を売却できます。売り手側としては、可能な限り1円でも高く会社を売りたいと考えるのが自然です。
企業価値を上げるポイントは、企業の「磨き上げを実施すること」です。磨き上げを実施すれば、買い手先が見つかりやすくなるメリットもあります。企業価値をあげるためには、以下の磨き上げが有効です。
- ブランド力、ノウハウ、技術力、特許権などの目に見えない資産(無形資産)の強化
- 不必要な負債や在庫の削減
- 特許侵害や訴訟案件などのトラブルは解決しておく
磨き上げは、すぐにできるものではありません。M&Aを考えた段階で取りかかりましょう。企業価値を上げるためには、以下の施策も有効です。
- 事業収益性の向上
- 投資効率の向上
詳細を順番に解説します。
事業収益性の向上
企業価値を向上させるうえで最も有効な手段とされています。具体的な手法には、経営戦略の見直し、営業力や商品開発力の向上、生産管理や工程の見直し、アウトソーシングによるコスト削減などが挙げられます。
あらゆる角度から収益拡大のために講じることのでいる手段を検証することが大切です。
投資効率の向上
キャッシュフローを生み出さない固定資産を売却すれば、浮いた資金を投資に利用でき、投資効率を挙げられます。事業の経営に貢献しない資産は手放しつつ必要な資産を有効活用することが、企業価値の向上につなげられます。
企業価値の算定方法まとめ
M&Aを成功させるうえで、自社の企業価値を高めることが重要です。自社の状況により、企業価値の最適な算定方法が異なるため、算定方法と種類を十分理解しておかなければなりません。実際にM&Aを行うときは、複数の算定手法を用いる場合もあります。複数の算定手法を用いれば、企業価値の予測精度も上がります。
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