2021年4月25日更新会社・事業を売る

会社をたたむ費用と流れ

会社をたたむ場合約7〜10万円、専門家に業務を依頼する場合はさらに約30〜40万円の費用がかかります。会社をたたむ前はあらかじめ必要な費用を用意しておかなければなりません。この記事では、会社をたたむ際に必要な費用について詳しく解説します。

目次
  1. 会社をたたむ費用
  2. 「会社をたたむ」とは?
  3. 会社をたたむべきかの判断基準について
  4. 会社をたたむタイミングはいつが良い?
  5. 会社をたたむまでの流れ
  6. 会社をたたむ上で発生する費用
  7. 会社をたたむ費用を抑える方法
  8. 会社をたたむにはどれくらいの時間がかかる?
  9. M&Aという選択肢
  10. まとめ

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会社をたたむ費用

近年、M&Aや事業承継を有効活用する事例が増加していますが、全ての会社がM&Aや事業承継といった選択肢をとれる訳ではありません。「会社をたたむ」選択肢を取らざるを得ない中小企業もあります。

では、会社をたたむには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?会社設立の費用に関して知っている経営者は多いと思いますが、一方で、会社をたたむのに必要な費用は意外と知られていません。

そこで今回、会社をたたむ際に必要な費用について、詳しくご紹介します。

「会社をたたむ」とは?

そもそも「会社をたたむ」とは、どんな意味なのでしょうか?会社をたたむとは、会社の継続を終わらせる行為を指します。

飲食店や八百屋さんで言うところの、閉店や商売を辞めるイメージです。株式会社で言うと、会社を解散させ、法人格を消滅させる行為です。

法人であれ個人事業主であれ、「会社をたたむ」行為は商売の終わりを意味します。経営者であれば、できる限り会社をたたむ事態は避けたいものです。

ですが、今現在どんなに調子が良くとも、100%それが続く保証はありません。また、後継者不足により事業承継できない可能性もあります。

万が一の事態を考え、「会社をたたむ」際の手続きや費用について知っておくことは重要です。

【関連】会社の解散に伴う解散決議

会社をたたむべきかの判断基準について

会社をたたむべきか判断をするポイントは、会社の資産と負債の状況です。資産と負債の状況を整理して、実際に会社をたたむかを決定します。

もし、資産が負債よりも多ければ、完済は簡単なので会社をたたむことは難しくありません。また、負債が資産よりも多くて完済が難しい状態であれば、負債を返済して完済ができる見通しを立てる必要があります。

事業を続けていく中で資金繰りが難しくなると、会社をたたまざるを得ないことになりかねません。会社をたたむことを避けるには、事業を続けながら経営状況を立て直す必要があります。

なので、会社をたたむべきかどうかを正しく判断するために、資産と負債の状況を確認する必要があるのです。

会社をたたむタイミングはいつが良い?

会社をたたむタイミングを見極める方法

会社をたたむタイミングは、債務超過状態になり、取引先や従業員、家族に影響を与えない段階で倒産の費用を用意できるときです。具体的には、以下4つの状態になったら、会社をたたむべきタイミングであると覚えておきましょう。

  • 取引先への支払いができない
  • 従業員への給与が支払えない
  • 赤字が継続している
  • 資金繰りができない

一時的に支払いができない状態や赤字が続いても破産には至りません。しかし、慢性的に続くようであれば、会社をたたむ決断をするべきと言えます。

会社をたたむタイミングを弁護士に相談する

あなたが「会社をたたんだ方が良いかも?」と考えていても、ベストな判断かわからない場合や、少しでも負担を軽減して会社をたたみたい場合は、弁護士に相談しましょう

なぜなら、結果的に会社をたたまないことになっても、早い段階で相談をしておけば様々な選択肢の中から次の一手を打てるからです。

しかし、経営状況が悪化してからでは破産以外の選択肢はなくなってしまいます。さらに従業員や家族など多くの人に迷惑をかけてしまう恐れがあるのです。

なので、今後の見通しを立てておくためにも、会社をたたむタイミングについては早い段階で弁護士に相談しましょう。

会社をたたむまでの流れ

会社をたたむ際の費用を知る為に、まずは会社をたたむプロセスについて把握しましょう。個人事業の場合、比較的簡単に会社をたたむ(事業を辞める)事が可能です。

廃業届と青色申告の取り止め申請書を、税務署に提出するのみです。今回は、株式会社をたたむ際の流れについて大まかに解説します。

⑴株主総会による特別決議

会社をたたむ決断をしたら、最初に株主総会で決議する必要があります。この際、特別決議が必要となります。

全株式のうち過半数以上を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上による決議です。

⑵解散及び清算人の登記

次に、解散と清算人の登記を実施します。株主総会の決議日から、2週間以内に登記する必要があります。

基本的には、司法書士等の専門家が登記申請を実施しますが、司法書士に依頼する場合、当然ながら費用がかかります。

一方で清算人とは、会社の財産を換金する手続きを執行する人を指します。また、清算人には、経営者が就任する場合が一般的です。

⑶解散の公告

清算人や解散の登記が完了した後は、会社をたたむ旨を公告する必要があります。この際、債権者が弁済の申し出を行う期間を、最低2ヶ月設けなくてはいけません

会社をたたむ際、官報による広告が原則です。官報とは、簡単に言うと日本政府が発行する新聞です。

司法書士に登記業務を依頼した場合、公告手続きも一括で実施してくれるケースが大半です。繰り返しになりますが、費用は当然かかります。予算を検討の上、司法書士に業務を依頼するか否か決めましょう。

⑷解散確定申告

解散日の翌日から2ヶ月以内に、解散確定申告書を提出しなくてはいけません。通常の確定申告と同じく、法人税や消費税等が課税されます。

⑸財産整理

次に清算人が、財産の換価や負債の返済を遂行します。会社をたたむ際、資産や負債は無くす必要があります。

特に負債に関しては、責任を持って返済しなくてはいけません。まずは負債を返済する為、売掛金の回収、固定資産の売却により、資産を現金化します。

その後負債の返済、余った現金を株主に分配します。これにより、会社をたたむ上で欠かせない財産整理は完了です。

⑹清算結了登記

清算手続きが全て完了したら、「清算結了登記」を行います。清算結了登記は、会社をたたむ手続きが全て完了した旨を示します。

その後、税務署等で確定申告等の手続きを行います。これにて、会社をたたむプロセスは完了となります。

会社をたたむプロセスには、最低でも2~3ヶ月はかかります。会社をたたむ際、余裕を持って行動しましょう。

会社をたたむ上で発生する費用

では、会社をたたむ上で必要となる費用について説明します。自分で手続きを実行するケースと、専門家に依頼するケースに分けて必要となる費用を説明します。

⑴自分で手続きするケース

会社をたたむ上で、最低限必要となる費用は下記の4つです。

解散登記費用

特別決議の実施後、会社をたたむ旨を正式に証明する手続きです。この登記を行う際には、3万円の費用がかかります。

清算人の選任登記費用

財産整理を行う清算人を選ぶ際にも、費用がかかります。清算人の選任登記には、9千円の費用がかかります。

官報公告の掲載費用

前述の通り、解散時には官報による公告が必要です。官報公告の掲載費用は、一行3,524 円(税込)となります。よって、解散の公告には約3万5千円(10行分)かかります。

清算結了の登記費用

会社をたたむ手続きが全て完了した時点でも、費用がかかってしまいます。清算結了の登記費用は、2千円となります。

上記4つが、自力で会社をたたむ場合にかかる費用です。つまり自力で会社をたたむ場合には、合計で約7〜10万円程度の費用がかかります。

⑵専門家に依頼するケース

上記手続きや税務処理を専門家に依頼すると、上記に加えて手数料が発生します。

  • 司法書士に要する費用

登記や公告手続きに関しては、司法書士に業務を依頼します。

その際必要となる費用は、最低でも5〜6万円はかかります。

  • 税理士に要する費用

会社をたたむ前後で、税務処理が必要となるかもしれません。その際には、税理士に業務を依頼します。

税理士に業務を依頼する場合、最低で15〜20万円程度の費用がかかります。つまり専門家に業務を依頼する場合、合計で30〜40万円程度の費用がかかります。

依頼する相手によっては、さらに費用がかかる可能性もあります。

会社をたたむ費用を抑える方法

上記の通り、会社をたたむ際多額の費用がかかります。そこで、会社をたたむ代わりに、「休眠」という選択肢もあります。

「休眠」とは、企業活動を一時的に停止する行為です。あくまで休眠なので、完全に会社をたたむ訳ではありません。

解散・清算手続きは実施しないため、廃業と比べコストがかかりません。

⑴休眠状態にする方法

結論から述べると、会社を休業する旨を記した異動届出書を、税務署や自治体に提出するだけです。具体的に、会社を休眠状態にするときの方法は以下の4ステップで行ないます。

  1. 事業を停止する
  2. 異動届出書を税務署に提出する
  3. 異動届出書を都道府県税事務所・市区町村役場に提出
  4. 実際の休眠状態へ入る

1つずつ、紹介していきます。

ステップ1.事業を停止する

まずは、会社における一切の事業を停止します。休眠は収入や支出が全く無い状態までにしないと認められないからです。
例えば、会社に電話がかかってきたり、郵便物が届く状態は休眠状態と言えません。収入や支出が全く無く、事業活動を行う体制が無いことが会社休眠の条件です。

ステップ2.異動届出書を税務署に提出する

次に、異動届出書を税務署に提出します。会社を休眠させるためには税務署に異動届出書を提出して、休眠中であることを伝えなければなりません

異動届出書は税務署でもらえますが、国税庁のホームページからダウンロードして印刷することも可能です。

ステップ3.異動届出書を都道府県税事務所・市区町村役場に提出

各都道府県の税事務所や市区町村の役場にも異動届出書を提出する必要があります。異動届出書の書式や手続きの流れは各自治体で違いますので、事前に問い合わせた上で記入をしましょう。

ステップ4.実際の休眠状態へ入る

異動届出書が受理されれば、会社は休眠状態へ入ります。なので、会社は登記簿上存在しているだけです。

また、会社が休眠中であっても役員変更の登記は必要です。会社が12年以上、登記手続きを行っていなければ、解散したとみなされる場合があります。

⑵休眠状態にするメリット

会社をたたむ代わりに休眠状態にすると、様々なメリットがあります。

①会社をたたむ際の費用がかからない

あくまで休業するだけで、会社を正式に解散する訳ではありません。

ですので、当然会社をたたむ際の費用も不要です。

数十万単位の費用が不要となるのは、非常に大きなメリットです。

②いつでも経営を再開できる

もし仮に、後々経営を再開したいと考えた際には、すぐに事業運営を再開できます。

会社をたたむ手続きを行った場合、再度会社を設立しなくてはいけません。

会社を再度設立する際には、当然設立費用がかかります。

将来的に多少でも事業を再開する可能性があるならば、ひとまず休業するのがオススメです。

③税金の支払いが不要になる可能性がある

通常会社には、事業所得がなくても法人住民税と呼ばれる税金が課されます。

会社を休眠状態にした場合、この法人住民税が免除もしくは減免される可能性があります。

ただし、あくまで各自治体によって制度が異なります。

気になる方は、各自治体の制度に目を通してください。

⑶休眠状態の際の注意点

上記の通り、会社をたたむ場合と比べて、休眠状態には数々のメリットがあります。

しかし一方で、休眠状態にはいくつか注意点があります。

①みなし解散

休眠状態が12年間続くと、解散したものと見なされてしまいます。

この場合、強制的に解散登記がなされるので注意が必要です。

加えて、金融機関のブラックリストに載る恐れもあります。

いざ事業を再開する時、どこからも事業資金を融資してもらえない可能性があります。

つまり、「休眠状態」はその場しのぎの方法です。

休眠状態の間に、会社をたたむのか再開するのか決断しましょう。

②税務申告は必要

休眠状態であっても、会社自体は残っています。

ですので、従来と変わらず税務申告は不可欠です。

また、前述した法人住民税が課税される場合もあります。

つまり、休眠状態であっても費用がかかるケースがあります。

会社をたたむにはどれくらいの時間がかかる?

会社をたたむ際の費用について紹介しました。しかし、会社をたたむにはどれくらいの時間がかかるか気になる人もいるでしょう。

実は会社をたたむまでには、最低でも2ヶ月はかかります。会社をたたむには、株主総会の決議や官報への広告、法務局への登記、税務申告などの作業が多くあるからです。

中でも、官報公告をするには2ヶ月以上の期間をとることが会社法上で定められています。なので、会社をたたむ手続きをして実際に廃業をするまで、最低でも2ヶ月はかかってしまうのです。

M&Aという選択肢

会社をたたむ場合、多額の費用がかかります。また休眠状態にもデメリットがあり、その場しのぎの手段になりがちです。

では、どうしたら良いのでしょうか?実はまだ、「M&Aによる会社売却」の選択肢も残されています。

会社をたたむ理由は経営の悪化や後継者不足など、様々な理由が考えられますが、その中でも、後継者不足が理由の経営者にとって、M&Aは有用な選択肢です。

ここでは、M&Aを用いた会社売却についてご説明します。

⑴M&Aとは?

こちらでは、M&Aの傾向や発生する費用について紹介します。

①M&Aの傾向

M&Aとは、ビジネスの売買や企業同士の合併を意味します。従来は、大企業同士による合併や買収がメインでした。

近年は、中小企業が事業承継目的で、会社売却する事例も増加しています。日本には、優秀な従業員や高度なノウハウを持つ中小企業が多いです。

買い手側にとって、こうした中小企業は高い費用をかけてでも、買収する価値があります。

【関連】M&Aとは?M&Aの意味から手続きまでをわかりやすく解説!

②M&Aの費用

中小企業がM&Aを実施する際に、M&A仲介会社といった専門家に業務を依頼するケースが一般的です。しかし、M&A仲介会社に業務を依頼すると、当然費用がかかります。

着手金毎月の固定費用(リテイナーフィー)成功報酬といった費用がかかります。具体的にどんな費用がかかるかは、M&A仲介会社によって異なります。

これだけ見ると、「会社をたたむ方が安い費用で済む」と感じますよね。しかし、会社売却を実施することで、多額の現金を得ることができる可能性があります。

費用だけ見ると会社をたたむ方が安いですが、M&Aを実施した方が、最後に残る利益は多いです。

M&Aをご検討の際は、ぜひ一度M&A総合研究所にご相談ください。M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。

また、料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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【関連】M&Aの費用

⑵M&Aを用いるメリット

会社をたたむ場合と比べ、M&Aを実施するメリットとは何でしょうか?

M&Aを用いるメリットは以下の3つです。

  • 創業者利潤を獲得できる
  • 赤字企業でも売れる可能性がある
  • 周囲から賞賛を得られる

1つずつ、見ていきましょう。

①創業者利潤を獲得できる

前述の通りM&Aを実施すると、会社売却の利益を獲得できます。それも数十万程度ではなく、数百万円〜数億円単位になります。

会社をたたむ場合とは違い、多額の現金を手に入れることができます。最終的には、多額の現金が手に残る可能性が高いです。

しかし、M&Aでは会社をたたむ場合と比べ、多額の費用がかかる懸念もあります。後継者不足を理由に「会社をたたむ」検討をしている方は、一度M&Aも考えてみてはどうでしょうか?

②赤字企業でも売れる可能性がある

会社をたたむ場合、赤字企業だと債務返済にかかり費用負担が大きいです。一方でM&Aを活用することで、赤字企業でも売却でき、利益を獲得できる可能性があります。

買い手企業のニースがある事業ならば、高い値段で買い取る可能性も高いです。また、優秀な人材、独自の製品技術があると、赤字でも売れる可能性が高まります。

経営不振を理由に「会社をたたむ」検討をしている方は、M&Aを視野に入れるのもオススメします。ちなみに買い手企業の中には赤字の会社を優先してM&Aをしようとしているケースもあります。

③周囲から賞賛を得られる

一昔前までは、「会社を売る」事にはネガティブなイメージが付きまとっていました。近年は、かえってプラスの印象で捉えられることのほうが増えています。

有名な大企業に売却したとなれば、周囲の経営者から賞賛される可能性もあります。

⑶M&Aを行う上での注意点

M&Aが成立すれば、会社をたたむ場合と比べ沢山のメリットを得られます。ただし、M&Aが100%成立する保障はどこにもありません

むしろ失敗した場合、会社をたたむ場合よりも沢山の費用がかかります。費用だけでなく、時間も無駄にする可能性があるのです。

M&Aは成功すれば、多額の費用を帳消しにする、リターンが返ってきますが、同時に大きなリスクも伴います。リスクとリターンを比較した上で、「M&A」と「会社をたたむ」選択肢のどちらを選ぶか決めましょう。

【関連】M&A失敗例から学ぶ成功のポイント

まとめ

会社をたたむには、複雑な手続きをこなさなくてはいけません。自身で手続きを行うにしても、専門家に依頼するにしても、相当な費用がかかります。

会社を休眠状態にすることで、一時的な対策にはなりますが、いずれは、会社をたたむか否か決めなくてはいけません。近年は、事業承継目的でM&Aを実施する中小企業も増加しているため、M&Aを活用する選択肢もあります。

会社をたたむ場合より、M&Aの方が費用はかかりますが、成功した際のメリットは大きいです。費用の何倍もの現金を獲得できる可能性があります。

ただし、M&Aは100%成功する訳ではなく、M&Aのリスクが高い場合、会社をたたむ方が良いでしょう。専門家に意見を仰ぎ、これからの経営方針を固め、意思決定することをすすめます。

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