M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年8月4日更新業種別M&A
建材卸業界の動向とM&Aのメリット!流れや注意点と売却・買収事例15選を解説!【2024年最新】
本記事では、建材卸事業のM&Aの現状と動向、相場などを解説しています。また、成功事例や失敗事例についても紹介しています。建築物の需要増加に伴い、建材卸事業の需要も高まっています。建卸事業でM&Aを考える場合、必見の内容です。
目次
建材卸売事業とは
建材卸売事業の定義
建材卸売事業とは事業とは、メーカーから資材を仕入れて企業に販売する事業のことです。建材(壁・天井・屋根などの外装に用いる材料)、建設資材(木材・金属など)の卸売を手掛ける企業で構成されています。
建材卸売事業の特徴
地域密着型
建材卸売事業の主要な取引先となるハウスメーカーや工務店は地域密着型で事業を行っているところが多いです。
ローカルビジネスであり商圏内の顧客割合が高いため、新設住宅の工事数やリフォーム件数によって大きく市場が左右されるという傾向があります。
商品別管理が難しい
建材卸売事業が扱う商品は多岐に渡り、素材や形状もさまざまであるため、おのずと仕入れ先が多くなります。また、商品別管理が比較的難しいため、在庫管理や商品別採算管理などの手間も多く必要です。
仕入れ先が多く商品別管理が難しいため、工数が多く必要となるのが建材卸売事業の特性でもあります。
複数の契約形態
建材卸売事業の契約形態には、規格品や市販品を売買対象とする「購買契約」、製品の最終仕様を指定して製造委託する「製造委託契約」、建築用資材と工事作業員を建材卸売事業者側で手配する「材工一式契約」の大きく3つがあります。
どの形態によって契約するかは取引先によって違い、このように複数の契約形態が存在することも建材卸売事業の特徴です。
価格競争
建材卸売事業は商品の加工を基本的に行わないため、他社との差別化が難しく価格面での競争になりやすい業界です。価格競争が激化すれば利益率は当然下がるため、建材卸売事業は売上総利益率が低い傾向がみられます。
そのため、建材卸売事業を手掛ける企業はアフターサービスやリードタイムの短縮などで他社との差別化を図るケースも多いです。
建材卸売業界の動向
建材卸売事業の市場規模
総務省・経済産業省が行った「2022年経済構造実態調査」によれば、建材卸売業の2022年における年間販売額は約21兆7099億4800万円でした。同年の小売業全体の売上高は約412兆5580億円であり、建材卸売業が占める割合は5.3%となっています。
また、建築資材のうち国内床材市場は2022年1月時点で4000億円、国内非住宅向け建材・設備機器の2019年度市場規模は、メーカー工場出荷高ベースで2兆800億円(前年度比1.0%減)となりました。
建材卸売事業の市場動向に直接的な影響を与える新設住宅の着工数は、2010年以降回復基調にあるものの、今後は伸び悩むことが予想されています。
その一方で、住宅ストックの活用・老朽化住宅の増加などを背景として、リフォーム受注件数が増加傾向にあり、市場の拡大が期待されています。
参考:日経テレコン「建築材料(床材・内装材)の業界概要」
矢野経済研究所「非住宅建材・設備機器市場の動向調査を実施(2020年)」
総務省・経済産業省「2022年経済構造実態調査」
新築住宅の減少
2021年度はテレワークの普及などで在宅時間が増加したことやコロナ禍の反動もあり住替え需要が伸び、それに伴い建材卸売の国内市場も拡大しました。しかし、2018年以降は全体的にみると緩やかな減少傾向となっています。
国内人口は今後も減少が続くとみられており、近年は地価や建設コストの上昇を受け新築住宅の需要は高止まり状態です。これらを踏まえると、新築住宅の需要は中長期的に減少傾向で推移すると考えられます。
リフォーム市場の成長
国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)(令和5年度第2四半期受注分)」
出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001711884.pdf
新築住宅の需要が減少傾向にあるのに対し、リフォーム市場は近年拡大傾向がみられます。国土交通省によれば、建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は2023年度第4四半期が2兆9350億円(前年度同期比6.5%増)であり、そのうち住宅に係る工事受注高は1兆551億円(前年度同期比30.5%増)となりました。
また、2023年度における建築物リフォーム・リニューアル工事全体の合計受注高は、11兆5545億円と前年度から1.2%減少しましたが、住宅に係る工事受注高は3兆9200億円で4.6%増加しています。
近年は、団塊ジュニア世代が持ち家をリフォームする時期に差し掛かっており、住み替えから現在の持ち家をリフォームへと需要がシフトしつつあることを踏まえるとら、リフォーム需要はますます高まる可能性が考えられます。
参考:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)」
建材卸売事業の現状と今後
建築業界全体では慢性的な人材不足が続いており、建材卸売事業者が人材不足に陥る可能性も看過できない状況です。リフォーム需要の高まりなどで市場拡大が期待されているなか、事業者にとっては優秀な人材を効率的に確保する必要があります。
また、ひとことに建築資材といっても、その種類は多種多様です。建築資材に対する需要が高まっている中で、なるべく多くの建築資材を扱っておくと、さまざまなニーズに柔軟に対応できる可能性があります。
もちろん、特定の建築資材に大きな強みがあり、十分な業績につながっていれば、取り扱い商品の幅を無理に広げる必要はありません。しかし、多様化するニーズに対応したい場合は、幅広い建築資材を扱うに越したことはないでしょう。
そのため、建材卸売事業を手掛ける会社同士がM&Aを行い、事業の幅を広げるケースが今後とも増える可能性があります。
建築設計・検査会社のM&A動向については、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
建材卸売事業のM&A動向
本章では、建材卸売事業とM&Aの関係について、実施する目的を中心に取り上げます。
①事業の幅を広げるためのM&A
建築資材の需要増加に伴い、より幅広いニーズに対応する重要性が高まっています。特定の建築資材に強みを持ち、業界で確固たる地位を築いているケースは除いて、ニーズの多様化に対応するためには幅広い建築資材を扱っていた方が有利です。
また、こうしたニーズに対応できないと、競争力の低下につながるおそれがあります。そこで、建材卸売事業を手掛ける会社同士がM&Aを行い、双方の強み・サービス体制を生かして事業の幅を広げ、多様化するニーズに対応するケースが想定されます。
例えば、外装材に強みのある会社が、内装材分野を強化したいと考えているケースを想定します。この場合、内装材に強みのある会社を買収し、傘下に迎えられれば、グループ事業として内装材分野の事業を強化できます。
上記は典型的な例ですが、同業者同士のM&Aは同じ業界内で事業の幅を拡大するための効率的な方法として活用できます。
②関連事業も含めたM&A
建材卸売事業を対象とするM&Aでは、住宅設備機器などを扱う会社が当事者となるケースも見られます。このように関連事業を含めたM&A事例もあり、今後はこうしたM&Aがさらに加速する可能性があります。
つまり、他の事業とともに建材卸売事業も手掛ける会社が、建築資材の需要増加を見込み、自社の建材卸売事業を強化するために、同じく建材卸売事業を行う会社を買収するケースが想定されるのです。
③経営上の問題を解決するためのM&A
近年、特に中小企業では、経営上の問題を解決するためにM&Aによる売却を検討するケースが増えています。そのため、建材卸売事業を手掛ける中小企業でも、M&Aにより経営課題の解決を目指すケースが増える可能性があります。
中小企業の場合、大手企業と比べると経営が不安定になりやすいです。そこで、資金力のある企業に売却し、経営基盤を安定化させるケースが見られます。
また、後継者がなかなか見つからないケースもあります。この場合にも、自社を売却して他社に経営を任せられれば、事業を継続させられるうえ、後継者不足問題も解決できます。このように、経営上の問題を解決するための手法として、M&Aは有効策です。
建材卸売事業のM&Aメリット
売り手側のメリット
経営基盤の安定化
中小規模の建材卸売事業者の場合、自社のリソースだけでは事業の拡大・成長が難しくなるケースも少なくありません。このような場合、自社を売却して大手企業の傘下となれば、買い手側のリソースも相互活用できるようになり、経営基盤の安定化が図れます。
それによって自社の力だけでは難しかった事業拡大や売上向上を実現しやすくなり、また、買い手側のブランド力や信用力によって新たな付加価値を生み出すことも可能です。
従業員の雇用継続
経営状態の悪化や廃業などにより事業継続ができなくなれば、従業員を解雇しなければなりません。自社の従業員を解雇することが従業員だけでなく、経営者にとっての精神的負担も大きなものです。
M&Aであれば買い手側へ従業員の雇用を引き継ぐことができ、買い手側にとっても人材を一度に獲得できるというメリットがあります。
後継者問題の解消
事業の存続を希望していても後継者がいない場合は、事業承継手段としてM&Aを活用する方法もあります。M&Aによって事業承継を行う場合、売り手側の株式(経営権)を買い手側へ譲渡する株式譲渡を用いることが一般的です。
株式譲渡の場合は資産・負債・従業員の雇用など、売り手側の権利・義務が買い手側へ包括承継されるため、従業員の雇用や取引先との関係を継続され、自社の存続が実現できます。
譲渡益の獲得
譲渡益の獲得はM&Aで得られる大きなメリットのひとつです。M&Aの譲渡益は株式譲渡の場合はオーナー経営者(株主)、事業譲渡の場合は企業(法人)が得るかたちとなり、経営者の引退後の生活費や新しい事業の立ち上げ資金などに充てることができます。
買い手側のメリット
新規事業への参入
新規事業への参入を検討している場合、事業が軌道に乗るまでの時間やコスト、失敗した際のディスクなどもリスクなども考慮しなければなりません。
M&Aであればすでに軌道に乗った企業(事業)を取得することができるので、コスト・時間・リスクを大幅に軽減することができます。また、売り手側のシェアもそのまま獲得できるので、収益見込みが立てやすいという点もメリットのひとつです。
営業拠点拡大
同業者同士のM&Aであれば、買い手側の営業拠点を獲得することができます。営業拠点が拡大できれば事業強化や売上向上が見込めるうえ、競争力強化を図ることが可能です。
特に買い手側が未進出のエリアに営業拠点を獲得できれば、時間とコストを軽減しつつ事業の拡大を図ることができます。
スケールメリット
買い手側はM&Aによるスケールメリットにも期待することができます。スケールメリットには大量発注や製造によるコスト削減、生産性や利益率の向上、ブランド力の向上よる競争優位性の獲得などさまざまなものがあり、これらを活用することで事業の成長スピードを加速させることも可能です。
新規顧客の獲得
買い手はM&Aによって売り手側の顧客基盤を引き継ぐことができます。新規顧客の獲得をゼロから進めていくのは容易ではありませんが、M&Aを活用すれば一度に多くの顧客を獲得することが可能です。
自社の既存事業と重複しない領域であれば、互いの顧客基盤を相互活用して新たなサービス・製品を提供していくこともできます。
建材卸売事業のM&A流れ
M&Aの検討・目的の明確化
まずは自社のM&A目的を明確にし、M&Aを実施すべきかを検討します。M&Aは企業の将来にかかわる大きな事柄なので、目的達成の手段はM&A以外にもあるのかという点も含めて検討することが重要です。
そして、M&A実施を決定したら、目標・M&A後の事業展開・自社の強みと弱みを考慮したうえで、M&A候補先への希望条件を決めておきます。
M&Aの専門会社へ相談
ここからM&Aの具体的な準備を進めていきますが、M&A候補先探しや交渉・手続きなど通常の事業運営を行いながら自社のみで行うのは大きな負担がかかるものです。
そのため、ほとんどの場合はM&A仲介会社などの専門家へ支援業務を依頼し、戦略策定・M&A候補先とのマッチング・交渉などのサポートを受けながらM&Aを進めていきます。
M&A候補先の選定
M&A候補先の選定は「ノンネームシート」という社名・所在地・事業の詳細内容など、該当企業が特定されうる情報は伏せた資料をもとに行います。ノンネームシートを使用するのは、この段階ではM&A交渉を行う企業が決定していないため、情報漏洩を防止するためです。
初期段階で担当アドバイザーが目的や条件などを考慮して候補先をリストアップしてくれるので、シナジーやM&A後の事業展開などから交渉したい相手先を絞り込みます。
交渉したい候補先企業がみつかったらM&A交渉をアドバイザーを通して打診し、相手側がM&A交渉に前向きであれば秘密保持契約を締結して、詳細情報を記載した企業概要書を提出します。
トップ面談
トップ面談では両社の経営者(オーナー)同士が顔を合わせ、M&A後のビジョンや想定されるシナジー、企業理念、人柄などを確認します。
信頼関係の構築と相互理解が主な目的であるため、トップ面談では具体的な交渉(価額・条件など)は行わないことが一般的です。
基本合意の締結
価額・条件など現時点で取り決めたM&A内容に互いが大筋で合意したら、基本合意を締結します。基本合意書は大きな問題がなければ最終合意に向けた交渉を進めるという意思確認の意味合いが強いため、一部記載事項を除き法的な拘束力はありません。
そのため、買い手側が行うデューデリジェンスで大きなリスクや問題がみつかった場合などは、M&A交渉が中止となるケースもあります。
デューデリジェンス
デューデリジェンスでは買い手側が売り手側企業の実態を法務・財務・人事などの分野から調査し、買収リスクの程度や企業概要書に記載された情報の正確性などを確認します。
買い手側にとって、デューデリジェンスはM&A実行可否や価額の妥当性などを判断する重要な工程です。売り手側はデューデリジェンスで資料提出などの協力を依頼された場合、誠実な対応を心がけておく必要があります。
最終条件の交渉・最終契約の締結
買い手側が買収実行を決めたら、最終契約の締結に向けた交渉を行います。最終交渉にはデューデリジェンスの結果が反映されるため、調査結果によっては基本合意締結時から価額が引き下げられるケースや条件が変更されるケースもあります。
最終交渉を進め、互いが取り決めた事項すべてに合意した時点で最終契約を締結し、M&A成立となります。最終契約書は記載事項すべてに法的拘束力があり、締結以降に破棄あるいは条件の変更を行うことは原則として認められません。
クロージング
クロージングでは、売り手側の経営権(あるいはM&A対象事業の経営権)を買い手側へ移転させ、M&A対価の決済手続きを行います。クロージングはM&Aの最終工程であり、完了によってM&Aの有効性が法的に認められますが、クロージングを実行するためにはクロージング条件を売り手側が充足していることが前提です。
そのため、M&Aの最終契約から一定期間を空けてクロージング実行を行うケースがほとんどであり、もし実行日までに売り手側が前提条件を満たせなければ延期されたり、理由によってはM&A成立が白紙撤回されたりするケースもあります。
建材卸売事業のM&A注意点
情報漏えい
M&A交渉においては、自社の秘密情報を相手先企業へ開示します。ノウハウ・技術力・取引先や顧客の情報などがもし第三者に情報が流出すれば企業価値を大きく損ねるおそれもあります。
また、売り手側にとっては自社が売却を検討している取引先や従業員などに漏れてしまうと、取引中止や離職につながりかねず、M&A実行そのものが難しくなる可能性もあります。
M&Aでは情報開示時に秘密保持契約を締結するのはもちろんのこと、検討段階から情報共有する範囲を最低限にとどめるなど、情報漏えい防止対策を徹底しておくことが重要です。
目的の明確化
M&Aでは、条件や価額などで譲歩が必要となる場面がでてきます。その際に適切な判断が行えるよう、M&Aを行う目的を明確化し、常に意識しておくことが重要です。
もしM&A成立することだけに意識が集中し、当初の目的から大きく外れた条件で合意してしまうと、満足度の高いM&A実現は難しくなります。
特に売り手側は初めてM&Aを行うというケースも多いため、常に自社がM&Aを行う目的を意識して交渉を進めていくことが重要です。
M&A仲介会社へ相談
M&Aを成功させるためには、実施タイミングをはかることも重要です。市場動向によっては優良な企業であってもM&A候補先がなかなかみつからない可能性もあります。
また、自社の希望に合う候補先を探し、複雑な手続きをスムーズに進めていくためには、M&Aのノウハウや専門知識が必要となるため、M&A仲介会社に相談しておくことも成功させるポイントです。
建材卸売事業のM&A事例
ここでは、建材卸売事業に関する実際のM&A事例を紹介します。近年の事例が多いこともあり、現時点で明確に成功事例・失敗事例を区別することは難しいです。最近の事例の場合、M&Aによるシナジー効果が創出されたのかどうか、今後数年間の業績の動向も踏まえて判断する必要があります。
業界のM&A動向を把握しておくために、代表的なM&A事例を知っておくことはメリットです。各事例の目的やM&Aに至った経緯など、分析を進めると良いでしょう。
JKホールディングスによる太平洋建材の子会社化
2024年5月、住宅関連事業をグループ展開するJKホールディングスは、大阪府の太平洋建材を子会社化すると発表しました。子会社となる太平洋建材は、内外装材の販売を大阪エリアを中心に手掛ける企業です。
今回のM&Aは関西地区の事業基盤拡大・拡充が主な目的であり、JKホールディングスは新たに内装建材販売事業へ視野を広げることでさらなるサービス拡大と提供を進めていくとしています。
参考:JKホールディングスグループ、太平洋建材株式会社の全株式を取得
ジオリーブグループが増田住建トーヨー住器を子会社化
2024年3月、住宅資材販売やリフォーム工事業などを手掛けるジオリーブグループは、兵庫県の増田住建トーヨー住器を子会社化すると発表しました。子会社となる増田住建トーヨー住器は、窓サッシを中心とした住宅資材の販売を行う企業です。
本M&Aはジオリーブグループの経営基盤強化が主な目的であり、将来的に需要縮小が予想される住宅関連事業において、増田住建トーヨー住器とその子会社(1社)をグループに迎え入れることで、経営基盤強化と企業価値向上を図るとしています。
参考:増田住建トーヨー住器株式会社の株式取得に関するお知らせ
小野建がマツオメタルを子会社化
2024年1月、鉄鋼・建材専門商社大手の小野建は、香川県高松市のマツオメタルを子会社化すると発表しました。子会社となるマツオメタルは、アルミ・ステンレス鋼・銅の加工販売を行う企業です。
小野建は高知県丸亀市に営業所を持っており、マツオメタルを子会社化することで四国エリアの営業強化と顧客サービスの向上が図れると判断し、本M&Aに至りました。
参考:マツオメタル株式会社の株式取得に関するお知らせ
小野建が大林商会の鉄鋼卸売事業を譲受
2023年12月、鉄鋼・建材専門商社大手の小野建は、兵庫県伊丹市の大林商会から鉄鋼卸売事業を譲り受けると発表しました。本件では小野建が2023年10月に新設立した兵庫県三木市の大林商会が事業を譲受け、同社は鉄鋼卸売事業などを行う企業です。
小野建は大林商会の事業と顧客基盤を引継ぎ、互いのノウハウを相互活用しグループのさらなる価値向上を目指すとしています。
参考:事業譲受及び新会社設立に関するお知らせ
ブルケン東日本が東洋住建の建材販売事業・建築工事業を譲受
2022年4月、JKホールディングスグループの一部で、仙台市を拠点に建築資材の販売を手がけている株式会社ブルケン東日本が、山形県で建築資材の販売と建築工事を行っている株式会社東洋住建を買収すると発表しました。
この買収は、ブルケン東日本が東北エリアでの業務を強化するための一歩となります。東洋住建の建築資材販売と建築工事の両方の事業を取り入れることで、同社は地域内での事業基盤をさらに充実させることができると期待しています。
フクヤ建設が成商を完全子会社化
高知県を拠点に、注文住宅の建築、リノベーション、オフィスや施設の建設、宅地造成、不動産紹介などを手掛けるフクヤ建設株式会社は、2021年12月に、同じく高知県に位置する株式会社成商を買収し、自社の完全子会社にしました。
株式会社成商は、鉄鋼建材の卸売りや建築金物の加工を事業内容としていますが、後継者がいないことから、事業の継承先を探していました。
住宅の耐震化を含むさまざまな需要で鋼材の需要が増加する中、フクヤ建設はこの買収を通じて成商の建材事業を自社に組み込み、事業の多角化を進めることにしました。
ダイキアクシスがアルミ工房萩尾を完全子会社化
2021年10月、ダイキアクシスは、アルミ工房萩尾の株式すべてを取得し、完全子会社化しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。
買収側は、愛媛県松山市に本社を置く会社で、浄化槽などの各種排水処理装置の総合プラントメーカーです。対する売却側は、住宅サッシ・エクステリア建材の施工・販売を手掛けています。
本件M&Aの主な目的は、水回り関係や住宅サッシ・エクステリア建材に関する提案の実現や、質の高い商材・サービスの提供およびシナジー効果の獲得にあります。
コンドーテックが栗山アルミを子会社化
2021年9月、コンドーテックは、栗山アルミの株式75.7%を取得し子会社化すると発表しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。
買収側は、大阪府大阪市西区と東京都江東区に本社を置く建設資材・環境関連資材の仕入販売を行う専門商社です。 自社で建設金物を製造も行っており、メーカー機能を備えています。対する売却側は、愛知県でアルミ押出型材製造を営む企業です。
本件M&Aの主な目的は、アルミ商材をグループの取扱商材の獲得および、グループの持続的成長と中長期的な企業価値向上の実現にあります。
前田工繊がセブンケミカルを子会社化
2021年9月、前田工繊は、セブンケミカルの株式すべてを取得し、完全子会社化しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。
買収側の前田工繊は、福井県坂井市に本社を置く、盛土・法面補強用環境・産業資材などを製造・販売する企業です。一方、売却側のセブンケミカルは、外壁用の防水材および保護・仕上げ材を製造・販売しています。
本件M&Aの主な目的は、前田工繊グループのインフラ事業分野における構造物の補修・補強技術とのシナジー効果の獲得および取扱製品の多様化などにあります。
西武HDが西武建材を東和アークスに譲渡
2021年5月、西武HDは、西武建材の株式すべてを東和アークスに対して譲渡すると発表しました。本件M&Aの取引価格は非公開となっています。
売却側の西武HDは、西武鉄道・プリンスホテル・埼玉西武ライオンズなどを傘下に持つ、西武グループの持株会社です。
対する買収側の東和アークスは、埼玉県を事業基盤としながら、建築材料等の製造・卸売事業を主力事業として手掛けています。本件M&Aの主な目的は、西武グループにおける事業ポートフォリオの見直しです。
名古屋木材がMBOで株式を非公開化
2021年2月、名古屋木材は、MBO(マネジメント・バイアウト)により株式を非公開化すると発表しました。
本件M&Aに伴い、同社社長が設立したNホールディングスがTOB(株式公開買付け)を行い、株式のすべてを取得しています。
名古屋木材は、愛知県名古屋市中川区に本社を置く建築資材メーカーです。本件M&Aの主な目的は、機動的な意思決定を可能とする経営体制の確立にあります。
キムラがテクノ興国を子会社化
2018年3月、住宅資材販売などを手掛ける住宅資材総合商社のキムラは、住宅用足場のレンタル事業などを展開するテクノ興国を子会社化しました。テクノ興国は2019年2月、「株式会社キムラリース帯広営業所」として新体制でスタートしています。
キムラは、住宅資材を中心とした卸売、不動産賃貸・販売のほか、子会社によるホームセンター経営、建築足場レンタル、ガラス・サッシ・建具工事と施工などの事業を展開し、建築資材販売の北海道内大手として実績を誇ります。
テクノ興国は一側足場の施工、資材販売、仮設トイレレンタルなどの事業を行い、帯広や十勝地区を中心とした住宅用足場、仮設材の施工サービスやレンタルにおいて事業基盤を築いています。
キムラはテクノ興国を子会社化したことで、帯広市を中心とした十勝地区で、より密着した足場レンタルサービスとスピードアップを図り、営業基盤の拡大につなげるとしています。
OCHIホールディングスが子会社を通じて丸滝を買収
2017年12月、建築資材や住宅設備機器の卸売を行うOCHIホールディングスは、同業の丸滝の発行済株式の全てを連結子会社である越智産業が取得する形で、丸滝をグループ会社化することを発表しました。
OCHIホールディングスは建材事業、環境アメニティ事業、加工事業、その他事業を柱としていますが、現在はこの建材事業のグループ会社に丸滝が含まれています。
OCHIホールディングスの主な事業となる建材・住宅設備機器の卸売は、西日本地区で売上高1位を誇っています。事業エリアの拡大や、建築工事といった隣接分野の強化などを成長戦略として掲げており、丸滝のグループ会社化もこうした背景の中で行われました。
丸滝は、建材・住宅設備機器の卸売や建築工事の請負を事業内容としています。特に、内装工事を中心とした建築分野で丸滝は確かなノウハウ・技術力を持っています。
この丸滝をグループ会社化することで、OCHIホールディングスは丸滝を中核として甲信越地区における事業展開を進め、さらには双方の技術・ノウハウを活かして事業ポートフォリオの拡充などを図る形です。
サンゲツによるGoodrich Global Holdings Pte. Ltd.の買収
2017年12月、インテリア商社大手のサンゲツは、シンガポールにおける内装材料販売会社のGoodrich Global Holdings Pte. Ltd.の過半数以上の株式を取得し、買収することを発表しました。
サンゲツはインテリアの専門商社であり、壁紙、床材、カーテン、椅子生地といったトータルインテリア商品の開発・販売を行っています。サンゲツは、多様な商品や高い専門性などを持つ企業グループの構築を目標に掲げており、特に内装材販売ビジネスの地理的拡大を重要な課題としています。
シンガポールを本社とするGoodrich社は、東南アジアを中心に6ヵ国で12の事務所を展開しており、壁紙・ファブリック・カーペットといったインテリア商材を扱い、東南アジアの内装材料販売市場において最大規模のシェアを誇る会社です。
Goodrich社を買収することで、サンゲツは従来の市場に加えて東南アジアを含めた販売ネットワークの拡大、グループ全体の企業価値向上に貢献するとしています。サンゲツはもともと東南アジアを重要地区として捉えており、この買収によってさまざまなシナジー効果の創出のもと、東南アジア市場へ進出した形となりました。
サンワカンパニーが連結子会社であるサンワカンパニーPLUSを吸収合併
2017年2月、建材・建築資材の通販を手掛ける1979年創業のサンワカンパニーは、連結子会社であるサンワカンパニーPLUSを吸収合併することを発表しました。サンワカンパニーを存続会社とした吸収合併方式です。これによって、サンワカンパニーPLUSは解散となります。
サンワカンパニーは、建築資材の輸入・販売、住宅設備の企画開発・販売を手掛けています。サンワカンパニーPLUSはサンワカンパニーの100%子会社として設立され、設計・施工サービスの提供が目的として掲げられていました。
サンワカンパニーは、経営資源の相互活用による経営の効率化、意思決定の迅速化を図ることを目的としてサンワカンパニーPLUSを吸収合併する形です。
建築業の事業承継の許認可手続きやポイントについては、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
建材卸売事業のM&A相場
M&A価額を決める要素は資産や負債などの有形資産だけでなく、ノウハウや技術力、ブランド力などの無形資産も含まれます。
そのうえで最終的な価額は交渉によって決まるため、その事業であっても明確なM&Aというものはありません。ですが、価額交渉ではベースとなる額があり、それを事前に把握しておけば適正価額でのM&A成立を目指すことができます。
大まかなM&A相場の計算方法
大まかなM&A相場は、貸借対照表上の純資産額(時価)と直近年度あるいは数年分の平均利益がわかれば比較的簡単に計算することが可能です。
計算式は「時価純資産額+営業利益の数年分(2~5年)」となり、のれん代を営業利益の数年分と考えます。営業利益の何年分を加算するかは任意ですが、通常は2~5年の間とすることが多いです。
また、純資産額は「資産総額-負債総額」で求めることができますが、現在価値と計上時の価値は剥離している可能性もあるため、算出時の時価に換算した額を使用します。
ただし、これはあくまでも簡易的な計算方法であり、実際のM&Aではノウハウ・人材・取引先や顧客・財務状態などさまざまな要素が加味されるため、算出した額を上回ることもあれば下回る場合をあることを理解しておきましょう。
売却の決定方法
前述したように、売却価額を決定する要素は有形資産だけでなく、ノウハウや技術力、人材(従業員)、顧客数などさまざまなものがあります。そのほかに大きな要素となるのは「シナジーがどの程度期待できるか」という点です。
シナジー効果が最大限発揮されれば買い手は収益力向上を実現できますが、M&A成立前はあくまでも期待値であるため、失敗すれば「高値掴み」となり買収額の回収が困難になるリスクもあります。
そのため、売却側がより高値での売却を実現させるには、買い手が将来の収益性などを予想できる事業計画書などを用意しておくことがポイントです。
建材卸売業の売却額については、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
建材卸売事業のM&Aまとめ
建築業界は比較的堅調に推移しています。建築物の需要増加に伴い、建築資材の需要が増えており、建材卸売事業の重要性もますます高まっている状況です。
こうした状況の中、多様なニーズに対応するため、事業の強化・拡大などを目的にM&Aを検討する企業も見られ、同業者同士によるM&Aのほか、関連事業も含めたM&A事例も見られます。
また、建材卸売事業を行う中小企業が抱える経営上の問題も、M&Aにより解決に導くことが可能です。建材卸売事業でM&Aを考えている場合、こうしたM&A事例・業界動向・建築業界全体の動向などを総合的に判断し、分析を進めていくことが大切です。
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