2022年6月7日更新会社・事業を売る

減価償却とは?計算方法や「償却率」「改定償却率」「保証率」の仕組みを解説

減価償却というと難しいイメージを持つ方も多いかと思いますが、基本的な仕組み自体は意外にシンプルです。なぜ減価償却が行われるのか、その計算方法は何かといった点を知っておくと、減価償却の全体像がイメージできるようになります。

目次
  1. 減価償却とは
  2. 減価償却の意味
  3. 減価償却が必要な理由
  4. 減価償却の対象となる資産の具体例
  5. 減価償却の計算方法と選択
  6. 償却率、改定償却率、保証率の仕組みとは
  7. まとめ

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減価償却とは

「減価償却」は、長く使用する資産を購入したとき、その費用を分割して計上することをいいます。購入した年に全額計上するのではなく、1年ずつ分割して計上するという仕組みです。

これが減価償却の簡単な意味ですが、正確な仕組みはもう少し複雑になります。以下、減価償却の意味や特徴、計算方法について分かりやすく紹介していきます。

【関連】減価償却とは?減価償却費の計算方法や耐用年数をわかりやすく解説

減価償却の意味

減価償却とは、時間の経過や使用によって価値が減少する資産を取得したときに、その費用を使用可能期間に応じて計上していくという会計処理のことです。つまり、減価償却は「企業会計の計算方法」の一つになります。

前項では、減価償却について「長く使用する資産を購入したとき、その費用を分割して計上する」と紹介しました。「長く使用する資産」というのは、正確には「時間の経過や使用によって価値が減少する資産」を指します。

また、「その費用を分割して計上する」というのは、具体的には「その費用を使用可能期間に応じて計上する」となります。では、以下にそれぞれ2つのポイントを紹介していきます。

「価値が減少する資産」とは?

例えば、新品のパソコンを購入しても、時間が経過するにつれて品質は劣化します。つまり、パソコンを使用すればするほど品質は劣化し、時間の経過に伴いパソコンの資産価値はどんどん下がります。

このような資産が、「時間の経過や使用によって価値が減少する資産」です。基本的に長期での使用を前提とし、時間の経過や使用によって資産価値がどんどん下がる資産のことを表しています。

前述したように減価償却とは、このような資産を取得したときに、その費用を使用可能期間に応じて計上するという仕組みです。減価償却の対象となる資産としては、パソコンのほか、建物、車、機械、ソフトウェアなどがあり詳しくは後述します。

一方、減価償却資産のうち「使用可能期間が1年未満」のものと、「取得価額が10万円未満」のものは一括して経費にすることができます。この場合、使用可能期間に応じた計上にはなりません。

「使用可能期間に応じて計上」とは?

減価償却の大きな特徴は、資産を購入した年に経費として全額計上するわけではなく、使用可能期間に応じて費用を計上するという点です。例えば、120万円で車(耐用年数6年)を購入したときのケースで考えてみましょう。

この場合、購入した年に120万円全額を経費として計上するのではなく、使用可能期間である「6年間の中で1年ずつ分割して計上」します。簡単にいうと、120万円を6年に分け、経費として計上することになります。

例えば、毎年20万円ずつを計上すれば、6年間で120万円の計上になります。この場合の20万円を「減価償却費」といい、減価償却によって計上される経費のことを示しています。

また、以下の記事では減価償却のメリットについて解説しているので、ぜひご確認ください。

【関連】減価償却のメリット

減価償却が必要な理由

次に、なぜ減価償却が必要とされるのか、その理由について理解を深めていきましょう。

費用収益対応の原則について

会計では、費用と収益が適切に対応していなければならないという「費用収益対応の原則」があります。これは、費用と収益は因果関係に基づいて把握するべきという考え方で、つまり「その期間の収益と関係のある費用だけ」を把握するべきということです。

簡単にいえば、収益と関係のない費用は計算するべきではないという、企業の業績を正しく把握するために必要な考え方です。「どのくらいの費用が収益に関係したのか」という点が把握できれば、きちんとした損益状況がわかるからです。

具体的な事例

先ほどの「120万円で車(耐用年数6年)を購入した」という事例で、この「費用収益対応の原則」をもとに減価償却について整理してみましょう。

正しい例

車を運搬に使用する場合は会社の収益に大きく関係するため、6年間運搬に使用すれば、その間の各年度の収益に車の使用が貢献していることになります。この場合、120万円という費用を、各年度に配分する必要があります。

それぞれの年度で車の費用を計上し、年度ごとの収益と関係性を持たせる必要があるからです。そのためにも、120万円を6年に分けて計上する必要があるのです。

間違っている例

もし、6年間の使用を前提に120万円の車を買ったとして、購入した年に全額を費用として計上するとどうなるでしょうか。この場合、初年度の費用は120万円、2年目以降の費用は0円となります。

6年間の使用を前提に車を購入しているはずですが、この計算方法の場合は120万円の車が貢献した収益は初年度のみということになってしまいます。これでは、それぞれの年度の収益に対し、車の費用が適切に計上されたとはいえません。

このような事態を防ぐために、減価償却として120万円を6年に分け、徐々に計上していく必要があることを覚えておきましょう。

以下の記事では、減価償却を利用した節税について解説していますので、併せてご確認ください。

【関連】減価償却を活用した節税

減価償却の対象となる資産の具体例

減価償却が使用可能期間の中で徐々に計上していくという仕組みである以上、減価償却の対象は必然的に「長く使用する資産」ということになります。

この項では減価償却の対象となる資産について、「有形固定資産」「無形固定資産」「生物」に分けて整理しておきます。

有形固定資産

有形固定資産は形のある固定資産のことで、簡単にいえば目に見える固定資産を表します。例えば、以下のようなものが該当します。

  • 建物、設備(照明、暖冷房など)、構築物(橋など)
  • 車両、航空機、船舶など運搬具
  • 機械、搬送設備、付属設備
  • 工具、器具および備品
  • 興行用、鑑賞用の生物

減価償却の対象となる資産は、あくまで「時間の経過や使用によって価値が減少する資産」となります。そのため、時間が経過しても価値が下がるわけではない、土地や美術品などの固定資産は減価償却の対象に含まれません

無形固定資産

一方で、無形固定資産は形のない固定資産を意味します。どのようなものが減価償却の対象となる資産か、以下でいくつか紹介していきます。

  • ソフトウエア
  • 実用新案権
  • 営業権
  • 商標権
  • 漁業権

生物

最後に紹介する減価償却の対象の資産は、農家の方などに特有の資産です。それでは、どのようなものが該当するのか確認していきましょう。

  • 牛、豚、馬、綿羊など
  • りんご樹、かんきつ樹、ぶどう樹など
  • オリーブ樹、茶樹、アスパラガスなど

減価償却の計算方法と選択

次に、減価償却の計算について理解を深めていきましょう。計算方法には「定額法」と「定率法」があるので、それぞれに分けて紹介していきます。

定額法

定額法は、減価償却の総額を使用可能期間で割るというシンプルな方法です。先ほどの「120万円で車(耐用年数6年)を購入した」という事例であれば、120万円を6で割り、毎年20万円ずつ計上することになります。

ただし、定額法によって割り切れない場合には、国税庁が定める償却率によって計算します。例えば、耐用年数3年の小型車を100万円で購入したとすると、100万円÷3では割り切ることができません。

このようなケースのために、耐用年数によって償却率が規定されています。耐用年数3年の定額法償却率は「0.334」なので、100万円×0.334=33万4000円が、1年間で計上するべき金額(減価償却費)となります。

定率法

定率法は、未償却残高に一定の率をかけて計算する方法で、「未償却残高(取得価額-減価償却費の累計)×一定の率」という計算式になります。つまり、資産の取得時は償却額が大きいものの、年々償却額が少なくなるという仕組みです。

こちらも、国税庁によって償却率が定められています。ただし平成19年度の税制改正により、償却率のほかに「改定償却率」と「保証率」という仕組みが加わったため、後述する「税制改正で変わった定率法の償却率」で紹介します。

定額法と定率法の選択における注意点

税制改正により、償却方法が定額法に一本化された資産もあります。例えば平成28年4月1日以降の取得の場合、建物附属設備や構築物などの償却方法から定率法が廃止され、定額法のみ選択可能となっています。

一方で、定額法と定率法のいずれも選択可能な資産もあります。このような資産の減価償却の場合、経費として計上する以上はその時の状況によって使い分け、節税などの側面を踏まえて検討することが大切です。

例えば、早めに経費にしたい場合は、最初の償却額が大きい定率法を選択するといったように、それぞれの状況に沿って最適な選択をする必要があります。

償却率、改定償却率、保証率の仕組みとは

次に、定率法を説明した際に触れた償却率、改定償却率、保証率の仕組みについて整理しておきます。はじめに税制改正で定率法がどのように変わったのか説明した後、それぞれ詳しく紹介していきます。

税制改正で変わった定率法の償却率

平成19年度税制改正前は、定率法も定額法と同じく「償却率」のみが規定されていました。しかし、税制改正によって定率法は「償却率」「改定償却率」「保証率」の3つが規定され、この新たな定率法は「250%定率法」と呼ばれています。

250%定率法では、定率法の償却率は定額法の償却率の2.5倍となっています。例えば、耐用年数10年の償却率を見ると、定額法償却率は0.100、定率法償却率は0.250のように定められました。

しかし、平成23年度の税制改正で、再び定率法の償却率が見直されました。これにより、定率法の償却率が定額法の償却率「2.0倍」に引き下げられることになり、250%定率法から200%定率法へ移行されたのです。

償却率、改定償却率、保証率の仕組み

前述したとおり、定率法は資産の取得時は償却額が大きいものの、年々償却額が少なくなるという特徴がありました。しかし、償却額がどんどん少なくなる以上、場合によっては何年もかかるという問題点があります。

そこで、償却がある程度進んだら、「改定償却率」というシステムで減価償却が行われるという仕組みになりました。例えば、通常の償却率のままでは多くの時間がかかる場合に、改定償却率によって算出して強制的に償却を進めるというイメージです。

具体的には減価償却費が、最低限確保するべき金額の基準である「償却保証額」を下回りそうな場合、改定償却率による算出が行われます。また、償却保証額は「取得原価×保証率」で算出され、ここで「保証率」が登場します。

償却率、改定償却率、保証率の具体的な値

償却率、改定償却率、保証率は、以下のように規定されています(平成24年4月1日以降取得、耐用年数3年の場合)。

参考URL:株式会社プレアソリューションズ「減価償却率」

定率法の償却率 改定償却率 保証率
0.667 1.000 0.11089

このように、耐用年数ごとに通常の償却率、改定償却率、保証率が規定されています。保証率によって償却保証額を算出することができ、この償却保証額を減価償却費が下回った場合には、改定取得価額に改定償却率を乗じて、以降は毎年同額になるという仕組みです。

まとめ

減価償却とは、時間の経過や使用によって価値が減少する資産を取得したときに、その費用を使用可能期間に応じて計上していくことを指します。大まかにいえば、長く使用する資産を購入したとき、その費用を分割して計上するという仕組みです。

費用と収益を因果関係に基づいて把握することで、損益状況を正確に知ることができ、減価償却はそのための方法の一つでもあります。なぜ減価償却が行われるのか、計算方法は何かといった点を知っておくと、減価償却の全体像がイメージできるようになるでしょう。

それでは最後に、今回の記事をまとめると以下のようになります。

・減価償却とは
→長く使用する資産を購入したとき、その費用を分割して計上すること

・減価償却が必要な理由
→費用と収益は因果関係に基づいて把握する必要があるため

・減価償却の対象となる資産
→建物や車などの有形固定資産、特許権などの無形固定資産、りんご樹などの生物

・減価償却の計算方法
→定額法、定率法

・定額法と定率法の選択
→節税などの側面を踏まえて検討することが大切

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