M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年9月22日更新会社・事業を売る
特別目的会社(SPC)とは?メリット・デメリット、設立の手順をわかりやすく解説
特別目的会社(SPC)とは、資金調達や債券の発行、投資家への利益の配分などの目的だけのために設立される会社のことです。日本でも、経営戦略としてSPCを設立することが増えてきました。今回は、SPCの設立の手順やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
特別目的会社(SPC)とは
特別目的会社とは資金調達や債券の発行、投資家への利益の配分などの目的のために設立される会社のことです。M&Aの目的で設立されることもあります。
通称「SPC」とも呼ばれる特別目的会社は、経営戦略において有効的な手段になります。
日本では、1998年6月に成立したSPC法(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)によって、特別目的会社を設立できるようになりました(SPC法は2000年に改正され、「資産の流動化に関する法律」と名称変更)。
特別目的会社を意味するSPCとは「Special Purpose Company」の略称です。直訳すれば、そのまま「特別目的会社」となります。資産の流動化のみを目的としている特別目的会社は「特定目的会社」、あるいはそのローマ字読みの頭文字を取った「TMK」とも呼ばれます。
特別目的会社はいわゆるペーパーカンパニーのようなものであり、他の会社から譲渡された資産や債券を担保にしたうえで、資産担保証券や資産担保コマーシャルペーパーなどを発行したり不動産を所有したりするためなど、資金の流動化に用いられます。
特別目的会社は会社が持つ資産を移し替えるための貯蔵庫のようなものであり、利益を追求することはありません。基本的に特別目的会社には倒産の概念が存在していません。
「会社」と名付けられていますが、特別目的会社は会社法上の会社とは異なっているため、管轄している省庁が財務局になっているなど通常の会社とは異なる点があります。
特別目的会社(SPC)の設立手続きと注意点
ここでは、特別目的会社の設立・登記方法や手続きと注意点についてお伝えしていきます。特別目的会社の設立・登記方法や手続きに関しては、基本的に普通の株式会社設立のそれと変わりません。
特別目的会社をSPC法に基づいて設立するか、会社法に基づいて設立するかによって資本金の額や一部の手続きが変わってきます。
①SPC法に基づいた特別目的会社の設立の場合
SPC法に基づいた特別目的会社の設立の注意点は、以下のとおりです。
- 定款印紙が必要である
- 3万円の登録免許税がかかる
- 10万円以上の資本金であること
- 内閣総理大臣へ届け出が必要である
- 取締役1人だけでなく、監査役1人も必要である
- 一定の場合のみ会計監査法人が必要である
- 設立後は資産流動化計画を作成し、業務開始届を提出して初めて開業することができる
SPC法に基づいて特別目的会社を設立する場合は、資産流動化計画と業務開始届を作成しなければ業務開始ができないため、注意しておきましょう。
②会社法に基づいた特別目的会社の設立の場合
会社法に基づいた特別目的会社の設立の注意点は、以下のとおりです。
- 定款印紙は4万円だが、電子定款あるいは合同会社である場合は不要である
- 登録免許税は最低15万円、合同会社であれば最低6万円かかる
- 資本金は1円からでもOKである
- 内閣総理大臣へ届け出は不要である
- 取締役は1人だけでも設立可能であり、合同会社であれば社員1人だけでも設立が可能である
- 大会社の場合にのみ会計監査法人は必要であり、合同会社であれば不要である
会社法に基づいて特別目的会社を設立する場合は、株式会社よりも合同会社として設立したほうが全体的なコストや手間を省くことができるため、合同会社として特別目的会社を設立することが一般的です。
いずれの方法で特別目的会社を設立するにせよ、弁護士や司法書士などの専門家の力を借りましょう。
特別目的会社(SPC)のメリット
特別目的会社の意味や設立方法を確認したところで、なぜ特別目的会社を設立するのか、その理由を特別目的会社のメリットとともに確認していきましょう。
特別目的会社のメリットは、主に以下の2つになります。
- オフバランス化が可能になる
- 資産を守ることができる
①オフバランス化が可能になる
特別目的会社の最大のメリットは、オフバランス化が可能になるという点でしょう。オフバランス化とは、貸借対照表から不動産などといった資産を切り離すことをいいます。
このようなオフバランス化が必要となる場面は、不動産を多く抱えている会社に多いです。
不動産のような資産は基本的に負債ありきで建設・取得されるものであるため、大量に抱えると負債比率が上がり自己資本比率が低下してしまうので財務状況が悪化します。
この状況を改善するために最も簡単な方法は不動産の売却ですが、所有している不動産の権利を手放したくないと考える会社は多いでしょう。
財務状況の改善
財務状況を改善するために不動産の売却以外に考えられる手段として、第三者割当増資などの増資が挙げられます。増資を行えば自己資本比率が上がるため、財務状況の改善にはつながります。
しかし、一般株主がいる株式会社の場合、増資は株式の希薄化を招いてしまい、持ち株比率の低下が起こってしまうというリスクがあります。
このリスクを恐れて、増資が行えない会社に有利に働くのが特別目的会社というわけなのです。第三者や銀行からの融資を受けつつ特別目的会社を設立し、そこに不動産を売却するという形を取れば売却益を得られ、資金を増やすことができます。
特別目的会社は元々の会社の管轄にあるので外部に売却したことにはならず、運用する権利もそのまま保有することができます。
特別目的会社は、増資のデメリットをうまく補強しつつ不動産の権利を維持したまま資金を獲得するには、有効的な手段であるといえ、不動産以外の資産に対しても当てはまります。
もしM&Aの一環で特別目的会社設立を検討している場合は、専門家の協力を得ることが重要です。
M&A総合研究所にはM&Aに関する豊富な知識と経験を持つアドバイザーが多数在籍しており、培ったノウハウを活かしてフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
②資産を守ることができる
特別目的会社は、資産を守るうえでも活用することができます。何度もお伝えしているように特別目的会社は倒産のリスクがなく、また本社と独立しているため、最悪本社が倒産しても連動して倒産するという事態にはなりません。
所有している資産が機能している限り、本社が倒産したとしても無傷でいられるのです。
特別目的会社は不動産だけでなく売掛金や投資している設備、債権などを保有するために設立されますが、いずれも特別目的会社が保有していれば本社に問題が発生しても、その影響から守ることができます。
また、以下の記事では第三者割当増資について解説しています。具体的な手続き方法についても紹介しているので、ぜひご確認ください。
特別目的会社(SPC)のデメリット
一方で、特別目的会社を設立するデメリットもあります。
特別目的会社のデメリットは、主に以下の2つです。
- 運用にコストがかかる
- 悪用できる恐れがある
①運用にコストがかかる
特別目的会社のデメリットは、運用にコストがかかることです。特別目的会社を設立する段階で、資本金や登録免許税などのコストが発生します。
当然会社として運営していく以上、一定の資金は少なからず必要になります。特別目的会社を設立するスキームには弁護士や司法書士などといった専門家の協力を得る必要があり、その報酬も渡さなければなりません。
第三者の出資を得て特別目的会社を設立、運営していく場合には不動産など資産を売却した際に得た売却益を、その出資の割合に応じて第三者に渡す必要もあるため、売却益全てが本社に入ってくるわけではありません。
コストの部分を考えると普通に資産を売却したケースと比べて、負担が増えてしまうことは留意しておいたほうが良いでしょう。
②悪用できる恐れがある
特別目的会社は会社資産の貯蔵庫であるため、その気になれば悪用できてしまうこともデメリットとして挙げられます。
本社が持っている価値のない不動産や不良債権、回収ができない売掛金などといった不要な資産や、不都合な資産を片っ端から特別目的会社に押し付ければ貸借対照表を改善できるため、本社の業績を良く見せられるようになるのです。
良くも悪くも特別目的会社は、本社が持つ資産を切り離しオフバランス化をもたらしてくれますが、その負の一面が利用されたケースとして過去には粉飾決算を行った事例もあり、悪用されるケースは少なくありません。
このように特別目的会社を利用した悪用は「飛ばし」といわれており、特別目的会社は資産を保有させるための「箱」に過ぎないという認識があります。
今では法改正によって実質的に支配関係にある特別目的会社は、本社と連結していなければならないなど飛ばしはできなくなっています。しかし、それでも特別目的会社には悪用できる余地があるため、運用の仕方には注意が必要です。
特別目的会社(SPC)と税金
特別目的会社は、税務上の観点から利用されることもあります。タックスヘイブンに持ち株会社となる特別目的会社を設立することで、税逃れをすることが可能です。タックスヘイブンとは租税回避地のことで、法人税が免除されたり低率であったりする地域や国のことを指します。
タックスヘイブンで有名な場所として、キューバの近くのケイマン諸島やシンガポールが挙げられます。タックスヘイブンに特別目的会社を設立し売り上げを横流しすることで、日本であると40%ほどかかる法人税から逃れることができるのです。
タックスヘイブンに特別目的会社を設立して税逃れをすると聞くと、悪いことをしているように感じるかもしれませんが、このような税金対策は多くの企業で行われています。
日本は日本国内でも特別目的会社を作れるように法改正をし、特別目的会社であればほとんど税金を払わなくて良いようにしています。税収が減って社会的に悪影響を与えるように感じますが、会社が海外に出て行ってしまうことに比べると、税収を確保することができるのです。
特別目的会社の力のほとんどを出資者に配当すれば、特別目的会社の税金はほとんどゼロとなります。しかし、配当金の収入に対して、受け取った人は所得税が発生することになります。
また、以下の記事で消費税・法人税・相続税に使える節税のスキームを解説しているので、少しでも節税をしたい経営者の人はぜひこちらも目を通してみてください。
特別目的会社(SPC)と特定目的会社(TMK)の用途の違い
ここでは、特別目的会社(SPC)と特定目的会社(TMK)の用途の違いについてお伝えしていきます。
冒頭でも触れましたが、特別目的会社と同じようなものに特定目的会社というものがあります。特定目的会社は、特別目的会社の中でも資産の流動化だけを目的として設立された会社のことを指しています。
対して、特別目的会社は特別目的事業体(SPV:Special Purpose Vehicle)のうち法人格を有しているものをさしており、特定目的会社を含めた包括的な概念です。これには株式会社や合同会社、投資法人や外国会社など多種多様な形態の法人が含まれており、全ての会社の目的が資産の流動化であるとは限りません。
資産の流動化という目的に限定した特定目的会社は、特別目的会社に該当する会社の1つというわけです。特定目的会社をSPC、つまり特別目的会社と同じ呼び方をすることも一般化されており、実質的には同一視されていることが多いです。
「特別目的会社の設立手続きと注意点」の項で、特別目的会社がSPC法か会社法のいずれかに基づいて設立されることをお伝えしましたが、前者が特定目的会社、後者が特別目的会社と区別すれば良いでしょう。SPC法に基づいていない特別目的会社は、商号に特定目的会社と記載することはできなくなっています。
特別目的会社(SPC)を使うスキーム
特別目的会社を使うスキームは以下の2つがあります。
- GK-TKスキーム
- TMKスキーム
特別目的会社を使うスキームとは、つまり不動産証券化を使った場合のスキームのことです。これらのスキームは、法規制に従って日本でもよく利用されています。
スキームの詳細については極めて複雑になっていますので、必要であれば専門家から説明してもらうようにしましょう。
M&Aにおける特別目的会社(SPC)
ここでは、M&Aにおける特別目的会社についてお伝えしていきます。特別目的会社は増資だけでなく、M&Aにおいても利用されるものです。
融資などを得た特別目的会社を、買収のために必要な資金を貯蓄するために使いその特別目的会社を通じて、対象の会社を買収するというわけです。特別目的会社をM&Aのスキームに組み込むのは、企業買収の手法の1つであるLBO(レバレッジドバイアウト)です。
①LBO(レバレッジドバイアウト)によるM&A
LBOは資本金が少ない会社でも、自分より大きい資本金を持つ会社を買収できる手法のことを指します。買収の対象となる会社のキャッシュフローや、資産に基づいて融資を受けることが特徴です。LBOの事例としては以下のようなものが挙げられます。
- ソフトバンクのボーダフォン日本法人買収
- ライブドアのニッポン放送買収未遂
一見、LBOは資本金が少ない会社でも使える非常に有効的な企業買収の手法に見えます。しかし、資金を集める際に使うLBOローンの金利が高かったり、金融機関から一定の制約や条件を設けられたりすることがあるなど、いくつかのデメリットがあります。
金融機関や投資ファンドが、融資先の確保や債務超過の会社を整理することを目的として成功する余地がないLBOを盛んにすすめるなど、悪用するケースもあるため、実際にLBOを行う際には注意が必要です。
②M&AにおけるLBOを検討の際はM&A総合研究所へ
M&AにおけるLBOをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、M&Aに必要な専門の知識と豊富な経験を持つアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
また、一般的にはM&A成約まで半年から1年はかかるとされていますが、M&A総合研究所はスピーディな対応を実践しており、成約まで最短3ヶ月という実績を有しています。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
特別目的会社とは資金調達や債券の発行、投資家へ利益配分をするために設立される会社のことです。特別目的会社は、会社の貸借対照表のオフバランス化を図るうえで有効的な手段といえます。
会社の資産を流動化すれば、さらなる資金調達ができるようになりますし、増資のデメリットを補完したうえで行えることは特別目的会社の最大の強みといえるでしょう。
特別目的会社は悪用することも可能であり、コストも高くつくことが多いため、実際に運用する際にはいくつかのデメリットも留意すべき点です。特別目的会社をうまく活用し経営を成功させましょう。
今回の内容をまとめると、以下になります。
【特別目的会社(SPC)とは】
- 資金調達や債券の発行、投資家への利益の配分などの目的のために設立される会社、いわゆるペーパーカンパニーのこと
【特別目的会社(SPC)の設立手続きと注意点】
- SPC法に基づいて設立する場合と会社法に基づいて設立する場合によって、資本金の金額や一部の手続きに違いがある
【特別目的会社(SPC)のメリット】
- オフバランス化が可能になる、資産を守ることができるといったメリットがある
【特別目的会社(SPC)のデメリット】
- 運用にコストがかかる、悪用できる恐れがあるといったデメリットがある
【特別目的会社(SPC)と税金】
- タックスヘイブンに持ち株会社となる特別目的会社を設立することで、税逃れをすることが可能になる
【特定目的会社(TMK)と特別目的会社(SPC)の用途の違い】
- 資産の流動化だけを目的として設立された会社が特定目的会社であり、それを含めた包括的な概念が特別目的会社である
【特別目的会社(SPC)を使うスキーム】
- GK-TKスキームとTMKスキームの2つがある
【M&Aにおける特別目的会社(SPC)】
- 資本金が少ない会社でも、自分より大きい資本金を持つ会社を買収できるLBO(レバレッジドバイアウト)という手法を用いる
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。