M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年12月1日更新会社・事業を売る
アナジー効果とは?回避してシナジーに変える方法を解説
アナジー効果とは、M&Aによる統合効果が十分に得られなかった状態や、統合前よりも経営状況が悪化した状態のことで、シナジー効果とは逆の意味です。本記事では、アナジー効果の意味や、アナジー効果を回避してシナジー効果に変える方法などを解説します。
アナジー効果とは?
アナジー効果とは、M&Aによる統合効果が十分に得られなかった状態または統合前よりも経営状況が悪化した状態のことです。多くの場合、買い手は売り手企業とのシナジー効果を求めてM&Aを行います。しかし、買い手は必ずしも事前の想定どおりに、シナジー効果を得られるとは限りません。
かえって統合がうまくいかず、マイナスの相乗効果(アナジー効果)が生まれてしまう可能性もあります。シナジー効果とは、2社以上の企業の経営資源などを統合することで企業が単独で生み出せる価値の合計以上の価値を生み出す効果のことで、シナジー効果がマイナスに働くとアナジー効果となります。
主なシナジー効果は以下のとおりです。
- 売上シナジー
- コスト削減シナジー
- リスク分散効果
- 経営手法・社員のレベルアップ
- 財務力アップ
アナジー効果の内容
アナジー効果となる内容には、さまざまなものがあります。アナジー効果は、主に以下のマイナス効果が生じることです。
- 多角化経営の失敗
- 子会社の支援による労働力低下
- 間違った資金の活用
- 想定していないコスト増
- 優秀な人材流出
- 大切な顧客離れ
- 旧経営者の意欲低下
- コミュニケーション不足
- 会計上の大きな損失
多角化経営の失敗
M&Aによる経営の多角化は、うまくいけばさまざまなシナジー効果を得られる一方で、統合に失敗するとコストの増大や経営の非効率化といったアナジー効果が発生する可能性もあります。経営の多角化には、水平型・垂直型・集中型・集成型の4つがあります。
水平型とは、同じような顧客層の事業で多角化することで、垂直型とは同じ事業分野の中で川上から川下へ多角化することです。集中型とは、既存商品・サービスと新規商品・サービスを合わせて新しい市場に進出することで、集成型とはまったく別分野の市場へ進出することです。
多角化経営はどのパターンを選ぶかによってリスクの大きさも変わるため、アナジー効果を発生させないよう多角化を行うには自社に合ったM&A戦略を構築する必要があります。
子会社の支援による労働力低下
買収した企業が経営の立て直しを必要としている場合、買い手企業は買収した企業へ立て直しのための人材を送り込んだり、親会社から資金などを投入したりしなければならないアナジー効果が発生する可能性があります。
買収した企業がグループ会社の1社であったり、会社の1事業から切り離された会社であったりする場合は、グループや会社から切り離されることでアナジー効果が発生しかねません。
例えば、ある会社の開発部門を会社分割により取得したとすると、その会社は開発機能以外をほとんど持っていない可能性があります。そのような場合、買い手企業は人材を送り込んだりシステムを構築したりしなければならず、子会社となった企業の支援に労働力や資金などを割かなければならないアナジー効果が発生する場合があります。
間違った資金の活用
買い手企業が買収後アナジー効果を発生させてしまうケースに、買収した企業を改善しようとして資金投入の方向性を間違うパターンがあります。例えば、こだわりのカレー店を買収したケースでは、時間がかかっていたカレーの調理時間を機械化により短縮して料理のラインナップも拡充します。狭かった店舗を広くして、一度に入れる顧客の数を増やしました。
しかし、その結果は逆にそれまでの常連客を失うことにつながり、新規顧客も思うように入ってきません。原因はカレーの味が変わったことだけでなく、買い手企業のイメージが強くなってもとのお店のブランドイメージが変わってしまったことや、ターゲットとする顧客がブレてしまったことなど、さまざまなアナジー効果を生んでしまいました。
結果的に、買い手企業はお店に関するすべての裁量権を元のオーナーに任せることで、ブランドと顧客を取り戻せましたが、資金の投入方向が間違っていたことでアナジー効果を生む結果につながった事例です。
想定していないコスト増
M&Aによるシナジー効果がうまく発揮されると、例えば以下のコスト削減効果が生まれます。
- 購買業社の共有・拡大によるコスト削減効果
- 開発拠点・設備の共有によるコスト削減効果
- 生産拠点・設備の共有によるコスト削減効果
- 在庫の相互融通による合理化
- 物流設備や物流網、物流業者の集約によるコスト削減効果
- 広告宣伝の一元化によるコスト削減
- 人材・拠点の最適化によるコスト削減効果
- 営業・管理部門の集約によるコスト削減効果
もしもM&A後の統合がうまくいかなかった場合は、以下のアナジー効果が生まれる可能性があります。
- 購買業社の重複によるアナジー効果
- 開発拠点・設備の重複によるアナジー効果
- 生産拠点・設備の重複によるアナジー効果
- 在庫の増大によるアナジー効果
- 物流設備や物流網、物流業者の重複によるアナジー効果
- 広告宣伝費の増加によるアナジー効果
- 人材・拠点の重複によるアナジー効果
- 営業・管理部門の重複によるアナジー効果
上記のようなアナジー効果を解消するにはコストがかかるため、M&Aの計画を立てる時点でどれだけのコスト増加が生じ得るかをよく検証しておく必要があります。
優秀な人材流出
買い手企業が異業種に参入する場合、その業種に関する経営ノウハウがなければ買収先企業のキーとなる人材に残ってもらいたいと考えます。同業種であっても、買い手企業が人材不足に悩んでいる場合は、M&Aによる人材の確保が重要な戦略です。しかし、場合によっては、M&Aをきっかけにキーとなる人材が流出してしまう可能性もあります。
特に中小企業の場合は特定のキーとなる人材に多くの権限が集中していることが多く、そのキー人材が抜けてしまうと事業が立ち行かなくなってアナジー効果が生じてしまう可能性があります。
M&Aの際は、いかにキー人材を引き留める策を講じるかがポイントです。キー人材を引き留めるには買い手企業だけの力だけでは限界がありますが、売り手企業と協力して行うことでアナジー効果を止めることが可能です。
大切な顧客離れ
買い手企業によっては買収後すぐに買収先企業を改善し、早くシナジー効果を得ようとします。しかし、拙速なテコ入れは、買収先企業の大切な顧客を失うアナジー効果を生みかねません。
M&A後に大切な顧客離れが起きるアナジー効果は、大企業が中小企業を買収した際に多くみられます。大企業は資金力があり、中小企業は社内体制が整っていないことも多いので、大企業は早くテコ入れせざるを得ない事情もあります。
ところが、買収先企業がそれまで築いてきた企業文化やブランドをないがしろにして拙速なテコ入れを行おうとすると、それまで応援してくれていた大切な顧客を失うアナジー効果が生じかねません。
大切なそれまでの顧客を離れさせないようにするには、買い手企業が買収先企業のそれまでやってきたことを尊重し、話し合いや検証を重ねながら時間をかけてテコ入れしていくことが重要です。
旧経営者の意欲低下
買い手企業が買収先企業の経営者に残ってもらったものの、旧経営者の意欲低下によりアナジー効果が生じることがあります。旧経営者の意欲が低下する理由はさまざまです。やりたいことができなくなった、別のビジネスがしたくなった、組織運営に疲れた、健康に問題があるなどの理由により意欲を失っている可能性があります。
経営者のなかには、オーナー経営者としてであれば力が発揮できる人もおり、他会社の子会社となることで裁量権の一部を失い、能力が発揮できなくなって意欲が低下するケースも珍しくありません。特に親会社による管理が細かすぎたり短期間での実績ばかりを求めたりするケースでは、旧経営者が意欲を失いアナジー効果が生じる傾向にあります。
買収後も買収先企業の経営者に能力を発揮してもらうには、なるべく裁量権を奪わないようにし、中長期目線で実績を求めていくなど適切な対処を行うことでアナジー効果を抑えることが可能です。
コミュニケーション不足
コミュニケーション不足も、アナジー効果を生み出す要因となり得ます。コミュニケーション不足には、M&A時点で起こるものと、M&A後に起こるものとがあります。M&A時点でのコミュニケーション不足は、トップ同士がしっかりと信頼関係を築けていなかったことで、統合後に噛み合わなくなるアナジー効果です。
統合後のコミュニケーション不足は、経営方針に関するコミュニケーションをしっかりととらないまま買い手企業が買収先企業の経営体制にテコ入れしておくことで生まれるアナジー効果です。中小企業同士のM&Aでは、コミュニケーションを何度も重ねることによって、アナジー効果を回避する傾向にあります。
しかし、大企業が中小企業を買収するケースや、海外企業を買収するケースではコミュニケーション不足によってアナジー効果が生じるケースが少なくありません。
会計上の大きな損失
会計に関する主な買収リスクには、以下のとおりです。M&A手続きの際にこれらの問題点に気が付かないままM&Aが完了してしまうと、買い手企業は統合後会計のアナジー効果が生じることとなります。
- 会計処理が適切かどうか
- 帳簿資産は実在するか、簿外債務はないか
- 純資産額の実態はいくらか
M&Aの際はこれら会計上の問題点を洗い出すために、会計デューデリジェンスを実施するのが一般的です。ただし、デューデリジェンスは詳細に行おうとすればするほど、費用と時間がかかります。会計面のアナジー効果を防ぐためには、どこまで深く会計デューデリジェンスを行うかが難しい点です。
デューデリジェンスにかかる費用と、会計面のアナジー効果が生じることによって被る損失を試算し、バランスをよく検討する必要があります。
アナジー効果を回避してシナジーに変える方法とは
アナジー効果を回避しシナジー効果を発揮するには、さまざまな対策方法があります。この章では、アナジー効果を回避してシナジー効果を得る方法のなかで有効なものを紹介します。
PMI(統合プロセス)の徹底
アナジー効果を回避するためには、PMI(統合プロセス)の徹底が重要です。M&A手続き自体が成功に終わっても、統合に失敗してしまったためにアナジー効果が生じることは少なくありません。
アナジー効果の発生を防ぐためにも、買い手企業はM&Aが具体的な交渉段階にまで進んだ時点で、売り手企業と統合について多面的かつ具体的に話し合っておく必要があります。
具体的には、買収後の経営・組織の設計や、人事体制・営業体制、会計システムの状況などを検討することです。PMIによってアナジー効果のリスクを防ぐためには、M&A初期段階の目的を固めたり戦略を立てたりする時点で、PMIの段階までを想定して準備しておくことも必要でしょう。
PMIは、大まかに「戦略統合」「業務統合」「モニタリング」のプロセスに分かれます。なかでも、買収企業・被買収企業の経営陣同士の間で事業環境に対する共通認識を醸成し、統合後の戦略を策定していく戦略統合プロセスは最初の段階に位置し、買収と統合の難しさを克服するうえで、その成否がその後のプロセスを大きく左右します。
M&Aの専門家のなかには、PMIの段階までを想定してサポートしてくれる専門家もいます。PMIまでを想定してM&A戦略を構築してくれる専門家に相談できると、アナジー効果の発生を抑えることが可能です。
ピュアカンパニーの設立
アナジー効果を防ぐには、ピュアカンパニーの設立も有効です。ピュアカンパニーとは、事業を専業化した会社のことです。事業の多角化はさまざまなメリットを生み出す一方で、多角化に失敗するとアナジー効果を生み出します。そのような経営の多角化によるアナジー効果を防ぐために、ピュアカンパニーを設立することがあります。
ピュアカンパニーを設立することで、商品やサービス・設備・人材などの重複によるアナジー効果を回避し、効率的な事業運営が可能です。ただし、ピュアカンパニーを設立するために既存の会社から事業を切り離す場合は、切り離したことによるアナジー効果が生じないかといった点も検証する必要があります。
M&Aを成功させるためにアナジー効果は回避すべき
M&Aを成功させるには、アナジー効果を回避しなければなりません。そのためには、M&Aの初期段階からM&Aを戦略的に進めていく必要があります。アナジー効果を回避するためには、M&Aの豊富な支援経験を持つ専門家によるアドバイスが有用です。
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アナジー効果のまとめ
アナジー効果 とは、M&Aによる統合効果が十分に得られなかった状態または 統合前よりも経営状況が悪化した状態のことです。M&Aを成功させるためにはアナジー効果の回避が重要となるため、M&A仲介会社など専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。