2024年9月26日更新業種別M&A

アパレル業界のM&A・事業承継の動向!事例も紹介【2024年最新】

アパレル業界の市場規模はほぼ横ばいで推移していますが、活発にM&A・事業承継が行われています。M&Aが活発化している理由はさまざまですが、経営戦略としての活用が多い状況です。アパレル業界のM&A・事業承継の動向・事例などを中心に解説します。

目次
  1. アパレル業界の現状
  2. アパレル業界のM&A・事業承継の最新動向
  3. アパレル業界でM&A・事業承継を行うメリット
  4. アパレル業界のM&A・事業承継の案件例
  5. 2024年アパレル業界のM&A・事業承継の事例4選
  6. 2022年~2023年アパレル業界のM&A・事業承継の事例3選
  7. 2020年〜2021年アパレル業界のM&A・事業承継の事例5選
  8. 異業種によるアパレル業界のM&A・事業承継の事例2選
  9. アパレル業界のM&A・事業承継に積極的な企業
  10. アパレル業界のM&A・事業承継まとめ
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アパレルのM&A・事業承継

アパレル業界の現状

まずはアパレル業界の現状を4つのトピックに分けて解説します。

アパレル業界の特徴

ここでは、アパレル業界の主な特徴を整理します。アパレル業界の代表的な特徴は以下のとおりです。

  1. 流通構造
  2. 季節とはやりに大きく左右される業界

①流通構造

まずは、基本的な流通の流れからです。アパレル業界の流通構造は、しばしば「川上」、「川中」、「川下」と表現されます。これは川の流れにたとえた流通構造であり、以下のようにそれぞれに異なる役割があるのです。

  • 川上:繊維素材の生産
  • 川中:素材から商品を生産
  • 川下:商品を消費者へ販売

各々の段階でメーカー・小売業者などが業務を行っていますが、最近ではこれらの企画・製造・小売を一貫して行うSPAの台頭も目立っています。

②季節とはやりに大きく左右される業界

服を扱う以上、アパレル業界は季節とはやりに大きく左右されます。まず季節について説明すると、基本的に夏服よりも冬服の方が単価は高くなる点が特徴的です。そのため、季節に応じた適切な販売戦略を策定しなければなりません。

また、アパレル業界には、特定時期にしか着ない服が売れ残った場合の在庫リスクもあります。インナーなどは、年間をとおして需要があるため戦略策定しやすい商品です。しかし、夏に着る半袖の服・冬に着るコートなど季節性のある服も、もちろん扱わなければなりません。

たとえば、冬用のコートが売れ残った場合、春以降どのように扱うかが問題となります。この場合、値引き販売などの対策が考えられますが、やはり在庫リスクは簡単には拭えません。

さらに、服のはやりは次々に変わるため、消費者の動向にも注意する必要があります。1年たっただけではやりが大きく変わったというケースも珍しくありません。はやりとニーズの動向をより正確に分析する必要がある点も、アパレル業界の大きな特徴です。

アパレルメーカー・小売店を取り巻く環境

衣料品等の国内市場規模推移

出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/textile_nw/pdf/001_05_00.pdf

国内アパレル市場規模はバブル期の15兆円をピークに2010年頃までに10兆円程度へと減少し、その後はほぼ横ばいとなって伸び悩みが続いている状況です。なお、近年の国内アパレル市場規模は2年連続で前年を上回り、回復基調にあります。

2022年の国内アパレル総小売市場規模は8兆591億円で、前年比105.9%でした。

最近のアパレル業界ではSPA(製造小売業)の台頭も目立っています。SPAは企画・製造・小売が一貫しているため、コストの安い海外で大量生産を行ったうえで小売の段階に持っていくことが可能になります。

また、川下である小売業が川上に進出するという形で、大手アパレルが低価格化や店舗展開などを積極的に行うようになっており、収益源の確保として海外展開を進める企業も現れました。

さらに、ECサイトと百貨店の動向にも大きな特徴が見られます。市場規模がほぼ横ばいとなっているのは、インターネットの急速な普及により、ECサイトでの販売が好調を維持している点も大きな要因です。そのため、大手のアパレル企業は、ECサイトでの販売に力を入れています。

一方で、インターネットによる購入が普及した現在では、百貨店での販売が低迷傾向です。インターネット上での購入でも以前よりもスムーズな配達が実現しているため、直接買いに行かなくてもよいと考える人も増加えてきました。

このように、販売チャネルが大きく変わろうとしている点も、アパレル業界の特徴的な動向といえます。

参考:矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査を実施(2023年)」

アパレル製造業を取り巻く環境

繊維工業における事業所数の推移

出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/textile_nw/pdf/001_05_00.pdf

「川上」、「川中」であるアパレル製造業に該当するのが繊維産業です。経済産業省の「繊維産業の現状と経済産業省の取組」によると、繊維産業の現在の状況は以下のようになっています。

  • 衣料品等の国内市場規模は1990年代に入り減少傾向だったが、2000年代以降は横ばいの状況
  • 2020年以降は新型コロナの感染拡大による外出自粛の影響を受け国内市場規模は減少したものの、2022年でもコロナ前までの市場規模まで回復していない
  • 2017(平成29)年時点の繊維産業の事業所数は1991(平成3)年の約4分の1に減少
  • 2017年時点の繊維産業の出荷額も1991年の約4分の1に減少
  • 国内企業の減少分を補うように輸入品の割合が上昇

これは、アパレルメーカー各社が製造コストを抑えるために、労働力が安価である海外に製造工場を設けたことが要因です。そこで、残った国内のアパレル製造業者は、大量生産品は受注せず、高品質で少数ロットの製品を多種受注する戦略を取っています。

日本のアパレル製造業者の品質の高さについては、海外のアパレルブランドからも評価を受け、国外からの受注を多く集めているメーカーも少なくありません。

参考:経済産業省「繊維産業の現状と政策について」2024年5月

コロナ禍がもたらした影響

コロナ禍以前から、人口減少や消費不振、百貨店の低迷などにより、アパレル業界の景気は他業種と比べて大きく下回っていました。2020年4月には景気動向指数が過去最低の11.7まで落ち込みましたが、ネット通販が支えとなり、徐々に回復しました。

しかし、2022年初頭にはウクライナ情勢やオミクロン株の影響、原油価格の高騰や円安が重なり、再び厳しい状況が続きました。2022年秋からはワクチン接種の広がりとともに外出が増え、需要が回復しました。2023年5月にはアパレル業界の景気動向指数が他業種とほぼ同水準まで改善しています。

現在、ファストファッションが市場をリードしていますが、環境意識の高まりを受け、大量生産・大量廃棄を見直す動きが進んでいる状況です。企業は過剰在庫を抑え、環境に配慮した素材の使用や適量生産に取り組むようになっています。

参考:帝国データバンク「特別企画:アパレル業界の最新景況レポート」

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アパレル業界のM&A・事業承継の最新動向

前章も踏まえ、アパレル業界のM&A・事業承継の最新動向について整理していきます。最近のアパレル業界では、販売チャネルの強化を目指したM&Aや、異業種も含めたM&Aの実施が多い点が特徴的です。

詳細は後述しますが、三井物産によるビギホールディングスの買収は、アパレル業界における代表的なM&A事例でした。このM&Aは、アパレル企業であるビギホールディングスが、三井物産の持つ物流などのネットワークを活用して販路の強化を目指した事例といえます。

その一方、三井物産はファッション・繊維事業において、販売・マーケティング事業に注力している企業です。そこでビギホールディングスの買収で、企画・販売プラットフォーム機能を強化しています。

このように、各々の目的を達成するため、異業種も含めたM&Aが加速している点がアパレル業界のM&Aに見られる特徴です。

EC事業の強化やDX推進

アパレル業界では競争の激化やインターネットを介した販売の急速な普及が起こっているため、EC事業の強化やDXの推進が急務とされています。その一方で、特に中小規模のアパレル企業では、こうした対応を講じるのは難しいです。

しかし、M&Aを活用すればスピーディーに対応が取れるため、この点もアパレル業界においてM&Aが活発化している1つの要因となっています。

異業種とのM&Aによる経営の安定化

アパレル業界のトレンドに対応するには、異業種が持つネットワークを活用する戦略も1つの方法です。たとえ異業種でも、資金力のある大手企業に買収されれば、大手傘下のもとで経営基盤を安定させられます。

これを実現するために、M&Aによる買収・売却が効果的な手法として注目されているのです。一例として、業績が低迷しているアパレル企業が資金力のある異業種の企業に買収されるM&Aは、典型的な事例といえます。

したがって、M&Aの際は、業種にこだわらず幅広い視野で相手探しを行うことも大切です。アパレル業界では、今後もさまざまな業種とのM&Aが増える見込みであることから、異業種企業のアパレル業界参入もますます増えると推測されます。

これに伴い、アパレル業界全体の動向が変わることも想定されており、近い将来、これに対応するためのM&Aも増える見込みです。

M&A相手の同業者・異業種企業を探す場合、経営者1人の力では限界があり、M&Aを進めるには、M&A・税務・会計・法律などさまざまな専門知識が必要です。そこで、M&Aをご検討中でしたら、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所にはM&Aに関する知識・経験が豊富なアドバイザーが多数在籍し、これまで培ってきたノウハウを生かしながらM&Aをフルサポートいたします。

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アパレル業界でM&A・事業承継を行うメリット

昨今のアパレル業界ではさまざまな目的でM&A・事業承継が増えておりますが、ここではM&Aにより受けられるメリットを整理します。売り手のメリットと買い手のメリットをそれぞれまとめました。

売り手のメリット

M&Aによって会社を売却する売り手のメリットは、以下のとおりです。

  1. 後継者不足問題の解決
  2. 経営基盤の安定化
  3. 創業者利益の獲得
  4. 個人保証や担保の解消
  5. 従業員の雇用維持

①後継者不足問題の解決

後継者不足に頭を悩ませている経営者は少なくありませんが、M&Aにより会社を売却すると別の経営者にバトンタッチできます。そのため、身内や社内に会社を引き継ぐ人がいない場合でも、後継者不足問題を解決できるのです。

②経営基盤の安定化

特に中小企業からすると、M&Aでの売却後に安定した経営基盤のもとで事業継続が可能です。M&Aで大手企業の傘下に入れば、財務面が安定します。また、大手企業(親会社)の持つネットワーク・ノウハウを生かせば、事業強化・事業エリア拡大につなげることも可能です。

また、販売チャネルの強化という面でも、大手企業からの買収を狙う戦略は有効策といえます。アパレル業界ははやりに左右される点が特徴ですが、大手のアパレル企業であれば扱う商品のバリエーションが多いため、いかなるはやりにもある程度、対応できるからです。

さらに流通体制が整っていれば、はやりへの対応をスムーズに進められます。これらの強みを得るために、大手企業の傘下入りを目指すという考え方もあるのです。

③創業者利益の獲得

会社を売却すれば、それに見合った対価が支払われます。つまり、創業者や経営者はそれだけの利益を獲得でき、将来の資金に充てられるのです。M&Aでは、単に廃業しただけでは得られなかった利益を獲得できます。

④個人保証や担保の解消

アパレル企業では、起業時や設備投資など経営に必要となる資金を借入により賄っている会社も少なくありません。中小企業では、経営者が個人保証や担保を差し入れて融資を受けているのが実情です。

M&Aで会社売却(株式譲渡)した場合、債務は買い手は引継がれるため、個人保証や担保は解消されます。ただし、事業譲渡というM&A手法の場合、債務は引き渡せません。そのため、M&A仲介会社などからアドバイスを受けてM&Aを実施することが肝要です。

⑤従業員の雇用維持

会社を廃業すると、これまで一緒に働いてきた従業員を解雇する必要があります。しかし、M&Aで会社を売却すれば、基本的に自社従業員の雇用も引き継がれるため、雇用を心配する必要がなくなるのです。

ただし、従業員が安心して継続的に働けるよう雇用内容を変えないことを、M&Aの条件として相手側に提示し了承を得ましょう。

買い手のメリット

会社を買収する買い手のメリットとしては、以下のものが挙げられます。

  1. 事業エリアの拡張
  2. 事業規模の拡大
  3. 優秀な人材の確保

①事業エリアの拡張

同じアパレル業界の会社が買い手となる場合、売却側が持っていた事業エリアをそのまま取り込めます。また、異業種の企業がアパレル企業を買収する場合、比較的簡単に新規事業への参入を果たせる点も大きなメリットです。

自社のみで事業エリアを拡張したりゼロからアパレル業界に参入したりするよりも、アパレル企業をM&Aにより買収する方がはるかに効率的だといえます。

②事業規模の拡大

取り扱う服のバリエーションが多い大手のアパレル企業であっても、特定分野の服に弱いというケースが見られます。そこで、特定分野の服に特化したアパレル企業を買収すると、簡単に弱点を強化できるのです。これは、アパレル企業同士のM&Aで得られるメリットです。

最近では、販売チャネルの強化を目的にアパレル企業が同業他社を買収する事例も多く見られます。たとえば、インターネットに特化しているアパレル企業を買収すると、自社の販売チャネルを大幅に強化可能です。

近年のアパレル業界では、EC分野の強化は必須といっても過言ではありません。仮にインターネットへの対応を検討している場合、M&Aによる買収を利用すればゼロから構築する手間を省略できます。

③優秀な人材の確保

事業エリアや規模を拡大させても、それを支える人材がいなければうまく機能しません。M&Aで優秀な人材がいる会社を買収できれば、売り手企業の人材をそのまま自社グループの従業員にできます。

人材育成は多くの企業で課題とされますが、育成には時間も費用もかかるため、即座に結果は表れません。この問題を解決する方法としても、M&Aは有効な手法です。

④サプライチェーンの統合

原材料調達や製造を自社で行うことで、コストの削減や顧客ニーズへの迅速な対応が可能となります。また、サプライチェーン全体の情報を迅速かつ正確に活用でき、効率的な販売管理にも繋がります。

しかし、ゼロから始めるには時間もコストもかかってしまうことから、M&Aを用いてサプライチェーンの垂直統合を進めることが非常に有効です。

⑤デジタル領域の強化

アパレル業界では販売チャネルやデジタルマーケティングの強化が急務となっています。しかし、そういったデジタル領域にノウハウがないアパレル企業も多く存在します。

そこで、デジタル領域に強い企業とのM&Aによって両社のノウハウを有効に活用する戦略的なM&Aも見受けられています。

【関連】M&Aのメリット・デメリットとは?買い手・売り手ごとのメリットやリスクを紹介

アパレル業界のM&A・事業承継の案件例

アパレルのM&A・事業承継
アパレルのM&A・事業承継

弊社M&A総合研究所が取り扱っているアパレル業界のM&A・事業承継の案件例をご紹介します。

【都内/大手取引先あり】EC・店舗にてアパレル販売(事業譲渡可能)

中国の工場と連携し、企画から生産管理、販売までを行っています。その他、OEM製造も手掛け、大手企業との取引も行っているのが強みです。

エリア 東京都
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 成長戦略のため

【都内/大手取引先あり】EC・店舗にてアパレル販売(事業譲渡可能)(ものづくり・メーカー) | M&A総合研究所

【雑誌掲載多数/事業譲渡】レディースアパレルブランド

Instagramのフォロワーが数万人おり、20代~30代前半の女性に相応の知名度があります。ファッション誌の掲載実績豊富でモデルや女優からの支持も厚いです。

エリア 近畿
売上高 5000万円〜1億円
譲渡希望額 1億円
譲渡理由 別ブランドの立ち上げのため当該ブランドの事業譲渡を検討

【雑誌掲載多数/事業譲渡】レディースアパレルブランド(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

【関西エリア/優秀なデザイナー在籍】自社ブランドを保有する総合アパレル企業

自社ブランドが幅広い層に高い人気を誇っています。自社ブランドの商品は100%自社企画で、消費者ニーズに沿ったベストなデザイン・企画・生産・販売までトータル管理が可能です。

エリア 近畿
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1億円〜2.5億円
譲渡理由 更なる事業拡大

【関西エリア/優秀なデザイナー在籍】自社ブランドを保有する総合アパレル企業(ものづくり・メーカー) | M&A総合研究所

【関東地方/環境に特化した自社ブランド保有】 アパレル企画・販売事業

環境に特化したアパレルブランドをはじめとした3つの自社ブランドを保有しています。繊維特性から通気性、速乾性に優れ、アウトドアウェアとしても人気が集まっている状況です。

エリア 関東・甲信越
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望額 1000万円〜5000万円
譲渡理由 財務的理由、後継者不在(事業承継)

【関東地方/環境に特化した自社ブランド保有】 アパレル企画・販売事業(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

2024年アパレル業界のM&A・事業承継の事例4選

ここでは、2024年に実施されたアパレル業界関連のM&A・事業承継の事例を紹介します。

①オンワードHDによるウィゴーの完全子会社化

2024年8月28日、オンワードホールディングスはウィゴーの全株式を取得し、子会社化することを決定しました。オンワードホールディングスは、ファッションやウェルネスなど複数の事業を展開する持株会社です。一方、ウィゴーは衣料品や雑貨の企画・販売を手がける企業で、新しい価値を創造しています。

2023年5月、オンワードホールディングスはウィゴーとの資本業務提携を結び、ウィゴーの株式の一部を取得して事業再生を支援しています。その結果、ウィゴーは2024年度に営業黒字に転換する見込みです。

今回の株式取得により、オンワードはウィゴーを完全子会社化し、DXや人的資本投資を進めて、さらなる企業価値の向上を目指します。

株式会社ウィゴーとの資本業務提携に関するお知らせ ~両社のプラットフォーム相互利用を目的とした戦略的パートナーシップ~

②ニッケによる呉羽テックの完全子会社化

2024年8月26日、日本毛織(ニッケ)は、呉羽テックの全株式を東洋紡エムシー株式会社から取得し、グループ会社化したことを発表しました。ニッケは、衣料繊維や産業機材、生活流通など多角的な事業を展開しており、呉羽テックは短繊維不織布の製造・販売を行っています。

今回のM&Aは、ニッケの産業機材事業の強化戦略の一環で、自動車や環境関連製品の拡販、不織布事業の収益向上を目的としています。両社の技術を融合し、ニッケグループの企業価値向上を目指すとしています。

呉羽テック株式会社の株式取得に関するお知らせ

③東京ソワールによるキャナルジーンの完全子会社化

2024年4月15日、東京ソワールは取締役会で株式会社キャナルジーンの株式を取得し、子会社化することを決定しました。東京ソワールは、婦人フォーマルウェアやアクセサリー類の製造・販売を手掛けており、キャナルジーンは婦人服飾雑貨を販売しています。

今回の株式取得は、東京ソワールがライフスタイル事業を拡大し、持続的な成長を目指すためです。キャナルジーンは、Eコマースや実店舗を通じて幅広い年代から支持を受け、特にEC販売に強みを持っています。両社の事業を相互に補完し、収益力を強化するための戦略的な子会社化とされています。

株式会社キャナルジーンの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

④アダストリアによるGate Winの吸収合併

2024年1月、アダストリアはGate Winを吸収合併しました。

アダストリアは、渋谷ヒカリエに本社を置くカジュアル衣料および生活雑貨を取り扱う企業です。対象会社のGate Winはカジュアルウェア販売のライセンス事業を行うアダストリアの子会社です。

今回のM&Aにより、経営資源の有効活用、業務の効率化、ビジネス拡大を目指します。

完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併) に関するお知らせ

2022年~2023年アパレル業界のM&A・事業承継の事例3選

ここでは、2022年から2023年にかけて実施されたアパレル業界関連のM&A・事業承継の事例を紹介します。

  1. 京越によるエスティームの連結子会社化
  2. キムラタンによる和泉商事の完全子会社化
  3. ワールドによるナルミヤ・インターナショナルの連結子会社化

①京越によるエスティームの連結子会社化

2023年11月、京越はアパレルブランド「overE」を運営するエスティームの株式を取得し、連結子会社にしたことを発表しました。京越は和装のEC事業をはじめとした和装卸、レンタル、そしてアパレル、ウィッグの製造・販売などを行なっています。エスティームは、主に婦人服の企画・製造・販売を行っている企業です。

京越は、エスティームが持つ中国の工場とのネットワークや、ECモールでの販売力の強みを活用し、売上の向上を目指しています。

株式会社エスティームを買収し、子会社となりました。

②キムラタンによる和泉商事の完全子会社化

2022年2月、キムラタンは、和泉商事の全株式を取得し完全子会社化することを発表しました。取得予定日は同年4月、取得価額は公表されていません。キムラタンは、ベビー・子供服の企画・生産・販売などを行っています。和泉商事は、不動産賃貸業を行っている企業です。

キムラタンは、少子化などを背景とする近年の主力事業の不振により、新たに不動産事業に注力することを決定しています。

子会社の異動を伴う株式取得に関するお知らせ

③ワールドによるナルミヤ・インターナショナルの連結子会社化

2022年2月、ワールドは、TOB(株式公開買付け)を実施しナルミヤ・インターナショナルを連結子会社化しました。ワールドは、従前よりナルミヤ・インターナショナルの株式25%を所有していましたが、これをTOBで51.59%に引き上げたものです。

TOBでの取得価額は33億900万円でした。ワールドは、衣料品の販売事業とそれに関するブランド事業、デジタル事業、プラットフォーム事業を行うグループの持株会社です。ナルミヤ・インターナショナルは、ベビー・子供服の企画販売を行っています。

ワールドとしては、連結子会社化することで従前よりも多岐にわたってシナジー効果が得られると判断しました。

 

ワールド、ナルミヤを子会社化
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2020年〜2021年アパレル業界のM&A・事業承継の事例5選

ここでは、2020年から2021年にかけて実施されたアパレル業界関連のM&A・事業承継の事例を紹介します。

  1. アダストリアによるゼットンの連結子会社化
  2. ベルーナによるセレクトの完全子会社化
  3. C Channelによる子会社マキシムの株式譲渡
  4. TSIホールディングスによる3ミニッツのアパレル事業の譲受
  5. 花菱縫製によるメルボグループの生産・販売事業の統合

①アダストリアによるゼットンの連結子会社化

2021年12月、アダストリアは、ゼットンとの間で資本業務提携契約を締結し、最終的に連結子会社化することを発表しました。まず、ゼットンは第三者割当増資を同年同月に実施し、アダストリアはこれを12億9,225万5,800円で引受けています。

アダストリアが取得した株式数は全体の25.14%です。そして、アダストリアは2022年1月から2月にかけてTOBを実施し、合計で51%分の株式を取得しゼットンを連結子会社化する計画となっています(記事執筆時点ではTOBの結果は出ていません)。

TOBの予定買付け代金は15億8,500万円です。アダストリアは、グループ子会社13社(海外子会社含む)の体制で衣料品・雑貨などの企画・製造・販売を行っています。ゼットンは、飲食店などの経営・開発・コンサルティングを行っている企業です。

アダストリアとしては、顧客層への多様なライフスタ イル提案の一環として、飲食事業に参入する機会を獲得することで、相互に企業価値向上が得られると判断しました。

株式会社ゼットン株券(証券コード:3057)に対する公開買付けの結果 及び特定子会社の異動に関するお知らせ

②ベルーナによるセレクトの完全子会社化

2021年8月、ベルーナは、セレクトの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。ベルーナは、総合通販事業、化粧品健康食品事業、グルメ事業、ナース関連事業、データベース活用事業、呉服関連事業、プロパティ事業などを行っています。

セレクトは、30代女性向け中心の人気アパレルECサイト「Pierrot(ピエロ)」を運営している企業です。ベルーナとしては、グループ全体での事業拡大とシナジー効果による企業価値向上が図れるとしています。

「株式会社セレクト」の子会社化に関するお知らせ

③C Channelによる子会社マキシムの株式譲渡

2021年3月、C Channelは、完全子会社であるマキシムの株式29.3%をNext Mホールディングスに譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。C Channelは、メディア事業、eコマース事業、海外事業を行っています。

マキシムは、Eコマース、リアル店舗運営、アパレル商品企画卸、アプリケーション開発運営、メディア運営、WEB構築などを行っている企業です。Next Mホールディングスは、代表者がマキシムの代表者と同一人物で、株式・有価証券の保有・運用・管理を行っています。

C Channelとしては、今後の事業拡大に向けた手元資金確保のために株式譲渡を実施しました。

第7回定時株主総会招集ご通知

④TSIホールディングスによる3ミニッツのアパレル事業の譲受

2020年8月、TSIホールディングスは、M&Aにより3ミニッツのアパレル事業を譲受しました。事業取得価額は非公開とされています。買収側のTSIホールディングスは、東京都港区に本社を置くアパレル企業です。

幅広い顧客層のさまざまなニーズに応えるブランドポートフォリオ経営を推進しており、中期経営計画では「デジタル企業化」を重点領域として掲げています。売却側の3ミニッツのアパレル事業「ETRÉ TOKYO」は、アパレル商品企画販売事業です。

自社Eコマースを主要販路にしつつ、ファッションインフルエンサーをクリエイティブディレクターに起用しています。また、SNSなど新たなデジタルメディアをコミュニケーションツールとして活用するマーケティング手法により、20~30代女性を中心に支持を広げてきました。 

本件M&Aの目的は、SIホールディングスグループの持つ商品企画開発力をはじめとする生産物流および海外の事業インフラなどの活用を推進し、アパレル事業の成長スピードを加速化させることです。

会社沿革

⑤花菱縫製によるメルボグループの生産・販売事業の統合

2020年3月、三井松島ホールディングスは、連結子会社でオーダースーツ事業を展開する花菱縫製と、メルボ紳士服工業などを展開するメルボグループにおけるオーダースーツ事業の生産・販売部門を統合すると発表しました。

花菱縫製は1935(昭和10)年に創業され、オーダースーツ生産の工業化を成功させた日本初の企業として高い知名度を誇っています。一方のメルボグループは、「麻布テーラー」、「TAILOR FIELDS」などのスーツブランドの展開や、2つの生産工場の運営などを手掛けてきました。

本件M&Aの目的は、昨今オフィスウェアのカジュアル化が進み、スーツ事業の経営環境が厳しくなる中で、オーダースーツ事業の競争力を強化させることです。

2020年3月期 決算説明資料
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異業種によるアパレル業界のM&A・事業承継の事例2選

ここでは、異業種企業がアパレル業界企業との間で実施したM&A・事業承継の事例を紹介します。

  1. アスコによるネクスプレミアムグループの買収
  2. EPSホールディングスによる尚捷集團控股有限公司の子会社化

①アスコによるネクスプレミアムグループの買収

2021年11月、ネクスプレミアムグループの完全親会社であるネクスグループより、ネクスプレミアムグループの全株式をアスコに譲渡する基本合意書締結が発表されました。ネクスプレミアムグループは、子会社2社も含めアパレル事業を行っています。

アスコは飲食業、サービス業を行っている企業です。ネクスグループとしては、新型コロナウィルス感染拡大問題の渦中において、グループ内の事業の選択と集中を検討した結果、業績不振であるアパレル事業会社の売却を決めた模様です。

子会社の異動に関する株式譲渡契約及び基本合意書締結に関するお知らせ

②EPSホールディングスによる尚捷集團控股有限公司の子会社化

2021年4月、EPSホールディングスは香港のの尚捷集團控股有限公司(Speed Apparel Holding Limited)株式75%を取得し子会社化しました。取得価額は3.705億香港ドル(当時の為替レートで約51億8,700万円)と発表されています。

EPSホールディングスは、医薬品・医療機器の開発サポートなど医療分野におけるさまざまなサポート事業を中心に行うグループの持株会社です。尚捷集團控股有限公司は、香港を拠点としてアパレルのサプライチェーン・マネジメント・サービス事業を行っています。

EPSホールディングスとしては、新規事業進出に向けたM&Aの実施です。なお、尚捷集團控股有限公司は、同年5月に商号をEPS 創健科技集團有限公司(EPS Creative Health Technology Group Ltd.)に変更しました。

中国における子会社の異動に関するお知らせ

アパレル業界のM&A・事業承継に積極的な企業

ここでは、アパレル業界の企業とのM&A・事業承継を積極的に検討している企業を一覧にして紹介します。

会社名 会社概要・強み
データセクション ・小売店設置のカメラよりAIで来店客を分析するサービスを展開
・アパレル業界の課題をデータ分析で解決に導く
・新規事業を世界20カ国で同時に展開中
・Win-WinのM&Aを目指す柔軟さ
ココラブル ・SNS広告、越境コマース、メディアまでさまざまな事業を推進
・新事業、新メンバーとの融合を多く経験
・文化的になじみやすい風土を持つ
フォース ・メインは日本酒を世界に輸出する事業
・IT技術、新たなビジネスモデルの事業を展開していきたい
・20年以上IT企業経営に携わった代表者が売り手の事業継続をサポート
・対象事業の拡大や効率化のサポートにも対応可能
バリュエンスホールディングス ・時計、バッグ、ジュエリーを中心とするブランド品のリユース業を展開
・一般客向け買取店および業者向けオークションを運営
・リユース業界の常識を打ち破るCtoBtoBのビジネスモデルを構築
Logos&Pathos Consulting ・メイン事業は経営コンサルティング
・コンサル会社向けソリューション開発、M&Aアドバイザリー、CVCのほか、農業や健康食品などの新規事業開発にも取り組む
・フレームワークによる経営コンサルではなく、実行支援を得意とする

【関連】日本酒・清酒酒造業界の動向とM&Aのメリット!流れや注意点と売却・買収事例22選を解説!【2024年最新】

アパレル業界のM&A・事業承継まとめ

アパレル業界では、市場縮小への懸念や競争激化などを理由にM&A・事業承継が増加しています。異業種からの参入、競争力の強化など、さまざまな目的でM&Aが活発化している点がアパレル業界の大きな特徴です。

特にインターネットへの対応が求められていることから、販売チャネルの強化を目指したM&A事例も多く見られます。このようなケースでは異業種の持つネットワークの活用が効果的であるため、異業種とのM&Aを実施するアパレル企業も少なくありません。

また、競争が激化しているため、事業領域や事業規模の拡大を目的にM&Aを行うケースも増加傾向にあります。同業者同士のM&Aが加速すれば業界再編も進むでしょう。双方のノウハウを生かして高いシナジー効果が発揮されると、業界の活性化にもつながります。

M&Aは「市場縮小になんとか対応する」ための行為ではありません。市場縮小を打開し、業界の活性化につなげられるのがM&Aの特徴になります。昨今のアパレル業界は確かに厳しい状況が続いていますが、まだまだ将来性もある業界です。

こうした現状を打破するためにも、M&Aを選択肢の1つとして考えることに大きな意味があります。

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