ゴルフ場のM&A動向は？事例や案件例・価格・相談先も紹介

経済産業省の資料によれば、2018年におけるゴルフ場の市場規模は8,540億円と報告されています。このうち、ゴルフ用品は3,430億円、ゴルフ練習場は1,240億円の市場規模を有しているものの、ゴルフ場の市場規模は減少傾向にあります。

また、ゴルフ場数や延利用者数、ゴルフ人口も年々減少傾向にある状況です。

市場規模の縮小要因としては、プレー人口の減少および、プレー単価の減少などが挙げられます。

出典：経済産業省「令和元年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業（個別スポーツの需要喚起策可能性調査）報告書」
　　　経済産業省「ゴルフ産業の現状とその可能性」

ゴルフ場業界はバブル期には非常に好調でしたが、その後は徐々に市場規模が減少し、多くの問題に直面しながらも立て直しが図られています。ゴルフ場業界が直面している主な問題には、以下の3点が挙げられます。

1. 多くのゴルフ場が廃業し減少し始めている
2. ゴルファー・会員の減少が続いている
3. 経営者が高齢になり引退を考えている

バブル崩壊後ゴルフ場業界の市場規模は減少し、多くのゴルフ場が廃業・倒産に追い込まれています。ゴルフ場の数は、今後もさらに減少していく見込みです。

ゴルフ場業界には「会員権」や「預託金」などの顧客から資金を集める独特のシステムが見られますが、この資金を償還できずに倒産・廃業するケースもあります。

ゴルフ場を利用するゴルファー・会員の数は、減少を続けています。プレー料金の引き下げやドレスコードの緩和などで、女性や若者を中心とした新しい顧客層の拡大を狙っていますが、ゴルファー・会員の減少を食い止めるまでには至っていないのが現状です。

2020年代は団塊世代が完全に引退する時期であり、ゴルフ場経営者も高齢化が進んでいます。

高齢になり引退を考えているものの、身近にゴルフ場を継いでくれる人がおらず、経営状態に問題がないにも関わらず廃業しなければならないケースが今後増えてくると予想されます。

ゴルフ場業界は市場規模が減少していますが、サービスの充実や業界再編などによる立て直しも活発に行われています。

ゴルフ場業界の事業譲渡・M&Aを考える時は、今後の業界動向を予測しておくことが重要です。この章では、ゴルフ場業界の今後の動向予測として、以下の2点を解説します。

1. 新しいサービスを提供する必要がある
2. もっと利用しやすい環境を整備する必要がある

かつて、ゴルフ場業界の顧客は、接待などで利用する法人需要が大きな割合を占めていました。

しかし、近年は法人需要が減少し、従来どおりのサービスでは顧客の減少を食い止められなくなっています。ゴルフ場業界の顧客減少を食い止めるためには、新しいサービスを提供する必要があるといえるでしょう。

ゴルフ場の利用者減を食い止めるためには、女性と若者の利用者数を増やすことが重要です。女性や若者にとってゴルフ場は依然として敷居が高いため、もっと利用しやすい環境を整備する必要があります。

また、会社を定年した団塊世代のゴルファーに、引退後もゴルフ場を利用してもらえるようにする施策も大切です。健康維持やコミュニケーションの場として、引退世代が利用しやすい環境を作ることが重要だといえます。

ゴルフ場業界の事業譲渡・M&Aでは、バブル崩壊後の経営難で倒産したゴルフ場を投資ファンドが買い取って再生させる動きが活発でしたが、近年はひと段落しつつあります。

今後は中小ゴルフ場会社の事業承継目的での事業譲渡・M&Aが活発になる可能性があり、ゴルフ場業界は事業譲渡・M&Aの良いタイミングだといえます。

昨今では、ゴルフ場のM&A・売買における取引価格が急上昇している状況です。主な要因としては、ゴルフ場事業の拡大を積極的に推進する企業が増加傾向にあり、ゴルフ場のM&A関係者やゴルフ場の買収希望者も増えている点が挙げられます。

ゴルフ場の買収を検討する会社のなかには、ゴルフ場のM&A・売買における相場価格よりも遥かに高い買収価格を提示するケースもみられます。

グループ経営を行なっているゴルフ場よりも、単一のゴルフ場では経営が難しい傾向にあり、破綻するケースが目立っています。

そのため、単一のゴルフ場が売却を希望する事例も多く、他業種企業や外国系企業だけでなく、個人による買収も少なからずみられます。

近年のゴルフ場のM&A・売買では、大手による寡占化も目立っています。アコーディア・ゴルフとPGMホールディングスによる寡占化が目立っており、この2社がリーディングカンパニーとなり、ゴルフ場業界ではM&Aが活発化している状態です。

買収側は大手企業から個人まで多種多様であるため、ゴルフ場を売却したい場合は、幅広いネットワークで相手を探し、なるべく多くのメリットが見込める相手をみつけたうえで、適切な金額で譲渡を行うことが望ましいでしょう。

本章では、ゴルフ場を対象とする事業譲渡・株式譲渡・M&Aを行うメリットを、当事者それぞれの立場に分けて順番に取り上げます。

譲渡側のメリットとして代表的なものは、以下のとおりです。

• 後継者不在の問題を解消できる
• ゴルフ場を維持できる
• 負債を解消できる

M&Aによる譲渡では、後継者不在の問題を解決できるだけでなく、ゴルフ場で勤務する従業員の雇用を維持することも可能です。

譲受側のメリットとして代表的なものは、以下のとおりです。

• 拠点数を増やせる
• 会員数を増やせる
• スケールメリットを生かせる

拠点や会員だけでなく、備品をまとめて獲得できるため、コストを抑えながら収益性を高められる可能性があります。

ゴルフ場を事業譲渡・M&Aで高値で売却するためには、評価を高めておくことが重要です。ゴルフ場の評価を高めるポイントとしては、以下のような点が考えられます。

1. 都市部から近く立地条件がよいこと
2. 安定して利用する会員がいること

ゴルフ場は自然を利用して作られるため、都市部からのアクセスが不便になりやすいです。

逆にいうと、都市部から近い立地条件のゴルフ場は、買い手から見て高評価のポイントだといえます。

ゴルフ場業界は会員数・競技人口が減少しているにも関わらず、新しいゴルフ場が次々に作られています。これは、必然的に競争激化を促し、ゴルフ場同士で会員の奪い合いが起こる要因です。

そのため、ゴルフ場の事業譲渡・M&Aでは、安定して利用する会員がいることが、買い手の評価を高めるポイントです。

ゴルフ場業界は競技人口の減少および、それに伴い経営難が問題なので、新しいアマチュアゴルファーの育成を促し、競技人口を増やすことが重要です。さらに、経営難のゴルフ場を再建する手段として、外国投資会社を利用する動きも活発になってきています。

ゴルフ場業界では競技人口の減少に歯止めがかかりませんが、これはアマチュアゴルファーが育成できないことが大きな要因だといえます。

近年は間口を広げる努力をするゴルフ場が増えているものの、クラブなどの用具を一式揃えて、定期的に打ちっぱなしなどで練習してコースに出ることに対しては、他の趣味に比べて敷居が高い部分があります。

近年、経営危機に陥ったゴルフ場を海外の投資会社が買収して再生する事例が多いです。外国投資会社が保有する外資系ゴルフ場は日本のゴルフ場の一割に達するといわれており、今後も外資によるゴルフ場再生が活発に行われると予想されています。

弊社M&A総合研究所が取り扱っているゴルフ場のM&A案件例をご紹介します。

高級クラブとしてのコースをリーズナブルな価格でプレイ可能です。主要ターミナルからのアクセスが抜群です。

ホテル付ゴルフ場および、27コースのゴルフ場を有しています。北海道から九州まで複数の案件がございますので、希望のエリアの案件について知りたい場合はぜひお気軽にお問い合わせください。

金融機関等などからの借り入れはなく、健全な運営を継続しています。一方で直近期は営業損失を計上しており、純資産程度での譲渡を想定しています。

この章では、ゴルフ場の事業譲渡のポイントと、実際に行われたゴルフ場の事業譲渡事例を解説します。

ゴルフ場を事業譲渡する際に注目しておきたいのが、「競業避止義務」のルールです。競業避止義務とは、事業譲渡で売却した事業と同じ事業を営むことができなくなる規則で、通常は20年間の義務が課せられます。

事業譲渡後もゴルフ場経営を続けたい場合は、買い手側と競業避止義務の内容を交渉しておく必要があります。

2022年11月11日、小田急電鉄は、子会社の小田急スポーツサービスが運営する「小田急西富士ゴルフ倶楽部」を、アコーディア・ゴルフに譲渡することを発表しました。譲渡に先立ち、小田急スポーツサービスは同ゴルフ場の運営事業を新設分割し、新会社「株式会社西富士ゴルフ倶楽部」を設立しています。

その後、2023年2月28日に新会社の全株式をアコーディア・ゴルフに譲渡します。このゴルフ場は、宿泊施設を備えたリゾート型ゴルフ場で、1989年に開業しています。ゴルフ業界の事業環境の変化に対応し、継続的な高品質サービスの提供を目指して、全国で多くのゴルフ場を運営するアコーディア・ゴルフに譲渡する判断に至りました。

事業譲渡は株式譲渡と違って、事業の一部分のみを売却できるため、複数のゴルフ場を運営しているゴルフ場会社は、事業譲渡に適しているといえます。複数のゴルフ場のうち採算の取れない部分を事業譲渡で売却して、採算の取れるゴルフ場経営に集中するといった戦略を取ることも可能です。

ゴルフ場のM&A手法は事業譲渡がメインですが、他には株式譲渡の選択肢もあります。この章では、ゴルフ場の株式譲渡のポイントと、実際に行われたゴルフ場の株式譲渡事例を解説します。

ゴルフ場を株式譲渡する際の注目点としては、税負担の軽さが挙げられます。株主が個人の場合、税率は20.315%で固定となるため、事業譲渡の際に課せられる所得税や法人税に比べて安くなる場合があります。

2020年10月30日、平和の子会社であるパシフィックゴルフマネージメント（PGM）は、アコーディア・ネクストゴルフグループから4つのゴルフ場を取得する株式譲渡契約を締結しました。

この契約により、PGMは「石岡ゴルフ倶楽部」「南市原ゴルフクラブ」「武蔵ゴルフクラブ」「きみさらずゴルフリンクス」の4ゴルフ場を運営する新設会社の全株式を取得します。

PGMはゴルフ事業を展開し、ゴルフ場の経営管理や運営を行う企業で、本件M&Aにより2020年12月からこれらのゴルフ場の運営を開始する予定です。

株式譲渡は会社そのものを売却するので、譲渡した会社は譲受側企業の傘下に入ります。そのため、中小のゴルフ場会社が経営再建や事業拡大のために大手の傘下に入りたい場合は、株式譲渡が適しているといえます。

ゴルフ場では新しいコースを開発するには許認可が必要ですが、ゴルフ場事業を営むための許認可はありません。ただし、一般にゴルフ場はクラブハウスを併設するので、飲食業や浴場運営のための許認可が必要です。

ゴルフ場を事業譲渡で譲受する場合は、許認可を譲受企業側が新規に取得する必要があります。それに対して、株式譲渡では許認可も引き継げるので、譲受側が新たに取得する必要はありません。

他に必要になる手続きは、事業譲渡の場合は、従業員の再雇用の手続き・取締役会や株主総会の決議などがあります。また、株式譲渡の場合は、株主総会の決議や株主名簿の書き換えなどが必要です。

ゴルフ場のM&A時におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関にM&Aを相談する最大の利点は、企業の事業内容や財務状況を詳しく理解している点です。金融機関は、M&Aだけでなく他の選択肢も含めて柔軟に対応できるため、具体的かつ実用的なアドバイスを提供してくれます。

近年、多くの金融機関がM&A支援に注力し、専門チームを設置するケースが増えています。さらに、買収資金の調達や融資の相談も同時に行えるため、M&Aのプロセス全体において重要な役割を担っています。

ただし、地方銀行や信用金庫など中小企業向けの金融機関では、対応できるエリアや範囲が限られる場合があります。そのため、広範囲でのマッチングを希望する場合には、十分な支援が得られない可能性もあるため注意が必要です。

自社の状況や相談の目的に合わせて最適な相談先を選ぶことが、M&A成功への鍵となります。

「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業の事業承継を支援する公的機関で、無料で相談できることが大きな魅力です。

このセンターは全国47都道府県に設置され、各拠点が連携して情報を共有する体制を整えています。そのため、広範囲でのマッチングが可能で、適切な引継ぎ相手を見つけるための支援を受けられます。

しかし、センターの認知度はまだ十分とはいえず、多くの中小企業がその存在を知らないため、利用が進んでいないのが現状です。実際には、無料相談に加え、M&Aに詳しい専門家の紹介など、多岐にわたるサービスを提供しているものの、これらが十分に活用されていないケースもあります。

最近では、広報活動の強化によりセンターの認知度が向上し、相談件数も増加しています。事業承継に悩む中小企業にとって、このセンターは頼れる支援機関として今後さらに活用が期待されています。

M&A仲介会社は、譲渡企業と譲受企業をつなぎ、M&Aの全プロセスを支援する重要な役割を担っています。その支援内容は、初期のヒアリングから条件交渉、契約締結、最終手続き（クロージング）まで、多岐にわたります。仲介会社は双方のニーズを踏まえ、取引をスムーズに進めるための一貫したサポートを提供します。

また、特定の仲介会社では、譲渡側または譲受側の専属アドバイザー（FA）として、特定の立場から専門的な助言を行うこともあります。

仲介会社の大きな強みは、広範なネットワークを活用し、条件に合う適切な取引相手を見つけやすい点です。さらに、経験豊富なスタッフがM&Aの計画から実行、アフターフォローに至るまで包括的な支援を行い、業界情報や費用に関するアドバイスも受けられるのが特徴です。

ただし、費用面には注意が必要です。成功報酬として売却額の5〜10％が発生するのが一般的で、小規模な案件でも数百万円単位の費用がかかることがあります。また、相談料や着手金が必要な場合もあるため、契約内容をよく確認し、費用が妥当か慎重に判断することが重要です。

ゴルフ場業界は年々市場規模が縮小しているので、業界再編や生き残りのためのM&A・事業譲渡が今後も活発になると予想されます。ゴルフ場のM&A・事業譲渡に関する情報を理解しておくことが、経営者の方にとってますます重要となるでしょう。