2021年5月24日更新事業承継

個人事業主が事業承継するための手続きの流れを徹底解説!気になる税金や後継者探しの方法とは

個人事業主の場合、法人と違って一度廃業した後に開業手続きをしなければなりません。事業承継を検討している場合は、必要な手続きを事前によく確認しておくことが大切です。今回は個人事業主が事業承継する場合の手続きや流れ、税金や事業承継時のポイントなどを解説します。

目次
  1. 個人事業主が事業承継をする方法
  2. 個人事業主が事業承継する手続きの流れ
  3. 個人事業主が事業承継をするときに発生する税金
  4. 個人版事業承継税制による納税猶予を知っておこう
  5. 個人事業主がスムーズに事業承継するポイント
  6. 個人事業主の事業承継で注意する点
  7. 事業承継したいのに後継者が見つからない時は?
  8. 個人事業主の事業承継は専門家に相談しよう
  9. まとめ
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個人事業主が事業承継をする方法

個人事業主が事業承継をする方法

まずは、個人事業主が事業承継を検討したときに選べる方法についてお話していきます。

個人事業主が事業承継をする方法は、大きく分けて3つです。

  1. 贈与
  2. 相続
  3. M&Aなどで売却

息子などの親族へ事業承継する場合は、贈与か相続となるのが一般的です。

もし、後継者となる存在が見つからないのであればM&Aなどを活用して事業を売却することもできます。

それぞれの特徴について、詳しく確認していきましょう。

方法1.贈与

個人事業主の事業承継で多い方法が「贈与」です。贈与は、親族や他人に対して事業を無償で譲り渡すことになります。

例えば、飲食店を個人で経営していたとしましょう。贈与による事業承継の場合は、自身が持っている店の所有権から土地代、調理器具に至るまですべて無償で渡すことになります。

ですから、贈与を選んだときには経営者自身に利益が出ることはありません。贈与であれば、後継者に資金がなくても贈与税さえ支払えば引き継ぎできることから選びやすいと言えるでしょう。

方法2.相続

贈与の次に選ばれている方法が「相続」です。相続は、事業主が死亡してしまったなどによって引き継ぎをする場合に用いられます。

この場合、相続するのは経営者の保有していた所有権や土地の権利、経営権などです。相続による事業承継は遺言書がない場合、遺産分割協議によって相続人同士の話し合いで決めることになります。

そのため、現在の事業主の希望に添わないこともあるため、生前から誰についでもらうつもりなのかを親族に話しておき、遺言書も残しておくようにしましょう。

方法3.M&Aなどで売却

最後の方法が「M&Aによる会社・事業の売買」です。例えば、親族の中に後継者として適任者がいない・従業員に後継者となり得る人材がいないというときにはM&Aの活用を検討します。

多くの場合には、後継者がいないことで廃業を選ぶかもしれません。ですが、現在では市場規模の拡大や競争の激化によって他企業を買収する動きが強まっているのです。

そこで、廃業を選ぶ前に会社・事業を売買できるM&Aを選ぶことによる他企業への承継を選択肢として選ぶとどうなるでしょうか。

M&Aを選べば、後継者を選出する必要もありませんし、売買ですから売却益を手に入れることができます。今後の生活を考えることもできるのです。

廃業すると処分コストなどで赤字になることもあり得ますから、まずは検討してみると良いでしょう。

【関連】M&Aとは?M&Aの意味から手続きまでをわかりやすく解説!

個人事業主が事業承継する手続きの流れ

個人事業主が事業承継する手続きの流れ

では、個人事業主が『親族内承継・親族外承継』による事業承継を検討したときにはどのような流れで進むのかを見ていきましょう。

法人が行う事業承継との違いは、廃業後に開業手続きが必要となる点です。

流れについて知っておくことで手続きの不備を減らせるようになるはずですから、さっそく見てみてください。

  1. 廃業届の提出
  2. 青色申告の取りやめ届出書の提出
  3. 事業廃止届出書の提出
  4. 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書の提出
  5. 開業届の提出
  6. 青色申告承認申請書の提出
  7. 消費税課税事業者選択届出書の提出
  8. 許認可の再申請
  9. 資産の引き継ぎ
  10. 従業員・取引先の引き継ぎ

流れにそって、具体的な手続きについて確認していきましょう。

流れ1.廃業届の提出

まずは、引き継ぎのために現在の事業主が廃業届を事業所を管轄している税務署へ提出する必要があります。

廃業届は、事業廃止から1ヶ月以内に行わなければなりません。

廃業届とは、「個人事業の開業・廃業等届出書」のことです。税務署でも記入できますが、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。

手数料は無料です。忘れないうちに提出してしまいましょう。

流れ2.青色申告の取りやめ届出書の提出

青色申告をしている場合には、廃業届と一緒に青色申告の取りやめ届出書を提出します。

提出する場所は税務署ですから、同時に記入して進めていくのがおすすめです。

廃業届と同様に税務署で記入しても良いですが、国税庁のホームページからダウンロードして記入してから持っていくということもできます。

こちらも手数料は無料ですので、忘れないように届け出しておきましょう。

流れ3.事業廃止届出書の提出

消費税の課税事業者だった場合、事業廃止届出書も提出しなければなりません。

同様に、管轄の税務署へ提出しましょう。

消費税の課税事業主とは、消費税を納付する義務がある法人や個人事業主のことです。基本的には、事業を営む法人、個人は消費税を納付する義務がありますが、免除されるケースもあります。

以下に当てはまらない場合は課税事業主となり、事業廃止届出書の提出が必須です。

  • その年の前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合
  • その年の前年の1月1日から6月30日までの6カ月間の課税売上高が1,000万円以下の場合

事業廃止届出書も、国税庁のホームページからダウンロードできます。

手数料は無料で、提出期限はありませんが他の書類と一緒に提出してしまいましょう。

流れ4.所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書の提出

廃業によって予定納税を減額したいときは、所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書の提出が必要です。

提出は管轄の税務署で行いましょう。

この所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請は、廃業、休業又は業況不振等の理由で以下のような場合に申請することができます。

  1. その年6月30日の現況による申告納税見積額が予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額に満たないと見込まれる場合
  2. その年10月31日の現況による申告納税見積額が既に受けている減額の承認に係る申告納税見積額に満たないと見込まれる場合

このように廃業によって収入見込みが減るのであれば、申請しておくと良いでしょう。

書類は国税庁のホームページからダウンロード可能です。申請書に、損益計算書など減額の根拠となる書類を添付して提出します

この申請には期限が決まっています。第1期分と第2期分の減額申請はその年の7月1日~7月15日まで、第2期分のみの減額申請はその年の11月1日~11月15日までに提出しましょう。

現在の事業主が行う書類上の手続きは以上までとなります。続いて後継者が行う書類の手続きを確認していきましょう。

流れ5.開業届の提出

つづいて、後継者が開業届を提出します。

現在の事業を引き継ぐのではなく、新しく開業手続きをしなければならないので注意しましょう。

開業届は事業所を管轄する税務署で行います。税務署で記入できますが、事前に「個人事業の開業・廃業等届出書」を国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。

事業開始から1ヶ月以内に届出を提出しましょう。手数料は無料です。

屋号を引き継ぐのであれば

屋号を引き継ぐのであれば、開業届に屋号を記入しましょう。ただし、商号登記されているのであれば、事前に法務局で名義変更の手続きが必要です。

流れ6.青色申告承認申請書の提出

青色申告をする場合は、開業届と一緒に青色申告承認申請書も管轄内の税務署へ提出しましょう。

事業開始から2ヶ月後まででOKですが、忘れないよう同時に提出することをおすすめします。

また、相続によって事業承継をする場合は相続日(被相続人の死亡日)によって提出期限が変わるので注意しましょう。

  • 相続日が1月1日~8月31日のとき・・相続日から4ヶ月以内
  • 相続日が9月1日~10月31日のとき・・相続年の12月31日
  • 相続日が11月1日~12月31日のとき・・翌年の2月15日

忘れないよう、事業承継を決めたら早めに開業届と同時に提出しましょう。開業届同様、税務署で記入できますが、国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。

提出後、しばらくすると税務署から承認可否の通知が送られてきます

流れ7.消費税課税事業者選択届出書の提出

消費税課税事業者選択届出書は、消費財の課税事業者が免税事業者になることを選択する場合の届出書です。

事業承継をして、年間の課税売上が1,000万円以下になる場合は提出しましょう。年間の課税売上が1,000万円を超える時は納税の義務が発生します。

消費税課税事業者選択届出書は、国税庁のホームページからダウンロード可能です。

適用を受けようとする課税期間の前日までに提出しましょう。

流れ8.許認可の再申請

個人事業主の場合、事業承継で許認可が引き継がれないので改めて申請しましょう。

許認可とは、事業を行うために警察署や都道府県など行政機関から取得しなければならない許可のことです。

例えば、飲食業、旅館業、介護事業などの業種で許認可が必要となります。申請先は警察署、保健所、自治体など業種によって異なります。

許認可によって手続きに時間がかかる場合もあるので早めに対処しましょう。

流れ9.資産の引き継ぎ

店舗や設備等の資産を引き継ぐ場合には、個別で手続きが必要となります。

その際、有償か無償かによって要する手続きが異なるので注意しましょう。

①無償譲渡

自身のご子息や身近な従業員に事業承継する際には、資産を無償で譲渡するケースが殆どです。

無償で贈与すると、前述した通り贈与税が発生することを覚えておきましょう。110万円までなら非課税ですが、それ以上の部分に関しては累進課税によって課税されます。

必要に応じて、税理士等の専門家に相談すると安心です。

②有償譲渡(売却)

M&Aなどの売却によって第三者に事業承継する場合、事業を相手に売却する形で手続きを実施します。このとき課税される税金や手続きが複雑になるので注意しましょう。

事前に税理士や仲介会社等の専門家に相談し、売却を実行するか検討することをおすすめします。

流れ10.従業員・取引先の引き継ぎ

最後に従業員・取引先の引き継ぎを行いましょう。

特に、取引先の引き継ぎは個人事業主にとってとても大切な作業です。必ず先代の事業主と後継者の事業主の二人揃って取引先へ出向き、事業承継の経緯を話しましょう。

①従業員の引き継ぎ

従業員をそのまま引き継ぐ場合には、雇用契約締結等の手続きが必要です。

具体的には、労働条件や雇用契約に関する書類が必要となります。さらに、雇用保険や労災保険等への加入手続きをしなくてはいけません。

②取引先の引き継ぎ

取引先の引き継ぎに関しては、個別に挨拶に回ると印象が良いのでおすすめです。

特に良好な関係を継続するために、関係者には前もって後継者を紹介しておきましょう

以上が個人事業主が事業承継するときの手順です。

もし、親族や従業員に事業承継するのではないのであればM&Aを検討してみてください。第三者である企業に会社・事業を売買することができます。

詳しくは以下の記事で解説しておりますので、こちらを参考にしましょう。

【関連】M&Aによる売却とは?売却先企業の選定・売却案件の探し方

個人事業主が事業承継をするときに発生する税金

個人事業主が事業承継をするときに発生する税金

ここまで事業承継の方法と代表的な流れをお話してきました。

次に見逃せないのが税金の関係です。事業承継をすると必ず税金が発生します。

しかし、税金の種類は事業承継の方法によって異なるので事前に確認しておきましょう。

事業承継で発生する可能性のある税金は以下の通りです。

  1. 贈与税
  2. 相続税
  3. 所得税
  4. 消費税

どういった場合にどの税金が発生するのか、しっかりと確認しておきましょう。

税金1.贈与税

贈与税は、贈与で事業承継した時に発生する税金です。

贈与を受けた後継者に納税の義務が課されます。課税方法は暦年課税と相続時精算課税の2種類があり、どちらかの方法で納税することになります。

順番にどのように計算するのか確認しましょう。

①暦年課税

暦年課税は、1月~12月までの1年間に譲り受けた贈与に対して課税されます。

年間110万円以内であれば非課税です。110万円を超えた分に対して贈与税が発生します。

課税分が3,000万円を超えると税率は55%と非常に高くなってしまいます。数年かけて贈与していくと節税に繋がるので計画的に事業用資産などの譲渡をしていきましょう。

②相続時精算課税

一方、相続時精算課税とは、贈与時に軽減された贈与税を支払い、相続時にすべての財産に対して課税する税金制度です。

60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への贈与時にのみ選択できます。

贈与財産と相続財産と合計で2,500万円までなら非課税となりますが、2,500万円を超えると相続税が発生するのです。税率は一律で20%となっています。

相続時精算課税は税率が低くなることもありますが、親族内でしか使えない制度なので注意しましょう。

税金2.相続税

相続税は、相続で事業承継した場合に発生する税金です。納税者は相続した後継者となります。

親族からの相続でなくても、遺産を受け取ると納税の義務が発生します。

控除額は法定相続人の人数によって変動するので、必ず税理士に相談しましょう。

税金3.所得税

事業承継を売却によって行った場合、所得税が発生します。所得税は売却する現在の事業主が支払う税金です。

所得税は、売却価格から経費を差し引いた譲渡所得に対して課税されます。売却した翌年の確定申告と同時に納税を行うことになるのです。

譲渡所得以外にも、廃業する前までに得た収入も一緒に確定申告・納税しなければなりません。事業承継後の売り上げは後継者が所得税を申告することになります。

税金4.消費税

事業承継に関する消費税は、少し複雑です。

そもそも、免税事業者である場合は消費税納税の義務はありません

しかし、課税事業者であれば消費税が発生します。消費税の扱いは、生前の事業承継か相続による事業承継かによって異なるのでそれぞれみていきましょう。

①生前の事業承継の場合

生前に事業承継が行われた場合、現在の事業主と後継者にはそれぞれ以下のように消費税が課されます

  • 現在の事業主・・廃業までの課税売上高に対して消費税納税
  • 後継者・・1年目なので免税事業者となり、納税義務なし

ただし、この年に1,000万円以上の売り上げがある場合は2年後に消費税の納税義務が後継者に課せられます

②相続による事業承継の場合

相続による事業承継は、課税売上高も同時に引き継ぐことになります。

そのため、代表交代前課税売上高と交代後の課税売上高を合わせた額に対して消費税を納税しなければなりません。

たとえば、1月〜6月までの間に700万円を売り上げていたとしましょう。しかし、6月に事業主が死亡してしまい、後継者が7月〜12月に500万円売り上げたら年間1,200万円の売上高という認識をされるのです。

個人版事業承継税制による納税猶予を知っておこう

個人版事業承継税制による納税猶予を知っておこう

税金が必要となることについてはわかってもらえたかと思います。

「税金がかかるなら承継よりも廃業を選ぶ方が良いのでは・・・」と考える人もいるでしょう。

そんなときに知っておきたいのが、2019年に税制改正が行われて実施された個人版事業承継税制です。

個人版事業承継税制によって、事業承継が円滑に行われるよう増税猶予が設けられるようになりました。

ただし、この個人版事業承継税制が適用されるのは、相続税と贈与税のみです。どのような制度なのか確認していきましょう。

個人版事業承継税制の要件

個人版事業承継税制を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります

  • 後継者の年齢・・受贈者が贈与時において18歳以上(2022年3月31日までの贈与については20歳以上)である
  • 担保の提供・・猶予される税額に見合う担保の提供が必要である
  • 対象期間・・2019年1月1日から2028年12月31日までの相続や贈与

要件を満たしていなければ受けることができないため確認しておきましょう。

個人版事業承継税制の対象資産

個人版事業承継税制を受けるための対象資産は以下の通りです。

  • 土地のうち、400m²までの部分
  • 建物のうち、800m²までの部分
  • 固定資産税の課税対象になっている減価償却資産
  • 自動車税や軽自動車税が課されている自動車

いずれも、青色申告書の貸借対照表に記載のある資産でなければなりません。また、小規模宅地等の特例との併用はできませんので注意しましょう。

このように、個人版事業承継税制は条件が細かく設定されています。安易に自己判断せず、かならず税理士へ相談して適切な節税方法を提案してもらいましょう。

事業承継税制について詳しく知りたい方は以下の記事でまとめていますので、こちらもご覧ください。

【関連】事業承継税制とは?事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説

個人事業主がスムーズに事業承継するポイント

個人事業主がスムーズに事業承継するポイント

事業承継税制の活用で事業承継をしやすくなったことはお話しました。

しかし、それだけでは事業承継を安心して行える基盤ができたとは言えません。

個人事業主がスムーズに事業承継をするためには以下の3つのポイントを押さえておく必要があります。

  1. 早めに準備をしておく
  2. 節税対策を行う
  3. 取引先や顧客に引き継ぎを行う

詳しく確認し、円滑に事業承継を行いましょう。

ポイント1.早めに準備をしておく

個人事業主の事業承継は、早めに準備しておきましょう。

なぜなら、事業承継をすることを決めてすぐに実行できるわけではないからです。準備から完了まで数年かかると考えておきましょう。

まず、後継者探しからです。親族などに後継者がいればスムーズに事業承継できますが、いない場合は様々な人へ声かけを行ったり売却先を決めたりしなければなりません。

後継者が決まったら、後継者が経営者となるまで業務の引き継ぎやサポートに時間がかかります。

まだまだ引退するつもりはなくても、万が一のことがあります。急に病気になったり体調を崩したりすることも考えられるのです。そのとき、「経営者がいないから」と廃業してしまうのはもったいないことです。

将来も事業を続けてもらうためにも早い段階から後継者を探し、後継者育成を開始しましょう。

ポイント2.節税対策を行う

個人の事業承継をするときには、しっかりと節税対策を行いましょう。

贈与・相続の方法で事業承継をする時、後継者には大きな納税義務が発生します。不動産の譲渡がある場合は、固定資産税や登録免許税なども発生するのです。

後継者が決まり次第、どのように財産を譲渡していくべきかを税制の面からも考えていきましょう。贈与税、相続税の場合は、個人版事業承継税制を活用するべきです。また、暦年課税を使って少しずつ譲渡していく手段もあります。

どのような節税方法が最適であるかは、事業の状況や事業承継までに残された時間などによって変わります。「この税法が使える!」と思っていても要件を満たしていなければ、使えないことも多いです。

そこで、頼りになるのは税理士です。事業の現状をしっかりと伝えることで最適な節税方法を教えてくれます。申告も間違いなく行ってくれるので、後継者にとっても頼もしい存在となるでしょう。

そのため、事業承継を考え始めた段階から税理士に相談し、早い段階から節税対策を行っていきましょう。

ポイント3.取引先や顧客に引き継ぎを行う

スムーズに事業承継するためには、取引先や顧客へ事前に説明をしておくことが大切です。

個人事業主の場合、事業主への信頼から契約が成り立っていることが多々あります。取引先や顧客とは良好な関係であるはずです。

しかし、急に事業主が変わってしまうことで取引先や顧客の信頼を失ってしまうかもしれません。「前の事業主じゃないなら、この仕事は違う人に回す」と言われる可能性だってあるのです。

このような状況になると、売り上げは大きく下がってしまう恐れがあります。事業承継をする前から取引先や顧客には事業承継する旨をつたえ、後継者と一緒に挨拶に行くようにしましょう。

そうすることで、取引先や顧客との信頼関係を良好に保つことができます。

個人事業主の事業承継で注意する点

個人事業主の事業承継で注意する点

前項では、スムーズに事業承継をするためのポイントについてお話しました。

スムーズに進めるためにはやり直しを少なくすることも大切です。ですから、失敗しないためにも注意すべき点について確認しておくと良いでしょう。

個人事業主の事業承継で知っておきたい注意点は以下の3つです。

  1. 債務も引き継がれる
  2. 手続きが煩雑になる
  3. 雇用契約は結び直しになる

事前に3つの注意点について理解しておき、トラブルを未然に防ぎましょう。

注意点1.債務も引き継がれる

事業承継をすると、事業の持つ債務も引き継がれることになります。経営者が変わったからといって、債務がなくなるわけではありません。

現在の事業主はできるだけ債務を無くした状態で事業承継できるように努めましょう。どうしても残ってしまう場合は、後継者に対していくらくらいの債務が残っているのか、金融機関にはどのような返済をしていくのかを伝えておきましょう。

後継者が1番不安に思っているのは資金繰りです。マイナスのことだからと言って黙っていると、知った時にどのように対処すれば良いのかが分かりません。あらかじめ話をしておき、どうするべきかを一緒に考えていきましょう。

注意点2.手続きが煩雑になる

個人事業主の事業承継は手続きすることが多く、煩雑になりやすいです。通常の生前譲渡であれば、一度廃業届を出し、そのあと開業届を出して屋号を引き継ぐといったことをしなければなりません。

税務署へ提出する書類も多く、場合によって必要な書類も異なるため出し忘れが出てくる可能性もあるでしょう。廃業・開業以外にも、不動産を引き継ぐ場合には法務局へ書類を提出したり、税金の申告もしなければなりません。

当然、ほとんどの手続きを後継者がしなければならないのですが、引き継ぐことが多いと手続きは煩雑になりやすいです。現在の事業主も一緒になって書類の準備を進めていきましょう。

また、税金や不動産の名義変更をするときは専門家を頼ることをおすすめします。

税金関係なら税理士、不動産関係は司法書士に依頼すると間違いありません。後継者が事業経営に集中できるよう、専門家の力を頼りましょう。

注意点3.雇用契約は結び直しになる

個人事業主が事業承継をした場合、雇用契約は引き継ぎされません。そのため、従業員を雇っているなら、改めて従業員と後継者で雇用契約をする必要があります

雇用契約を作り直し、雇用保険や税金関係も新しく手続きしなければなりません。そのため、事業に関係することだけを引き継ぐのではなく、雇用関係もしっかりと引き継いであげましょう。

基本的には、今までと同じ条件で雇用契約を結ぶことになります。しかし、事業主が変わることを機に、仕事を辞めたいという従業員が出てくる可能性も考えられます。

このような自体に陥らないよう、早い段階から後継者として事業に馴染み、従業員とも信頼関係を構築できる環境を作ってあげましょう。

事業承継したいのに後継者が見つからない時は?

事業承継したいのに後継者が見つからない時は?

近年、個人事業主や中小企業の後継者不足が問題視されています

少し昔だと親の家業は息子が継ぐものでした。しかし、現在は選択肢がたくさんあり、親も無理に子供に継がせないでおこうと考えるようになってきています。

もし、事業承継をしたいのに後継者が見つからない場合、どのような選択肢があるのでしょうか。選択肢は2つです。

  1. 廃業
  2. 売却(M&A)

それぞれの選択肢を選んだ時、どのような流れとなるのか確認しましょう。

選択肢1.廃業

後継者が見つからないと、そのまま廃業となってしまいます。残念ですが、引き継ぐ人がいないので自動的に事業は立ち行かなくなるのです。

廃業をする場合、取引先や顧客にも事前に告知を行い、今までお世話になった感謝の気持ちを伝えましょう。従業員を雇っている場合は路頭に迷わせてしまうことになりますが、仕方ありません。

個人事業といってもたくさんの職種があります。ライターやデザイナーなど、個人で行っている場合は廃業のための費用はほとんど発生しません。しかし、飲食店などの場合はやっかいです。

飲食店などの商業物件は、閉店する時に現場復帰をする必要があります。建物賃貸借契約では通常、賃貸借契約終了後に、賃借人は物件を原状に回復して明け渡さならければならないのです。

物件の広さや状況によりますが、工事費は5万円〜10万円ほどかかるでしょう。さらに空家賃もかかります。一般的に商業物件は、6~10ヶ月前解約告知を結んでいることが多いです。そのため、家賃の半年分程度を賃貸人に支払う必要があります。

このように、業種によっては廃業に伴って多額の費用が必要となるケースがあります。そもそも、自分が今までやってきた事業を無くしてしまうのは悲しいものです。できるだけ事業を続けて欲しいと考えますよね。

「このまま廃業するのはいやだ」と思うのであれば、売却という選択肢も考えてみましょう。

※後継者不足について知りたい人は以下の記事でも触れていますので、参考にしてみてください。

【関連】中小企業の後継者不足問題は深刻化している?解決策を紹介

選択肢2.売却(M&A)

今まで続けてきた事業を第三者に売却することで、事業承継をすることができます。売却をすれば、事業を譲り渡す対価として現金を受け取ることのできるといったメリットもあります。ただ廃業するのではなく、事業継続を行うと同時にまとまった資金が手に入るは嬉しいことです。

ただし、売却をするのであれば自分だけで行わずに、かならず専門家へ相談しましょう。事業の売買のプロであるM&A仲介会社に相談すれば、売却先や条件交渉、契約書の作成などのサポートを任せることができます。

また、思わぬトラブルを回避したり、自分は本業に集中できるといったメリットもあります。次の章で事業承継の専門家について確認しましょう。

※M&Aって何?と疑問に感じたときには以下の記事が参考になります。

【関連】M&Aとは?M&Aの意味から手続きまでをわかりやすく解説!

個人事業主の事業承継は専門家に相談しよう

個人事業主の事業承継は専門家に相談しよう

事業承継を考えているのであれば、早めに専門家へ相談しましょう。個人事業主の事業承継は書類の手続きが多く、専門家に頼った方がスムーズに後継者へバトンタッチすることができます。

特に、後継者がまだ見つかっていない場合は、廃業せざるを得ない状況になってしまいかねないため、事業を買ってくれる人や会社を見つけるという選択も検討すべきでしょう。

後継者不在でお悩みの場合やM&Aによる事業承継をお考えの場合は、ぜひ一度M&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所では、M&A・事業承継の支援実績豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っております。

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まとめ

まとめ

個人事業主の場合、法人と違って一度廃業した後に開業手続きをしなければなりません。煩雑な手続きになりやすいので、早い段階で専門家に相談するようにしましょう。

もし、事業承継先が決まっていないのであれば、M&A総合研究所などのM&A仲介会社に相談することをおすすめします。最適な売却先を選んだり、交渉や契約書作成のサポートを任せることができるからです。

後継者が決まり次第、事業承継の専門家に相談しながらスムーズに後継者へバトンタッチしましょう。

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