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2019年12月27日更新
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シンガポールのM&Aとは?事例や成功のポイント、M&A件数を解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

シンガポールでM&Aを行うメリットは非常に大きいです。一方で、外資規制の対象となる業種の把握や、日本のM&Aの手法との違いなど、専門的な知識も必要です。シンガポールでM&Aを成功に導くためには、専門家のサポートをしっかり受け、M&Aを進めていくことが大切です。

目次
  1. シンガポールのM&A市場の規模
  2. シンガポールのM&A件数・金額が伸び続ける理由
  3. シンガポールでM&Aするメリット
  4. シンガポールでM&Aを成功させるには
  5. シンガポールにおけるM&Aの代表的な手法を知っておく
  6. シンガポールでのM&A専門家のサポートを受けること
  7. まとめ

シンガポールのM&A市場の規模

シンガポールのM&A市場は、過去数年間で着実に成長しています。
M&Aにおけるグローバルシンクタンクであるimaa(The Institute for Mergers, Acquisitions and Alliances)の統計によると、2013年から2017年までのシンガポールのM&A件数と金額は、次のように推移しています(1985年からの統計のうち、2013年から2017年の数値を参照しています)。

  M&A件数
金額(10億USドル)
2013年
675 $36.29
2014年
855 $73.9
2015年
778 $65.48
2016年
859 $62.55
2017年
960 $79.54

M&A件数と金額のいずれも、減少と増加を繰り返す傾向が見られます。一方で、5年間全体で考えると、件数・金額ともに順調に推移していると言えます。
特に2013年から2014年にかけての増加が目立つほか、2017年は過去5年間の中で件数・金額ともに最高値となりました。
2017年の金額は約795億ドルで、日本円で考えると約8兆円規模となります。また、2017年のM&A件数は960件となり、2013年から約1.4倍増加しています。

シンガポールのM&A件数・金額が伸び続ける理由

長期的に見ると、シンガポールのM&Aの件数と金額は着実に増加しています。
件数・金額ともに減少と増加を繰り返してはいるものの、M&A市場は着実に成長しています。シンガポールのM&A件数と金額がここまで伸びた理由について、整理してみましょう。

外資規制は一部の業種のみ

シンガポールでは、一部の業種だけに外資規制が行われます。これはシンガポールの大きな特徴でもあります。
多くの国は、外国資本が国内事業に参入する際に、外国資本の出資比率などの一定の制限を定めています。しかし、シンガポールでは、このような規制を包括的に定めた法令がありません。
公益事業などの一定の業種においては、それぞれ個別の法令で許認可の取得などの要件が定められていますが、あくまで業種ごとの個別の規定となります。包括的な外資規制を定めているわけではありません。
例えば、外国資本の出資比率について考えてみましょう。この出資比率を包括的に定めた規定がないということは、一定の業種を除き、外国資本が全額出資することもできるのです。
国家の安全にかかわる特定の部門を除いて、シンガポールでは原則として外国資本による全額出資が認められています。また、一定の業種における出資比率の制限以外は、外国資本による資本金についての制限もありません。
これらの特徴は、シンガポールが外資の国内参入を積極的に奨励していることを意味します。そのため、外国企業を含めたM&Aも活発化しやすくなります。
シンガポールは、海外からの投資を積極的に受け入れたことで、飛躍的な成長を遂げた国でもあります。このような背景も、M&Aの増加の原因と言えるでしょう。

節税効果がある

シンガポールの法人税率は17%で、日本より低い税率となっています。また、優遇税制の適用によってさらに税率が下がる場合もあります。このような点も、シンガポールへの進出のメリットとなります。
そして、M&Aの活発化にもつながります。
特に近年は、海外進出のためにM&Aを活用する事例が増えています。そこで、税金面も含めて海外進出しやすいエリアを選ぶ際に、シンガポールを選択する企業は多いでしょう。このことも、シンガポールでM&Aが伸びている原因の一つと言えます。

アジアにおけるシンガポールの位置づけ

アジアにおけるシンガポールの強みも、M&A加速の原因になっています。
シンガポールの強みとしては、金融システムの安定、インフラ整備の充実、優遇税制、地理的な優位性などが挙げられます。いずれもビジネス的なメリットにつながるため、シンガポールへの進出を考える企業が多くなります。
さらに、一部の業種のみに外資規制が行われることも含めると、より進出しやすい環境が整っています。
他のアジア諸国と比較して、シンガポールはより良いビジネス環境が整っています。そのため、アジアの統括拠点をシンガポールに置く企業は多いです。そして、海外拠点の確保のためにM&Aを検討する企業も増加しています。
このような状況を踏まえると、アジア拠点として魅力が多いことも、シンガポールにおけるM&Aの増加の原因と考えられます。

シンガポールでM&Aするメリット

ここまでご紹介したポイントも踏まえ、シンガポールでM&Aを行うメリットについて詳しく整理しておきましょう。

外資規制におけるメリット

一部の業種を除いて外資規制がないということは、よりスムーズな海外進出が可能となります。例えば、外国資本の出資比率の定めがない場合、外国資本が全額出資して事業を開始することもできます。
出資比率を考慮することなく、いきなり外資だけで事業を開始できるというのは、海外でビジネスを開始するうえで大きなメリットです。スピード感のある海外展開につながるからです。
例えば日本では、外国資本が全額出資して参入することは基本的にできません。他の多くの国も、包括的な外資規制が設けられているケースが多いです。これには様々な理由がありますが、海外進出を考える企業としては、参入に時間と手間がかかるというデメリットがあります。
一方で、このような包括的な規制がないシンガポールは、スピードを重視して海外に進出したい企業にとって、大きな魅力があります。このことはM&Aも同じです。短期間でアジア拠点を構築したい場合など、シンガポールのM&Aは大きなメリットがあるのです。

法人税率におけるメリット

先ほども述べたように、シンガポールの法人税率は17%です。この税率は、他のアジア諸国と比較すると低い水準となります。また、優遇税制の適用によっては、税率がさらに下がる場合もあります。
そのため、M&Aによるアジア拠点の構築を検討する際に、シンガポールは税金面でもメリットがあるのです。
M&Aでは、税金対策を検討しておくことも重要なポイントです。
M&Aの手法によっては法人税がかかりますが、シンガポールは法人税率の低さが一つの魅力であり、M&Aを行うメリットは高いです。

シンガポールでM&Aを成功させるには

シンガポールでM&Aを成功に導くには、外資規制の対象となる業種や代表的なM&Aの手法など、重要なポイントを知っておく必要があります。以下、詳しく見ていきましょう。

業種に対する外資規制について確認しておく

先ほども述べたように、シンガポールには包括的な外資規制を定めた法令はありません。ただし、業種によっては個別の法令によって一定の要件が定められています。
シンガポールでM&Aを行う場合、これらの業種を確認し、資本規制や許認可などの要件を事前にチェックしておく必要があります。以下、規制対象となる業種についてご紹介します。

メディア(放送事業、新聞社)

放送や新聞などのメディア事業は、外資規制が行われています。外資の出資割合や外国人の取締役就任についての規制となり、他の国と同様の外資規制となっています。
また、一定の割合以上の株式を取得する場合、国内・外資を問わず、事前承認が必要です。例えば放送事業の場合、外資による出資制限として、外資による株式および議決権の49%超の保有の際に、事前承認が必要となります。
また、出資規制として、5%以上の議決権株式の取得や保有、処分を行う場合など、事前承認を受けなくてはなりません。このように、株式の取得や保有において、それぞれ制限・規制の内容が定められています。
そのほか、放送事業と新聞社でそれぞれ必要なライセンスなども規定されています。

インフラ(電気事業、ガス事業)

電気・ガス事業は、法律上、外国資本の参入は制限されていません。
以前は、電力の小売市場は1社が独占しているという状態でした。そのため、外国資本の新規参入は難しい状況でしたが、近年は市場の自由化が進んでいます。
なお、一定の議決権の取得などにおいて、出資規制が設けられています。例えば電気事業の場合、5%超12%未満の持分保有者を監督官庁に届け出る必要があるなど、それぞれ規制が設けられています。
また、必要となるライセンスなども規定されています。

製造業

「ビール・スタウトビール」「葉巻、たばこ」「延伸鋼製品」「ガム」「マッチ」の製造は、事前に許可を取得する必要があります。

光ディスク

CD、CD-ROM、DVD、DVD-ROM、VCDを販売目的で製造する場合、ライセンスの取得が必要です。

金融

議決権株式の取得などにおける出資規制、最低資本規制、必要なライセンス、出店規制などが定められています。例えば出資規制では、シンガポールの地場銀行に対して5%以上の議決権株式の取得や保有、処分をする際など、事前承認が必要とされています。

法律サービス

必要となるライセンス、シンガポールの弁護士が保有しなければならない議決権の割合、その他の要件が規定されています。

事前にライセンス取得が必要な業種

国内・外資を問わず、事前に一定のライセンス取得が必要な業種があります。
その主な業種は、小売業、飲食業、不動産業、建設業、運輸・物流業、製造業、電気通信業、教育産業、医療・介護サービス、その他サービス業とされています。

シンガポールにおけるM&Aの代表的な手法を知っておく

次に、シンガポールのM&Aの代表的な手法な何か、チェックしておきましょう。

株式取得

株式譲渡や新株引受などは、日本における手法とほぼ同じように考えることができます。

事業譲渡

特定の事業のみを譲渡できることや、資産などの個別の移転手続きが必要になるなど、こちらも日本における事業譲渡とほぼ同じ仕組みです。

合併

こちらも日本と同様、吸収合併や新設合併の仕組みがあります。一方で、合併と関連し、会社分割や株式移転、株式交換の仕組みはありません。
日本の会社法上では、組織再編として、合併(吸収合併・新設合併)、会社分割(吸収分割・新設分割)、株式移転、株式交換があります。このうち、シンガポールの会社法上では合併のみが存在することに注意する必要があります。
一方で、会社分割と株式移転については、事業譲渡や後述するSOAという仕組みにより、同じ効果を発生させることが可能です。

SOA

SOA(スキーム・オブ・アレンジメント/Scheme of Arrangement)は、主に資本再編・組織再編や、債権者・出資者との利害調整のために行われる手法です。日本の会社法にはない仕組みとなるので、以下、詳しく整理しておきます。
SOAは、会社が組織再編などのスキームを債権者や株主に提案し、その承認(議決権総数の4分の3)および裁判所の承認が得られた場合に、そのスキームが債権者や株主に対して法的拘束力を持つという仕組みです。
これは、一定の債権者や株主の承認、そして裁判所の承認さえ得ることができれば、特定の債権者や株主の反対があったとしても、組織再編などを行うことができるという意味です。
SOAは、裁判所が関与する手続きであることに特徴があります。
例えば、当事者の合意や承認を得ることが困難な場合に、裁判所の承認も含めた手続きを行うことにより、組織再編などを実現することが可能です。複雑な交渉が必要なケースや、交渉が難航した場合など、SOAを行うメリットがあります。
SOAは、M&Aの手法としても活用されます。また、先ほども述べたように、日本の会社法で言うところの会社分割(吸収分割・新設分割)と株式移転について、SOAによって同じ効果を発生させることもできます。

シンガポールでのM&A専門家のサポートを受けること

シンガポールでのM&Aは、外資規制の対象となる業種や、SOAも含めた手法など、それぞれ専門的な知識が求められます。
外資規制の対象業種は、事前にきちんと把握しなければなりません。また、M&Aの手法は日本とほぼ同じように考えることができますが、SOAなどの日本にはない仕組みが登場することもあります。
そして、これらの点を自社だけで判断することは非常に困難です。
また、自社だけで進めると、トラブルの発生につながるおそれもあります。そのため、シンガポールでM&Aを成功させるには、シンガポールのM&Aに精通した専門家のサポートを受ける必要があります。
M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーを選ぶ際には、シンガポールにおけるM&Aの実績など、事前にチェックしておくことが重要です。

まとめ

近年、世界各国でM&Aの活発化が目立ちます。
これはシンガポールも例外ではありません。
様々な企業がシンガポールへの進出やM&Aを行っている状況を踏まえると、シンガポールのM&A市場は今後さらに活性化する可能性もあります。
シンガポールは、海外からの参入を積極的に受け入れ、成長を遂げたという背景があります。現在でもその姿勢は変わらず、一部の業種を除いて外資規制がないこと、法人税率が低いことなど、海外進出をしやすいビジネス環境が整っています。
シンガポールをアジア拠点とする企業が多いことも、このような点が原因です。そして、このことはM&Aの活発化にもつながっているのです。
シンガポールでM&Aを行うメリットは非常に大きいです。
一方で、外資規制の対象となる業種の把握や、日本のM&Aの手法との違いなど、専門的な知識も必要です。
シンガポールでM&Aを成功に導くためには、専門家のサポートをしっかり受け、M&Aを進めていくことが大切です。

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