赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説
2021年1月12日更新会社・事業を売る
ストックオプションの確定申告
新株予約権の1つであるストックオプションもすっかり浸透し所持している人も増えてきました。注意したいのはストックオプションには種類があり、それによって確定申告への対応が異なることです。改めてストックオプションの詳細について確認しておきましょう。
ストックオプションとは?
ストックオプションとは、自社の株式を事前に定められた価格(権利行使価格)で買うことが出来る権利のことです。会社から自社の役員や従業員に対し、特別報酬の一環として、かつモチベーション向上の両方の意味合いで付与されています。
新株予約権の代名詞的存在ですが、新株予約権には様々な種類があり、実はストックオプションは、その中の1つにしか過ぎません。日本では1997(平成9)年に解禁され、それ以来、数多くの企業がストックオプションを導入しています。
ストックオプションを付与された人は、権利行使価格よりも株価が高い時点で行使(株式購入)・売却すれば、その差額分を利益として獲得できます。株価が権利行使価格を下回っている間は、権利行使しなければ損失など発生しません。
ストックオプションを通常の株取引と比べると明らかに別物です。全くリスクなく利益を獲得できる可能性があるわけですから、ストックオプションの導入は、役員や従業員の業務に対するモチベーションを高める効果が期待できます。
ただし、ストックオプションの権利行使をすることによって収入(利益)がある以上、そこには必然的に納税が待っています。
ところが、実はストックオプションには複数の種別があり、その種別によって、確定申告と納税をしなければならないタイミングに違いがあるのです。それら、それぞれのストックオプションの違いについて確認していきましょう。
なお、会社におけるストックオプションの有無が、M&Aを実施する場面においても、買い手、あるいは売り手選びに影響することもあります。ストックオプション導入も考慮したM&Aをご要望でしたら、M&A総合研究所にご相談ください。
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ストックオプションの種類
ストックオプションは、その内容、付帯している条件などの違いによって、以下の3種類に分けられます。
- 税制適格ストックオプション
- 税制非適格ストックオプション
- 有償ストックオプション
⑴税制適格ストックオプション
税制適格ストックオプションとは、租税特別措置法に定められている要件を満たしていることによって、課税について優遇措置を受けられるストックオプションのことです。
この場合の優遇とは、総合的に課税額が安くなる可能性がありつつ、納税や確定申告の手間が軽減されるという意味合いになります。税制適格要件の主たるものは以下のとおりです。
- 自社の従業員、取締役、執行役であること(監査役は除く)。
- ストックオプションの権利行使期間が、ストックオプションを付与することが決議された日の2年後から10年後の間の期間であること。
- ストックオプションの権利行使価格が、ストックオプションの付与契約時点での株価以上に設定されていること。
- 権利行使の場合の年間合計額が1,200万円を超えないこと。
⑵税制非適格ストックオプション
上述した税制適格要件を満たしていないストックオプションは、税制非適格ストックオプションと呼ばれています。税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションの最大の違いは、権利行使後の確定申告回数です。
税制非適格ストックオプションの場合、税制適格ストックオプションよりも確定申告と納税をしなければならない回数が多く、手間が煩雑になります。
また、最終的に納税額が割高になる可能性もあることと、現金収入として利益が出ていない段階で納付金を用意する必要も生じてしまいます。
⑶有償ストックオプション
税制適格ストックオプションも税制非適格ストックオプションも、どちらも無償ストックオプションという分類でくくることができます。それに対して、内容・方法の異なるストックオプションが、こちらの有償ストックオプションです。
有償ストックオプションを端的に言うと、従業員や取締役が自社の新株予約権を購入することになります。この購入をさらに言い換えるならば、新株予約権への投資とも言えるでしょう。
改めて説明すると、税制適格ストックオプションにしても税制非適格ストックオプションにしても、無償ストックオプションは無償で新株予約権が付与されるものです。付与された当人が新株予約権の権利行使時に出金を伴います。
一方、有償ストックオプションは、新株予約権そのものを購入するものです。当然ながら、その違いは税務上でも異なる対応を行うことになります。
ストックオプション権利行使時の確定申告
それでは、各ストックオプションにおいて課税される時期、つまりは確定申告をして納税しなければいけないタイミングの違いを比較しています。まず、ストックオプションの権利を行使した時について見てみましょう。
⑴税制適格ストックオプション
税制適格ストックオプションは、租税特別措置法の優遇措置を受けるため、ストックオプションの権利を行使した時点では何の課税も受けません。当然ながら確定申告も不要です。
⑵税制非適格ストックオプション
税制非適格ストックオプションでは、その権利行使時において、株式の時価と権利行使価格の差額分に対して課税が発生します。
そして、税制非適格ストックオプションでは、付与対象者の身分が現職者か退職者かなど、条件によって課税される所得の区分も変わります。また必ずしも確定申告が必要でない場合もあるため、それぞれ個別に説明します。
また、税制非適格ストックオプションの場合には、自社の従業員、役員以外の第三者に対しても割り当てられるケースもありますので、そちらも合わせて記載します。
①従業員・役員
自社の従業員や役員が、在職中にストックオプションの権利行使を行った場合は、給与所得と見なされ課税されます。この場合、給与所得なので会社側が源泉徴収処置を講じてくれるので、本人が確定申告する必要はありません。
ただし、実際の給与のように現金が支給されるわけではないので、天引き措置ができません。そこで、本人が会社に対し源泉徴収の税額分を渡すことが必要になります。
この段階では、ストックオプションの権利を行使して、時価よりも安く自社株式を購入できただけです。つまり、現金収入として利益が出ているわけではないのに、源泉徴収分の税額を用意しなければならなことになります。
それでは、従業員や役員が退職・退任後にストックオプションの権利行使をしたら、どうなるでしょう。この場合、退職・退任からどの程度、日にちが経過しているかによって、所得の種類の判定が変わります。
退職後・退任後10日程度以内にストックオプションの権利行使をした場合は、退職所得と見なされ課税されます。確定申告も必要です。退職後・退任後10日以上経過後にストックオプション権利行使した場合は雑所得として課税されます。
このケースでも当然、確定申告が必要です。なお、退職所得と雑所得への課税額を比較すると、退職所得の方が税額がかなり低く抑えられるというメリットがあります。
また、ストックオプションの権利行使が退職後の場合でも、職務等に関連してストックオプションが付与されたと認められるケースでは、給与所得と見なすということにもなっています。
②業務に関する目的で取得した第三者
業務に関連する第三者がストックオプションを取得し、権利行使した場合は、事業所得または雑所得として課税されます。他の所得と合算して確定申告しなければなりません。
③業務に関連しない第三者
業務に関連のない第三者がストックオプションを取得し、権利行使した場合には、雑所得と見なされ課税されます。他の所得と合わせて確定申告が必要です。
⑶有償ストックオプション
有償ストックオプションの場合、取得した新株予約権を行使しても課税はされません。確定申告も不要です。この時点では有償で入手した新株予約権を実際の株式に変えただけに過ぎないという解釈になります。
ストックオプション権利行使後の株式売却時の確定申告
ストックオプションの権利行使により入手した株式を売却する場合、どの種類のストックオプションであったとしても、譲渡所得して課税されます。したがって、確定申告も必要です。
ただし、同じように見えて実態には差があります。ここでも個別に比べてみましょう。
⑴税制適格ストックオプション
税制適格ストックオプションで譲渡所得と見なされるのは以下の金額についてです。
- 売却価格ー権利行使価格
税率は通常の株式売却での譲渡所得と同様に、一律で20.315%の課税率となります。内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%が、住民税5%です。
⑵税制非適格ストックオプション
税制非適格ストックオプションで、株式売却時に譲渡所得と見なされるのは以下の金額についてです。譲渡所得の税率は20.315%で、税制適格ストックオプションと変わりません。
- 売却価格ー権利行使時の時価
- 権利行使時の時価ー権利行使価格
給与所得ということは一般の所得税として累進税率が適用となります。その場合、最大税率は45%にも上るのです。また、その他に、住民税(10%)と復興特別所得税(所得税の2.1%)も加わります。
この点が、税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションとの課税優遇の差です。
⑶有償ストックオプション
有償ストックオプションも新株予約権購入時には何の課税も受けていないので、税的優遇差は税制適格ストックオプションと同等と言えるでしょう。有償ストックオプションで、株式売却時に譲渡所得と見なされるのは以下の金額についてです。
- 売却価格ー購入価格
ストックオプション制度とは?導入の手続きとメリット・デメリット
株式譲渡と確定申告
ストックオプションの確定申告方法
ストックオプションの権利行使後における確定申告の方法、手順について確認してみましょう。必要提出書類以外は、どのストックオプションでも手順は変わりません。
⑴ストックオプションの種類を調べる
まず肝心なのは、ストックオプションの種類を確認することです。ここまで述べてきたようにストックオプションには種類があり、その種類によって、課税のタイミングや課税される所得の種別が異なります。最も確実で簡単な確認方法は会社に聞いてみることです。
⑵提出資料を準備する
ストックオプションの種類が確認できたら、確定申告の際に必要な提出資料を準備します。どの種類のストックオプションの場合も、確定申告書以外に通常の株式売却時と同じ以下の資料類が必要です。
- 申告書第三表(分離課税用)
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 特定口座年間取引報告書
- 上場株式等の配当に係る支払通知書
- 特定口座年間取引報告書
- 特定口座以外で取引した場合、その株式譲渡収入や取得費などの計算資料
- 源泉徴収票
- 特定権利行使株式分がある場合の計算明細書
- ストックオプション付与契約書の写し
⑶確定申告の有無を確認
これは、税制非適格ストックオプションの場合のみの手順です。確定申告が原則必要であっても、給与所得として源泉徴収されていれば確定申告の必要はありません。源泉徴収の確認はしておきましょう。
また、ほとんどあり得ないことではありますが、論理的にはストックオプションを権利行使した場合でも、売却利益が出ていないことはあり得ます。利益が出ていなければ確定申告は必要ありません。
⑷確定申告と納税
諸準備が済み、確定申告書の作成・記入が終われば、それを提出し納税の運びとなります。もし、初めてであればわからない点も多いと思います。充分に確認しながら行うか、税理士など専門家に相談してみるとよいでしょう。
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ストックオプション税制
株式取得による税金
まとめ
本記事で取り上げた以外にも、別の種類のストックオプションや、それに類する新株予約権関連の制度はあります。一般にはストックオプションというと一元的な制度だと思われているかもしれませんが実態は異なります。
税制適格ストックオプションか、税制非適格ストックオプションかの違いだけでも、課税の内容や確定申告の有無が変わってきますし、有償ストックオプションは制度自体からして、無償ストックオプションと違うこともわかりました。
もし、自分がストックオプションの権利を付与されていて、その種類を把握していないなら、すぐにでも、その確認をしておきましょう。本記事の要点は以下のとおりです。
- ストックオプションとは
→株式を事前に定められた価格(権利行使価格)で買うことが出来る権利
- ストックオプションの種類
→税制適格ストックオプション、税制非適格ストックオプション、有償ストックオプション
- ストックオプション権利行使時の確定申告
→税制非適格ストックオプション:給与所得や事業所得、雑所得として確定申告する(退職していなければ確定申告不要)
→有償ストックオプション:課税は生じない(確定申告は不要)
- ストックオプション売却時の確定申告
→ストックオプションの種類に関係なく、譲渡所得に課税が生じる(確定申告は必須)
- ストックオプション確定申告方法
2)提出資料を準備する
3)確定申告の有無を確認
- ストックオプションの確定申告における提出書類
→税制適格ストックオプション:計算明細書やストックオプション付与契約書の写し等
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。