2020年3月1日更新業種別M&A

バス会社におけるM&Aの売却/買収事例とは?買う・売る方法、費用の相場を解説

バス会社のM&Aにおいては、買い手や売り手によってM&Aを選択する目的は違います。長所や短所を知ってからM&Aを選択しましょう。また、重要な意思決定がともなうM&Aは気を付けるべき点も多く、専門家への依頼を検討しつつ慎重に臨みましょう。

目次
  1. バス会社の事業とは
  2. バス会社の現状
  3. バス会社の問題
  4. バス会社のM&Aの現状と動向
  5. バス会社のM&Aの相場と費用
  6. バス会社の買収とは?買う・買いたい場合
  7. バス会社の売却とは?売る・売りたい場合
  8. バス会社のM&Aの成功・失敗例
  9. まとめ
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バス 観光バスのM&A・事業承継

バス会社の事業とは

バス会社には、以下の2つの事業があります。

  • 一般乗合旅客自動車運送事業(乗合バス)
  • 一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)

一般乗合旅客自動車運送事業とは、いわゆる路線バスや高速バスの運行をさしており、一般貸切旅客自動車運送事業とは、ツアー観光や企業の送迎バスの運行をさしています。

バス会社の現状

バス会社の業界では、乗合バス・貸切バスの運行において免許制でした。しかし、2000年に貸切バスの運営、2002年には乗合バスの運営に対して法改正が行われ、規制が許可制になったので新規参入する事業所が増えました。

日本バス協会が発表している「2018年度版(平成30年度)日本のバス事業」によると、1967年前後は乗合バスの利用者が多く、年間およそ100億人が利用していましたが、2016年度の輸送人員はおよそ43億人となっています。

乗合バスについては、大手・中堅のバス会社が運行していることが多く、経営破綻にすぐに陥るような状況ではないにしても、バス会社全体のおよそ70%が赤字経営となっている実情があります。

そのような中、高速バスの利用者は、統計を始めた1999年には、およそ6,600万人であり、その後も徐々に利用者数が増えて、2013年には、1億1,000万人に増加しました。

その背景には、バス会社の多くが高速道路を利用して中長距離の運行を行っていることもありますが、何よりも新幹線や格安航空会社を利用するよりも運賃が安いことが挙げられます。日中だけでなく、深夜の運行も多いので寝ている間に目的地に着く利点もあります。

それ以外にも、東京には「バスタ新宿」が開業し、訪日外国人向けの高速バス情報サイトの開設もあり、高速バスを利用する人が増えているようです。特に、外国人旅行客は1回の訪日で多くの観光地に向かう傾向があり、できるだけ旅費を抑えようとする傾向もあります。

バス会社の問題

ここでは、バス会社の具体的な4つの問題について解説します。

運転手不足

バス会社の現状は大変厳しい局面を迎えており、様々な角度で日本バス協会も検討を行っているようです。バス会社にとって利用客が減少していくのは死活問題の1つですが、もう1つ大きな問題が運転手不足です。

バス運転手の不足は、2002年に行われた規制緩和によって、中小のバス会社が増えたことにも一因があります。規制緩和によって、新規参入を行った事業者はおよそ5倍にも増え、業界内での競争が激しくなりました。

その結果、バスの運転手の労働環境が変化し、大変な仕事という認識が広まりました。そのため、バス運転手を目指す若者が減り、後継者がいないため、60歳を超えても運転手を続けており、6人に1人が60歳以上となっています。

このような背景から、バス会社の労働環境の改善や給料のベースアップ、大型二種運転免許取得費用の支援制度などを取り入れているバス会社も増えてきています。

バス会社の労働環境が整っても、週休二日の習慣が身に付いている若い世代にとっては、休日問題や労働形態などが今後の課題となりそうです。

バス購入・維持の費用

バス会社は利用客を乗せるバスの維持にも経費が掛かります。路線バスの購入代金は、1台およそ1,800万円から2,100万円となり、高速バスではおよそ3,000万円から4,500万円ほとです。このようなバスを購入した後には相当のメンテナンス費用が掛かります。

このように、中小バス会社では、バスそのものの維持にも大きな費用が掛かり、存続していくのが難しい場合もあるのが現状です。

法規制の強化

バス会社の多くは、高速バスツアーの事故などを受けて規制が強化されています。貸切バスをメインにしている事業では、許可申請や監査が厳格に行われるようになりました。中小のバス会社では、それに対応できず廃業に追い込まれる可能性もあります。

大型車両の納品

バス車両のメーカーにもキャパシティーの制約があり、大型車両の納品に相当な期間がかかるという問題もあります。

バス会社のM&Aの現状と動向

バス 観光バスのM&A・事業承継
バス 観光バスのM&A・事業承継

バス会社におけるM&Aは、以下のような動きがあります。

  • 大手バス会社による中小バス会社の買収
  • 鉄道やタクシーなどの事業を行っている会社によるバス会社の買収
  • 自動車運送事業系のホールディングスによる中小や経営困難なバス会社の買収

また、異業種からバス業界への参入を試みる会社(例えば、旅行業を本業とする会社)も資本提携やM&Aを実施する見込みがあります。経営者の高齢化やバス運転手などの不足によって、後継者や事業承継の問題を解決するためにM&Aを望む可能性も高くなりそうです。

※関連記事
M&Aとは?M&Aの意味から手続きまでをわかりやすく解説!

バス会社のM&Aの相場と費用

バス会社のM&Aは、大手鉄道会社やホールディングスが実施しているケースが多く見受けられます。日本のM&Aは、事業譲渡や株式譲渡が行われたことは公表されますが、具体的な金額の公表はないため、相場や費用を具体的な数字で表すのは難しいでしょう。

しかし、バス業界では規模の拡大を狙ったM&Aが行われており、大手他社のFC化や買収が盛んに行われ、業界全体が再編の時を迎えています。

規制緩和の時に、中小規模のバス会社を設立した事業では、数十万円から数百万円の価格が相場となっており、バスを複数台所有している会社は数千万円から数億円が相場となっているようです。

買収価格については、買い取る会社の規模によって異なりますが、所有しているバスの台数や従業員の人数、複数の営業所を持っているなどによって、費用が異なります。

路線バスの運営は、その地域の主要バス会社が行っていることが多く、ほかのバス会社に買収されることは少ないようですが、反対に規模の小さいバス会社を買収して事業拡大を行っているバス会社は多くあります。

規模の小さなバス会社は、貸切バスやツアーバスの運営を主に行っていることが多く、バス運転手の確保が主な買収目的になる場合もあります。また、地方の交通網を網羅した路線バスの運行を行っている会社でも、経営赤字の解消・再建を目指して買収を試みるケースもあります。

バス会社の買収とは?買う・買いたい場合

バス会社を買収する目的は以下のとおりです。

  • バス運転手の確保
  • バスや設備の一括取得
  • ノウハウの獲得
  • 事業所の拡大(地域の路線バスを運行している場合)

バス会社の設立には、バスの購入、バス運転手の確保、バスを整備する施設などが必要です。全て整った状態のバス会社を買うことで、通常はゼロから準備が必要なところ、すぐに戦力として活用できます。

例えば、一般の路線バスに相当するバスを1台買うためには、およそ2,000万円の費用が掛かります。バス会社を買うことでバスを一括で入手でき、その後は自社のデザインにバスの改装を行うだけで済みます。

また、運行範囲を広げられるのもバス会社を買う大きなメリットになります。これまで関東圏の範囲でしか運行していなかった場合、中部や関西、東北地方まで運行範囲を広げられる可能性があります。

バス会社を買うことは、そのバス会社の整備施設やバス運転手の確保にもつながります。バスは多くの人の命を乗せて走るため、定期的な整備も欠かせず、安全にも気を配る必要があります。

そのため、国土交通省でも、バス事業について様々な法律や関係法令などが定められています。それらをクリアするための設備や条件が整っているバス会社を買うことは事業を拡大できる機会となるでしょう。

※関連記事
会社を買う際の注意点と会社購入のメリット・デメリット

バス会社の売却とは?売る・売りたい場合

バス会社を売却する場合は、株式譲渡や事業譲渡などの方法で行われます。規制緩和の時に中小規模で設立したバス会社は、会社設立後の運営に行き詰まることも多く、会社を売却してほかの事業を行いたいと考える経営者も多くいます。

路線バスの運行は、すでに地域のバス会社が行っていることが多いです。規制緩和した当時に設立した中小のバス会社は、旅行会社などに働きかけて、観光ツアーの貸切バスや地域企業の送迎バスの運行などを行っているのが実情でしょう。

しかし、バスの購入やバス運転手の確保、整備設備などに費用が掛かるため実質赤字のバス会社も多くあります。また、地域の中堅バス会社で路線バスを運行させていても、利用者が減り赤字運営を行っているバス会社も多くあります。

そのため、バス会社は会社そのものを売却したいと考えたり、中堅バス会社ではバス事業の売却を考えたりするケースもあります。バス会社の売却は、大手バス会社の傘下になることで、すでにいる従業員の雇用も守れますし、バスの処分などを考えずに済みます。

地方の中堅バス会社であっても、バス運転手の確保が難しくなっていたり、利用者の減少が問題となったりしているケースは珍しくありません。そのため、事業再編を目的としたM&Aが多いと考えられます。

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バス会社のM&Aの成功・失敗例

バス業界で話題となっている「みちのりホールディングス」は、経営共創基盤(IGPI)のグループ会社であり、2009年に設立され、東北や関東のバス会社や鉄道会社の買収を次々と行っている会社です。

2017年には、茨城県の北部を基盤とする日立電鉄交通サービスの株式を日立製作所から100%取得し、日立電鉄交通サービスを子会社化しています。日立電鉄交通サービスの経営は何も問題がなく、経営不振などではありませんでした。

しかし、みちのりホールディングスは、茨城県の県北エリアに営業ネットワークを広げるために日立電鉄交通サービスの買収を行い、傘下としました。

このほかにも、みちのりホールディングスは関東自動車、東野交通、茨城交通なども買収しており、東京から栃木県益子町までの広域をバス網の展開を行っています。

バス会社ではありませんが、複数の地域のバス会社を買収し、高速バスや路線バスの運行などを充実させることを目的として、バス会社の買収を多く行っています。

みちのりホールディングスによる福島交通の買収

みちのりホールディングスが初めて買収を行ったのは、「福島交通」になります。福島交通は、福島県のほぼ全域を網羅しているバス会社ですが、鉄道事業は1971年に飯坂東線の電車を廃止にした後は、飯坂線を残すのみとなり、主力となっているのはバス事業となっています。

しかし、バブル好景気の際に無理な多角経営を行い、1980年代以降赤字バス路線が増え、多くの債務を抱えることになりました。のちの1986年に子会社の福島交通不動産と合併を行うも多額の債務を承継したために、1999年に自己破産を申請しています。

会社の本体である福島交通も、地域の過疎化やバス事業の規制緩和におる競争の激化によって収益が悪化し、中途退職者の退職金債務が数億円に膨らむなどして、2008年に会社更生法の適用の申請を行っています。

その後、2009年1月31日に会社更生計画の認可を受け、経営共創基盤が出資するみちのりホールディングから7億円の出資を受けて、100%子会社となって経営の立て直しが行われました。

それまでも、福島交通は福島空港からのリムジンバスや高速バスなどの運営を行っていましたが、経営自体は不振となっていたようです。この例では、みちのりホールディングスが出資をしたことで100%の子会社となり会社更生手続きも完了し、会社を立て直すことができた例になります。

バス会社におけるM&Aには大きな失敗例がない

バス会社におけるM&Aは、現在注目される経営戦略となっていますが、業界で注目されるような大きな失敗例は少ない傾向です。倒産に至ったバス会社でも隣接したバス会社や鉄道会社などの子会社となって、経営を存続させているバス会社が多くあります。

そのため、路線バスの運行が突然ストップすることは少なく、何らかの措置が取られている場合が多いようです。岡山県笠岡市の井笠鉄道株式会社は、2012年10月31日限りで事業がストップし、会社自体も破産手続きとなり、解散に至りました。

しかし、臨時で中国バスが2012年11月1日から暫定的に運行を行い、その後、中国バスが出資を実施しました。井笠バスカンパニーを子会社として設立し、現在もバスの運行を行っています。

このケースはM&Aは行われず実際に破産、解散が行われましたが、臨時の暫定的な措置が行われることが多いようです。

まとめ

バス会社のM&Aに関して、動向や相場、成功・失敗事例について解説しました。買い手、売り手によってM&Aを選択する目的は異なるため、メリット・デメリットをしっかり判断した上でM&Aを選択することが大切です。大きな意思決定であるM&Aは注意点も多いため専門家を活用しましょう。

今回の記事をまとめると以下のようになります。

・バス会社の事業とは
→一般乗合旅客自動車運送事業(乗合バス)、一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)

・バス会社の現状
→バス会社全体のおよそ70%が赤字経営

・バス会社の問題
→バス運転手不足、バス購入・維持の費用、法規制の強化、大型車両の納品

・バス会社のM&Aの現状と動向
→大手バス会社による中小バス会社の買収、鉄道やタクシーなどの事業を行っている会社によるバス会社の買収、自動車運送事業系のホールディングスによる中小や経営困難なバス会社の買収

・バス会社のM&Aの相場と費用
→中小規模のバス会社を設立した事業では、数十万円から数百万円の価格、バスを複数台所有している会社は数千万円から数億円が相場

・バス会社の買収とは?買う・買いたい場合
→バス運転手の確保、バスや設備の一括取得、ノウハウの獲得、事業所の拡大(地域の路線バスを運行している場合)を目的で買収する

・バス会社の売却とは?売る・売りたい場合
→株式譲渡や事業譲渡などの方法で売却する

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