M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年12月24日更新業種別M&A
バス会社のM&A・事業承継の事例!案件・費用の相場・相談先も紹介
近年のM&A・事業承継の事例をもとにバス会社のM&A・事業承継の実態を解説します。バス業界の現状や課題、M&A・事業承継の相場・メリットなども説明しているので、M&A・事業承継を検討している方は必見です。
目次
バス会社の動向
バス会社とは、運輸局から許可を受けてバスの運行を行う企業のことです。主に以下の2種類の事業形態があります。
- 一般乗合旅客自動車運送事業:路線バスやコミュニティバスなど、決まった路線や時刻表に従って運行する乗合バス事業
- 一般貸切旅客自動車運送事業:観光バスや団体旅行など、特定のグループや目的に応じて運行する貸切バス事業
本章では、バス会社の動向を3つの側面から解説します。
新規参入の増加
バス会社の業界では、乗合バス・貸切バスの運行においては免許制でした。しかし、2000(平成12)年に貸切バスの運営、2002(平成14)年には乗合バスの運営に対して法改正が行われ、規制が許可制になったので新規参入する事業所が増えています。
実際、2002年の事業者数は485でしたが、2020年には2,337にまで増加している状況です。
利用者の大幅な減少
公益社団法人日本バス協会の「2020年度版(令和2年度)日本のバス事業」によると、1968(昭和43)年前後は乗合バスの利用者が多く、年間100億人超が利用していましたが、2018(平成30)年度の輸送人員は43億4,773万人、2022(令和4)年度には32億6,100万人でした。
乗合バスは、大手・中堅のバス会社が運行していることが多く、経営破綻にすぐに陥るような状況ではないにしても、バス会社全体の約70%が赤字経営となっている実情があります。
高速バスの需要は回復
そのような中、高速バスの利用者は、統計を始めた1999(平成11)年には約6,600万人でしたが、その後も徐々に利用者数が増え、2018年度は2億9,804万人まで増加しました。
その背景には、バス会社の多くが高速道路を利用して中長距離の運行を行っていることもありますが、何よりも新幹線や格安航空会社を利用するよりも運賃が安いことが挙げられます。日中だけでなく、深夜の運行も多いので寝ている間に目的地に到着する利点もあります。
それ以外にも、東京には「バスタ新宿」が開業し、訪日外国人向けの高速バス情報サイトも開設され、高速バスの利用者が増加中です。特に、外国人旅行客は1回の訪日で多くの観光地に向かう傾向があり、できるだけ旅費を抑えようとする傾向もあります。
また、音楽ライブを楽しむための利用者も増加しています。ライブ市場の規模は2023年にコロナ前の水準を超え、過去最高を記録するほど成長しています。
バス会社の4つの課題
ここでは、バス会社の具体的な4つの課題について解説します。
- 運転手不足
- バス購入・維持費用
- 法規制の強化
- 大型車両の納品
①運転手不足
バス会社の現状は大変厳しい局面を迎えており、さまざまな角度で日本バス協会も検討を行っています。バス会社にとって利用客が減少していくのは死活問題の1つですが、もう1つ大きな問題が運転手不足です。
2024年度には全国で約12万9000人の運転手が必要とされる一方、実際に確保できる運転手は約10万8000人にとどまり、約2万1000人が不足するとされています。この傾向は今後も続き、2030年度には必要な運転手数が12万9000人に対し、働ける運転手は9万3000人まで減少、不足数は約3万6000人に達すると予測されています。
バス運転手の不足は、2002年に行われた規制緩和によって、中小のバス会社が増えたことにも一因があります。規制緩和による新規参入でバス事業者が約5倍にも増え、業界内での競争が激しくなりました。
その結果、バスの運転手の労働環境が変化し、大変な仕事という認識が広まったのです。バス運転手を目指す若者が減り、後継者がいないため、60歳を超えても運転手を続けているケースもあり、6人に1人が60歳以上となっています。
このような背景から、バス会社の労働環境の改善や給料のベースアップ、大型二種運転免許取得費用の支援制度などを取り入れているバス会社も増えてきました。
バス会社の労働環境が整っても、週休二日の習慣が身についている若い世代にとっては、休日問題や労働形態などが今後の課題となりそうです。
日本バス協会が2022年に加盟する全国のバス会社を対象に実施した調査(788社回答)によると、運転手不足が深刻化する見通しが示されました。
②バス購入・維持費用
バス会社は、利用客を乗せるバスの維持にも経費がかかります。路線バスの購入代金は1台約1,800~2,100万円、高速バスは約3,000~4,500万円ほどです。このようなバスを購入した後には、相当のメンテナンス費用もかかります。
中小のバス会社では、バスそのものの維持に大きな費用がかかり、存続していくのが難しい場合もあるのが現状です。
③法規制の強化
バス会社の多くは、高速バスツアーの事故などを受けて規制を強化しています。貸切バスをメインにしている事業では、許可申請や監査が厳格に行われるようになりました。中小のバス会社では、それに対応できず廃業に追い込まれる可能性もあります。
④大型車両の納品
バス車両のメーカーにもキャパシティーの制約があり、大型車両の納品に相当な期間がかかるという問題もあります。
運送会社・トラック物流業界のM&A動向については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
バス会社のM&A・事業承継の現状と動向
地方の中小路線バス会社は、経営の厳しさや後継者不足といった問題を抱えています。しかし、利用客の利便性を考えると簡単に廃業するわけにはいきません。そこで、生き残りを目指して中小バス会社同士がM&Aを通じて企業規模を拡大する動きが広がっています。
また、大手や中堅のバス会社に事業承継の目的で売却するケースもあります。一方で、大手・中堅バス会社は積極的にM&Aを進め、買収後の子会社や事業エリアを再編するため、子会社同士の合併を行うことも珍しくありません。このような取り組みにより、業界全体で効率的な運営を図る動きが進んでいます。
バス会社のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っているバス会社のM&A・事業承継の案件例をご紹介します。
【2社譲渡/首都圏】貸切バス・タクシーの運営企業
保有車両はそれぞれ25台以上です。業歴長く、地域での実績と信頼度が高いです。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【東日本エリア・業歴30年以上】自動車解体・中古バス買取販売業
自動車リサイクル法の解体業許可業者で、優良販売先との取引があります。500坪以上のモータープールも所有しています。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 〜1000万円 |
譲渡希望額 | 希望なし |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
バス会社のM&A・事業承継の事例
ここでは、バス会社が関わった実際のM&A・事業承継の事例を見てみましょう。
南海電気鉄道×通天閣観光
2024年12月、南海電気鉄道は、通天閣観光の株式70.8%を取得し、子会社化することを決定しました。南海電気鉄道は鉄道や不動産事業を通じて沿線の活性化に取り組む中、「グレーターなんば」構想を推進しています。この構想では、なんば広場や新今宮駅周辺の整備を進め、地域全体の魅力向上を目指しています。
今回のM&Aにより、通天閣観光が運営する「通天閣」や新世界エリアの資産を活用してエリアマネジメント戦略を強化することで、大阪のさらなる発展と地域インフラとしての役割を果たし、企業価値向上を図ることを目的としています。
エンゼルフォレストリゾート×名鉄都市開発
2024年11月、エンゼルグループは、完全子会社のエンゼルフォレストリゾートを通じ、名鉄都市開発から静岡県伊東市の名鉄赤沢別荘地における別荘地管理事業を承継すると発表しました。この承継は、エンゼルフォレストリゾートを承継会社、名鉄都市開発を分割会社とする吸収分割方式で実施されます。
エンゼルフォレストリゾートは、東伊豆や那須など複数エリアでリゾート事業を展開しています。今回の事業承継では、エンゼルグループの別荘地管理ノウハウを活用し、別荘地の価値向上と利益拡大を目指します。
北海道中央バス×ニセコバス
2024年9月、北海道中央バスは、連結子会社であるニセコバス(北海道虻田郡)の株式を取得し、同社を完全子会社化することを決定しました。具体的には、ニセコバスが北海道中央バス以外の株主から自己株式を取得し、その後、取得した自己株式を消却します。
北海道中央バスは、乗合・貸切バス事業、不動産業、ホテル業、飲食業、公衆浴場業、旅行業などを幅広く展開しています。一方、ニセコバスは旅客自動車運送事業を主な業務としています。
今回の完全子会社化の目的は、グループ経営の柔軟性を高め、経営資源を効率的にグループ内で活用することで、連結経営の強化を図ることです。
南海電気鉄道×明光バス
2024年8月、南海電気鉄道は、近鉄バスホールディングス株式会社と近鉄保険サービス株式会社が保有する明光バス株式会社(和歌山県)の株式を取得し、子会社化を決定しました。
南海電気鉄道は、鉄道事業や不動産事業を手がけており、明光バスは和歌山県の観光地で路線バスや高速バスを運営しています。和歌山エリアは熊野古道や南紀白浜温泉など観光資源が豊富であり、観光関連事業の強化を掲げる南海にとって戦略的価値が高い地域です。
このM&Aにより、南海電気鉄道はグループ事業の拡充を図り、近鉄グループとも連携しながら紀伊半島での観光事業をさらに推進します。
東急バス×東急トランセ
2023年8月、東急バスは、子会社である東急トランセを吸収合併しました。東急バスは、東急グループの企業で自動車運送事業・不動産賃貸業、旅行業などを行っています。
東急トランセは、自動車運送事業、運輸業の運行を行う企業です。渋谷~代官山の循環バスなどの運行を機に「従来とは異なった輸送サービスの提供」を目的として設立されました。路線バスをはじめ、東急バスの路線バスの運行受託、空港高速バス、貸切バス事業の事業を行っていました。
バス輸送業界の乗務員の人手不足が拡大し、輸送力の維持課題を抱えています。今回のM&Aにより、組織を一本化することで乗務員採用活動の強化、柔軟な乗務員配置、事業運営全体の効率化を目指します。
日野自動車×三菱ふそうトラック・バス
2023年5月、日野自動車は三菱ふそうトラック・バス株式会社との間で経営統合を行いました。さらに親会社であるトヨタ自動車、ダイムラートラック社の2社が加わり、4社で基本合意書を締結しました。
今回の経営統合により、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが、統合会社の完全子会社となります。持分比率に関しては、トヨタ自動車とダイムラートラック社で別途合意する予定です。
今回のM&Aにより、開発・生産など事業効率をアップさせ、日本およびアジアの自動車産業の基盤を強化し、顧客、ステークホルダー、そして日本の自動車産業への貢献を目指します。
京福バス×京福リムジンバス
2022(令和4)年4月、京福バスは、完全子会社の京福リムジンバスを吸収合併しました。京福バスが存続会社、京福リムジンバスが消滅会社です。京福バスは、京福電気鉄道の完全子会社であり、グループ内事業の効率化・合理化・営業力強化のために合併が行われました。
みちのりホールディングス×佐渡汽船
2022年3月、みちのりホールディングスは、佐渡汽船の第三者割当増資を引き受けて出資し、佐渡汽船の株式66.7%を取得して子会社化しました。出資額は公表されていません。佐渡汽船は、同年5月に上場廃止予定となっています(2022年4月現在)。
みちのりホールディングスは、バスをはじめとする公共交通事業を行うグループの持株会社です。佐渡汽船は、佐渡島と本土を結ぶ海上交通事業を行ってきましたが、新型コロナウィルス感染拡大問題の影響もあって経営難に陥っていました。
そのような事情により、佐渡汽船は、みちのりホールディングス傘下で経営再建に取り組むことを決めています。
名古屋鉄道×名鉄運輸
2022年3月、名古屋鉄道は、連結子会社の名鉄運輸に対し、TOB(Take Over Bit=株式公開買付け)を実施しました。51.09%の株式を所有していた名古屋鉄道は、TOBで70.11%まで議決率を上げています。TOBに要した費用は43億1,478万6,000円でした。
名古屋鉄道は、グループで鉄道・バス・タクシー・船事業、運送・引越事業、ホテル事業、百貨店事業、旅行・レジャー事業、不動産事業などを行っています。今回のTOBの目的は、名鉄運輸の上場を廃止し、スピーディーな事業運営への切り替えです。
今後は、日本通運が所有する20.08%分の株式を除いて、残りの株式取得のためにスクイーズアウトなどの手続きを行う予定と発表されています。
小田急箱根高速バス×小田急シティバス
2022年1月、小田急箱根高速バスと小田急シティバスが吸収合併を行いました。存続会社が小田急箱根高速バス、消滅会社が小田急シティバスです。合併後、商号を小田急ハイウェイバスと改めました。両者はともに、小田急電鉄グループの会社でした。
小田急電鉄によれば、この合併はグループ内のバス事業の効率化・経営基盤の強化が目的です。
宮崎交通×宮崎トヨタ自動車
2021(令和3)年8月、宮崎交通は、オーシャンブルースマートと共同で行ってきたシェアサイクルサービス事業を、宮崎トヨタ自動車に譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。今後は、オーシャンブルースマートと宮崎トヨタ自動車の共同運営になります。
宮崎交通は、乗合・貸切・広告バス事業、旅行事業、航空事業、保険事業、遊園事業を行っていますが、特に主力のバス事業に経営資源を集中する目的で今回の事業譲渡を行っています。
茨城交通×なの花交通バス
2021年8月、茨城交通は、なの花交通バスの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。みちのりホールディングス傘下の茨城交通は、茨城県でバス事業、旅行業、タクシー事業、自家用自動車管理事業などを行っている企業です。
なの花交通バスは、千葉県でのバス・ハイヤー事業、成田空港~東京間のバス送迎事業などを行っています。今後は、みちのりホールディングスの他のグループ会社も含め、公共交通事業の連携を深め企業価値向上を図る方針です。
名古屋鉄道×ヒーロー
2021年3月、名古屋鉄道は、完全子会社である金沢名鉄丸越百貨店と金沢スカイホテルの全株式をヒーローに譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。茨城県のヒーローは、ディスカウントスーパーなどの運営を行っている企業です。
金沢名鉄丸越百貨店、金沢スカイホテルは、ともに新型コロナウィルス感染拡大問題の影響で業績が落ち込んでいました。名古屋鉄道としては、両社の事業再生・収益改善のためには、ヒーロー傘下となるのが最良と判断し、株式譲渡に至っています。
丸建つばさ交通×丸建自動車
2021年2月、丸建つばさ交通は、丸建自動車からバスを中心とする公共交通事業の全てを譲受しました。譲受価額は公表されていません。丸建自動車は前年5月に民事再生法を申請しています。
丸建自動車がそのまま倒産してしまうと、地域の公共交通に与える影響が大きいため、事業の受け皿となる会社ができるまでの間、裁判所命令により事業を継続していました。
ナオヨシ×海部観光
2020(令和2)年11月、ナオヨシは、海部観光の株式を取得し子会社化しました。取得価額は公表されていません。海部観光は、徳島県でバス事業を行っている企業ですが、新型コロナウィルス感染拡大問題の影響で業績が悪化していました。
経営コンサルタントのナオヨシは、傘下にコールドチェーン事業、食品物流事業、データセンター事業、青果物仕入・販売事業、輸出入事業、IT事業、映像・デザイン事業などを行う子会社があります。今後、海部観光は、ナオヨシ傘下で経営再建を図る考えです。
住友商事×Teroplan S.A.
2020年6月、大手総合商社の住友商事は、ポーランドのTeroplan S.A.に出資しました。出資額は公表されていません。Teroplan S.A.は、バス・鉄道チケットのオンライン販売、民間バス事業者向けシステム提供、オンデマンド型バスサービスを行っている企業です。
住友商事としては、今後、オンデマンド型バスサービスの普及が伸びると判断し、出資を決めています。
博報堂×やさいバス
2020年2月、広告代理店の博報堂とやさいバスが資本業務提携を締結し、博報堂がやさいバスに出資しました。出資額・取得株式数は公表されていません。やさいバスの行う「やさいバス」事業とは、野菜の生産者と需要者を結ぶ新しい物流システム事業です。
具体的には、生産した野菜とそれを購入したい一般消費者や料理店の受け渡し場所として、各地にあるバスの停留所を利用し、共同配送トラックが巡回します。物流コスト削減と生産者・需要者間の交流サービスを付加した新しさを、博報堂は評価しました。
バス会社におけるM&A・事業承継には大きな失敗例がない
バス会社におけるM&A・事業承継は、現在、注目される経営戦略となっていますが、大きな失敗例はほとんどありません。倒産に至ったバス会社でも、隣接したバス会社や鉄道会社などの子会社となって、経営を存続させているバス会社が多くあります。
そのため、路線バスの運行が突然ストップすることは少なく、何らかの措置が取られている場合が多いようです。岡山県笠岡市の井笠鉄道は、2012(平成24)年10月31日限りで事業がストップし、会社自体も破産手続きとなり解散に至りました。
しかし、臨時で中国バスが同年11月1日から暫定的に運行を行い、その後、中国バスが出資して井笠バスカンパニーを子会社として設立し、現在もバスの運行を行っています。
旅行代理店のM&Aの現状と動向については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
バス会社のM&A・事業承継の相場と費用
日本で公表されるM&A・事業承継は、具体的な取引価額情報が開示されないことが多く、相場や費用を体系的に表すのは難しいものがあります。また、売却側各社によって経営状況や会社規模が異なるため、横並びの評価もできません。
バス会社のM&Aで取引価額を決める大きな要素となるのは、所有しているバスの台数や運転手の人数、複数の営業所を持っているかなどといった点です。
路線バスの運営は、その地域の主要バス会社が行っていることが多く、他のバス会社に買収されることは少ないですが、規模の小さいバス会社を買収して事業拡大を行っているバス会社は多くあります。
規模の小さなバス会社は、貸切バスやツアーバスの運営を主に行っていることが多く、バス運転手の確保が主な買収目的のM&Aも多いです。また、地方の交通網を網羅した路線バスの運行を行っている会社でも、経営赤字の解消・再建を目指して買収を試みるケースもあります。
M&Aの費用については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
バス会社のM&A・事業承継のメリット
ここでは、バス会社のM&A・事業承継を実施した場合に得られるメリットについて考えます。買収側・売却側それぞれの観点でM&Aのメリットを確認しましょう。
バス会社のM&A・事業承継における買収側のメリット
バス会社を買収する際に得られるメリットは、以下のとおりです。
- バス運転手の確保
- バスや設備の一括取得
- ノウハウの獲得
- 事業所の拡大(地域の路線バスを運行している場合)
バス会社の設立には、バスの購入、バス運転手の確保、バスを整備する施設などが必要です。全て整った状態のバス会社を買うことで、通常はゼロから準備が必要なところ、すぐに戦力として活用できます。
たとえば、一般の路線バスに相当するバスを1台の購入費用は、約2,000万円です。バス会社を買うことでバスを一括で入手でき、その後は自社のデザインに合わせてバスの改装を行うだけですみます。
また、運行範囲を広げられるのもバス会社を買う大きなメリットです。これまで関東圏の範囲でしか運行していなかった場合、中部や関西、東北地方まで運行範囲を広げられる可能性があります。
バス会社を買うことは、そのバス会社の整備施設やバス運転手の確保もメリットです。バスは多くの人の命を乗せて走るため、定期的な整備も欠かせず、安全にも気を配る必要があります。
そのため、国土交通省でも、バス事業についてさまざまな関係法令を定めているのです。それらをクリアするための設備や条件が整っているバス会社を買うことは、事業を拡大できる機会となるでしょう。
バス会社のM&A・事業承継における売却側のメリット
バス会社を売却する場合の方法は、株式譲渡や事業譲渡などです。規制緩和の際に中小規模で設立したバス会社は、会社設立後の運営に行き詰まることも多く、会社を売却して他の事業を行いたいと考える経営者も多くいます。
路線バスの運行は、すでに地域のバス会社が行っていることが多いです。規制緩和した当時に設立した中小のバス会社は、旅行会社などに働きかけて観光ツアーの貸切バスや、地域企業の送迎バスの運行などを行っているのが実情です。
しかし、バスの購入やバス運転手の確保、整備設備などに費用がかかるため、実質、赤字のバス会社も多くあります。また、地域の中堅バス会社で路線バスを運行させていても、利用者が減り赤字運営を行っているバス会社も多いのです。
したがって、バス会社は会社そのものを売却したいと考え、中堅バス会社ではバス事業の売却を考えるケースもあります。バス会社の売却は、大手バス会社の傘下になることで、すでにいる従業員の雇用も守れますし、バスの処分などを考えずに済むのも利点です。
バス会社が売却側としてメリットを最大限に得るには、自社に適したM&A仲介会社に業務を委託するのがいいでしょう。M&A仲介会社選びでお悩みでしたら、M&A総合研究所に一度、ご相談ください。
バス会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先
バス会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
最近では、金融機関が企業の合併や買収(M&A)を支援する専門部署を設ける動きが活発化しています。特に大手投資銀行やメガバンクでは、資金調達のサポートや取引戦略の立案など、M&Aをスムーズに進めるための多岐にわたるサービスを提供しています。
これらの支援を利用することで、企業は事業承継や資金確保といった複雑な課題を効率よく解決し、専門家のアドバイスを受けながら取引成功の可能性を高めることができます。
一方で、大規模な案件が優先されがちなため、中小企業が十分なサポートを受けられないケースも少なくありません。そのため、自社の規模や目的に合った支援機関を慎重に選ぶことが大切です。
さらに、これらのサービスは高額な費用がかかる場合があるため、事前に料金体系を確認し、コストと効果をしっかりと見極める必要があります。
公的機関
近年、事業承継やM&Aをサポートする公的サービスが充実してきました。全国に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業を対象に、無料で事業承継やM&Aに関する情報提供やアドバイスを行っています。
また、企業間のマッチングを支援する仕組みも整えられ、地方の企業でも専門的なサポートを受けやすい環境が整備されています。個人事業主向けの支援も拡大されており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介を受けることも可能です。
一方で、公的サービスは民間の仲介会社と比べて対応速度や柔軟性に限りがある場合があるため、利用する際にはこれらの特性を理解し、慎重に判断する必要があります。
これらの支援は、リスクを抑えながら事業承継やM&Aを進めるための安心できる選択肢といえるでしょう。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の売買をスムーズに進めるための専門サポートを提供する組織です。売り手と買い手を単に仲介するだけでなく、交渉の進行管理や企業価値の評価、契約書の作成といった重要な業務を幅広くサポートします。このため、M&Aに不慣れな企業でも安心して取引を進められる仕組みが整っています。
特に注目すべきは、広範なネットワークを活用して、最適な取引相手を素早く見つけられる点です。このネットワークはM&Aの成功率を高める大きな要因となっています。また、初心者にも分かりやすく丁寧な説明を行い、不安を和らげる姿勢も高い評価を受けています。
一方で、仲介会社の利用には着手金や中間報酬といった費用が発生する場合があるため、事前に料金体系をしっかり確認することが大切です。費用を抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを選ぶことで、コストパフォーマンスの良い支援を受けることができます。
バス会社のM&A・事業承継まとめ
バス会社のM&A・事業承継は、買い手、売り手によってM&Aを選択する目的が異なるため、メリット・デメリットをしっかり判断したうえでM&Aを選択することが大切です。大きな意思決定であるM&Aは注意点も多いため、専門家を活用しましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。