2021年4月22日更新会社・事業を売る

マーケットアプローチとは?企業価値の計算方法やメリットを解説【事例付】

マーケットアプローチとは、市場取引の観点から企業(株価)を評価する方法です。マーケットアプローチには類似業種比準方式、類似会社比準方式などがあり、相続税を抑える目的や非上場企業の株価を算定する目的で活用されます。方式のメリット・デメリットも紹介します。

目次
  1. マーケットアプローチとは
  2. マーケットアプローチのメリット
  3. マーケットアプローチのデメリット
  4. マーケットアプローチの手法(類似業種比準方式)
  5. マーケットアプローチの手法(類似会社比準方式)
  6. マーケットアプローチを用いた企業価値評価の事例
  7. まとめ
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マーケットアプローチとは

マーケットアプローチとは

マーケットアプローチとは、市場取引の観点から企業を評価する方法のことです。この方法では、評価対象となる企業を同業界の会社や類似業種の会社と比較しながら価値を計算します。これまでマーケットアプローチは上場企業により活用されるケースが大半でした。

しかし、最近では中小企業の活用例も増加中です。マーケットアプローチは、「類似業種比準方式」「類似企業比準方式」「市場株価方式」「類似取引比較方式」の4つに分類されます。

ここからは、マーケットアプローチの基礎的な知識、およびその他の企業価値評価方法について紹介しますので把握しておきましょう。

【関連】M&Aにおける企業価値評価とは?手法、営業権を加えた算出方法を解説

マーケットアプローチの基礎知識

マーケットアプローチは、株式市場やM&Aシーンにおいて、取引価額をもとに企業価値を算定する方法として認知されています。

特にM&A取引の実施を検討する際、対象となる相手企業の価値の算出は、M&A取引を進めるかどうかを判断する重大な要素として位置付けられており、M&Aプロセスとして必要不可欠です。

会社を経営していると、常日頃から他の機関による評価が付きまといます。この評価はM&Aを実施する際に非常に重要となり、企業の評価が高ければ高いほど取引金額も引き上がる仕組みです。

マーケットアプローチは、株式市場・M&A市場における取引価額をもとに算定を行うことから、客観的であると認識されています。

とはいえ、算定には中小企業と同規模の上場企業を探し出す必要があり、困難を伴う欠点もあるため、企業の実情に応じて適切な評価方法を採用すると良いでしょう。

【関連】企業価値の計算方法

その他の企業価値評価方法

M&Aの実施を検討している経営者を筆頭に、「そもそも企業価値評価を行う方法には、どのような種類があるのかわからない」とお悩みの方は決して少なくありません。そもそも企業を評価するための方法は複数存在しており、このうちの1つとしてマーケットアプローチが位置付けられています。

この方法は、マーケット(市場)の観点から企業を評価する方法という観点で他の方法と区別可能です。上記以外の方法としては、「コストアプローチ」「インカムアプローチ」の2つが挙げられます。

前者は、対象企業の純資産額をもとに価値を算定する方法です。さらに細かく、簿価純資産法・時価純資産法などの算定方式に分かれます。

後者は、対象企業の将来的な収益およびキャッシュフローなどの予測をもとに価値を算定する方法です。こちらは、DCF法・配当還元法などに細分化されます。

今回は市場観点から企業を評価するマーケットアプローチについて紹介しますので、その他の方法を把握したい経営者の方は以下の参考記事をご覧ください。

【関連】コストアプローチ
【関連】インカムアプローチ

マーケットアプローチのメリット

マーケットアプローチのメリット

マーケットアプローチを採用するメリットは、主に以下のとおりです。

  • 偏った評価にならず平等性を保てる(株価・EBITDAなど公開された指標を採用するため)
  • 市場の需要や流行を織り込んで価値に反映できる
  • 同じ業界に属するが故に見えていなかった要素が判明する
  • 公表されている計算式に当てはめるのみで手軽に評価が完了できる

上記の要素にメリットを感じる場合には、採用を検討しましょう。

【関連】M&Aのメリットとは?買い手・売り手のメリットやM&A戦略策定・手法別のメリットを紹介

マーケットアプローチのデメリット

マーケットアプローチのデメリット

その一方で、マーケットアプローチを採用すると以下のようなデメリットが問題となるケースがあります。

  • 税金を差し引いた純利益が会計の方針・資本政策・特別損益の影響を受けやすい
  • 市場に振り回されるおそれ(風評被害・インサイダー取引などで適切に評価できない可能性)

市場は常に正しいわけではなく、ときにめまぐるしい変化を見せます。場合によっては、投機的な取引により株価の乱高下が生じたり、天災の影響を受けたりするケースも珍しくありません。

このようにマーケットアプローチには、比較的簡素な手順で価値が明らかになり、業界についてさらに深く知れるメリットがある一方で、政策・特別損益の影響を受けて株価が変動しやすいデメリットも潜んでいます。

また、マーケットアプローチはM&Aを実施する際に広く用いられる方法ですが、自社のM&Aのケースで採用を検討する場合、いかなるバリュエーション方法を用いるのが適切なのか、慎重に見極める必要があります。

最適なバリュエーション方法が知りたいとお考えの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所には、M&Aに関する知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、適切な企業価値評価方法をご提案いたします。

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相談料は無料となっておりますので、M&Aを目的とする企業価値評価をお考えの場合にはお気軽にご相談ください。

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マーケットアプローチの手法(類似業種比準方式)

マーケットアプローチの手法(類似業種比準方式)

本章では、マーケットアプローチの「類似業種比準方式」について、使用目的・税制改定に伴う変更点・メリットとデメリットなどを幅広く取り上げます。

使用目的

類似業種比準方式とは、評価対象の会社に対して、類似している業種の会社を比較対象としながら株価を評価する方法です。このマーケットアプローチ手法は、主に「純資産価額方式を採用すると相続税が高額になってしまう」というケースで活用されます。

もともと相続税は原則として相続時における現物の資産価値によって決定されますが、たとえ資産が大量にあったとしても、資産額と会社の利益および業績が必ずしも比例するとは限りません。つまり、大量の財産を保有していても経営が苦しいケースは大いに想定されます

こうしたケースにおいて純資産価額方式により企業を評価する際、大量にある現物資産を評価されてしまい、売上に見合わない相続税を支払わなければならない可能性が出てきます。ところが、ここで類似業種比準方式を活用すれば、相続税の節税効果が期待できます

計算方式の改定

類似業種比準方式は、平成29(2017)年の税制改正に伴い、評価額の計算方式が改定されました。新しい方式は平成29年1月1日より適用が開始されており、改定により以下の点に変更が加えられています。

上場企業の株価算定方法の改定

従来の計算方式において上場企業の株価として扱っていた金額は、課税対象となる直近3カ月目までをさかのぼり、その中で最も価格が低い金額を比較対象としていました。これに対して、改定後は、従来の月数に加えてさらに2年間の平均株価も使用可能と変更されています。

この変更に伴い、取引相場のなかった企業の株価への影響額が抑制されました。

比率の変更

これまで配当金額・利益金額・簿価純資産金額の比準にはバラツキがありましたが、改定後は均等になっています。具体的にいうと、従来は5分の3程度を占めていた利益が改定後は3分の1にまで低減されました。

このように利益の割合が減ったため、利益を生み出す株価への影響が軽減されました。したがって、評価額の安定化が見込まれています。そのほか、配当金と純資産の比重は5分の1から3分の1に変更されたため、配当金額や内部留保の多い会社は株価が上昇する傾向が見られるようになりました。

メリットとデメリット

類似業種比準方式は、相続税を抑えられる点が大きなメリットです。また、もともと比準方式は比較的に客観視が難しいとされているものの、この方式には財産評価基本通達による規定が存在するため、客観性が高いと認識されています。

その一方で、国税庁は類似業種比準方式に対して正確な公表を行っておらず、このマーケットアプローチ方式により算出した評価額が妥当であると証明できない点はデメリットだといえます。

【関連】株価算定方法を解説します

マーケットアプローチの手法(類似会社比準方式)

マーケットアプローチの手法(類似会社比準方式)

続いて、マーケットアプローチの「類似会社比準方式」について、使用目的・計算方法などを中心に取り上げます。

使用目的

類似会社比準方式とは、評価対象となる企業と事業内容が類似する企業の財務指標を比較する手法です。このマーケットアプローチ手法は、主として非上場企業が上場した場合に株価がどの程度になるかを算出する目的で活用します。

同業種の企業は多く存在するものの、この方法ではあくまでも類似している上場企業との比較が重要です。

計算方法

類似会社比準方式は、各評価基準(純資産・利益・EBITDAなど)の比準割合を計算したうえで、この割合を類似会社の株価にかけて求めるという段取りで実施されます。ここでは、「比較対象の類似会社を複数選出する」という点に注意しましょう。

また、この方法は、基本的に上場企業など規模の大きな企業の株価を参考に用います。そのため、上場を目的として掲げている会社や上場を目前に控えた会社などが活用を検討するのが一般的です。

【関連】EBITDAとは?倍率・意味・計算方法をわかりやすく解説

マーケットアプローチを用いた企業価値評価の事例

マーケットアプローチを用いた企業価値評価の事例

実際にマーケットアプローチを用いて企業価値評価が行われる現場では、「EBITDA(金利支払前 税金支払前 固定資産の償却費控除前の利益)」に対して企業価値を意味する「EV(Enterprise Value)」が何倍になるかを表す「EV/EBITDA倍率」が採用されるケースが多いです。

そこで本章では、数あるマーケットアプローチ手法の中でも、「EV/EBITDA倍率」を用いた類似会社比準方式の算出事例を紹介します。この算出事例で対象となる企業の概要は、以下のとおりです。

科目 金額
現預金 8,000万円
有利子負債 1億8,000万円
税引前利益 4,000万円
支払利息 400万円
減価償却費 1,000万円

また、類似企業の概要を以下のとおり設定します。

科目 金額
株式価値 2億3,000万円
現預金 8,000万円
有利子負債 1億3,000万円
EBITDA 7,000万円

上記の条件において、まずは類似企業の企業価値を以下の式を用いて算出します。

  • 類似企業の企業価値=株式価値+有利子負債ー現預金

上記の式を用いると、「2億3,000万円+1億3,000万円ー8,000万円=2億8,000万円」と算出されます。次に、類似企業のEV/EBITDA倍率を以下の式を用いて算出しましょう。

  • 類似企業のEV/EBITDA倍率=企業価値÷EBITDA

上記の式を用いると、「2億8,000万円÷7,000万円=4倍」と算出されます。続いて、対象企業のEBITDAを以下の式を用いて算出してください。

  • 対象企業のEBITDA=税引前利益+支払利息+減価償却費

上記の式を用いると、「4,000万円+400万円+1,000万円=5,400万円」と算出されます。その後は、対象企業の企業価値を以下の式を用いて算出しましょう。

  • 対象企業の企業価値=EBITDA✕EBITDA倍率

上記の式を用いると、「5,400万円✕4倍=2億1,600万円」と算出されます。最後に、対象企業の株式価値(譲渡価格)を以下の式を用いて算出してください。

  • 対象企業の株式価値=企業価値+現預金ー有利子負債

上記の式を用いると、「2億1,600万円+8,000万円ー1億8,000万円=1億1,600万円」と算出されます。以上の計算から、対象企業の株式価値は1億1,600万円であると算出されました。

【関連】M&Aの相場とは?決め方や注意点を紹介【事例付き】

まとめ

まとめ

本記事では、マーケットアプローチについて幅広く解説しました。マーケットアプローチを実際に使用するのは、多くのケースで専門家となります。なぜなら、マーケットアプローチを採用する際は、対象となる業界内における「類似の商品やサービスの平均価格」を十分に把握しておく必要があるためです。

そして市場の平均値を理解して対象となる会社の価値を決めなければならないため、マーケットアプローチを採用するには業界・評価に詳しい専門家のサポートが必要です。マーケットアプローチは、数式を見ると複雑で理解の難しい部分もありますが、数値を当てはめるのみで評価が行える点はメリットだといえます。

とはいえ、市場は常に大きく変化することから、まずは自社において「マーケットアプローチを使用すべきか否か」を見極めなければなりません。したがって、評価時のみならず常日頃から市場に意識を向けておく必要があります。本記事の要点をまとめると、以下のとおりです。

・マーケットアプローチとは 
→市場取引の観点から企業を評価する手法

・マーケットアプローチの4分類
→類似業種比準方式、類似企業比準方式、市場株価方式、類似取引比較方式

・マーケットアプローチ以外の企業価値評価方法
→コストアプローチ、インカムアプローチ

・マーケットアプローチのメリット
→偏った評価にならず平等性を保てる、市場の需要や流行を織り込んで価値に反映できる など

・マーケットアプローチのデメリット
→税金を差し引いた純利益が会計の方針・資本政策・特別損益の影響を受けやすい など

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