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不動産管理会社の売却額の相場は?価格の算出方法や売却の注意点を解説!

不動産管理会社の売却額の相場は?価格の算出方法や売却の注意点を解説!

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

不動産管理会社とは

不動産管理会社とは、物件管理、物件の安定維持・環境保持及び改善を主に行う会社を指します。具体的には家賃回収、原状回復、契約更新などの入居に関する業務から、建物の設備に関するメンテナンスの業務まで多岐に渡ります。

不動産管理会社の市場動向

不動産管理業界の一角であるマンション管理業の市場規模は6,000億円を超えるとも言われています。この業界は2008年に起きた「リーマンショック」後は成長が鈍化したものの、近年では年間3%程度で緩やかに拡大を続けており、堅調に推移しています。

不動産管理業務の多角化がもたらす、業界再編の兆候と売却ニーズ

このような市場環境ではあるものの、近年はステークホルダーからの経費削減要求や、サービス範囲の広範化が求められており、居住者の利益増加のために業務効率化を図れない企業は、競争が激化していく中で淘汰される傾向にあると考えられます。

不動産管理業界は、従来は中小規模の企業の割合が高い業界でしたが、総合的なサービスが求められるようになる不動産管理業において、今後はサービスラインナップを多く持ち、幅広いサービスが提供できる大手企業を軸に業界再編が進んでいくものと考えられます。特に、不動産管理会社はストックビジネスであるためM&Aによるスケールメリットが効きやすく、大手デベロッパー系列を除いて、新規顧客の獲得は容易ではないため、コスト効率化と顧客獲得を企図したM&Aが活発に行われており、今後も増加する傾向にあります。

更に、不動産管理業界では、経営者が高齢で事業承継を考えている企業も多く、中には後継者問題に頭を抱える経営者も少なくありません。このような中小の不動産管理会社の承継問題を解決する方法として、M&Aを選択する企業も増加傾向にあります。

不動産管理会社をM&Aするメリット(買手側)

不動産管理会社間でのM&Aを想定した場合、買手側が得られるメリットは、まず管理戸数を一度に大きく増やせることが挙げられます。管理戸数が増えるため手数料が増加、収益拡大につながるのです。

地道に営業することでも管理戸数を増やせますが、大きく増やすには時間と手間がかかります。一方、M&Aを活用すれば一度の手続きで大きく管理戸数を増やすことが出来るため、効率的と考えられます。即ち、M&Aによって時間を買っているとも考えられます。更に、手数料増加に比例して費用が増加する事はないため、買手側の損益計算上も効率化を図ることが出来るものと考えられます。即ち、規模の経済が働くことになります。

また、二次的には賃貸不動産経営管理士やマンション管理士などの不動産管理業務に関する資格保有者を増やせるのもメリットの一つです。不動産管理業界のどの企業にも、専門的知識を有する資格保有者が在籍しています。M&Aを通して有資格者を瞬時に獲得できるのも魅力です。

最後に、買手側と売手側でこれまで異なるサービスを提供していた場合は、M&Aを通して相互補完する事でサービスラインナップが拡充され、双方の従前の顧客に対しても付加価値を提供する事が可能になります。

不動産管理会社をM&Aするメリット(売手側)

売却を検討している不動産管理会社は、経営に関する問題を抱えている場合が多いと思われます。M&Aによって他社へ不動産管理ビジネスを売却する事で、抱えていた多くの問題を解決できるメリットがあります。

例えば、売上減少によって経営不振に陥り、単独での再建が難しい状況を想定した場合、M&Aを利用すれば事業を存続させる事が可能になります。大手企業やそのグループ企業へ株式譲渡をしてオーナーの変更を行い、豊富な資金に支えられて、安定した事業経営ができるようになります。それにより、企業の従業員の雇用を守ることができ、融資問題も解消出来ます。また、創業オーナーや経営者が引退を考えて事業承継を試みたものの、後継者選びに苦戦している場合もM&Aを利用すれば解決することが出来ます。

さらに、株式譲渡や事業譲渡によってM&Aを行った場合、売手は資産の換金化、即ち大きな資金を手にできるメリットもあります。その売却資金を元手に新たな事業を始められます。事業を廃業する場合は、無収入となりますが、売却資金を生活費に当てることが可能です。

不動産管理業界のM&Aのポイント(DDでどこを見るか)

取引に際してDD(Due Diligence ≒ 買手会社による売手会社の精査)を行う場合、買手は主に以下のポイントを見てくる可能性が高いです。

まず、売手の収益力を過去数期間チェックされます。売上だけではなく売上原価や管理費などを考慮した正確な収益力を調査されます。また、売上を構成する論点で、契約の継続性という点から、管理組合と良好な関係にあるか否かも確認されがちな論点になります。関係性に問題があると契約が継続できなくなるデメリットが生じてしまいます。その上で、買手候補とどの程度シナジーが見込めるかという点を確認される事になります。

不動産管理会社売却額相場

不動産管理会社の売買マーケットは不動産業界の景気に左右されがちですが、不動産マーケットが活況の2019年では、営業利益+償却費の6~8倍が企業価値評価として標準的な相場だと考えられます。リーマンショックが起こった2008年以降、売却相場は堅調に推移し、過去10年で最も高い水準にあります。

以下でもう少し詳細に説明致します。

不動産管理会社の売却金額を上げるには?

一般的な価格の算出方法

企業の価値評価(バリュエーション)の方法は、大きくインカムアプローチ(例:DCF法など)、コストアプローチ(例:簿価純資産法、時価純資産法など)、マーケットアプローチ(市場株価法、類似会社比較法(マルチプル法)など)に分類されます。

これらを駆使して、場合によっては複数方法を用いて、妥当な(説明可能な)価格範囲を試算してM&Aにおける金額面での意思決定を助けます。以下で、アプローチ別に簡単に説明させて頂きます。

①インカムアプローチ
インカムアプローチは、将来期待される経済的利益(例:営業利益、当期利益等)を、その利益実現に見込まれるリスク等を考慮した割引率で便宜的に割引くことにより、リスクも考慮された上での企業価値評価を行うものです。最も代表的な方法は、将来のフリーキャッシュフローを算定して評価する「DCF法(Discounted Cash Flow Method)」と呼ばれるもので、将来期待される利益に利益指標には反映されない設備投資等も考慮した、将来得られるであろう現金額を簡便的に試算する方法です。この方法は世界の名だたる一流企業のM&Aでも必ず用いられる方法の一つです。

また、「DCF法」の他には、株主が受け取る配当額から評価する「配当還元法(Dividend Discount Method)」があります。この方法は相続税評価にもよく用いられる方法で、オーナー一族間での事業承継には度々登場する方法になります。但し、割引率の設定等、恣意性の介入余地が高い指標を用いるため、中小企業のM&Aの現場では最終的な意思決定には使われにくいケースが目立ちます。

②コストアプローチ
次に、コストアプローチは、ネットアセット・アプローチなどとも呼ばれ、会社の純資産を基準に企業価値を評価する方法です。 会計上の純資産額に基づいて評価を行う「簿価純資産法」と、評価対象となる企業または事業の資産・負債のすべてを時価に置き換えて純資産を評価する「時価純資産法(または修正純資産法)」に分けられます。

我が国の商慣習や会計基準(J-GAAP)においては未だ簿価評価の方が親和性が高いこともあり、「簿価純資産法」は即ち株式譲渡価格(株式価値)が対象会社の純資産額に近似することを意味しますが、M&Aのような買手と売手が別の思惑で取引している環境下では、しばしば含み損を抱えている資産が表面化しない弱点があります。

③マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、市場において成立する価格をもとに企業価値を算定する手法です。代表的なものとして、評価対象企業と類似する上場企業の市場株価や、類似する買収・売却の取引において成立した価格をベースにした一定の倍率(マルチプル)を評価対象企業のPL指標(例:営業利益等)に乗じることによって価値を試算する「類似会社比較法」があります。

マーケットアプローチは比較対象が上場している企業群になるため、組織や企業規模が相応に整っている企業の価値評価では効力を発揮しますが、業歴の浅いベンチャー企業や、少人数でビジネスを回している企業、盲点になりがちですが設備投資等のPLに出てこない財務アクションの割合が大きい企業は、算定結果にムラが生じやすい弱点があります。

但し、この方法はM&Aの実務の現場では頻繁に使われるため、売手として戦略的に価格交渉を進めるためには、”仮に「類似会社比較法」で見られた場合”を想定して準備を進める必要があります。

「類似会社比較法」の一つ、「EV / EBITDA法」とは

不動産管理会社のM&Aの現場で最も頻繁に使用される指標の一つとして、EV / EBITDA法があります。これは、以下の2つの指標から成り立っています。

  • EV = Enterprise Value = 企業価値 = 株式価値(オーナーの売却額) + 有利子負債 (+ 有利子負債に準じるもの) – 現金預金 (- 換金性が高く換金して事業運営に支障をきたさないもの)
  • EBITDA = Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization = 簡単に言うと、営業利益 + 減価/のれん償却費
分かり易く言うと、企業を買収したとき、その買収資金を買収先企業のキャッシュベースでの年間利益 (EBITDA) でまかなう場合、何年で回収できるかを示す指標になります。

先述の通り、不動産管理会社のM&Aの現場では2019年のマーケット環境を考慮すると6~8倍が一般的です。即ち、買収した不動産管理会社を6~8年で回収できる事を意味します。例えば、営業利益が4億円、減価償却費が1億円の企業であれば、企業価値ベースでは30~40億円で取引されるケースが多い事を指します。

なお、企業価値は「株式価値(オーナーの売却額) + 有利子負債 (+ 有利子負債に準じるもの) – 現金預金 (- 換金性が高く換金して事業運営に支障をきたさないもの)」に分解されるため、上記の例において、例えば借入が5億円、手許現預金が2億円あった場合は、実際オーナーに入る金額は27~37億円(税金支払前)になる事を意味します。

「EV / EBITDA法」で高い評価を得るためには

「EV / EBITDA法」は株式市場に実際に上場している企業の株価をベースに試算しているため、(当然ですが)勢いがある会社の方が株価も高く、EV / EBITDAが上昇する傾向があります。不動産管理会社のM&Aにおいては、まず業績が過去から成長している事、売上だけでなく利益指標も併せて成長していると高いEV / EBITDA倍率がつく事が想定されます。加えて、売手の将来計画が成長軌道を描く絵姿(将来EBITDA)が買手に信じてもらえるよう、マネジメントインタビューで大いにアピールする点も基本的ですが非常に重要です。

また、上記によって導かれた企業価値が一定の前提において、オーナーの株式売却額(株式価値)を最大化する論点に絞って考えると、企業価値の公式、
企業価値 = 株式価値(オーナーの売却額) + 有利子負債 (+ 有利子負債に準じるもの) – 現金預金 (- 換金性が高く換金して事業運営に支障をきたさないもの)
から、換金価値がある企業資産を予め換金しておく事も一考です。

ビジネス面で高い評価を得るためには

他のM&Aと変わらず基本的な部分になりますが、事業基盤、展開地域、役員や従業員の能力や保有資格(マンション管理士等)、サービスラインナップと各サービスの特徴、秀でたサービスの概要、また管理組合との良好な関係を築けている場合は存分にアピールしましょう。

不動産管理会社の売却注意点

売却プロセスの注意点

売手にとってM&Aの意思決定を行い、プロセスを開始するまでには、オーナー・役員・従業員に相応の負担が掛かっている事が考えられますので、仮にプロセスが途中で頓挫してしまうような事があった場合、全社の士気が落ちるリスクが非常に高いです。また、一度売却の交渉を外部と行った場合、秘密保持契約を当事者間で結んでいたとしても「あのオーナーは会社を売却しようとしている」という噂が立ってしまい、プロセスが進まなくなるリスクがあります。

不動産管理会社の売却はM&A仲介会社に相談

M&Aは交渉、オークションのようなもの

これらを避けるため、M&A仲介会社に相談することをお勧めします。プロセス開始スケジュールや社内でのプロジェクトメンバーの決定、買手候補先に配布する売手側に関する事業概要資料(IM = Information Memorandum)の作成について相談する事は、プロセスを成功させるために重要な事になります。

また、M&A仲介会社活用の最大の利点は、彼らのネットワークを使って買手候補に幅広く声掛けしてくれるため、複数社が関心を寄せ、結果的にオークションのように価格が釣り上っていく事が期待される点にあります。

まとめ

不動産管理会社業界は市場拡大傾向にあるものの、競争環境は激化、今後はサービス範囲が広い大手中心に企業再編が起きると予想されます。

企業価値評価には複数手法があり、これらの選択により価格幅が決まるが、その中でも「EV/EBITDA法」は不動産管理業界のM&Aでも良く使われる指標。不動産管理業界において、6~8倍程度が一般的と考えられます。「EV/EBITDA法」で高く評価されるには、過去の成長実績を買手候補に訴求すること、計画期間中のEBITDAがいかにもっともらしく聞かせられるかは極めて重要です。加えて、上記が企業価値を評価する指標である点を鑑みて、現金化できる余剰資産は予め現金化しておくことも一考です。

M&Aには大きな負担を伴うため、また、より高く売却する事を期待して、M&A仲介会社に相談する事が望ましいです。

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