M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年11月15日更新会社・事業を売る
債務超過でも会社分割は可能?会社法での可否、会計処理、注意点を解説
債務超過に陥っても、会社分割を活用すれば経営再建が可能です。本記事では、会社法上の可否から具体的な手法、会計処理(仕訳)、そして「濫用的会社分割」のリスクまで、専門家が分かりやすく解説します。
目次
会社分割と債務超過の関係|組織再編や経営再建に有効な理由
市場環境の変動が激しい昨今、事業ポートフォリオの見直しや組織再編の重要性が高まっています。特に会社分割は、経営資源の再配分や不採算事業の切り離しに有効な手段です。債務超過に陥った企業が経営再建を図る際にも活用できます。
組織再編だけでなく、事業再生の手段としても会社分割は注目されています。特に2024年以降、経済の不確実性が増す中で、債務超過企業の再建策としてその重要性はさらに高まると見られています。しかし、その実行可否は複雑な論点を含みます。
そこで、今回は、会社分割と債務超過の関係性に関して会社分割の実行可否を詳しくご説明します。債務超過に陥っており、事業再建に関心のある方は必見です。
会社分割と債務超過の基礎知識
まずはじめに、会社分割と債務超過に関して、それぞれ最低限知っておくべき知識をお伝えします。
①会社分割とは
M&A手法の一種である会社分割は、会社内からある事業部門を切り離して、それを他の企業に移転させる方法です。事業を切り離す側を「分割会社」と呼び、事業を引き受ける側を「承継会社」といいます。
すでに存在する企業に移転する方法は「吸収分割」、新しく設立する企業に移転する方法は「新設分割」と呼びます。
また、分割の対価を誰が受け取るかによっても分類されます。分割会社が対価を受け取るのが「分社型分割」で、分割会社が承継会社の(子)会社になります。一方、分割会社の株主が対価を受け取るのが「分割型分割」です。
※関連記事
会社分割の主な目的と手続きの概要
経営の効率性向上や企業提携を主な目的として、会社分割は利用されます。まれなケースですが、事業譲渡のようにビジネスを売買する目的で利用される事例もあります。
会社分割の実行前後では、資本構成や権利などが大きく変動するため、特別決議や債権者保護手続きが原則として必要となります。債権者や株主に対する影響が微小の場合には、その手続きを省略できます。
また、現金以外を対価として交付することができます。現金以外を対価とする際には、税負担を軽減するために、適格要件を満たすことがベストです。
非課税となる適格要件には、金銭不交付要件や関係を継続する要件があります。株式以外を対価とする場合には、登記手続きも必要となります。
②債務超過とは
債務超過とは、ある企業の負債総額が資産総額を上回っている状態です。債務超過の状況では、全ての資産を現金化しても、負債を返済できません。
単なる赤字と比べると、債務超過は非常に深刻な状態です。債務超過は破産の直接的な原因となり得るため、早急な改善が必要です。
債務超過に陥ると、金融機関からの新規融資が困難になり、取引先からの信用も失います。上場企業の場合は上場廃止基準に抵触する可能性もあります。そのため、通常のM&Aで会社全体を売却することは極めて困難です。
債務超過を解消する方法はさまざまありますが、会社分割を利用すれば解消可能です。債務超過の原因(不採算事業など)を切り離すことで、会社全体の財政状況を大幅に改善できます。実際に会社分割を用いて、債務超過の原因を切り離したいと考える経営者は少なくありません。
このように、会社分割には有用な面もありますが、複雑な手続きを要するうえ濫用的会社分割の問題などもあります。そのため、専門家のサポート下で進めていくほうがよいでしょう。
M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
※関連記事
会社法における債務超過会社の会社分割
債務超過会社が行う会社分割については、これまで数多く議論されていました。この項では、債務超過会社が会社分割を実行することについて、会社法の観点から妥当性を解説します。
①債務超過会社は会社分割を実行可能なのか?
債務超過会社が取り得る会社分割の選択肢は、主に下記の2つになります。
- 優良事業を切り離す
- 債務超過の要因を切り離す
どちらの選択肢を取っても、経営再建の足がかりとなります。各選択肢ごとに、会社分割を実行可能か考えてみましょう。
優良事業を切り離す
優良事業を会社分割により分社化し、その事業だけでも生き残りを図るケースです。つまり、優良事業を切り離す結果、分割会社が債務超過に陥る場合です。
法改正前(旧商法)までは、「債務履行の見込みがあること」を事前開示書類として要求されていたため、このケースの会社分割は認められていませんでした。
現行会社法への改正により、上記事前開示書類に修正が加えられ、分割会社は「債務履行に関する事項」を開示すれば良いこととなりました。債務履行が見込めないことを開示しても問題ないため、分割会社が債務超過に陥る会社分割は認められます。
債務超過の要因を切り離す
債務超過の要因を切り離し、分割会社の財政状態改善を図るケースです。つまり、会社分割により切り離す事業自体が、債務超過である場合です。
旧商法では、債務超過事業の会社分割は認められていませんでしたが、法改正により認められるようになりました。このケースでは、株主総会で状況説明が必要となります。
②債務超過会社が会社分割を実行する目的
債務超過会社は、経営を立て直すために会社分割を実行します。債務超過の要因を切り離したり、優良事業の存続を図れば、経営を大幅に立て直すことができます。債務超過の要因がなくなれば、経営再建のみならず会社自体のイメージ改善にもつながります。
※関連記事
債務超過の会社が会社分割を活用するメリット・デメリット
債務超過の会社が会社分割を行うことには、経営再建に向けた大きなメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。双方を理解した上で、慎重に検討することが重要です。
メリット①:不採算事業の切り離しによる経営再建
最大のメリットは、債務超過の原因となっている不採算事業を会社から切り離せる点です。これにより、分割会社本体は財務状況が改善された優良な事業体に生まれ変わります。銀行からの信頼を回復し、新たな資金調達や事業展開の道が開ける可能性があります。
メリット②:優良事業の保護と存続
会社全体が債務超過であっても、個別の事業の中には収益性が高く将来性のある「優良事業」が存在する場合があります。会社分割によってこの優良事業だけを別会社として独立させることで、親会社の経営状況に左右されることなく事業を存続・成長させることが可能です。
デメリット:手続きの複雑さと債権者との関係悪化リスク
会社分割は、株主総会の特別決議や債権者保護手続きなど、法的に定められた複雑なプロセスを経る必要があります。特に、債権者の利益を害するような分割(濫用的会社分割)と見なされた場合、後から分割が無効とされたり、取締役が損害賠償を請求されたりするリスクがあり、債権者との関係が悪化する恐れもあります。
債務超過会社の会社分割における会計処理(仕訳)
次に、債務超過会社が会社分割を実行した際の会計処理(仕訳)について説明します。分割会社と承継会社では処理内容が異なるため、それぞれの会計処理を解説します。
①分割会社の会計処理(仕訳)
切り離す事業が債務超過である場合には、初めにすでに保有している子会社株式の価額分を足し合わせます。足し合わせたうえで債務超過が残る際には、債務超過分の金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」という勘定科目を用いて、負債に計上します。
連結財務諸表上では、当該負債額は相殺されますが、個別財務諸表上では残ります。つまり、債務超過の金額は、分割後も負債部分に残ることとなります。
②承継会社の会計処理(仕訳)
会社分割により債務超過事業を引き継いだ会社側では、債務超過分の金額を「その他利益剰余金のマイナス」として処理します。債務超過分は、資本金や資本準備金、その他資本剰余金のマイナスには計上しません。
分割会社では「負債への計上」で対応する一方で、承継会社では「純資産の減少」として処理する点にはご注意ください。
※関連記事
債務超過の会社が会社分割を行う際の重要注意点
最後に、債務超過会社が会社分割する際の注意点をお伝えします。何も考えず自社の利益を最優先すると、後々思わぬ損失を被る恐れがあります。債務超過会社が、会社分割を実施する際は、この項で説明する注意点を意識することが重要です。
①濫用的会社分割
会社分割では、原則債権者に対して保護手続きを実行する必要があります。債権者から異議申し立てがなされた際には、弁済や担保提供を行わなくてはいけません。
債務超過会社にとって、債権者保護手続きは非常に厄介な手続きです。会社法の決まりを逆手に取れば、会社側は債権者の介入を防いだうえで、債務から逃れることができてしまいます。
会社法の債権者保護手続きでは、保護対象が「会社分割後に分割会社に対して債務の履行を請求できなくなる債権者」などに限定されます。
会社分割後も債権の一部を残しておいたり、分割会社が移転する債務を連帯保証すれば、債権者を保護対象から外すことが可能です。結果として債権者は、債務弁済や担保提供を請求する権利を失います。
以上のような、債権者の利益を著しく害する会社分割は、濫用的会社分割と呼ばれます。債務超過会社にとっては、一見すると非常に魅力的な手法に見えますが、後々大きな損失を被る可能性があります。
②濫用的会社分割のリスクと法的対抗措置
濫用的会社分割に対して、債権者はさまざまな対策を施すことが可能です。例えば、会社法第429条に基づいて、取締役に対して責任を追及し、損害賠償を受け取れます。また、詐害行為取消権を行使し、会社分割の効力を取り消すことも可能です。
つまり、濫用的会社分割を実行すると、損害賠償を請求されたり、会社分割の効力を取り消しされたりする可能性があります。濫用的会社分割は、理論上便利であるものの、成功する可能性はほぼ0です。
上記で述べたデメリットが生じる上に、会社の信用力は一気に低下します。債務超過会社が会社分割を実施する際は、濫用的会社分割とならないように注意しましょう。
※関連記事
まとめ
今回は、会社分割と債務超過の関係を解説しました。債務超過会社にとって、会社分割は非常に役立つ手法です。債務超過部分を切り離したり、優良部分を独立させることで、経営再建を実現できます。
従来は認められていませんでしたが、会社法改正によって債務超過会社も会社分割を実行できるようになりました。債務超過会社が会社分割を行うときは、債権者の利益を蔑ろにしてはいけません。
自社の利益を最優先し、債権者の利益を著しく害すると、後々大きなダメージを被るかもしれません。会社分割の際には、あらゆる関係者の利益を考えて実行することが求められます。要点をまとめると、下記になります。
・会社分割とは
→会社内からある事業部門を切り離して、それを他の企業に移転させる方法
・債務超過とは
→ある企業の負債総額が資産総額を上回っている状態
・債務超過会社による会社分割
→会社法の改正により実施可能となった
・債務超過会社が会社分割を実行する目的
→経営再建、会社に対するイメージの改善
・債務超過会社の会社分割における会計処理(分割会社)
→債務超過分の金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」として負債計上する
・債務超過会社の会社分割における会計処理(承継会社)
→債務超過分の金額を「その他利益剰余金のマイナス」として処理する
・債務超過会社が会社分割する際の注意点
→濫用的会社分割を実行すると、債権者から責任追及されたり、詐害行為取消権を行使されたりする可能性がある
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短43日、平均7.2ヶ月のスピード成約(2025年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
あなたにおすすめの記事
M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
近年はM&Aが経営戦略として注目されており、実施件数も年々増加しています。M&Aの特徴はそれぞれ異なるため、自社の目的にあった手法を選択することが重要です。この記事では、M&am...
買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説
買収には、友好的買収と敵対的買収とがあります。また、買収に用いられるM&Aスキーム(手法)は実にさまざまです。本記事では、買収の意味や行われる目的、メリット・デメリット、買収のプロセスや...
現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説
M&Aや投資の意思決定するうえでは、今後得られる利益の現時点での価値を表す指標「現在価値」についての理解が必要です。今の記事では、現在価値とはどのようなものか、計算方法や割引率、キャッシ...
株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説
株価算定方法は多くの種類があり、それぞれ活用する場面や特徴が異なります。この記事では、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセス、株...
赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説
法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。しかし、会社は赤字だからといって、必ず倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリット...
関連する記事

海外M&Aのメリットや手法は?買収の目的や事例10選を解説!
国内企業が海外企業とM&Aを行う場合がありますが、海外企業とのM&Aには地政学リスクなどの国内企業とのM&Aとは違った注意点があります。この記事では、海外企業とのM&am...

税務DDの目的や手順・調査範囲を徹底解説!M&Aにおけるリスクは?
M&Aの成功のためには、税務DD(デューデリジェンス)が重要です。税務DDとは、企業が他の企業を合併や買収する際に行う重要な調査の一つです。本記事では、税務DDの目的、手順、調査範囲、実...
M&Aの事業譲渡とは?合併との違い、手続き、メリットまでわかりやすく解説
M&Aの手法である事業譲渡は、会社の一部または全部の事業を売買する取引です。会社ごと統合する合併とは異なり、柔軟な事業承継が可能です。本記事では、事業譲渡と合併の明確な違いや手続き、メリ...
株式交付とは?株式交換との違いから手続き手順・メリット・デメリットを解説!
株式交付は有効なM&Aの手法で企業の合併や買収の際に使用され、手続きが難しいので正しく把握しなければスムーズに取引を進めることはできません。 そこで本記事では株式交付を詳しく解説し...
兄弟会社とは?意味や関連会社・関係会社との違いを詳しく説明!
本記事では、兄弟会社とは何か、その意味と構造、関連会社や関係会社との違いについて詳しく解説します。兄弟会社の役割、設立のメリットと課題、それぞれの会社タイプが持つ独自のポイントと相互の関係性につ...
法務デューデリジェンス(法務DD)とは?目的から手続きの流れまで徹底解説!
M&Aは事業継続やシェア拡大の目的達成のために行われ、その取引を成功させるためにも法務デューデリジェンスは欠かすことができません。そこで本記事では法務デューデリジェンス(法務DD)を詳し...
トップ面談とは?M&Aにおける役割や進め方・成功のためのポイントも解説!
トップ面談は、M&Aの条件交渉を始める前に行われる重要なプロセスです。当記事では、M&Aにおける役割や基本的な進め方を確認しながらトップ面談の具体的な内容と知識を解説します。トッ...
ディスクロージャーとは?M&Aにおける意味やメリット・デメリットまで解説!
ディスクロージャーは、自社イメージの向上や株価の上昇を実現する目的として実施されることが多いです。 本記事では、そんなディスクロージャーの意味や種類、メリットとデメリット、実施のタイミングなど...
連結会計とは?連結財務諸表の作成方法から修正・おすすめ管理システムまで紹介!
対象の財務諸表を連結修正を行って正しい金額(連結会計)に再計算をする必要があります。ここでは、そもそも連結会計とはどういうものなのか、連結決算には絶対必要な連結財務諸表の作成方法から連結修正の方...
















株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。