M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年9月30日更新会社・事業を売る
会社譲渡したらどうなる?メリットや実施後の影響など事例を交えて解説
現代において、M&Aで会社譲渡を実施もしくは検討する会社が増加傾向にあります。しかし、なぜ会社を譲渡するのか、どのような影響を及ぼすのかと思う方もいるでしょう。本記事では、会社譲渡についてのメリットとデメリット、手続、事例まで徹底解説します。
目次
会社譲渡とは
会社譲渡とは、自社を除いた他の会社・個人に対して、自社の株式を譲り渡して経営権を移す行為のことです。主として、会社の経営から退いたり、後継者不在に悩んでいたりする際に採用されます。
ここからは、会社譲渡と、株式譲渡(経営権を他社に移す行為)および事業譲渡(事業に関する資産などを譲る取引)との関係性や違いを見ていきましょう。
株式譲渡との関係性
株式譲渡
株式譲渡とは、会社譲渡を行う際に用いられる手法です。とはいえ、議決権の保有割合が過半数に達する譲渡でなければ経営権の移行は生じないため、「会社譲渡とは、経営権の譲渡が伴う株式譲渡」であると把握しましょう。
特に中小企業が行う会社は自社の全株式を譲り渡すケースが大半であるため、中小企業による株式譲渡のほとんどは会社譲渡に該当すると認識されています。
事業譲渡との違い
事業譲渡
会社譲渡はすべての株式を譲り渡して会社自体を売却する行為であるため、事業にかかわる資産などを譲る事業譲渡とは大きく手法が異なります。会社譲渡は譲渡益を株主が得るのに対し、事業譲渡では対価を会社が受け取るのです。
会社譲渡では経営権の所在に変更が生じる一方で、事業譲渡では対象事業の経営主体のみに変更が生じる点に相違が見られます。事業譲渡では、仮にすべての事業にかかわる資産などを譲渡対象に指定しても、各種契約などは引き継がれないため、会社譲渡には該当しません。
会社譲渡が増えている理由
会社譲渡の件数は増加傾向にありますが、その理由は主に以下のとおりです。
①後継者問題に悩む経営者が増えた
従来は経営者の子供など親族が次期経営者に据えられて経営の引き継ぎが行われるケースが多く見られました。しかし、近年は少子化による後継者不足や子どもの意向を尊重する親の増加などを受けて、周囲に適切な後継者を見つけられない会社が増加しています。
次の経営者が見つけられず、親族・関係者を除いた第三者の会社に事業承継を行うために会社譲渡の件数が増加しているのです。
②経営者の高齢化
中小企業庁「2024年版中小企業白書」
出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/chusho.html
中小企業庁の「2024年版中小企業白書」によると、経営者年齢が最も多い層は2015年は65~69歳に対し2023年は55~59歳となっておりかつ、分布としても平準化されています。しかし、経営者が70歳以上である割合は2000年以降最も高い状態です。
年齢が高まると、若い世代よりも身体的な問題の発生・病気の発症・持病の悪化などのリスクが高まるため、経営を継続できなくなった会社は、会社を選択するケースが増えているのです。
③人手不足により仕事が回らない
日本では人口減少が進行しており、多くの企業が思うように人材を集められない状況に陥っています。一般的に、都市部では人口が増加傾向ですが、地方部では人口が減少しているため、地方の中小企業は事業に従事する社員の確保が喫緊の課題です。
一定数の人材を集められないと事業運営が継続できないため、地方では会社譲渡の増加傾向が大きく目立っています。
④大手企業による業界参入
一般的に、法改正・新制度の確立・トレンド/人口割合の変化などが起きると、その業界に再編の動きが見られます。既存の形態では今後の売り上げに影響がおよぶため、大手企業は会社・企業買収による事業基盤の確保を図るのです。
一方で、異業種への転換・参入に目を付ける大手企業も存在します。大手企業が新規進出すると、顧客の流出・売り上げ減少などが生じて、事業運営の継続が難しくなることから、中小企業における会社譲渡の件数が増加しやすいです。
⑤会社譲渡をイグジットに選ぶ経営者が増えた
これまで経営者の多くは会社経営を続けて後継者へ引き継がせる選択肢を採用する傾向にありましたが、現在は早い段階でのリタイア・新しい事業の開始・会社譲渡を目的とした経営を望む経営者が多く存在します。
自身の子供などといった関係者には会社を任せず、他の会社に売り渡して売却の対価を得ることを選ぶ経営者も多いため、会社譲渡の件数が増加しているのです。
➅中小企業の海外企業とのコスト争い
会社譲渡が増えている理由の一つとして、中小企業が海外企業とのコスト争いに勝つために、M&Aを活用することが挙げられます。
現代のグローバルなビジネス環境では、中小企業が海外企業に対抗することは容易ではありません。特に、コスト面での競争力において、海外企業には大きな優位性があります。
たとえば、生産ラインの海外移転や、低賃金の労働力の利用などが代表的です。
このような状況で、中小企業はM&Aを活用することで、海外企業とのコスト競争に勝つことができます。M&Aによって、生産ラインの統合や技術力・商品ラインの強化などの期待が大きいです。
売り手側の会社譲渡メリット
本章では、会社譲渡により株式を譲り渡して経営権を他の会社に移した場合に生じるメリット・デメリットを順番に見ていきましょう。
後継者問題への悩みが解決する
会社譲渡を用いると、他の会社が事業を引き継いでくれるため、自社の関係者などから後継者を探さずに済みます。買い手となる会社は「自社事業の規模拡大」「新規の参入」などを目的に会社・企業を譲受するため、事業承継による後継者問題の解決が可能です。
後継者問題が解決しないまま経営者の体調が急激に悪化すると、後継者探しが非常に困難です。たとえ後継者候補がいても経営を任せられるまでに長い期間を要する状況が想定されるため、突然の状況変化が起きた際にも、会社譲渡の採用には利点があります。
従業員の雇用が確保できる
廃業を行うと、従業員の勤務先が失われます。事業譲渡を行う場合、買い手が自社従業員と雇用契約を再び結んでくれるとはいい切れません。一方、会社譲渡であれば、会社自体を譲り渡すため、従業員の雇用契約も買い手に引き継がれます。
会社譲渡では、株主が買い手に変わるのみで会社の形態には変更が生じないため、新たな雇用先を探すことなく経営権を譲り渡せるのです。
譲渡益を獲得できる
会社譲渡は株式の取引を伴う手法であるため、売り手の株主は譲渡益を獲得できます。譲渡益を獲得できれば、引退後の生活費や興味を持った分野で会社を興す際の費用などに充てられるため、経営から手を引きやすいです。
個人担保や債務からの解放
個人担保・債務は、会社譲渡に伴い自然に解除されるわけではありません。とはいえ、買い手が金融機関と交渉して借入金を肩代わりする・融資の保証を肩代わりする場合は、売り手側は個人担保・債務から解放されます。
つまり、会社譲渡の交渉を進める際に、買い手に対して個人担保・債務の肩代わりを受け入れる旨の承諾を得るとメリットを享受できるのです。
買い手側の会社譲渡メリット
会社を譲り受けた側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。次は、買い手側の主なメリットを紹介します。
新規事業への進出
単一事業を行っている企業がリスク分散などを目的に事業領域を拡大を図るケースも多いです。しかし、新規事業への進出は成功すれば大きなメリットが得られる一方、自社の力だけで立ち上げるには時間がかかるうえ、従業員教育やノウハウ・技術の構築も必要です。
M&Aによって当該事業を展開している企業を取得すれば、新規事業への進出にかかる時間を短縮できるうえ、売り手企業のノウハウ・技術力・シェアも獲得できるので、スムーズな事業化を図れます。
事業展開への時間短縮
事業展開スピードを加速するためには、同業他社をM&Aで取得する方法が非常に効果的です。M&Aを行えば売り手企業の有形資産だけでなく、従業員・取引先・顧客・技術力・ノウハウ・ブランド力などの無形資産も引き継ぐことができます。
売り手側のシェアもそのまま引き継げるため、一気にシェアを拡大することも可能です。また、自社にない技術やノウハウを獲得することで競争力の強化が図れる点も買い手側にとって大きなメリットといえます。
節税の対策
M&Aの使用スキームによっては、節税効果が得られる点も買い手企業の大きなメリットです。買い手側はM&Aで売り手企業(事業)を取得した場合、法人税の課税対象となります。
株式譲渡や合併のように売り手側の資産・負債を包括的に承継するスキームでは、赤字を抱えている企業を取得した場合、買い手企業は赤字額を「繰越欠損金」として自社の売上(黒字分)を相殺することができるので、法人税額を抑えることが可能です。
また、赤字額は発生年月から7年間繰り越すことができるため、額によっては法人税を大きく削減することもできます。ただし、事業譲渡を活用した場合は赤字を引き継がないため「繰越欠損金」による節税はできません。
M&Aによる相乗効果が期待できる
会社譲渡のメリットの一つとして、M&A(合併・買収)による相乗効果が期待できます。
M&Aによる相乗効果とは、二つの企業が統合することで、合併前よりも大きな利益や成長が期待できることを指します。例えば、以下のような相乗効果が期待できます。
- シナジー効果:合併によって、二つの企業の強みを合わせることができます。そのため、従来の二社に比べて、より効率的に業務を行うことができるため、コストの削減や収益の向上が期待できます。
- 規模の拡大:二つの企業が合併することで、規模が拡大されます。大きな企業は、顧客からの信頼や地位が高くなり、新たな市場に進出しやすくなります。
- 新しい技術・商品の獲得:合併先の企業が持っている技術や商品を獲得することができるため、競合他社との差別化や、新しい市場に進出するための商品開発につながります。
以上のように、会社譲渡を通じてM&Aを行うことで、相乗効果が期待できます。
売り手側の会社譲渡デメリット
会社譲渡を行う際に問題となりやすいデメリットは、以下のとおりです。
新規事業開始への拘束が発生する可能性
会社譲渡を行うと、売り手の経営者は、買い手への引き継ぎに一定期間の拘束を受ける可能性があります。なぜなら、同じ事業の運営経験があっても、会社ごとに運営の仕方は異なるからです。これまでと同様のレベルで事業を運営する目的のもとで拘束が生じる点を把握しましょう。
会社譲渡では事業譲渡に存在する競業避止義務は定められていないものの、ほとんどの会社譲渡/株式譲渡契約では同一(近隣)の市町村で一定期間にわたり経営権を譲った事業を営んではならない協業避止義務が加えられるため留意しましょう。
希望どおりの譲渡ができない可能性
売り手は希望する期間を定めて、期間内で会社譲渡を実施しようと考えます。そのため、期間内に条件に合致する相手が現れなければ条件を下げざるを得なくなり、希望どおりの譲渡ができない可能性があるのです。
希望がとおる会社譲渡を目指すなら、交渉にかける期間を長めに設定しましょう。
譲渡後に簿外債務などが発覚する可能性
会社譲渡では、隠れた簿外債務なども買い手に丸ごと引き継がれます。そのため、会社譲渡を済ませた後で簿外債務などの存在が明らかになると、契約違反と指摘されて賠償請求を受ける可能性があるのです。
煩雑な手続き
会社譲渡には、様々な手続きが必要になります。例えば、法的手続きや税金の手続き、契約書の作成などです。
これらの手続きは非常に複雑で煩雑であり、専門的な知識が必要な場合があります。また、手続きには時間や費用がかかることもあります。
株主総会の特別決議の契約が必要
会社譲渡には、株主総会の特別決議が必要になる場合があります。特別決議は、会社法によって定められた手続きであり、株主の承認が必要です。
特別決議を行うためには、事前に株主に通知する必要があるため、手続きが複雑になることもあります。
仲介手数料や譲渡所得税が発生
会社譲渡には、仲介手数料や譲渡所得税が発生することがあります。仲介手数料は、譲渡に関与した業者が貰う手数料であり、譲渡所得税は、譲渡によって得た所得に対して課税される税金です。
これらの費用は、譲渡価格によって異なりますが、高額な場合があるため、注意が必要です。
買い手側の会社譲渡デメリット
買い手側に起こり得るデメリットには、以下の3つが考えられます。
従業員のモチベーション低下
M&A後は売り手企業と自社の従業員はともに業務を進めることとなりますが、労働環境や企業風土の変化に馴染めなかったり、従業員同士で摩擦が起きてしまったりする可能性もあります。
そのような状況となれば従業員のモチベーション低下を引き起こす要因となり、離職につながるリスクもないとはいいきれません。M&A後の事業運営を円滑に行うためにも、買い手企業はPMIを丁寧に進める必要があります。
簿外債務を引き継ぐ
売り手企業を譲受する場合、簿外債務や偶発責務を引き継ぐ可能性もあります。簿外債務とは、未払い残業代や買掛金など貸借対照表に記載されない債務のことで、発生する要因は中小企業の場合は大企業と会計基準が違うためです。
簿外債務がある場合、将来的には買い手側企業が負担することとなるため、その額が大きければ経営に影響をおよぼすおそれもあります。そのため、買い手企業はデューデリジェンスを丁寧に行い、リスク回避に努めることが重要です。
シナジー効果が出ないリスク
買い手企業が買収を決定する際、M&A後にどの程度の効果が得られるかが大きな判断材料となります。M&Aのメリットを最大化するためにはシナジー発揮が不可欠ですが、短期間で想定していたシナジー効果が得られるケースはあまりありません。
シナジーが十分発揮されるためには相応の時間が必要ですが、なかにはマイナスとなるアナジー効果がでてしまう場合もあります。買い手企業は、そのようなリスクも十分理解したうえでM&Aを行わなければなりません。
会社譲渡の注意点
会社譲渡を行う際に注意を払う必要がある点は、以下のとおりです。
①取引先との関係が悪化するおそれがある
場合によっては、会社譲渡に反対する取引先が現れる可能性があります。これにより、会社譲渡後の取引に支障をきたすおそれがあるのです。取引先からの反発を避けるためにも、取引の実施が確定したら丁寧な説明を行いましょう。
②連帯保証人の書き換えが必要なケースがある
会社譲渡によって経営者が変更した場合でも、現在の債務者である売り手企業の経営者と債権者の関係に変更は生じません。しかし、現在の経営者が会社の連帯保証人となっているケースでは、新たな経営者に連帯保証人を書き換える手続きが求められます。
連帯保証人の書き換えを行うには多くの時間が必要なため、会社譲渡がスムーズに済ませられないおそれがあります。こうした事情を受けて、連帯保証人の書き換えは行わずに、会社譲渡のタイミングで銀行に一括返済するケースも少なくありません。
債権者に影響がおよぶことはないものの、現在の経営者が連帯保証人である場合は要注意です。
③会社譲渡による税金
会社譲渡を行うと、株式を売り渡す主体に対して税金が課されます。個人株主が株式を売り渡すと、住民税・復興特別所得税・所得税として、譲渡所得に対して20.315%が課せられる決まりです。
法人株主が株式を売り渡すと、住民税・法人事業税・法人税の支払い義務が生じ、譲渡所得に対して約31%が課せられます。
会社譲渡時の処遇・影響
この章では、会社譲渡後の処遇について見ていきましょう。
代表者の処遇
まずは、代表者の処遇です。会社譲渡を行うと、経営権は買い手へ移行します。このとき、売却側の代表取締役は退き、買収側から新しい代表取締役や役員が派遣されることが多いです。
退任する代表取締役はそのままリタイアするケースもあります。しかし、スムーズな引継ぎのために、代表権のない会長や相談役などの役職で、両者の協議で決まった期間は会社にとどまり、引継ぎが完了したときに退職するケースが少なくありません。
大手企業の傘下に入った後も代表者としてとどまり、買収側の経営資源を生かしてさらに成長を進める代表者もいます。
株主の処遇
譲渡会社の株主は、譲受会社に対して保有している株式を売却することで、株主としての立場を失うことになります。売却後は、彼らの手元の株式は完全になくなってしまいます。
従業員・役員の処遇
従業員・役員は全員引き継がれ、処遇もしばらくは従来どおりであることが多いです。友好的なM&Aでは、従業員の士気を落とさない形で会社を引き継ぐことが重要なので、すぐに人員削減を行ったり給与水準を下げたりすることは稀(まれ)です。
しかし、会社譲渡の完了以降は買収側が経営権を握るため、買収側の経営方針により待遇を変えられる可能性もあります。
取引先の影響
会社譲渡が行われた際も取引先との関係を継続することが多いです。その際は、契約を買収側企業の名義に変更します。しかし、会社譲渡が行われた後に契約内容の変更がされた場合、取引先からの反発や契約の打ち切りの可能性がありますので注意が必要です。
会社名の変更
会社名もそのまま継続することがほとんどです。従業員や取引先の混乱を避けるために、会社名は継続したほうが良いケースが多いからです。ただし、買収側のグループ企業であることを会社名で示すほうが、会社の成長に役立つこともあるので、M&Aの契約時点で今後の社名を取り決めましょう。
債権者への影響
最後に、債権者への影響です。ほとんどの中小企業は、経営者が会社債務に関して個人保証や、個人資産を借入金の担保にしていたりします。一般的に、M&Aにより経営権が移動するときは、経営者の個人保証や個人資産の担保提供は解除されます。
会社譲渡による資産・負債の行方
会社譲渡による資産・負債の行方には、以下の3点があります。
会社の資産
譲渡される会社の資産は、譲渡契約書に基づいて引き継がれます。
具体的には、譲渡契約書に譲渡される資産が明示され、その資産を引き継ぐための手続きが取られます。
譲渡される資産
- 現金
- 有価証券
- 不動産
- 債権など
会社の負債
譲渡される会社の負債についても、同様に譲渡契約書に基づいて引き継がれます。ただし、負債は引き継がれるわけではなく、引き継ぎたい負債は明示的に譲渡契約書に記載されます。
例えば、譲渡先の会社が譲渡される会社の借金を引き継ぐ場合、その借金額が譲渡契約書に記載されます。
譲渡契約書に明示されなかった会社の資産や負債については、引き継がれません。
つまり、譲渡される会社の残された資産や負債は、譲渡される前の会社に残ります。
借入金の連帯保証や個人資産の担保提供
会社譲渡による資産・負債の行方について、借入金の連帯保証や個人資産の担保提供の場合について説明します。
借入金の連帯保証
連帯保証とは、複数の人が同じ契約に対して保証人として連帯して担保を提供することをいいます。会社が借入金の連帯保証をしている場合、会社譲渡後も借入金の債務が残ります。つまり、会社譲渡後も会社が保証人として債務不履行がある場合、保証をした者がその債務を負担することになります。
個人資産の担保提供
個人資産の担保提供とは、借入金などの債務に対して、借り手が自身の資産を担保として提供することをいいます。会社が個人資産の担保提供をしている場合、会社譲渡後もその借入金の債務が残ります。つまり、会社譲渡後も借入金の債務不履行がある場合、担保提供者がその債務を負担することになります。
注意点として、会社譲渡前に担保提供者との間で債務の引き継ぎや解除の手続きが行われている場合は、譲渡後にその手続きを反映させる必要があります。また、個別の契約内容や法令等により異なる場合があるため、詳細は契約書や専門家の意見を参考にすることが重要です。
会社譲渡を行う手順・流れ
本章では、会社譲渡を行う大まかな手順・流れを取り上げます。
①社内でM&Aの実施を検討
まずは、社内でM&Aの実施を検討します。経営者が会社譲渡を行うと決めても、すぐに手続きへと移れません。目的を達成するためには、どういった方針で譲渡を行うのか固める必要があります。
検討する内容は、大きく分けて下記の3つです。
- 会社譲渡が自社にとって最善の経営判断なのか
- 会社譲渡の相手はどういった会社を選ぶのか
- 何月何日までに会社譲渡を終えるのか(期日)
②M&A仲介会社への依頼
会社譲渡の実施を考えている場合、実際に手続きを進めていく前にM&A仲介会社に相談・依頼すると良いでしょう。M&A仲介会社は、会社譲渡を含むM&A取引の実務をサポートする専門家です。
そもそも会社譲渡の手続きをスムーズに進めていくには、財務・税務・法務など多方面にわたる専門知識が求められます。そのため、自社のみでM&Aを進めることは非常に困難であるうえ、失敗のリスクが高いです。
M&Aに関する知識・ノウハウ・実績を豊富に持つ仲介会社にサポートを依頼すると、会社譲渡を安心して進められます。
③企業価値評価の実施
会社譲渡を成功させるうえで、自社の価値および譲渡金額における相場の把握は必要不可欠です。これらを把握しなければ、一般的な相場よりも安い価格で会社譲渡を進めてしまうおそれがあります。
とはいえ、自社の価値・譲渡相場金額などの算定は専門的で高度な知識が求められるため、企業価値評価のサービスを提供するM&A仲介会社に算定を依頼すると良いでしょう。
④相手先企業とのマッチング
企業価値評価のプロセスを済ませたら、会社譲渡を行う相手先とのマッチングを図ります。最近は後継者不在などの影響を受けて、会社譲渡を行う相手を見つけられない会社も少なくありません。
しかし、幅広いネットワークを有しているM&A仲介会社に依頼すると、自社にふさわしい相手先候補探しをスムーズに進められます。自社のみで適切な相手を見つけるのは非常に困難であるため、早期のタイミングでM&A仲介会社に相談を持ちかけましょう。
⑤トップ面談の実施
次は、トップ面談の実施です。良さそうな相手が見つかり、相手側も会社譲渡を進めたい意向であれば、トップ面談を行います。
トップ面談では、経営者同士が実際に会社譲渡について話し合います。会社譲渡の経験がなくて「何を話し合えば良いのかわからない」といった場合でも、M&A仲介会社が間に入って進めるので安心です。
⑥基本合意契約書の締結
買収側から意向表明書が出されたら、内容を確認して問題がなければ同意します。意向表明書に同意すれば、基本合意の契約です。基本合意契約は、会社譲渡に対してお互いが前向きであることを示すものです。そのため、次の手順であるデューデリジェンスで問題がない場合は、会社譲渡が成立する可能性が高まります。
⑦デューデリジェンス(買収監査)の実施
次の手続きは、デューデリジェンス(買収監査)の実施です。買い手側が、デューデリジェンスの手続きを行います。
デューデリジェンスは、売り手企業の調査をすることで、法務、税務、会計などの詳細な資料の提出、会社や工場などへの専門家による訪問などを実施するのです。買い手側が会社譲渡によるリスクを下げ、対策を取るために行います。
⑧会社譲渡に必要な手続きの実行
相手先企業とのマッチングに成功したら、次は会社譲渡に必要な手続きを行いましょう。ここではさまざまな手続きが求められるため、次章で詳しく取り上げます。
⑨会社譲渡の成立・公表
会社譲渡の手続きが終了し、取引の成立を迎えます。このタイミングで、譲渡金額の受け渡しなどが行われる段取りです。
合わせて、会社譲渡の実施を公表しなければなりません。中小企業のケースでは従業員・取締役に対する説明を、大企業の場合はマスコミへの発表などをそれぞれ行いましょう。
公表する時期を見誤ると、従業員や取引先などに不信感を与えるおそれがあります。会社譲渡の実施が確実に決定した後に、丁寧に公表するよう心がけましょう。
⑩会社の引き継ぎプロセスの実施
会社譲渡における最終的なプロセスは、会社の引き継ぎ作業です。このプロセスをおろそかにすると従業員の退職やその後における会社経営の失敗などにつながるおそれがあり、相手先企業に大きな迷惑をかけてしまいかねません。
焦ることなく、丁寧にプロセスを遂行しましょう。
会社譲渡に必要な手続きの方法
ここでは、前章で取り上げた「会社譲渡に必要な手続き」の方法を、以下の5項目に分けて取り上げます。
①株式譲渡の承認請求
はじめに、会社譲渡を行う際の手法である株式譲渡の承認請求を行いましょう。譲渡制限株式を譲渡する場合、それを行う者は「株式譲渡承認請求書」を準備したうえで、譲渡の承認請求を実施する必要があります。
とはいえ、中小企業における会社譲渡では、経営者と株式を譲渡する者が同一人物であるケースが多いため、譲渡承認請求手続きを行う前のタイミングで合意を取り付けられる場合もあります。
②取締役会または株主総会の招集
株式譲渡に関する承認請求を行った後は、その承認決議を取る目的のもと、取締役会または株主総会を招集しましょう。承認請求を受けた会社が取締役会設置会社であれば、原則として取締役会が承認機関に該当します。
非取締役会設置会社である場合は、臨時株主総会を開催したうえで承認決議を進めなければなりません。このときは、招集通知を株主総会の1週間前までに送る必要があります。
③株式譲渡契約の締結
承認決議の結果として株式譲渡請求が承認され「承認通知」を受け取った後は、株式譲渡契約を締結しましょう。ここでは、取引の当事者双方によって「株式譲渡契約書」と呼ばれる契約書の作成が求められます。
④株主名簿の書き換え請求
株式譲渡契約の締結後は、「株主名簿の書き換え請求」を実施しましょう。会社譲渡は株式の単純な譲渡のみでは成立せず、会社の保有する「株主名簿」の書き換えによって初めて効力を発します(その譲渡を第三者に対抗できるようになります)。
こうした事情から、株式譲渡取引の当事者は、会社に対して「株主名簿書き換え請求」を実施したうえで、株主の名簿を変更してもらわなければなりません。
⑤株主名簿記載事項証明書の交付請求
最後に、株主名簿記載事項証明書の交付請求を受けましょう。株式譲渡により誕生した新たな株主は、株主名簿に自身の名前が記載されていることを確認する目的で、会社に対して株主名簿記載事項証明書を請求します。この請求を受けた会社は、交付に応じる段取りです。
以上のプロセスが終了すると、会社譲渡に必要な手続きが完了します。会社譲渡では複雑かつ膨大な手続きが求められ、不備なく実施するには専門的で高度な知識が必要なので、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼すると良いでしょう。
M&A総合研究所は中小・中堅規模のM&Aを得意としており、支援実績を豊富に持つM&Aアドバイザーによる案件のフルサポートを行っております。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談をお受けしておりますので、M&Aによる会社譲渡をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
会社譲渡の手続きに求められる書類
会社譲渡では、大まかに以下における書類の準備・提出が求められます。
- 株式譲渡承認請求書
- 株主総会招集に関する取締役の決定書
- 臨時株主総会招集通知
- 臨時株主総会議事録
- 株式譲渡承認通知書
- 株式譲渡契約書
- 株式名義書換請求書
- 株主名簿
- 株主名簿記載事項証明書交付請求書
- 株主名簿記載事項証明書
会社法の規定により求められる書類が多く存在するため、法務に精通した専門家からサポートを受けつつ、不備および漏れのないようにそろえてください。
会社譲渡の相場と算出方法
会社譲渡を行う経営者にとって、取引価格の相場は意識すべき要素の一つです。そこで、本章では、会社譲渡を行う際の大まかな相場および算出方法を見ていきましょう。
大まかな相場
会社譲渡の大まかな相場を求める際は、簡易的な方法である年買法を用いると良いでしょう。年買法の計算式は以下のとおりです。
- 修正純資産+営業利益✕3~5年
会社譲渡における修正純資産が2億円・営業利益が2,000万円であるケースを想定すると、取引価格の目安は「2億円+2,000万円✕3~5年=2億6,000万円~3億円」と算出されます。
譲渡価格の算出方法
会社譲渡の相場をより詳しく算出するには、「時価純資産法」「DCF法」「類似会社法」などの計算方法が採用されます。時価純資産法とは、評価時点において会社が保有している資産の時価合計額から負債の総額を控除した額を企業価値(取引価格)とする計算方法のことです。
DCF法とは、会社が将来的に生み出す価値を、フリーキャッシュフローをベースに割り引いて現在価値に換算する計算方法をさします。類似会社法とは、対象会社と事業内容や規模などが類似する上場会社の財務指標や株価から対象会社の株価を計算する計算方法のことです。
自社に適した計算方法を選択し、必要に応じて組み合わせながら、会社譲渡の相場を算出します。
コストアプローチ
企業の純資産を基準に企業価値評価をする方法が、コストアプローチです。コストアプローチには、時価純資産価格法や修正簿価純資産法があります。
帳簿上におけるすべての資産と負債を時価で再評価して、純資産の金額を計算し企業価値評価をする方法が、時価純資産価額法です。
修正簿価純資産法では、すべての資産と負債を再評価しません。有価証券や土地・建物などで含み損益が大きい項目のみ時価を修正して企業価値評価を行います。すでにある帳簿上の結果をもとに算出するため、客観性に優れている方法です。ただし、将来会社が生み出す利益が加味されません。
インカムアプローチ
将来期待される収益を、その実現に見込まれるリスクなどを考慮した割引率で割引くことによって企業価値評価をする方法が、インカムアプローチです。インカムアプローチでは、DCF法(Discount Cash Flow法)を用います。
売却側の資産や事業計画書などを元に、譲渡後どれくらいの収益が見込まれるのかを計算して企業価値を算出します。将来見込まれる利益やリスクを加味できるので、会社譲渡で用いられることが多いです。
マーケットアプローチ
株式市場で成立する価格をもとに企業価値評価をする方法がマーケットアプローチには、類似業種比準方式や類似会社比準方式による算定があります。
評価対象の企業と同じ業種・同じ規模の標準的な企業と比べて、企業価値評価をする方法が、類似業種比準方式です。会社譲渡のときは用いられず、相続税の算定時に使われます。
類似会社比準方式とは、対象企業と同一業種・同一業界の上場企業における株価をもとに、企業価値評価をする方法です。会社が有する資産が少なくても、業界の価値が高かったり先進的なビジネスモデルであったりすれば、高い相場金額になります。
会社譲渡で高値になりやすい条件
会社譲渡をする場合、なるべく高値での譲渡をしたいと考えるでしょう。今回は、譲渡価額が高くなりやすい会社の特徴をお伝えします。
強みがある
他社では持っていない強みといえる部分がある場合は、その部分をアピールしましょう。自社には何もないと感じている方もいますが、技術力やブランド力だけではなく、顧客リストや独自エリア・優秀な社員も強みとなり得ます。特に買い手側が求める強みを持っている場合は、特に高く評価されるでしょう。
もし強みが見つからないという場合は、従業員にアンケートを取ってみると、客観的に見てどこに強みがあるのか探すことができます。小さなことでも、買い手にとっては貴重な強みと評価されるため、しっかり洗い出しを行ってください。
健全な法務・財務状況
健全な法務・財務状況でなければ、M&A時にトラブルにつながりやすいです。そのため、事前に訴訟問題や取引先との契約、簿外債務の有無などを確認しましょう。
健全な法務・財務状況でない場合、価額が下げられるだけでなく、会社譲渡がなくなる可能性があります。
収益力が高い
買い手にとって安定した収益性のある企業は、将来性の判断をするための基準になります。そのため、自社の収益性や経費に関して知っておきましょう。
また、M&A直前まで収益を上げる努力を怠らないようにしましょう。M&A直前に業績が上がり買い手から評価されたことで、売却価格を高められた事例もあります。
個人・法人株主の会社譲渡による税務
個人株主と法人株主のどちらが会社譲渡による税務上の影響を受けるかは、その株主の立場や状況によって異なります。
個人株主の場合
会社譲渡によって譲渡価格が発生した場合、個人株主はその譲渡益に対して所得税と住民税が課税される可能性があります。
ただし、株式の取得時期や取得原価、所得の種類や節税措置の有無などによって税率は様々です。また、一定の条件を満たせば、譲渡益の非課税措置が適用される場合もあります。
法人株主の場合
会社譲渡によって譲渡価格が発生した場合、法人株主はその譲渡益に対して法人税が課税されることが多いです。
ただし、法人税においては、会社の利益に対する所得控除や損金算入などの節税措置があるため、実際に課税される税額は多少異なってきます。
会社譲渡の税務上問題が生じるケース
税務上問題が生じる可能性があるケースには、第三者間取引のケースと同族会社・関係者間取引のケースがあります。
それぞれのケースについて説明します。
第三者間取引のケース
会社譲渡によって譲渡価格が発生する場合があります。この場合、第三者間取引により譲渡価格が実際の企業価値と乖離していると、課税上の問題が生じる可能性を考えたほうがいいでしょう。
例えば、譲渡価格が企業価値よりも低い場合、差額分が譲渡益として課税される可能性があります。また、逆に譲渡価格が企業価値よりも高い場合には、贈与税の問題が生じがちです。
同族会社・関係者間取引のケース
親族や友人など、譲渡元と譲渡先の間に親密な関係がある場合に問題が生じる可能性があります。
同族会社・関係者間の譲渡価格が税務上の時価よりも低すぎる
譲渡価格が実際の企業価値よりも低い場合、贈与税の問題が発生する可能性があります。贈与税とは、企業の価値を実際の価値よりも低く譲渡した場合に課税される税金のことを指します。
贈与税が発生すると、譲渡価格が実際の企業価値よりも低い場合には、譲渡元が税金の支払いが必要です。そのため、企業の価値を譲渡する際は、十分な注意が求められます。
同族会社・関係者間の譲渡価格が時価よりも高すぎる
特別な関係がある場合、譲渡価格に影響を与える可能性があります。また、それが税務上の問題を引き起こすことも考えることが必要です。
これは、譲渡元と譲渡先間の価格が、独立した第三者による評価と比較して高すぎる(低すぎる)場合に特に言えます。
会社譲渡をスムーズに成功させるコツ
会社譲渡を進めて成功に導くためには、以下の点を押さえて実践しましょう。
①譲渡検討・交渉までに企業価値を上げる
買い手は売り手のリスクを意識するため、良い点を伸ばすだけでなく、短所を補うことも心がけましょう。利益率の向上を図れば買い手には魅力のある会社として映るため、譲渡先が現れやすいです。
長期にわたる計画は会社譲渡までに完了できない可能性があるため、短期の計画に変更するか計画を中止させると良いです。これにより、会社譲渡に取りかかる前に決算を完了できるため、取り組んでいた計画の成果が現れて買い手への印象アップにつなげられます。
②会計や税務に不備がないか確認する
会社譲渡では、提出した財務資料に不備が見られると、取引額などの条件が下げられたり、契約に反しているとして賠償請求を受けたりと不利益を被ります。そのため、未払いの給料や退職金がないか・隠れた簿外債務がないかなどを確かめましょう。
③譲渡先への正確な情報開示を行う
会社譲渡では、条件の変更をおそれて会社の情報を隠すことは避けましょう。情報の隠蔽(いんぺい)が後で明らかになると、会社譲渡が中止になるだけでなく、契約違反に問われるおそれがあります。会社譲渡の前に不利益となる点を正せなくても、正直に打ち明けてください。
④情報漏えいに注意する
会社譲渡に取り組んでいる事実が関係者に伝わってしまうと、取引の見直し・社員の離職などを招いてしまいます。そのため、会社譲渡に取りかかる際は、担当する者を限定したうえで、買い手の面談・監査・専門家との話し合いなどに関する情報漏えいを回避しましょう。
⑤会社譲渡の専門家に相談する
これまで紹介したように、会社譲渡はさまざまな点に注意を払って進めなければ成功させることが難しいです。そのため、会社譲渡を行う際は、専門家への相談がベストな選択肢といえます。
専門家にはM&A仲介会社をはじめ、公的機関・金融機関・地元の士業なども挙げられるため、自社の会社譲渡に適した相手を選びましょう。
会社譲渡の成功事例
趣味なびによるGMOメディアへの会社譲渡
2024年8月、GMOメディアは趣味なびの株式取得し、子会社化することを発表しました。
GMOメディアはメディア事業を収益のベースとし、成長領域として教育・美容医療関連事業へ投資を行っています。具体的にはコエテコ byGMOというプログラミング教育プラットフォームでは老若男女問わず、幅広い学びの場を提供しています。
趣味なびは全国の趣味教室やワークショップ探しのプラットフォーム運営を行う企業です。先生と参加者のマッチングだけではなく、コミュニティを活用し、マーケティングなどに活用しています。
今回のM&Aにより、趣味なびの先生にコエテコ byGMOを利用してもらうことでオンラインでのバリエーション展開が可能になるため、既存の先生だけでなく新規の先生獲得につながりさらに事業展開が発展するとしています。
参考:趣味なびの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
高橋汽罐工業によるJRCへの会社譲渡
2024年8月、JRCは高橋汽罐工業の全株式を取得し子会社化することを発表しました。
JRCは1961年の創業以来、屋外用ベルトコンベヤ部品の設計・製造・販売を主軸に展開してきました。近年では、製品提供だけでなく、現場でのメンテナンスやソリューションなどのサービスにも注力しています。当社グループとして、コンベヤ搬送分野を超えたトータルソリューションの提供を目指しています。
高橋汽罐工業は、1963年の設立以来、原子力・火力・バイオマス発電所や大手製紙会社、食品会社などの工事で高い技術力と信頼性を築いてまいりました。横浜を本社とし、全国規模で事業を展開しており、2024年3月期には売上高約18.7億円、営業利益約4.3億円を達成し、自己資本比率68%以上の安定した財務体質を維持しています。
今回のM&Aにより、既存顧客に付加価値の高いコンベヤソリューションを提供することで、ソリューション売上高比率が高まり、グループの事業拡大が見込まれます。また、JRC C&Mと高橋汽罐工業のM&Aによって、製造技術のシナジーが生まれ、サービス提供範囲が拡大します。さらに、高橋汽罐工業は、当社の人材採用力と安定した事業を活用し、施工人員の拡充や受注拡大を進めることで、持続的な成長と収益力向上が期待されます。
参考:高橋汽罐工業の株式の取得(子会社化)
保険マンモスによるじげんへの会社譲渡
2024年8月、じげんは保険マンモスの株式を取得し連結子会社化することを発表しました。
じげんインターネットを通じて生活をつなぐプラットフォームを提供しています。ライフサービスプラットフォーム事業では、複数のインターネットメディアの情報を統合し、一括検索・応募・問い合わせが可能なEXサイトや、特定業種・地域の企業情報を集約した特化型メディア、リアルサービス、提携先へのソリューション提供など、様々なビジネスモデルを展開しております。
保険マンモスは、ライフプランニングやコンサルティング能力の高いフィナンシャルプランナー(FP)と提携し、保険相談サービスやイベント事業を展開しています。保険相談サービスでは、保険情報サイトから集客し、ユーザーとFPをマッチングしています。また、全国で子育て中のユーザー向けに写真撮影会とライフプラン相談会をセットにしたイベントを開催し、相談の機会を提供しています。保険マンモスの強みは、2005年から業界に先駆けて保険情報サイトを展開し、業界最大級のFP提携数を誇る点です。
今回のM&Aにより、Living Tech 領域の新規拡張と提供価値の向上が実現すると考えているとしています。
参考:保険マンモスの株式取得(連結子会社化)
会社譲渡の相談先は仲介会社がおすすめ
この章では、会社譲渡の相談先は仲介会社がおすすめな理由を見ていきましょう。
M&A仲介会社が担う役割
まずは、M&A仲介会社が担う役割を紹介します。
- M&Aのスケジュール・戦略の決定
- 相手先企業選び
- M&A条件の交渉
- 専門家の紹介
①M&Aのスケジュール・戦略の決定
M&Aの専門家であるM&A仲介会社に相談すれば、M&Aのスケジュールや戦略を決めてくれます。会社譲渡は、社内で検討を始めてから買収側との統合作業を終えるまでに、約3ヶ月~1年かかることが多いです。そのため、しっかりとスケジュールを立てなければ、目的達成は難しいでしょう。
どのような買収側を選択するのかを明確にし、どのように買収側へアピールしていくかを決めることも欠かせません。選定基準やアピールポイントを定めると、スケジュールどおりに進めやすくなります。
②相手先企業選び
自社で買収側の条件を検討できますが、最終決定する前にM&A仲介会社のアドバイスを受けましょう。M&A仲介会社は、いろいろな案件を扱ってきた会社譲渡の専門家なので、自社と似たケースの譲渡を扱った経験も多く、成功へのイメージが複数あることも少なくありません。
M&A仲介会社に譲渡先に関する相談をすれば、自社では考えつかなかった最適な買収先を見つけられることもあるのです。
③M&A条件の交渉
譲渡する条件を交渉する段階で、会社譲渡につまずいてしまうことがあります。買収側も売却側も自社の利益を考えるからです。
交渉を進めるときは、公平性のある提案をしてお互いに不満を持たずに話し合うことがポイントになります。過去の類似した事例を基に条件を提案するとよいでしょう。
交渉する前にM&A仲介会社に、過去の事例、要望の上手な伝え方、妥協する条件を聞き、落ち着いて交渉に臨んでください。
④専門家の紹介
M&A仲介会社は、弁護士や会計士などの専門家を紹介してくれます。M&A仲介会社に弁護士や会計士が在籍していることも多いです。会社譲渡に必要な契約書の作成や正しい会計処理は、専門家でなければ難しいといえます。
M&A仲介会社に依頼するもしくは、手続きに慣れている専門家の紹介を受ければ、安心して手続きを進められるでしょう。
M&A仲介会社を活用するメリット
次に、M&A仲介会社を活用するメリットを紹介します。
- 経営・本業に集中できる
- 適正なM&A取引を目指せる
- 想定外のトラブルに対処できる
①経営・本業に集中できる
M&A仲介会社からサポートを受ければ、経営者は通常どおり本業に専念することが可能です。会社譲渡には、多くの手続きや考えなければならないことが多いため、平常どおりに経営をしながら会社譲渡を行うのは無理といえます。
本業がおろそかになり、収益性が低くなると本末転倒です。M&A仲介会社のサポートを受け、本業に影響を与えることなく会社譲渡を成功させましょう。
②適正なM&A取引を目指せる
M&A仲介会社にサポートしてもらえば、適正なM&A取引を目指せます。つまり、取引を公平に保てるのです。
上述したとおり、条件交渉の際には公平性が重要です。しかし、当事者だけで公平性を維持するのは簡単ではありません。そこで、M&Aの専門家に間に立ってもらうと、第三者の視点によるアドバイスが受けられ、適正な金額も判断してもらえるのです。
③想定外のトラブルに対処できる
会社譲渡を進めていくと、想定外のトラブルが生じることもありますが、M&A仲介会社のサポートがあれば、トラブルが未然に防げます。
最終契約の直前にお互いが譲れない主張を始めて、契約自体が破談になるケースもありますが、M&A仲介会社の力を借りると、破談になる前にうまく対応してもらえるでしょう。専門家は、回避できるトラブルは冷静に回避してくれるのです。
M&A仲介会社に支払う報酬費用
M&A仲介会社の手数料は、M&A仲介会社によって異なります。しかし、M&A仲介会社によって発生する費用は変わりますが、レーマン方式の成功報酬体系を用いるところが多いです。
M&A仲介会社の手数料を決める際によく用いられるのがレーマン方式で、譲渡価格によって手数料が変わる算出方法なので、小規模な取引から大規模な取引まで活用できます。
依頼する仲介会社によって定められている割合は異なりますが、一般的なレーマン方式の水準は以下です。
- 5億円以下の部分:5%
- 5億円超・10億円以下の部分:4%
- 10億円超・50億円以下の部分:3%
- 50億円超・100億円以下の部分:2%
- 100億円超:1%
依頼を希望するM&A仲介会社の公式ホームページで、割合を確認しましょう。
着手金
M&A仲介会社の着手金に明確な相場というものはありませんが、一般的に企業のスケールによって算出されることが多いです。そのため、規模によって数十万円のケースもあれば、数百万円になるケースもあります。
会社譲渡が成立しなかった場合においても、支払いが完了した着手金は返金されないので注意が必要です。なお、着手金が発生しないM&A仲介会社もあります。
中間金
会社譲渡の基本合意成立の際に発生するのが中間金であり、売却側と買収側ともに会社譲渡に合意したものとみなされ、ある程度M&A交渉が進んだ段階で仲介会社へ支払う代金です。
基本合意契約後に支払うケースが多いですが、M&Aの仲介会社によって支払う時期が違う場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
中間金はM&Aに関わる売却側と買収側の両者がM&Aの仲介会社へ支払います。着手金と同様、中間金が無料のM&A仲介会社もあります。
会社譲渡のまとめ
本記事では、株式を売り渡して会社の経営権を他の会社へ譲る会社譲渡について、スキームの概要や会社譲渡が増加している理由などを取りあげました。株式譲渡の手法を活用して行う会社譲渡は、経営者の高齢化・事業環境の変化などから実施件数が増えています。
会社譲渡はさまざまな点に注意を払って進めなければ成功させることが難しいため、実際に行う際は専門家への相談がベストな選択肢といえるでしょう。
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