M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年10月28日更新会社・事業を売る
吸収合併消滅会社とは?M&Aにおける手続きの流れや存続会社との違いをわかりやすく解説
M&Aの手法の一つである吸収合併において、消滅する会社を「吸収合併消滅会社」と呼びます。本記事では、消滅会社の手続きや存続会社との違い、会計処理のポイントを解説します。合併を検討中の方はぜひご一読ください。
吸収合併消滅会社とは
吸収合併消滅会社(以下、消滅会社)とは、文字どおり吸収合併によって消滅する会社のことであり、存続会社と対をなす存在です。ここからは、吸収合併の定義・課題について解説します。
吸収合併とは
吸収合併は、M&Aの手法の一つで、消滅する会社の権利義務のすべてを存続する会社に承継させる手法です。例えば、A社がB社に吸収される場合、A社(消滅会社)の資産や負債、契約関係はすべてB社(存続会社)に引き継がれ、A社は法人格を失い消滅します。
吸収合併では雇用契約も包括的に承継されるため、原則として消滅会社の従業員は存続会社に転籍し、雇用が維持されます。ただし、合併後の事業再編などで労働条件が変更される可能性はあります。
吸収合併の課題
消滅会社の株主・債権者には、重大な影響が及ぶことがあるため注意が必要です。株主の場合を例に挙げると、会社が消滅すれば株式も消滅するために権利がすべて失われることになります。
重大な損失につながるため、消滅会社となる場合には、株主総会の決議・債権者保護などさまざまな手続きを踏まなければなりません。
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吸収合併における消滅会社の手続き【4ステップ】
吸収合併の手続きは消滅会社と存続会社の間で多少の違いはありますが、大まかな流れとしては共通点が多いです。ここでは、吸収合併の大まかな流れ・基本的な手続きを紹介します。
- 吸収合併契約書の作成・締結
- 吸収合併契約の承認
- 株主・新株予約権者などへの通知
- 債権者保護の手続き
以下、それぞれの手続きの内容を順番に見ていきます。
ステップ1:吸収合併契約書の作成・締結
はじめに、消滅会社と存続会社の間で吸収合併契約を締結します。この契約書には、会社法第749条第1項で定められた法定記載事項を盛り込む必要があります。記載された契約書は、株主や債権者保護の観点から、各社の本店に備え置かなければなりません(会社法第782条第1項、第794条第1項)。
主な法定記載事項は以下の通りです。
- 当事会社の商号および住所
- 消滅会社の株主への対価(株式、金銭など)に関する事項
- 合併の効力発生日
合併対価とは
合併対価とは、合併にあたって消滅会社の株主に交付する株式・新株予約権・社債などのことです。存続会社は消滅会社の権利義務をすべて承継してしまうため、これに伴う対価を消滅会社の株主に交付しなければなりません。
合併対価の交付を実施する主体は存続会社であり、具体的には存続会社の株式・新株予約権・社債などを対価として交付する仕組みです。例えば、A社が消滅会社・B社が存続会社であり、合併対価はB社の株式であるケースを想定します。
上記のケースでは、A社の株主はB社の株式を獲得可能です。吸収合併によるA社の消滅後、A社の株主はB社の株主となりB社に対して権利を行使できます。
ステップ2:株主総会での吸収合併契約の承認
吸収合併契約は、原則として効力発生日の前日までに、当事会社それぞれの株主総会で特別決議による承認を得る必要があります。特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が求められる、会社の重要事項を決定するための手続きです。
ステップ3:株主・新株予約権者への通知と買取請求への対応
吸収合併の当事会社は、各株主に対して吸収合併の手続きが進行している事実を知らせる必要があります。吸収合併に反対する株主は、会社に対して自身が保有する株式を公正な価格で買い取るよう請求できるためです。
その一方で、新株予約権者に対する通知については、消滅会社のみ必要となります。つまり、消滅会社では、株主と合わせて新株予約権者に対しても、吸収合併の手続きが進行している事実を通知しなければなりません。
なお、吸収合併に反対する新株予約権者は、株主の場合と同様に、消滅会社に対して自身が保有する新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求可能です。
ステップ4:債権者保護手続きの実施
吸収合併は債権者の利害に影響を及ぼすため、消滅会社と存続会社はそれぞれ自社の債権者保護手続きが必要です。具体的には、官報での公告と、把握している債権者への個別催告が原則となります。
ただし、2024年現在、定款の定めに従い、官報のほかに日刊新聞紙や電子公告で公告を行う場合は個別催告を省略できます。この手続きにより、債権者は1ヶ月以上の期間、合併に異議を述べることが可能です。
以上、吸収合併消滅会社に求められる大まかな手続きでした。これまで見てきたように、合併では膨大かつ煩雑な手続きが求められます。しかし、上記の手続きを怠ったり手続きに不備が存在したりすれば、必要以上に時間・手間が発生するほか合併自体の失敗に直結しかねません。
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消滅会社と存続会社で異なる手続きとは?
明確な違いとしては、新株予約権者に対する通知の有無が挙げられます。株主に対して通知を行うプロセスは共通していますが、消滅会社では新株予約権者への通知が必要となる一方で、存続会社では新株予約権者に通知をする必要がありません。
会社が消滅すると、消滅会社の株式はもちろん消滅します。消滅会社の株主・新株予約権者からすると、自身が保有する株式・新株予約権が消滅する事態は大問題です。
上記の事態を回避するには、消滅会社から通知を受けたうえで、場合によっては株式買取請求や新株予約権買取請求などの措置を考える必要があります。その一方で、存続会社では、吸収合併があっても、株主・新株予約権者は従来どおり権利を行使可能です。
しかし、他の会社を吸収するために、存続会社の株主であっても不安を抱くのは当然のことといえます。そのため、存続会社の株主に対しては、吸収合併について通知したうえで、反対する場合は株式買取請求などの措置を検討させる必要があるのです。
存続会社で新株予約権者への通知が不要な理由
存続会社では、新株予約権者に通知を実施する必要はありません。新株予約権者はあくまでも予約権の行使によって株主になるという立場であり、現段階において株主ではないためです。株主になりたい場合、従来どおり存続会社に対して権利を行使すれば株主になれます。
まだ株主という立場ではなく、かつ吸収合併があっても従来どおり権利を行使できる以上、株主に対する通知や買取請求のような仕組みまでは設けられていないのです。その他の手続きについては、消滅会社と存続会社で共通点が多く存在します。
例えば、債権者保護手続き・株主総会における特別決議の承認などは双方の会社で必要です。
吸収合併消滅会社の会計処理
吸収合併の会計処理は、原則として「パーチェス法」が適用されます。存続会社は、消滅会社から引き継ぐ資産および負債を、合併期日の時価で評価して計上します。この際、支払った合併対価と受け入れた純資産の時価との差額は「のれん」として計上されることが一般的です。
一方、消滅会社側では、存続会社に引き継ぐ資産・負債を帳簿価額(簿価)のまま移転する処理を行います。時価評価は行わない点に注意が必要です。
吸収合併消滅会社の決算と公告
効力発生日に消滅することから、消滅会社では効力発生日の前日を決算日とした決算を実施します。例えば、消滅会社が事業年度の途中で解散する場合、事業年度の開始日から合併の前日までの期間を1つの事業年度とみなして決算を実施する仕組みです。
なお、株式会社の場合では、決算に用いる貸借対照表の公告が必要となります。ただし、上記の義務には公告の保存義務も伴うことから、実務上では存続会社が代わりに公告を実施するのです。会社の消滅が伴うことからに、通常の決算とは異なる会計処理が求められるため、注意が必要となります。
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吸収合併と他のM&A手法との比較
吸収合併はM&Aの代表的な手法ですが、他の手法とは異なる特徴を持ちます。ここでは、事業譲渡・株式譲渡・新設合併との違いを解説します。
事業譲渡との違い
事業譲渡は、会社の事業の一部または全部を個別に売買する手法です。吸収合併が会社の権利義務をすべて承継する「包括承継」であるのに対し、事業譲渡は承継する資産・負債・契約などを個別に選別できる「特定承継」である点が大きな違いです。そのため、事業譲渡では簿外債務などを引き継ぐリスクを避けやすいメリットがあります。
株式譲渡との違い
株式譲渡は、会社の株式を売買することで経営権を移転させる手法です。株主が変わるだけで会社自体は存続するため、法人格が消滅する会社が発生する吸収合併とは根本的に異なります。手続きが比較的簡便であるため、中小企業のM&Aでは最も多く用いられる手法です。
新設合併との違い
新設合併は、新たに会社を設立し、そこに既存の複数会社が権利義務のすべてを承継させる手法です。吸収合併では既存の会社が「存続会社」として残りますが、新設合併ではすべての当事会社が消滅し、新設会社のみが残る点が異なります。
まとめ
本記事では、M&A手法の一つである吸収合併における「消滅会社」について解説しました。
消滅会社は、吸収合併によって法人格が消滅するため、株主や債権者に大きな影響が及びます。そのため、株主総会の特別決議や債権者保護手続きなど、法律で定められた厳格なプロセスを確実に実行することが不可欠です。
手続きに不備があると合併自体が無効になるリスクもあるため、専門家の支援を受けながら慎重に進めることをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。