2025年1月11日更新業種別M&A

建材卸業界のM&A動向!注意点や売却・買収事例を解説【2025年最新】

建材卸業界におけるM&Aの現状と動向、相場などを解説します。また、建材卸業界のM&A成功事例についても紹介しています。建築物の需要増加に伴い、卸事業の需要も高まっています。建卸会社でM&Aを考える場合、必見の内容です。

目次
  1. 建材卸業界を取り巻く環境
  2. 建材卸業界のM&A動向
  3. 建材卸会社のM&Aメリット
  4. 建材卸会社のM&A案件例
  5. 建材卸会社のM&A事例
  6. 建材卸会社のM&A相場
  7. 建材卸会社のM&A注意点
  8. 建材卸会社のM&Aを成功させるポイント
  9. 建材卸会社のM&Aまとめ
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建築資材卸のM&A・事業承継

建材卸業界を取り巻く環境

建材卸事業とは、メーカーから資材を仕入れて企業に販売する事業のことです。建材卸業界は、建材(壁・天井・屋根などの外装に用いる材料)、建設資材(木材・金属など)の卸売を手掛ける企業で構成されています。

本章では、建材卸業界を取り巻く環境をお伝えします。

建材卸売業の市場規模

住宅設備・建材市場は2024年度に約4兆429億円に達すると、富士経済(東京・中央)が予測しています。これは、省エネ性能を重視した高価格商品が2022年度以降に成長しているためです。しかし、2040年度には人口減少や新築住宅着工戸数の減少を背景に、既存住宅向け需要が市場の半分以上を占め、規模は3兆9804億円に縮小する見込みです。

一方、ビルや住宅向け建材の在庫が増加しています。特に鉄鋼の在庫増が目立ち、小形棒鋼の在庫量は2024年4月末時点で70万5000トンと、前年同期比15%増で約11年ぶりの高水準に達しました。これは、人手不足や建築費の高騰で工事が進まないことが原因です。

また、国土交通省の統計によると、2023年度の建築床面積は鉄筋コンクリート造で8.1%、鉄骨造で8.7%それぞれ減少しています。

さらに、軽量コンクリートの原料となる軽量骨材の供給不足が顕著で、特に東京都心の建設現場では必要量の半分程度しか供給されていません。この状況により、高層ビル工事の停滞や設計見直しの可能性が懸念されています。

他方、戸建てやマンションのリフォーム需要は拡大しています。矢野経済研究所によれば、2023年度の主要6分野における住宅建材市場は1兆5530億円と推計され、前年度比で3.5%増加しました。新築住宅着工戸数は7%減少したものの、原材料費や輸送費の上昇が製品価格に転嫁されたことが市場を支えています。

参考:日経コンパス「建材・住設機器卸」

新築住宅の減少

国土交通省「建築着工統計調査報告 令和5年計」

出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001720710.pdf

2021年度はテレワークの普及などで在宅時間が増加したことやコロナ禍の反動もあり住替え需要が伸び、それに伴い建材卸事業の国内市場も拡大しました。しかし、2018年以降は全体的にみると緩やかな減少傾向となっています。

国内人口は今後も減少が続くとみられており、近年は地価や建設コストの上昇を受け新築住宅の需要は高止まり状態です。これらを踏まえると、新築住宅の需要は中長期的に減少傾向で推移すると考えられます。

リフォーム市場の成長

国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)(令和5年度第2四半期受注分)」

出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001711884.pdf

新築住宅の需要が減少傾向にあるのに対し、リフォーム市場は近年拡大傾向がみられます。国土交通省によれば、建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は2023年度第4四半期が2兆9350億円(前年度同期比6.5%増)であり、そのうち住宅に係る工事受注高は1兆551億円(前年度同期比30.5%増)となりました。

また、2023年度における建築物リフォーム・リニューアル工事全体の合計受注高は、11兆5545億円と前年度から1.2%減少しましたが、住宅に係る工事受注高は3兆9200億円で4.6%増加しています。

近年は、団塊ジュニア世代が持ち家をリフォームする時期に差し掛かっており、住み替えから現在の持ち家をリフォームへと需要がシフトしつつあることを踏まえるとら、リフォーム需要はますます高まる可能性が考えられます。

参考:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)」

建材卸事業の課題と将来性

建築業界全体では慢性的な人材不足が続いており、建材卸事業者が人材不足に陥る可能性も看過できない状況です。リフォーム需要の高まりなどで市場拡大が期待されているなか、事業者にとっては優秀な人材を効率的に確保する必要があります。

また、ひとことに建築資材といっても、その種類は多種多様です。建築資材に対する需要が高まっている中で、なるべく多くの建築資材を扱っておくと、さまざまなニーズに柔軟に対応できる可能性があります。

もちろん、特定の建築資材に大きな強みがあり、十分な業績につながっていれば、取り扱い商品の幅を無理に広げる必要はありません。しかし、多様化するニーズに対応したい場合は、幅広い建築資材を扱うに越したことはないでしょう。

そのため、建材卸事業を手掛ける会社同士がM&Aを行い、事業の幅を広げるケースが今後とも増える可能性があります。

建築設計・検査会社のM&A動向については、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】建築設計・検査会社のM&A・事業承継の動向!事例や案件例・相場も解説

建材卸業界のM&A動向

本章では、建材卸事業とM&Aの関係について、実施する目的を中心に取り上げます。

①事業の幅を広げるためのM&A

建築資材の需要増加に伴い、より幅広いニーズに対応する重要性が高まっています。一例を挙げると、2021年12月、建設事業を展開するフクヤ建設は、建材卸の成商を完全子会社化しています。

特定の建築資材に強みを持ち、業界で確固たる地位を築いているケースは除いて、ニーズの多様化に対応するためには幅広い建築資材を扱っていた方が有利です

また、こうしたニーズに対応できないと、競争力の低下につながるおそれがあります。そこで、建材卸事業を手掛ける会社同士がM&Aを行い、双方の強み・サービス体制を生かして事業の幅を広げ、多様化するニーズに対応するケースが想定されます。

例えば、外装材に強みのある会社が、内装材分野を強化したいと考えているケースを想定します。この場合、内装材に強みのある会社を買収し、傘下に迎えられれば、グループ事業として内装材分野の事業を強化できます。

上記は典型的な例ですが、同業者同士のM&Aは同じ業界内で事業の幅を拡大するための効率的な方法として活用できます。

②関連事業も含めたM&A

建材卸事業を対象とするM&Aでは、住宅設備機器などを扱う会社が当事者となるケースも見られます。例えば、2021年10月、総合建材卸売事業などを展開するJKHDグループは、タムラ建材より建築資材販売事業を譲受しました。

このように関連事業を含めたM&A事例もあり、今後はこうしたM&Aがさらに加速する可能性があります。

つまり、他の事業とともに卸事業も手掛ける会社が、建築資材の需要増加を見込み、自社の卸事業を強化するために、同業の会社を買収するケースが想定されるのです。

③経営上の問題を解決するためのM&A

近年、特に中小企業では、経営上の問題を解決するためにM&Aによる売却を検討するケースが増えています。そのため、建材卸事業を手掛ける中小企業でも、M&Aにより経営課題の解決を目指すケースが増える可能性があります。

中小企業の場合、大手企業と比べると経営が不安定になりやすいです。そこで、資金力のある企業に売却し、経営基盤を安定化させるケースが見られます。

また、後継者がなかなか見つからないケースもあります。この場合にも、自社を売却して他社に経営を任せられれば、事業を継続させられるうえ、後継者不足問題も解決できます。このように、経営上の問題を解決するための手法として、M&Aは有効策です。

建材卸会社のM&Aメリット

建材卸会社のM&Aにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、売り手側と買い手側それそれの立場から建材卸会社のM&Aメリットを説明します。

売り手側のメリット

売り手側が得られるメリットとしては以下があります。

経営基盤の安定化

中小規模の建材卸会社のM&Aの場合、自社のリソースだけでは事業の拡大・成長が難しくなるケースも少なくありません。このような場合、自社を売却して大手企業の傘下となれば、買い手側のリソースも相互活用できるようになり、経営基盤の安定化が図れます。

それによって自社の力だけでは難しかった事業拡大や売上向上を実現しやすくなり、また、買い手側のブランド力や信用力によって新たな付加価値を生み出すことも可能です。

従業員の雇用継続

経営状態の悪化や廃業などにより事業継続ができなくなれば、従業員を解雇しなければなりません。自社の従業員を解雇することが従業員だけでなく、経営者にとっての精神的負担も大きなものです。

M&Aであれば買い手側へ従業員の雇用を引き継ぐことができ、買い手側にとっても人材を一度に獲得できるというメリットがあります。

後継者問題の解消

事業の存続を希望していても後継者がいない場合は、事業承継手段としてM&Aを活用する方法もあります。M&Aによって事業承継を行う場合、売り手側の株式(経営権)を買い手側へ譲渡する株式譲渡を用いることが一般的です。

株式譲渡の場合は資産・負債・従業員の雇用など、売り手側の権利・義務が買い手側へ包括承継されるため、従業員の雇用や取引先との関係を継続され、自社の存続が実現できます。

譲渡益の獲得

譲渡益の獲得はM&Aで得られる大きなメリットのひとつです。M&Aの譲渡益は株式譲渡の場合はオーナー経営者(株主)、事業譲渡の場合は企業(法人)が得るかたちとなり、経営者の引退後の生活費や新しい事業の立ち上げ資金などに充てることができます。

買い手側のメリット

建材卸会社のM&Aで買い手側が得られるメリットには以下があります。

新規事業への参入

新規事業への参入を検討している場合、事業が軌道に乗るまでの時間やコスト、失敗した際のディスクなどもリスクなども考慮しなければなりません。

M&Aであればすでに軌道に乗った企業(事業)を取得することができるので、コスト・時間・リスクを大幅に軽減することができます。また、売り手側のシェアもそのまま獲得できるので、収益見込みが立てやすいという点もメリットのひとつです。

営業拠点拡大

同業者同士のM&Aであれば、買い手側の営業拠点を獲得することができます。営業拠点が拡大できれば事業強化や売上向上が見込めるうえ、競争力強化を図ることが可能です。

特に買い手側が未進出のエリアに営業拠点を獲得できれば、時間とコストを軽減しつつ事業の拡大を図ることができます。

スケールメリット

買い手側はM&Aによるスケールメリットにも期待することができます。スケールメリットには大量発注や製造によるコスト削減、生産性や利益率の向上、ブランド力の向上よる競争優位性の獲得などさまざまなものがあり、これらを活用することで事業の成長スピードを加速させることも可能です。

新規顧客の獲得

買い手はM&Aによって売り手側の顧客基盤を引き継ぐことができます。新規顧客の獲得をゼロから進めていくのは容易ではありませんが、M&Aを活用すれば一度に多くの顧客を獲得することが可能です。

自社の既存事業と重複しない領域であれば、互いの顧客基盤を相互活用して新たなサービス・製品を提供していくこともできます。

建材卸会社のM&A案件例

建築資材卸のM&A・事業承継
建築資材卸のM&A・事業承継

弊社M&A総合研究所が取り扱っている建材卸会社のM&A案件例として、複数拠点を有する北海道の建材卸売業をご紹介します。

複数の仕入れ先を有し、幅広い顧客要望に応えられる体制を構築しています。相応の業歴を有し、顧客からの信頼も厚いです。

エリア 北海道
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 5億円〜7.5億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【北海道】複数拠点を有する建材卸売業(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

建材卸会社のM&A事例

ここでは、実際に行われた建材卸会社のM&A事例を紹介します。近年の事例が多いこともあり、現時点で明確に成功事例・失敗事例を区別することは難しいです。最近の事例の場合、M&Aによるシナジー効果が創出されたのかどうか、今後数年間の業績の動向も踏まえて判断する必要があります。

業界のM&A動向を把握しておくために、代表的なM&A事例を知っておくことはメリットです。各事例の目的やM&Aに至った経緯など、分析を進めると良いでしょう。

ナイスによるセレックスホールディングスの子会社化

2024年8月、ナイスは愛知県名古屋市のセレックスホールディングスを子会社化すると発表しました。ナイスグループは、建築資材事業・木造建設事業・建材卸事業・住宅事業などを展開しています。

子会社となるセレックスグループは、住宅用建材の販売や高性能サッシの施工などを中京エリアを中心に手掛けており、サッシ等の高い施工力が強みです。

今回のM&Aは、中京エリアでの販売拡大が主な目的です。ナイスは、これまでの住宅設備機器・建材・木材・エネルギー関連商材に新たにサッシやエクステリアを加えることで、住宅1棟当たりの納材シェア向上を図るとしています。

参考:セレックスホールディングス株式会社の株式の取得に関するお知らせ

JKホールディングスによる太平洋建材の子会社化

2024年5月、住宅関連事業をグループ展開するJKホールディングスは、大阪府の太平洋建材を子会社化すると発表しました。子会社となる太平洋建材は、内外装材の販売を大阪エリアを中心に手掛ける企業です。

今回のM&Aは関西地区の事業基盤拡大・拡充が主な目的であり、JKホールディングスは新たに内装建材販売事業へ視野を広げることでさらなるサービス拡大と提供を進めていくとしています。

参考:JKホールディングスグループ、太平洋建材株式会社の全株式を取得

日鉄物産とNS建材薄板との吸収合併

2024年3月、日本製鉄は傘下の日鉄物産とNS建材薄板との合併を発表しました。本M&Aは日鉄物産が存続会社、NS建材薄板が消滅会社となる吸収合併方式により行われ、合併後にNS建材薄板は消滅します。

日鉄物産は鉄鋼・繊維・産機・食糧などの販売と輸出入業、NS建材薄板は鉄鋼製品や建材商品の販売を手掛ける企業です。

今回の合併により、日鉄物産の幅広い事業領域や建材薄板マーケットに対するNS建材薄板の専門性を融合し、競争力のさらなる強化と付加価値の高いサプライチェーンを構築し、日本製鉄として建材薄板マーケットでのさらなるプレゼンス向上を目指すとしています。

参考:日鉄物産㈱およびNS建材薄板㈱の合併について

ジオリーブグループが増田住建トーヨー住器を子会社化

2024年3月、住宅資材販売やリフォーム工事業などを手掛けるジオリーブグループは、兵庫県の増田住建トーヨー住器を子会社化すると発表しました。子会社となる増田住建トーヨー住器は、窓サッシを中心とした住宅資材の販売を行う企業です。

本M&Aはジオリーブグループの経営基盤強化が主な目的であり、将来的に需要縮小が予想される住宅関連事業において、増田住建トーヨー住器とその子会社(1社)をグループに迎え入れることで、経営基盤強化と企業価値向上を図るとしています。

参考:増田住建トーヨー住器株式会社の株式取得に関するお知らせ

小野建がマツオメタルを子会社化

2024年1月、鉄鋼・建材専門商社大手の小野建は、香川県高松市のマツオメタルを子会社化すると発表しました。子会社となるマツオメタルは、アルミ・ステンレス鋼・銅の加工販売を行う企業です。

小野建は高知県丸亀市に営業所を持っており、マツオメタルを子会社化することで四国エリアの営業強化と顧客サービスの向上が図れると判断し、本M&Aに至りました。

参考:マツオメタル株式会社の株式取得に関するお知らせ

小野建が大林商会の鉄鋼卸売事業を譲受

2023年12月、鉄鋼・建材専門商社大手の小野建は、兵庫県伊丹市の大林商会から鉄鋼卸売事業を譲り受けると発表しました。本件では小野建が2023年10月に新設立した兵庫県三木市の大林商会が事業を譲受け、同社は鉄鋼卸売事業などを行う企業です。

小野建は大林商会の事業と顧客基盤を引継ぎ、互いのノウハウを相互活用しグループのさらなる価値向上を目指すとしています。

参考:事業譲受及び新会社設立に関するお知らせ

ブルケン東日本が東洋住建の建材販売事業・建築工事業を譲受

2022年4月、JKホールディングスグループの一部で、仙台市を拠点に建築資材の販売を手がけている株式会社ブルケン東日本が、山形県で建築資材の販売と建築工事を行っている株式会社東洋住建を買収すると発表しました。

この買収は、ブルケン東日本が東北エリアでの業務を強化するための一歩となります。東洋住建の建築資材販売と建築工事の両方の事業を取り入れることで、同社は地域内での事業基盤をさらに充実させることができると期待しています。

当社事業譲渡に関するお知らせ

フクヤ建設が成商を完全子会社化

高知県を拠点に、注文住宅の建築、リノベーション、オフィスや施設の建設、宅地造成、不動産紹介などを手掛けるフクヤ建設株式会社は、2021年12月に、同じく高知県に位置する株式会社成商を買収し、自社の完全子会社にしました。

株式会社成商は、鉄鋼建材の卸売りや建築金物の加工を事業内容としていますが、後継者がいないことから、事業の継承先を探していました。

住宅の耐震化を含むさまざまな需要で鋼材の需要が増加する中、フクヤ建設はこの買収を通じて成商の建材事業を自社に組み込み、事業の多角化を進めることにしました。

当社による 株式取得(子会社化)に関するお知らせ

JKホールディングスグループがタムラより建築資材販売事業を譲受

2021年10月、JKホールディングスは子会社のブルケン・ウエストが新設するタムラ建材にて、福岡県のタムラより建築資材販売事業を譲受すると発表しました。

JKホールディングスは総合建材卸売事業や総合建材小売事業などを展開しており、子会社のブルケン・ウエストは、住宅設備機器や建材・合板・木材・などの販売を手掛けています。

タムラ建材は、建材・木材・住宅設備機器の販売および施工、FTS技術製品の製造販売を手掛けており、今回の譲受対象となるのは建築資材販売事業です。

JKホールディングスは、本事業譲受により福岡県内でのグループ基盤を拡充し、九州での販売エリア拡大を図るとしています。

参考:当社子会社設立および㈱タムラ事業譲受に関するお知らせ

ダイキアクシスがアルミ工房萩尾を完全子会社化

2021年10月、ダイキアクシスは、アルミ工房萩尾の株式すべてを取得し、完全子会社化しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。

買収側は、愛媛県松山市に本社を置く会社で、浄化槽などの各種排水処理装置の総合プラントメーカーです。対する売却側は、住宅サッシ・エクステリア建材の施工・販売を手掛けています。

本件M&Aの主な目的は、水回り関係や住宅サッシ・エクステリア建材に関する提案の実現や、質の高い商材・サービスの提供およびシナジー効果の獲得にあります。

関係会社

コンドーテックが栗山アルミを子会社化

2021年9月、コンドーテックは、栗山アルミの株式75.7%を取得し子会社化すると発表しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。

買収側は、大阪府大阪市西区と東京都江東区に本社を置く建設資材・環境関連資材の仕入販売を行う専門商社です。 自社で建設金物を製造も行っており、メーカー機能を備えています。対する売却側は、愛知県でアルミ押出型材製造を営む企業です。

本件M&Aの主な目的は、アルミ商材をグループの取扱商材の獲得および、グループの持続的成長と中長期的な企業価値向上の実現にあります。

栗山アルミ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

前田工繊がセブンケミカルを子会社化

2021年9月、前田工繊は、セブンケミカルの株式すべてを取得し、完全子会社化しました。本件M&Aの取引価格は非公開です。

買収側の前田工繊は、福井県坂井市に本社を置く、盛土・法面補強用環境・産業資材などを製造・販売する企業です。一方、売却側のセブンケミカルは、外壁用の防水材および保護・仕上げ材を製造・販売しています。

本件M&Aの主な目的は、前田工繊グループのインフラ事業分野における構造物の補修・補強技術とのシナジー効果の獲得および取扱製品の多様化などにあります。

前田工繊(東証一部上場企業)グループの傘下になりました。

西武HDが西武建材を東和アークスに譲渡

2021年5月、西武HDは、西武建材の株式すべてを東和アークスに対して譲渡すると発表しました。本件M&Aの取引価格は非公開となっています。

売却側の西武HDは、西武鉄道・プリンスホテル・埼玉西武ライオンズなどを傘下に持つ、西武グループの持株会社です。

対する買収側の東和アークスは、埼玉県を事業基盤としながら、建築材料等の製造・卸売事業を主力事業として手掛けています。本件M&Aの主な目的は、西武グループにおける事業ポートフォリオの見直しです。

西武建材株式会社の株式譲受に関するお知らせ

名古屋木材がMBOで株式を非公開化

2021年2月、名古屋木材は、MBO(マネジメント・バイアウト)により株式を非公開化すると発表しました。

本件M&Aに伴い、同社社長が設立したNホールディングスがTOB(株式公開買付け)を行い、株式のすべてを取得しています。

名古屋木材は、愛知県名古屋市中川区に本社を置く建築資材メーカーです。本件M&Aの主な目的は、機動的な意思決定を可能とする経営体制の確立にあります。

MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ

建築業の事業承継の許認可手続きやポイントについては、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】建築業の事業承継の許認可手続きやポイントを解説【事例あり】

建材卸会社のM&A相場

M&A価額を決める要素は資産や負債などの有形資産だけでなく、ノウハウや技術力、ブランド力などの無形資産も含まれます。

そのうえで最終的な価額は交渉によって決まるため、その事業であっても明確なM&Aというものはありません。ですが、価額交渉ではベースとなる額があり、それを事前に把握しておけば適正価額でのM&A成立を目指すことができます。

大まかなM&A相場の計算方法

大まかなM&A相場は、貸借対照表上の純資産額(時価)と直近年度あるいは数年分の平均利益がわかれば比較的簡単に計算することが可能です。

計算式は「時価純資産額+営業利益の数年分(2~5年)」となり、のれん代を営業利益の数年分と考えます。営業利益の何年分を加算するかは任意ですが、通常は2~5年の間とすることが多いです。

また、純資産額は「資産総額-負債総額」で求めることができますが、現在価値と計上時の価値は剥離している可能性もあるため、算出時の時価に換算した額を使用します。

ただし、これはあくまでも簡易的な計算方法であり、実際のM&Aではノウハウ・人材・取引先や顧客・財務状態などさまざまな要素が加味されるため、算出した額を上回ることもあれば下回る場合をあることを理解しておきましょう。

売却額の決定方法

前述したように、売却価額を決定する要素は有形資産だけでなく、ノウハウや技術力、人材(従業員)、顧客数などさまざまなものがあります。そのほかに大きな要素となるのは「シナジーがどの程度期待できるか」という点です。

シナジー効果が最大限発揮されれば買い手は収益力向上を実現できますが、M&A成立前はあくまでも期待値であるため、失敗すれば「高値掴み」となり買収額の回収が困難になるリスクもあります。

そのため、売却側がより高値での売却を実現させるには、買い手が将来の収益性などを予想できる事業計画書などを用意しておくことがポイントです。

建材卸売業の売却額については、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】建築資材卸売業の売却額とは?売却の注意点や価額のあげ方を解説

建材卸会社のM&A注意点

建材卸会社のM&Aでの注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは特に意識したい2つの注意点について説明します。

情報漏えい

M&A交渉においては、自社の秘密情報を相手先企業へ開示します。ノウハウ・技術力・取引先や顧客の情報などがもし第三者に情報が流出すれば企業価値を大きく損ねるおそれもあります。

また、売り手側にとっては自社が売却を検討している取引先や従業員などに漏れてしまうと、取引中止や離職につながりかねず、M&A実行そのものが難しくなる可能性もあります。

M&Aでは情報開示時に秘密保持契約を締結するのはもちろんのこと、検討段階から情報共有する範囲を最低限にとどめるなど、情報漏えい防止対策を徹底しておくことが重要です。

人材の流出

M&Aでは買い手側が人材獲得を目的としているケースも多いです。そのため、売り手側はM&A前に従業員が流出しないよう配慮するとともに対策を講じておく必要があります。

特にキーマンとなる人材が流出した場合、M&A後の事業運営に影響が出るおそれもあるので、注意が必要です。M&Aは従業員にも大きな影響を与えるため、交渉過程で情報が漏れたり不安が広がったりすれば、売り手側の従業員が離職してしまう可能性が高くなるので、丁寧に説明と引継ぎを行う必要があります。

建材卸会社のM&Aを成功させるポイント

では、建材卸会社のM&Aを成功させるためにはどのような点を意識して進めればよいのでしょうか。ここでは、建材卸会社のM&Aを成功させるポイントについて説明します。

目的の明確化

M&Aでは、条件や価額などで譲歩が必要となる場面がでてきます。その際に適切な判断が行えるよう、M&Aを行う目的を明確化し、常に意識しておくことが重要です。

もしM&A成立することだけに意識が集中し、当初の目的から大きく外れた条件で合意してしまうと、満足度の高いM&A実現は難しくなります。

特に売り手側は初めてM&Aを行うというケースも多いため、常に自社がM&Aを行う目的を意識して交渉を進めていくことが重要です。

M&A仲介会社へ相談

M&Aを成功させるためには、実施タイミングをはかることも重要です。市場動向によっては優良な企業であってもM&A候補先がなかなかみつからない可能性もあります。

また、自社の希望に合う候補先を探し、複雑な手続きをスムーズに進めていくためには、M&Aのノウハウや専門知識が必要となるため、M&A仲介会社に相談しておくことも成功させるポイントです。

建材卸会社のM&Aまとめ

建築業界は比較的堅調に推移しています。建築物の需要増加に伴い、建築資材の需要が増えており、卸事業の重要性もますます高まっている状況です。

こうした状況の中、多様なニーズに対応するため、事業の強化・拡大などを目的にM&Aを検討する企業も見られ、同業者同士によるM&Aのほか、関連事業も含めたM&A事例も見られます。

また、卸事業を行う中小企業が抱える経営上の問題も、M&Aにより解決に導くことが可能です。建材卸会社のM&Aを考えている場合、こうしたM&A事例・業界動向・建築業界全体の動向などを総合的に判断し、分析を進めていくことが大切です。

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近年は合同会社の数が増加していますがM&Aの件数は停滞気味で、この背景には合同会社のM&Aは一般的なM&A手続きも困難な点が挙げられます。そこで本記事では合同会社のM&a...

社会福祉法人のM&Aの手続き手順や手法は?成功事例・メリットも解説!

社会福祉法人のM&Aの手続き手順や手法は?成功事例・メリットも解説!

近年急速的に進行している高齢化に伴い、社会福祉法人のニーズも高まっているのが現状です。 その動向に伴って社会福祉法人の業界における競争も高まり、活発なM&Aが展開されています。 本記...

D2C業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

D2C業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

D2Cは、メーカーやブランドが一般消費者に直接販売するビジネスモデルで、最大のメリットはコストの削減です。今回は、D2C業界の動向やM&Aのメリット・注意点、M&Aの実際の事例、...

SIer業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

SIer業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

本記事ではSler業界の動向とSler業界でM&Aを行うメリットを解説します。Sler業界は人手不足と新技術への対応に迫られ業界の再編が激しい業界です。実際に行われたM&A・売却...

鉱業業界のM&A動向!売却・買収事例3選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

鉱業業界のM&A動向!売却・買収事例3選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

鉱業業界ではM&Aが活発化しています。資源需要増大や規制緩和が背景にあり、大手鉱業企業は新興市場や環境配慮型鉱業への投資を進めているのが鉱業業界の現状です。鉱業のリスク管理はM&...

木材業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

木材業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

この記事では、木材業界のM&A動向について説明します。木材業界では、専門技術の獲得、コスト効率の向上のためにM&Aが活用されています。木材業界におけるM&A・売却・買収事...

漁業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

漁業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

魚介類などの海洋資源は私達の生活に欠かせないものですが、漁業業界は厳しい市場環境が続いています。そのような中で、事業継続のためのM&Aを模索する動きも出てきています。この記事では、漁業業...

農業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

農業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

農業業界では担い手の高齢化と後継者不足による廃業危機に加えて、新型コロナをきっかけとした出荷額の低迷で経営状態が不安定化し、M&Aを検討せざるを得ないところが増えています。この記事では、...

海運業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

海運業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

この記事では、海運業界の動向を説明したうえで、海運業界でM&Aを行うメリットを解説していきます。近年のM&A・売却・買収事例も紹介して、M&A動向についても紹介していきま...

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