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2021年5月6日更新会社・事業を売る
拒否権付株式とは?メリット・デメリットや問題点、発行手続きを解説
拒否権付株式とは、重要議案を否決できる権限を付与した株式です。敵対的な買収を防止する役割があり、黄金株とも呼ばれます。そこで、保有数に関係なく拒否権を行使できる強力な権利の拒否権付株式について、メリットやデメリット、発行にあたり必要な手続きなどを解説します。
拒否権付株式とは?拒否権付株式の意味
拒否権付株式とは、重要議案を否決できる権限を付与した株式のことです。敵対的な買収を防止するなどのメリットがあり、黄金株とも呼ばれています。拒否権付株式の仕組みについて、株主総会で合併について決議するケースを例に考えてみましょう。
株式会社は、内容の異なる種類の株式を発行している場合があります。これを種類株式といいます。ある会社が「普通株式」のほかに「A種類株式」を発行しているとします。合併などの重要議案を決議する場合には株主総会の決議だけでなく、A種類株式を持つ株主で構成される「種類株主総会」の決議が必要であるとします。
この場合、合併をするには株主総会の決議だけでは足りません。A種類株式を持つ株主だけの、種類株主総会による決議も必要です。種類株主総会で合併が否決されれば、合併をすることはできません。
この場合のA種類株式は、合併などの重要議案を否決できる権限があるということです。A種類株式を持つ株主に拒否権が与えられたことを意味します。このような株式が拒否権付株式です。
拒否権付株式は種類株式となるため「拒否権付種類株式」という表現をしますが、「拒否権付株式」のように表現されることも多いです。
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拒否権付株式のメリット
拒否権付株式には、さまざまなメリットがあります。主なメリットは、以下の3つになります。
- 1株でも拒否権を行使できる
- 敵対的買収を防止できる
- 引退後も経営に関して強い決定権を持つことができる
①1株でも拒否権を行使できる
拒否権付株式は、1株でも保有していれば拒否権を行使することができます。保有数に関係なく拒否権を行使することができる強力な権利のため、多様な場面で力を発揮します。
②敵対的買収を防止できる
拒否権付株式は敵対的買収を防止することもできます。株式会社は、良くも悪くも株主によってあらゆる事項が決定されてしまうため、株式を公開すれば開かれた市場に株式が流通し、多くの投資家や企業が株主となります。
多種多様な株主が会社の経営に関与することになるため、株主総会では会社の経営に関するさまざまな内容が決議されます。会社の経営に外部の人間・法人が干渉することになるということです。
企業の公正な事業活動のためにも、外部の人間・法人が良い意味で関与することは当然必要なことではありますが、敵対的に関与してくる可能性も十分に考えられます。
特定の株主が敵対的買収を狙っている場合、株主総会で明らかに会社が不利になるような提案を出してくるでしょう。しかし会社にとって友好的な株主に、拒否権付株式を与えておくことでこれを防止することができます。
敵対的買収を狙う株主が会社にとって不利になるような何らかの決議をしようとしても、拒否権付株式を持つ株主が種類株主総会において否決すれば、その決議は実現されることはありません。
拒否権付株式は英国で国営企業を民営化する際に、外国企業による敵対的な買収を防ぐため、政府の株式持分に拒否権を与えたことが始まりであるといわれています。拒否権付株式の発祥は敵対的な買収の防止にあり、この点は現在でも大きなメリットとなっています。
③引退後も経営に関して強い決定権を持つことができる
事業承継においても拒否権付株式は効果的に活用することができます。近年会社の後継者不足が問題となっていますが、経営者が高齢となりやむを得ず未熟な後継者に経営権を譲渡して、引退してしまうということがあります。
未熟な後継者が経営者となってしまった場合、不安が残る元経営者としては引退後も一定の決定権が欲しいと考えるのは自然なことでしょう。元経営者が拒否権付株式を持つことで、引退後も経営に関して強い決定権を持つことが実現できます。
会社が株主総会でおかしな決議をしたとしても、拒否権付株式によって決議を否決することができるわけです。引退後も一定の発言力・影響力があるというのは、拒否権付株式を保有するにあたり大きなメリットとなります。
事業承継による拒否権付株式を検討の際は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では経験豊富なアドバイザーが、丁寧にフルサポートいたします。
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拒否権付株式のデメリット
拒否権付株式は一見メリットが多くみられますが、強力な力を持つがゆえにいくつかのデメリットも存在します。主なデメリットは、以下の3つになります。
- 公正な経営が困難になる
- 有意義な買収を否決される恐れがある
- 敵対的な株主に悪用される恐れがある
①公正な経営が困難になる
拒否権付株式を保有していれば株主総会での決議を否決することができるため、拒否権付株式を保有する株主の恣意的な判断を加速させる恐れがあります。株主の気に入らない決議を否決されてしまうといったケースも考えられるため、公正な経営が困難になってしまいます。
株式を公開する場合は、あらゆる場面で市場から評価されることになります。常に市場からの評価を意識することで、公正な会社の経営につなげることができますが、拒否権付株式を発行することでこの公正さが失われてしまう可能性があります。
会社にとって友好的な株主にのみ拒否権付株式を与えてしまえば、経営陣や一部の株主にとって都合の悪い決議は否決されてしまうといった事態にもなりかねず、公正な経営が困難になってしまうでしょう。
②有意義な買収を否決される恐れがある
拒否権付株式は敵対的買収の対策としても効果的ですが、会社にとって有意義な買収に対しても拒否権を行使して否決させることができてしまうため、会社にとってデメリットとなってしまいます。
いくら良質なサービスを提供できる会社でも、財務基盤が不安定であれば事業の承継は難しくなっていきます。そのまま経営を続けていては、事業は衰退する一方です。
もしそこで資金力のある大手企業などに買収されたとしたら、資金面において圧倒的に安定することができます。資金面が安定すれば、買収された後も事業の承継が可能になるなど、買収は会社にとって大きなメリットとなるケースもあります。
しかし、買収されることに抵抗感を抱く株主がいる可能性は十分に考えられます。拒否権付株式を持つ株主の中にそのような株主がいた場合、拒否権の行使によって買収が否決されてしまうかもしれません。
拒否権付株式によって、敵対的買収を防止することができるのは重要なメリットでしたが、一方で会社にとって有意義な買収まで否決されてしまっては、会社の発展にとって大きな妨げとなってしまいます。
③敵対的な株主に悪用される恐れがある
拒否権付株式は敵対的な株主が保有してしまうと、会社にとって大きなデメリットとなります。拒否権付株式は会社にとって友好的な株主が保有するからこそ、効果的なメリットを発生させることができるものです。
敵対的な株主が拒否権付株式を保有してしまっては、拒否権という強力な権利を乱用するなど悪用されてしまうことになります。従って、拒否権付株式を発行した意味がなくなってしまい、むしろ発行しないほうが良かったなどという事態に陥ってしまいます。
株主総会で決議された内容は、株主がありとあらゆる点を議論したうえでの客観的な判断となります。だからこそ、会社の経営に客観性が加わり、公正な経営につながるのです。
拒否権付株式は効果的なメリットもありますが、買収やM&Aといった経営に関する政策において多大な影響を及ぼすものでもあります。その扱い方には注意が必要です。
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拒否権付株式の登記
会社が登記しなければならない事項には会社名(商号)や本店所在地、資本金の額などがありますが、種類株式の数や内容も登記する必要があります。拒否権付株式は種類株式となるので、拒否権付株式を定める場合は必ず登記手続きをしなくてはなりません。
種類株式の総数や内容を登記事項の中の「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」という項目に記載します。拒否権付株式であれば、内容によっては種類株主総会の決議も必要になるということを示します。
株式の内容は本来は平等であるべきですが、例外的に種類株式が認められています。特別な内容となるので、種類株式の数や内容は登記によって第三者に示しておく必要があります。種類株式は定款に規定する必要がありますが、登記する必要があることも重要なポイントです。
拒否権付株式の定款
種類株式は定款に規定することで初めて発行が認められるため、拒否権付株式の内容も定款に記載しなくてはなりません。定款の具体的な記載例をご紹介します。
【定款記載例】
第○○条
株主総会において決議すべき事項のうち、次に掲げる事項については株主総会の決議のほか、A種類株式を有する株主の種類株主総会の決議を要する。
- 合併
- 会社分割
- 株式交換
- 株式移転
拒否権付株式の発行手続き
拒否権付株式は種類株式であるため、種類株式の発行手続きとして考える必要があります。種類株式を発行する場合、まず内容や発行可能種類株式総数について定款で定めなくてはなりません。
種類株式を発行したことがない会社は、必然的に定款にも種類株式の定めがないことになるので、種類株式を発行する際にはまず定款に種類株式に関する定めを記載する必要があります。
種類株式を発行したことがある会社でも、新たな内容の種類株式として拒否権付株式を発行する場合には、新たに種類株式の内容を定款で定める必要があります。
種類株式を初めて発行する場合でも、新たな内容の種類株式を発行する場合でも定款の変更が必要となります。定款の変更は、特別決議と呼ばれる株主総会の決議が必要です。他にも決議が必要になる場合もあります。必要な決議を経て定款を変更し、登記事項に項目を登記することで種類株式を発行することができます。
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まとめ
拒否権付株式の発行に伴い種類株主総会というシステムが新たに発生します。株主総会で決議された内容にもかかわらず、種類株主総会で否決されてしまうという事態が生じてしまいます。
多くの株主が株主総会によって決議した内容が一部の株主によって否決されてしまうというのは、経営的に問題があるケースが多いです。拒否権付株式は公正さを正しく維持しつつ、メリットを活かして利用するように注意しましょう。
今回の内容をまとめると、以下になります。
・拒否権付株式とは?拒否権付株式の意味
→重要議案を否決できる権限を付与した種類株式のこと
・拒否権付株式のメリット
→1株保有でも、「拒否権行使」「敵対的買収の防止」「引退後も経営に関する決定権の保持」が可能
・拒否権付株式のデメリット
→公正な経営が困難、有意義な買収の否決、敵対的な株主の悪用などといったリスク
・拒否権付株式の登記
→種類株式の数や内容を登記によって第三者に示しておく必要がある
・拒否権付株式の定款
→定款に記載されている事項は、種類株主総会で否決されれば実行することはできない
・拒否権付株式の発行手続き
→初めての種類株式や新たな内容の種類株式を発行する場合でも、定款の変更が必要となる
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。