2021年4月26日更新節税

決算対策と節税

決算を考えるうえで節税対策は欠かせませんが、そのためには自社の財務状況を把握しておくことが重要です。実際のところ、効果的な節税を実施できている企業は少ないです。この記事では、経費、設備投資、保険などを活用した決算に役立つ節税対策を紹介します。

目次
  1. 決算対策と節税
  2. 決算における節税の考え方
  3. 決算までにすべき節税対策のステップ
  4. 決算に役立つ節税方法
  5. 最優先節税の方法例
  6. 投資型節税の方法例
  7. 制度活用型の方法例
  8. まとめ
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決算対策と節税

決算対策と節税

会社を経営するうえで、税金の支払いは避けては通れません。法人税や消費税、事業税、企業にはさまざまな税金が課されます。税負担によって資金繰りが悪化する企業も少なくありません。最悪の場合、税負担によって経営の続行が困難になるおそれもあります。

企業を安定的に経営し、無駄な税金を支払わないためにも、節税対策を行う必要があります。特に、決算における節税はとても重要です。

そこで今回は、決算時に役立つ節税方法にと、決算に対する基本的な考え方について解説します。決算を行う経理担当者、経営者の方は必見です。

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決算における節税の考え方

決算における節税の考え方

まずはじめに、決算における節税の考え方のポイントについてご紹介します。

①節税とは

節税とは、合法的な手段によって、無駄な税負担を減らすことです。あくまで無駄な税負担を減らすことであって、支払わなくてはいけない税金はしっかりと支払う必要があります。本来払うべき税金を支払わないと「脱税」となり、違法となってしまいます。

経営者であれば、余計な税金は支払いたくないと考えるのは当然のことですし、少しでも決算時に税負担を減らそうと考えるのは当然です。しかし、脱税は犯罪であり、脱税が発覚した場合、重いペナルティが課されます。最悪の場合、企業経営を継続できなくなるリスクもあります。

そこで、「節税」と「脱税」を混同しないように十分注意しましょう。ちなみに、節税は会社経営のありとあらゆる場面で行われています。今回は取り扱いませんが、M&Aにおいても、節税できる余地がある場面も少なくありません。

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②決算を成功させるためには

決算を成功させるためには、次の2点を遵守する必要があります。

  • 自社の収支を正確に把握する
  • 決算までの節税スケジュールを作成・実行する
次に、それぞれのポイントを詳しく解説します。

自社の収支を正確に把握する

そもそも節税は、自社の財務状況を把握していないと実施できません。なぜなら、収支状況がわからないと、課される税金の額、種類がわからないからです。そこで、通常の決算とは別に「月次決算」を実施することをおすすめします。

月次決算とは、売上や費用、利益などの収支状況について、毎月行う決算です。詳細については後で説明しますが、節税方法には、費用のかかるものと、かからないものがあります。自社の収支状況を把握していないと、どの節税方法を活用できるかがわかりません。

月次決算を徹底することで、臨機応変に節税を実施できます。

決算までのスケジュールを作成・実行する

よく節税と聞くと、決算間近に慌てて行うイメージがあります。しかし、基本的に節税は決算の数ヶ月前から実施するものです。決算間近に活用できる節税には限界があります。

節税の効果を高めるためには決算までのスケジュールを作成するのがおすすめです。どの時期にどのような税金対策を行うのかを、スケジュールに記載します。そして決算スケジュールに基づいて、節税対策を実施しましょう。

決算スケジュールを前もって立てておくことで、ゆとりを持って節税対策を実行できます。経営者や経理担当の方は、決算日から逆算して節税対策を立てることが重要です。

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決算までにすべき節税対策のステップ

決算までにすべき節税対策のステップ

前述のとおり、決算を成功させるためには早い時期からの準備が重要です。基本的には、決算の3か月前から対策を立てる必要があります。ここでは、「決算3か月前」と「決算直前期」に行うべき対策をお伝えします。

①決算3か月前

決算が3か月後に迫ったら、「決算時のシミュレーション」を実行しましょう。まずはじめに、9か月分の月次決算データをもとに、残り3か月の収支予測を立てます。その後、9か月分の月次決算データと3ヶ月分の収支予測をそれぞれ足し合わせて、決算時点の収支を想定します。

算出された想定収支をもとに、残りの3ヶ月で実行できる節税対策を考えましょう。この決算シミュレーションにより、今年度払うべき税金についておおよそ把握できます。また、決算に向けて、残りの3ヶ月で実施できる節税対策も実行することができます。

なお、決算の2ヶ月前・1ヶ月前にも同様のシミュレーションを実施するのがベストです。ただし、通常業務で忙しく、こまめなシミュレーションが難しい場合には、最低3ヶ月前の決算シミュレーションだけでも実施しましょう。

これをするか否かで、決算時の節税効果が大きく変わる可能性もあります。

②決算直前期

決算直前期(1〜3週間前)は、次の事項についてチェックを行いましょう。

  • 活用し忘れている節税はないか
  • 今からでも活用できる節税はあるか
  • 自社の状況に合う節税はあるか
上記を確認すれば、決算に向けてできる限りの節税を行えます。

決算に役立つ節税方法

決算に役立つ節税方法

節税方法には、さまざまな方法があります。しかし、すべての方法が決算に役立つわけではありません。決算とは、今後の経営管理に役立たせる意味合いもあります。つまり、今後のためにならない節税は、決算(経営)に役立つとはいえません。

そこで、決算(今後の経営)に役立つ節税方法を用いることが大事です。無駄な投資や高級中古車などの購入は、むやみに行うべきではありません。決算に役立つ節税方法には、次の3つがあります。

  1. 最優先節税
  2. 投資型
  3. 制度活用型

なお、それぞれの名称は、わかりやすく説明するために便宜上名づけたものであり、税法上の正式名称ではないので、注意してください。

次に、上記の3つの節税方法について詳しく解説します。各節税方法の方法例については後述します。

①最優先節税

最優先節税とは、費用がかからない節税方法です。本来、節税は決算を有利に進めて、社内に多くの利益を残すために行います。利益を多く残したいのに、費用がかかるのは好ましくありません。よって、支出を伴わない節税対策から優先的に活用するのがベストです。

最優先節税の例としては、次のものがあります。

  • 飲食費を会議費として計上
  • 役員報酬の見直し
  • 不要な固定資産の廃棄(有姿除却)

②投資型

投資型節税とは、従業員のモチベーションアップや事業運営に役立つ効果が期待できる節税方法です。この場合は、費用の支出を伴うため、最優先節税の次は、投資型節税を実施するのがベストです。

③制度活用型

制度活用型とは、保険や共済などの制度加入による節税方法です。投資型と同様に、支出を伴います。よって、「最優先節税」をひと通り実践してから、「投資型」や「制度活用型」を検討しましょう。

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法人税対策

最優先節税の方法例

最優先節税の方法例

まず、最優先節税の主な方法例である以下の3つについて、それぞれ説明します。

  1. 飲食費を会議費として計上
  2. 役員報酬の見直し
  3. 不要な固定資産の廃棄(有姿除却)

①飲食費を会議費として計上

会社経営をしていると、得意先と会食をする機会があります。その際の飲食費は、会議費もしくは交際費として計上します。節税のためには、飲食費は「会議費」として計上するほうが良いです。

なぜなら一人当たり5,000円以内であれば、「会議費」として全額経費として処理できるからです。毎回の食事を全額会議費として処理できれば、決算までにかなりの節税効果が期待できます。なお、決算直前期にもう一度今までの飲食費を確認することも重要です。

5,000円以内の飲食代が、「会議費」として処理されていない可能性があります。決算を成功させるうえでは、こうした小さい計上漏れも見逃してはいけません。ただし、「中小法人」に該当する場合は、交際費も年間800万円までは経費として処理できます。

②役員報酬の見直し

企業が取りうる節税方法として、最もメジャーなのが「役員報酬の見直し」です。役員報酬とは、経営陣に支払われる毎月の報酬です。役員報酬は、決算の際に損金として計上可能です。つまり、役員報酬を増やすほど、利益額が減少します。

利益額が減少すれば、当然会社が支払う納税額も減少します。場合によっては、数十万円もの節税効果が期待できます。そのため、経営者の方は、自身の役員報酬を最適な額に設定することが不可欠です。ただし、役員報酬を節税に用いる場合、以下の点に注意しなくてはいけません。

  • 役員報酬は毎月固定額
  • 役員報酬には所得税が課税される

役員報酬を損金計上するためには、毎月固定額にする必要があります。つまり、決算直前期になってからでは、この節税方法は活用できません。また、役員報酬への所得税についても注意が必要です。役員報酬を増やせば増やすほど、会社が支払う税金は減少します。

しかし一方で、経営者自身が支払う税金は多くなります。つまり、役員報酬を増やせば増やすほど良いというわけではありません。自身と会社の税負担のバランスを考慮して、最適な役員報酬を設定する必要があります。

③不要な固定資産の廃棄(有姿除却)

有姿除却は、決算直前もしくは決算直後でも活用できる裏ワザ的な節税手法です。有姿除却とは、実際には廃棄処理しないものの、今後活用しない資産を税務的に処理することです。有姿除却を実施すれば、実際には廃棄費用をかけずに、処理費用を損金処理できます。

会社・工場内に不要な設備がある場合、絶大な効果を発揮します。ただし、有姿除却と認められるためには、現在から今後にわたってその資産を使ってはいけないという点に注意してください。実際に利用していたり、今後利用した場合には、有姿除却は認められません。

決算直前になって、まだ節税の必要性がある場合には、有姿除却を検討してみてください。

※関連記事
経費を利用した節税とは

投資型節税の方法例

投資型節税の方法例

次に、投資型節税の主な方法例である以下の3つについて、それぞれ説明します。

  1. 社員旅行の検討
  2. 30万円未満の備品購入
  3. 決算賞与の活用

①社員旅行の検討

社員旅行は、決算直前でも実施できる節税方法です。加えて、従業員のモチベーションも上げられます。そのため、社員旅行は一石二鳥の手段ですが、社員旅行の費用を損金算入するためには、次の条件を全て満たす必要があります。

次の条件を満たさないと、社員旅行の費用を損金算入できないので注意してください。

  • 旅行費用は約10万円以内
  • 旅行期間は4泊5日以内
  • 従業員全体の50%以上が旅行に参加
  • 旅行の目的や規模、行程が一般的
  • 自己都合による不参加者へ現金を支給しない
  • 日程表や旅行費用の明細書などの資料は必ず保管

②30万円未満の備品購入

30万円未満の備品購入は、決算直前に即効性のある節税方法です。購入する予定の備品がある場合は、購入を決算月に前倒ししましょう。資本金が1億円以下の青色申告法人は、取得価額が30万円未満の備品の購入については、全額損金算入できます。

ただし、損金算入できるのは、年間300万円までです。決算直前で節税対策に悩んだら、備品を前倒しして購入するのがおすすめです。

③決算賞与の活用

決算賞与の活用は、従業員の頑張りに報いる節税方法です。頑張ってくれた従業員にボーナスを支払い、その分を損金計上できます。加えて、従業員のモチベーションも上がり、今後の事業運営にも良い影響を与えます。

ただし、決算賞与を節税に活用するためには、次の条件を満たさなくてはいけません。

  • 年度の終了までに、従業員全員に賞与額を伝達
  • 決算賞与の額を未払金として経費計上
  • 翌年度最初の1ヶ月以内に決算賞与を支給​​​​​

特に見落としがちなのが、決算賞与の支払いタイミングです。翌年度に入ってから、1ヶ月以内に支払う必要があります。この点を忘れると、決算賞与を節税には使うことはできませんので、注意してください。

※関連記事
経営に求められる判断

制度活用型の方法例

制度活用型の方法例

最後に、次に、制度活用型の主な方法例である以下の2つについて、それぞれ説明します。

  1. 保険加入
  2. 共済制度加入

①保険加入

生命保険などへの加入も、決算時の節税に役立ちます。保険の種類にもよりますが、保険料を損金計上できます。保険には、総合福祉団体保険や経営者保険など、さまざまな種類があります。保険に加入すれば、節税しながら役員退職金を積み立てられます。

もしくは、従業員への各種福利厚生を格安で提供することもできます。上記のとおり、保険への加入により節税しながらさまざまなメリットを受けられます。ただし、全ての保険が節税対策になるわけではありません。保険の種類によって、損金算入の可否は異なります。

保険加入を決算に役立てたいのならば、保険の種類に十分注意する必要があります。また、解約返戻金がある保険の活用には要注意です。返戻金を受け取るタイミングを誤ると、思わぬ税金が発生します。

②共済制度加入

各種共済制度へ加入すれば、決算時の節税を図ることができます。節税に役立つ共済制度には、主に次のものがあります。

  • 小規模企業共済
  • 中小企業退職金共済
  • 中小企業倒産防止共済

小規模企業共済

小規模企業共済とは、経営者の退職金を積み立てるための共済制度です。この共済に支払う掛け金は、年間84万円までならば課税対象の所得から全額控除されます。つまり、支払う掛け金分だけ、税務上の所得を減らすことができます。

加えて、退職時には、経営者は多額の退職金を受け取ることができます。節税に加えて、自身の退職金も積み立てられる一石二鳥の制度です。

中小企業退職金共済

中小企業退職金共済とは、従業員の退職金を積み立てるための共済制度です。この共済に支払う掛け金は、全額を経費として損金算入できるため大きな節税効果が期待できます。加えて、従業員の退職金も積み立てられる制度です。

ただし、この制度を決算に活用するためには、「従業員全員の加入」が必須です。また、役員の加入は認められませんので、注意してください。

中小企業倒産防止共済

中小企業倒産防止共済とは、万が一倒産した場合に、支払い総額の10倍まで融資を受けられる制度です。この共済に支払う掛け金も全額経費として損金計上できます。つまり、この制度を活用すれば、節税しながら倒産を防止できます。

さらにこの制度には、もう1点メリットがあります。仮に途中で解約しても、掛け金の大部分が戻ってくる点です。1年以上支払うことで、解約時に掛け金の80%が戻ってきます。

加えて、40か月以上支払っていれば解約時に掛け金全額が返ってきます。途中で解約してもお金が戻ってくるため、比較的活用しやすい制度です。

※関連記事
保険を活用した節税

まとめ

まとめ

今回は、決算に役立つ節税対策についてご紹介しました。決算を成功させるためには、まずは自社の財務状況を把握しておくことが重要です。今回の記事をまとめると、以下のとおりです。

・節税とは
→合法的な手段によって無駄な税負担を削減する行為

・決算を成功させるためには
→自社の収支を正確に把握する、決算までのスケジュールを作成・実行する

・決算までにすべきこと
→決算時のシミュレーション(決算3ヶ月前)、節税対策のチェック(決算直前期)

・決算に役立つ節税方法と方法例
→①最優先節税:費用がかからない方法(例:飲食費を会議費として計上、役員報酬の見直し、不要な固定資産の廃棄=有姿除却)
→②投資型節税:従業員のモチベーションアップや事業運営に役立つ効果を期待できる方法(例:社員旅行の検討、30万円未満の備品購入、決算賞与の活用)
→③制度活用型節税:保険や共済などの制度加入による方法

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