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2021年4月30日更新節税
減価償却を活用した節税
減価償却がどうしたら節税に結びつくのか、今一つピンとこないという経営者は少なくありません。この機会にあらためて減価償却の仕組みを再認識し、理解を深めておきましょう。減価償却で節税効果を得るためには、それが一番の近道です。
減価償却とは
個人でも法人でも納税が義務であることは誰もが承知しています。しかし、正当に節税する方法があるのなら、それを取り入れたいと思うのは人情です。特に個人と違って、経営者や個人事業主であれば、すでに何らかの節税対策は実践しているでしょう。
本記事では、会社や事業者が取り得る節税手段として、減価償却にスポットを当てました。減価償却とは、取得した固定資産の費用を一括処理せず、複数年度にわたり一定期間に金額を振り分けて計上する会計処理のことです。
例えば、建物や事業用設備は使用するにつれて劣化し、パフォーマンスが低下します。仮にそれらが10年間使える資産であれば、取得費用を10年間に分割させて経費計上することを減価償却といいます。
①減価償却対象資産
全ての固定資産が減価償却の対象となるわけではありません。減価償却の対象とならない固定資産もあります。固定資産とは購入費用が10万円以上の価格のものです。固定資産は備品などのような有形固定資産と、ソフトウェアなどのような無形固定資産に分かれます。
まず、減価償却の対象となる固定資産としては、だいたい以下のようなものが該当します。
- 事業用建物
- 事業用設備
- 機械装置類
- 車両
- 備品器具類
- ソフトウェア
- 特許権
- 商標権
- 営業権
②減価償却非対象資産
一方、時間の経過に価値が左右されないとされる固定資産は、減価償却の対象から外されています。減価償却の対象とならない固定資産は、ざっと以下のようなものです。
- 土地
- 借地権
- 骨董品
- 書画
- 建築中の建物
なお、上記のうち、建築中の建物については、完成するまでは正式な価値が確定しないため、その間は減価償却の非対象固定資産という扱いになっています。
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減価償却のメリット
減価償却の方法
減価償却の具体的な中身について確認していきましょう。減価償却の会計処理を行う場合、年度ごとに計上する金額の計算方法や、何年間にわたって減価償却するのかなど、対象の固定資産ごとに全て細かく法令で定められています。
減価償却の計算方式には定額法と定率法の2種類があります。また、減価償却する年数については耐用年数という言葉で法令で決められています。それぞれを個別に説明します。
①減価償却の計算方式:定額法
減価償却における定額法とは、毎年一定金額を減価償却する方法であり、ソフトウェアなどの無形固定資産は全て定額法により減価償却する決まりとなっています。定額法での一定金額とは、取得価額を耐用年数で割ることで、1年度分の減価償却費を求めます。
金額が割り切れない場合については、実務上は取得価額に定額法償却率を掛け合わせることで計算します。計算方式が簡易でわかりやすい点が、定額法のメリットです。
②減価償却の計算方式:定率法
一方、減価償却における定率法とは、毎年同じ割合(償却率)で減価償却費を計上する方法です。固定資産の購入初年度であれば、その取得価額が償却率計算の対象となり、購入後2年度目以降は未償却残高に対して償却率計算を行います。
つまり、定率法を金額で考えると、減価償却費は毎年減少していくことになります。初年度から数年間の減価償却費は、定額法よりも定率法のほうが高くなりますが、ある年度からは定率法のほうが急速に減価償却費が低くなることになります。
なお、償却率については、耐用年数に応じて各固定資産ごとに割合が定められています。
③耐用年数
減価償却における耐用年数とは、各固定資産の種類ごとに定められている、その資産を問題なく使用できる期間のことです。この耐用年数は多岐の物品にわたり、実に事細かに決められています。この場にはとても掲載しきれないほどの種類の数があります。
各固定資産の耐用年数は国税庁のホームページで確認することができますので、そちらを参照してください。なお、技術革新のスピードが速まっている現在では、最新設備・器具だったものが陳腐化してしまう速度も速まる傾向にあります。
つまり、法令で定められている固定資産の耐用年数が、現実とはズレを起こしているものもある、という問題が出ていることも覚えておいてください。
減価償却で節税を志向する考え方
固定資産の購入費用が一括計上とならず、数年に分けて費用計上する減価償却は、果たして節税に有効といえるのでしょうか。固定資産の費用価値が変わらないのなら、特別な節税効果とはならないという意見もあれば、減価償却の仕組みを熟知すれば節税効果を得られるという意見もあります。
両者の見解を紹介します。まずは、減価償却の節税効果否定派の意見です。
①減価償却の節税効果否定派の意見
個人事業主や法人についての税金は、売上高から諸経費を差し引いた課税所得に対して課されます。仮に固定資産の購入代金を全額費用計上できるとしたら、その年度については減価償却費を計上するよりも利益が大きく減少するので、支払う税金額も減ります。
これは特に目先の資金繰りを考えると、現金の留保ができて歓迎したい状況です。しかし、減価償却によって、経費計上を分割・先延ばししている状況では、上記のような節税インパクトといった事象とならず、1年間当たりの節税効果が低減してしまいます。
この状況を捉えて、減価償却の節税効果を否定する経営者は少なからずいるようです。
②減価償却の節税効果肯定派の意見
減価償却の節税効果に肯定的な経営者は、減価償却では取得した資産の購入代金を数年に分けて費用計上するので、数年間にわたって節税効果がある、という考え方をします。仮に購入年度に全額費用計上できてしまうと、翌年度以降では全く節税効果は得られません。
会社の業績、経営状況というものは、いつも思ったとおりにはいかないのが常です。資産購入の翌年度以降で業績が悪化した場合、減価償却によって課税所得額を低減化できる、つまり、節税できることは、資金繰りの悪化を食い止めるのに非常に有効です。
経営上のリスク分散という観点に立てば、減価償却の節税効果分散にはメリットがあります。また、減価償却をよく理解し、うまく活用できるようになることは、将来、M&Aを実施するような局面になったときもメリットとなります。
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減価償却の節税効果を高める方法
減価償却の利用により、数年にわたる節税効果を得られるわけですが、一部の特殊な減価償却の制度を利用すれば、さらに減価償却の節税効果を高めることが期待できます。以下に、減価償却の節税効果を高める4つの方法を紹介します。
①減価償却計算方式の選択
多くの固定資産において、減価償却の際に定額法を用いるか定率法を用いるかは、法令で指定されてしまっています。しかし、どちらの計算方式を用いるか選択できる固定資産は、少なくはありません。計算方式が選択できる固定資産の場合は、積極的に使い分けましょう。
定率法は計算式の設計上、固定資産の購入初年度や2~3年目の減価償却費が多く計上されます。つまり、短期的に節税効果を得たいのであれば、定率法を選択するほうがベターです。一方で、リスク分散を図りたいのであれば、毎年一定額を計上する定額法を選択しましょう。
一般的には定率法のほうが節税効果は高いと言われていますが、各企業の状況ごとに適した方法は異なります。自社に合う計算方式を選択すれば、減価償却の節税効果が高くなります。
②増加償却
増加償却とは、一般的な使用時間を上回る使い方をしている機械設備などの固定資産について、その上回って使用した分を増額させて減価償却費に計上する制度です。増加償却を利用すれば、利用しない場合と比べてより多くの減価償却費を計上でき、節税効果の増加につながります。
ただし、増加償却制度の適用を受けるためには、以下の要件を満たしていなければなりません。
- 旧定額法や旧定率法、定額法または定率法を採用する機械装置である
- 増加償却割合が10%以上である
- 平均的な使用時間を超えて使用した事実を証する書類を保存している
- 増加償却を適用する旨などを記した書類を適用事業年度の確定申告書の提出期限までに税務署長に提出する
以上の要件をクリアし増加償却制度の適用を認められると、減価償却限度額を下記の計算式により算出した金額まで引き上げることができます。
- 減価償却限度額=普通償却限度額×(1+増加償却割合)
増加償却割合とは、「日々の超過使用時間」や「平均超過使用時間」などを基準に算出します。手続きや条件は厳しいものの、適用できれば減価償却の節税効果が高まります。
③有姿除却
まず、この場合の除却とは、会社において固定資産を廃棄したり取り壊し処分したりすることです。そして、有姿除却とは、実際には廃棄処分しないものの、今後利用しない固定資産を税務上、除却扱い処置をする方法です。
特に製造業などでは、実際に廃棄はしていないものの、使用していない固定資産が社内にあるケースが多々あります。それらの使用しない資産を有姿除却すれば、その分、減価償却費が増加することにより、節税効果が期待できます。
有姿除却処置は、廃棄処分の労力や費用をかけないで済む点もメリットです。決算直前の節税対策としても有効といえます。ただし、一度、有姿除却処置をしてしまった固定資産は、今後一切、利用はできなくなることは肝に銘じておきましょう。
④即時償却
いくつかの条件があるため、どの企業でも行える方法ではありませんが、固定資産を減価償却せず、購入した年度に一括費用計上して節税対策が取れる方法が、即時償却です。即時償却が行えるのは、以下の全てに該当している場合です。
- 資本金1億円以下の法人
- 資本金1億円以下でも、資本金1億円以上の会社のグループ会社は対象外
- NPOや個人事業主の場合は従業員1,000人以下
- 青色申告で確定申告していること
- 固定資産として会計処理をしていないこと
- 1つ当たりの取得価額30万円未満のものであり、合計額300万円以内が上限
300万円まで全額費用計上するということは、それだけ利益が圧縮されるということです。売上が好調過ぎて多額の法人税が確実視されるときなど、状況次第で検討する価値はあります。
不動産を用いた減価償却による節税の注意点
減価償却による節税を志向するときに、不動産の場合だけは注意しなければならないことがあります。節税どころか余分に課税される事態すら想定されることです。以下の説明をよく読み取ってください。
減価償却中である不動産を売却することになったとします。減価償却中ということは、その不動産の帳簿上の価格は、購入時よりも減価償却した分だけ減額されています。不動産の売却価格が購入時よりも低くても、現在の帳簿価格よりも高ければ利益が出たことになってしまいます。
利益が発生すれば、その分だけ税金が課税されます。また、不動産を短期間で売却する場合には、利益に対して短期譲渡税が適用されるため、さらに税負担が重くなります。具体的には、不動産取得から5年以内に売却すると、所得税30%と住民税9%が課税されるのです。
このように、不動産の場合、売却を行うと予想以上に課税を受けてしまう可能性が高く存在します。十分に気をつけてください。
まとめ
減価償却が節税に結びつくもつかないも、経営者が確定申告に臨む際に、どのような方針で決算を行うかという考え方次第です。当期だけでなく、できるだけ翌期や翌々期の収益予測も立てて決断に当たりましょう。
また、時おり聞く話として、決算間際に節税と銘打って、大して必要でもない資産を購入するケースがあるようです。このことが本末転倒となっているのは言わずもがなですが、節税ばかりに目がいって短絡的な思考を取ることだけはしないようにしましょう。
通常の減価償却でも十分に節税は可能です。減価償却の概要が理解できたなら、詳細は税理士など専門家にアドバイスをもらうと良いでしょう。
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