M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年5月24日更新会社・事業を売る
簿外債務とは?リスク、買い手の注意点をわかりやすく解説
簿外債務とは、帳簿(貸借対照表)に計上されていない債務のことです。簿外負債とも呼ばれており、多くの中小企業が抱えています。M&Aの実施相手が簿外債務を抱えていると将来的に深刻な問題が発生しやすいため、専門家協力のもと事前に存在を把握しておくと良いです。
簿外債務とは
M&Aを実施するうえで注意すべき簿外債務ですが、その概要は広く知られていません。簿外債務とは、帳簿の外に存在していて、貸借対照表に計上されていない債務のことです。簿外負債と呼ばれることもあるため、把握しておきましょう。
簿外債務は中小企業を中心に少なからず存在するため、M&Aを実施する際はM&Aアドバイザーや仲介会社などから事前に資料の提出を求められることも少なくありません。
もしも提示を受けていれば、M&Aでリスクとなる可能性は少ないです。中小企業では、未払いの残業代など、貸借対照表に計上されない債務が多種多様あります。社会保険に未加入である場合も、簿外債務が発生する可能性があります。
簿外債務が発生する原因とは
主な原因として、偶発債務が挙げられます。偶発債務とは、「偶発的な発生が考えられる債務」をさします。具体的には、将来発生する可能性はあるが、負債額が確定できないうえ、いつ発生するかも定かではない債務です。
一般的な企業の財務諸表は税務会計に基づき作成されているのがほとんどです。税務会計では支払額が確定していない将来の債務については未計上のため、簿外債務になりやすいのです。
偶発債務の中でも発生確率が高い債務は、「引当金として計上」しなければなりません。一方で発生確率が低いものは、決算書に注意書きとして記載されるのみです。そのため、M&Aを行う前には簿外債務として認識しておく必要があります。
簿外債務を把握するには専門家の協力が必要不可欠
簿外債務は業務上必然的に発生するものであり、基本的には存在を把握しやすいですが、前提として会計や税務に関する専門知識が求められます。M&Aを実施する際は、公認会計士・税理士など会計や税務の知識を持つ専門家やM&A仲介会社などに協力を求めるのがおすすめです。
M&A総合研究所には、M&Aに関する専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、これまでに培ってきたノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
簿外債務の種類
本章では、さまざま知られているなかでの簿外債務の代表的な種類を取り上げます。
賞与引当金
従業員に対する賞与について、まだ支払われていないものです。対象企業が支給対象期間と支払時期を別に設定していて、実際に賞与を支払うタイミングで費用の計上を実施する方針を取っていると、簿外債務となっていることが少なくありません。
退職給付引当金
将来的に支払いが予定されている退職金をさします。例えば、実際に退職金を支払うタイミングで費用計上する処理方針を取る企業の場合、退職給付引当金が簿外債務になっているケースが多いです。
未払残業代
簿外債務のうち調査を通じて判明することが多いのが、未払残業代です。当然ですが、法律上、会社は従業員が残業しただけの残業代を支払う必要があります。
買掛金
取引先からの仕入れ代金のなかでも、支払いが終了していないもののことです。発生したタイミングで帳簿に記載する必要がありますが、計上漏れを起こして簿外債務となるケースもみられます。
債務保証
主たる債務者によって履行されなかった場合に備えて計上する引当金のことです。対象企業が他人・他社の債務について保証している場合、簿外債務として扱われやすくなります。
リース債務
ファイナンスリース取引を行った場合、リースを提供された企業はリースしたものをリース資産、それにかかる債務をリース債務として計上する決まりです。リース債務が簿外債務に当てはまるのは、賃貸借取引として処理しているケースです。
未払いの社会保険
とりわけ契約社員・パート社員などの雇用形態によって採用した場合に社会保険の未払が発生するケースが多く、簿外債務になりやすいと考えられています。
訴訟リスク
M&Aの交渉中・検討中に係争事件があると判明すれば対応できますが、タイミングによってはM&Aの実施後に損害賠償を請求されたり、許認可の停止措置を講じられたりする可能性があります。
意図的に生み出される簿外債務とは
簿外債務のなかには意図的に貸借対照表に記入されなかったり正確に記入されなかったりする簿外債務が存在しますが、こうした簿外債務は大まかに2種類に分けられます。意図的に生み出される簿外債務は、以下のとおりです。
- 偶発債務
- 飛ばし
それぞれの簿外債務を順番に解説します。
①偶発債務
意図的に生み出される簿外債務の代表格が、偶発債務です。偶発債務とは、偶発的に発生するおそれのある債務をさします。つまり現時点では債務として発生していないものの、将来的に債務となる可能性があるものは偶発債務として扱われます。
偶発債務は将来的に債務として発生する可能性を踏まえたうえで、最悪の結果を想定して帳簿に反映させるのが基本的です。しかし、偶発債務が訴訟・環境汚染(主に土壌汚染)などの影響によって発生するおそれのある債務であれば、問題の存在を隠すために帳簿への正確な反映を避けるケースもあります。
そのほかにも、金融商品取引で含み損が発生するおそれがあったり、他人の借金の連帯保証人になったりすることで発生した債務も、帳簿から外されて偶発債務として扱われます。万が一にすべての偶発債務が実現してしまうと、深刻な損害が発生するおそれがあります。企業の規模次第では、数十億〜数千億円単位の債務が発生することも少なくありません。
②飛ばし
飛ばしも、簿外債務に含まれます。飛ばしとは、含み損が発生している資産などを他の会社に売却することで無かったものにする行為のことです。俗に呼ばれる粉飾決算は、飛ばしに類する行為とされています。
かつてバブル期の日本では、多くの企業が証券会社を間に入れて飛ばしを頻繁に実施していました。有名なものとしては、山一証券・大和証券などが飛ばしを実施していた事例です。しかし、1991年以降、飛ばしは証券取引法で禁止される違法行為となり、最近では飛ばしを実施する企業はゼロに近いです。
簿外債務への対策
本章では、簿外債務への対策を買い手側・売り手側のそれぞれの立場に分けて解説します。
買い手側の対策
まずは、買い手側で講じられる対策のなかから、代表的な2つの施策にスポットを当てて、順番に紹介します。
簿外債務のリスク発見にはデューデリジェンスの徹底が肝心
M&A相手先の簿外債務の有無やそのリスクを調べるには、デューデリジェンスの徹底が肝心です。デューデリジェンスとは買収監査とも呼ばれ、M&Aを実施するときに買収先企業の資産・負債などを詳細に調査する行為です。デューデリジェンスを徹底的に実施することで、M&Aで問題となる簿外債務をはじめとするトラブルを未然に防げます。
デューデリジェンスを念入りに実施するには、実績のある税理士や公認会計士、仲介会社などの専門家を依頼するのがおすすめです。M&A総合研究所には、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが多数在籍しており、M&Aをフルサポートいたします。
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契約書における表明保証の記載
M&A取引を行う際は、契約書に表明保証を記載することが大切です。これは、開示された情報が正しく、うそのないものであると約束してもらうためのものです。将来的に虚偽が発覚した場合、損害賠償請求や契約解除を請求できるようにしておくことで、簿外債務に関するリスクを抑制できます。
売り手側の対策
続いて、売り手側で講じられる対策のなかから、代表的な2つの施策にスポットを当てて、順番に紹介します。
簿外債務の把握
デューデリジェンスを通じて簿外債務を発見し、将来的に交渉が円滑に進行しなくなったり、交渉自体が決裂したりするリスクを検討する必要があります。簿外債務を把握するためには、専門家に依頼しチェックを受けることが重要です。
簿外債務の開示
簿外債務を発見した場合、相手側に必ず開示しましょう。簿外債務が後から発覚すれば、多額の損害賠償請求を行われるおそれがあります。M&Aの相手側との信頼関係を損なわないためにも、速やかに情報を伝えることが大切です。
M&Aにおける簿外債務の注意点
最近のM&Aでは、簿外債務が問題となるケースが増えています。なぜなら、M&Aで多く採用される株式譲渡や合併といった手法では、簿外債務を含めて相手企業のすべてを引き継いでしまうためです。とはいえ、ほとんどのM&Aでは、あらかじめ相手企業との協議が実施されます。
こうした協議のなかでデューデリジェンスを活用しながら、相手側における簿外債務の有無を充分に把握しておくことが大切です。例えば、賞与や退職金の未払いによって発生している簿外債務であれば、大きなリスクにはつながりにくいです。
ところが多大な費用が発生するリスクがある簿外債務は、あらかじめ整理しておくことをおすすめします。もしも訴訟に発展しかねない簿外債務が確認されると、訴訟のリスクをふくめて買い手側が引き受けることになります。したがってM&A成功を目指すなら、M&A手法の見直しも検討することが大切です。
簿外債務の承継を避けるならM&A手法の見直しも有効策
M&A手法を見直すときのポイントは、簿外債務を引き継がずにM&Aを実行する方法の吟味です。例えば、事業譲渡・営業譲渡を活用すれば、不要な資本・契約・簿外債務などをあらかじめ取り除いたうえで欲しい事業のみを獲得できます。
企業のすべてを買収・合併するよりも、M&A費用が抑えられる可能性も高いです。ところが、事業譲渡は買収・合併より手間がかかる手法であり、許認可・不動産・資格などの権利の移転手続きが大きな手間となりやすいです。
このほかにも、取引先や従業員との契約関係を個別に実施する必要があります。このとき先方に拒否されてしまえば、取引先との関係が断絶したり従業員の流出を招いてしまったりするリスクも生じます。事業譲渡を活用するときは、M&Aの完了後も想定した上で事前に準備しておくことが大切です。
簿外債務の発覚時の対処法
M&Aの実施前に簿外債務が判明した場合、買い手が取り得る対処法を解説します。具体的な対策は、M&Aの中止・買収価格の引き下げ・最終契約書への条項の追記などです。もしもM&Aを実施した後に簿外債務が発覚した場合、表明保証の内容を実行に移す決まりです。
簿外債務のまとめ
簿外債務は、とくに中小企業では自然に発生し得るものです。しかし、ケースによっては意図的に隠していることもあり、M&Aを実施するうえで少しでも企業価値を良くしたいとの考えで簿外債務を発生させている場合もあり得ます。
M&Aでは事前協議を入念に実施しておかないと、簿外債務の存在によって想定外のトラブルが発生しかねません。M&Aを実行するときには簿外債務の有無を確認したうえで、必要な場合には適切な対処を取ることが大切です。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。