M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月22日更新会社・事業を売る
買収プレミアム
買収プレミアムとは、買収の際に企業の時価総額に上乗せされて支払う資金です。シナジー効果の予測が困難なことから、買収プレミアムが過剰に支払われることも少なくありません。この記事では買収プレミアムを支払う理由やメリット、過多な支払いの回避方法について解説します。
買収プレミアムとは?
買収プレミアムとは、買収時に必要となる価格と時価総額の差額です。例えば、時価総額が40億円の企業を買収する際に、60億円で買収した場合、買収プレミアムは20億円となります。
また、株式公開買い付けの場合には、株式会社が公開する前の価格と、実際の買い付け額の差となります。つまり買収プレミアムとは、会社が株式を売りたい価格に上乗せされる「会社の価値」を現金にしたものです。
利益を生み出すために多くの金額を支払うのは、一見すると本末転倒のようにも思えます。しかし、買収側は先を見越して、ブランド力や資本などの見える価値以外に対して多額の資金を投資します。
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買収プレミアムを支払う理由
一般的に投資家は、低い金額で株式を購入して、高い金額で売却したいと考えます。しかし、買収プレミアムとは自ら提示金額に上乗せした購入金額です。
なぜわざわざ高いお金を払ってまで、多額の投資をする必要があるのでしょうか。買収プレミアムを支払う理由には、以下のものがあります。
- M&Aを短期間で行える
- 支配権の獲得
- 入札競争
①M&Aを短期間で行える
基本的に買収される側は、自社をより高い価額で売却したいと考えます。そのため、買収プレミアムを支払うことにより、買収価額が高くなりスムーズなM&Aを行うことが出来ます。
また買収プレミアムを支払うと、株式の一括購入が可能なので、時間を短縮できます。このように、効率的にM&Aを実施したい場合に、買収プレミアムが支払われます。
特にM&Aを目的とした株式買収の場合、合併や吸収を見越しています。そのため、可能な限り時間を短縮して、より多くの利益を生み出すために買収プレミアムを支払うというケースもあります。
②支配権の獲得
M&Aは実施しても終わりではなく、利益を生み出す必要があります。より少ない時間で企業価値を向上させる為には、支配権を獲得して経営を回らせる必要があります。
従業員の人員削減や役員会の設置、新規事業への参入等を実施する際は、経営権が必要になります。つまり、経営を支配するには、より多くの株式を獲得しなくてはいけません。
そこで、株式の一括購入が可能となる買収プレミアムを支払うと、対象会社の支配権を獲得できます。さらに、複数の企業が同一の企業を買収したいと考えている場合、買収プレミアムを支払うことによって、M&Aの交渉が優位になることも期待できます。
このように、買収プレミアムを支払えば、より確実に支配権を獲得出来ます。また、自社株の売却や取得も実施出来るようになるので、事実上会社の大部分の携われる支配者となれます。
③入札競争
時間短縮の他にも、入札競争の為に買収プレミアムを支払う場合があります。人気株式の株価は常に高く設定されていますが、それでも需要があります。
競合他社に買い取られないように、入札の際に買収プレミアムを支払うケースもあります。高額であれば必ず買収可能となる訳ではありませんが、買収したい会社に対して複数の入札があった場合には、入札金額は判断材料となります。
つまり、他の購入希望者を出し抜くため、買収プレミアムが支払われるケースがあります。
買収プレミアムのメリット
そもそも多額の買収プレミアムを支払うということは、経済的なメリットが必ずあるはずです。企業が先を見越して多額の買収プレミアムを払うメリットは、以下の2つの理由が考えられます。
- 株式保有による利益
- 経営改善による株価上昇
①株式保有による利益
買収プレミアムのメリットとして考えられるのが、株式による利益です。買収企業は対象会社の株式を保有することになるため、株価が上昇した場合はリターンを得ることができるのです。
将来的なリターンを得るために買収プレミアムを支払うということは、企業の将来性を見越した投資とも考えられます。
②経営改善による株価上昇
買収で対象会社が経営陣を交代することにより期待度が高まり、株価上昇に繋がるケースも多く見受けられます。経営方針を新しくすることにより、経営が改善して業績回復する可能性があるからです。
経営改善が株価上昇に繋がり、結果的に多くの利益を得ることが出来る可能性があります。だからこそ将来的なメリットが見込まれる魅力的な企業に、買収プレミアムを支払うことが考えられます。
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経営改善について
買収プレミアムの平均
将来的なメリットが見込まれる魅力的な企業に支払われる買収プレミアムは、その平均割合は約30~40%と言われています。つまり株価が100円の企業に対し、130円~140円が平均取引価格になるということです。
特に大きなリターンが見込まれる魅力的な企業であると評価された場合、買収プレミアムの割合が40%以上になることもあります。
2016年にはソフトバンクグループが平均取引価格を超えた「42.9%」の買収プレミアムで、イギリスの半導体設計大手アームHDを買収したという事もありました。
買収プレミアムが過多になる要因
買収プレミアムの支払額は、シナジー効果を予測して算出されます。会社が統合されるとシナジー効果が生み出され、その結果キャッシュフローが増加します。
キャッシュフローの増加分を超えない金額が、買収プレミアムとなります。要するに、統合後のシナジー効果により20億円のキャッシュフロー増加が見込まれる時、20億で会社を買収してはメリットがありません。
20億円以下の買収プレミアムを支払い、その差額がキャッシュフロー増加分として利益になります。しかしこれが意外と難しく、買収プレミアムとして25億円を支払ってしまう事態が頻繁に生じています。
では、買収プレミアムを支払い過ぎてしまう理由は何なのでしょうか?その理由として、以下の2点が挙げられます。
- シナジー効果は先が読めない
- 買収できない不安
①シナジー効果は先が読めない
前述の通り、シナジー効果とは先を見越した価値です。しかし、キャッシュフローの増加分として見越した金額が、必ずしも利益として獲得できるとは限りません。
今は業績の良い会社であっても、将来的にずっと業績が良い会社である保証はありません。また、需要が無くなりそうにない分野の会社であっても、自然災害や突然起きる事態によって需要が激減する可能性はあります。
予測していたよりシナジー効果が生まれれば問題はありませんが、将来のシナジー効果を正確に予測するのは不可能です。つまり、不確実なものを予測するので、買収プレミアムの過払いが生じることもあります。
②買収できない不安
買収プレミアムを上乗せしたとしても、必ず買収を実施できる訳ではありません。買収プレミアムを支払うということは、魅力ある会社という証拠でもあるため競合入札になる場合がほとんどです。
その結果、「出来るだけ多くの買収プレミアムを支払わなければ、買収する権利を獲得出来ない」との思い込みによって、過度に買収プレミアムを支払う事態が生じます。
シナジー効果を大きく上回る買収プレミアムを支払わないと、買収できないケースも実際にあります。しかし、シナジー効果を上回る買収プレミアムを支払った場合、結果として買収出来たとしても、大きな利益を得られない可能性が高いです。
一方で売却する側は、買収プレミアムが加わると高額で売却出来るので、メリットしかありません。とはいえ、高額すぎる買収プレミアムは、株式市場に対しても良い影響を与えません。
やはり買収を行うには、それだけニーズが合致している売り手を見つける必要があります。ニーズが合致している売り手を見つけることは、過多な買収プレミアムを支払うリスクを避けることにもつながります。
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過多な買収プレミアムを避けるためには
買収プレミアムの発生は仕方ないと思えるかもしれませんが、過多な買収プレミアムは業界全体にとって不利な状況となります。したがって、過多な買収プレミアムの支払いは、企業と業界のためにも避けるべきです。
過多な買収プレミアムを回避するには、「買い手の信頼力の向上」が鍵となります。なぜならば、買収プレミアムが頻発する背景には、会社を売却する相手として不適切な会社が買収を仕掛けている現状があるからです。
せっかく買収後支配権を獲得したものの、結果的に利益を生み出せずに衰退する会社があります。しかし事前に信頼関係を築き上げることで、買収後にしっかりと経営を実施する会社だと、売り手側はその会社に売りたいと考えます。
過多な買収プレミアムを回避するには、シナジー効果の妥当な算出はもちろん大事です。しかし、買収側が会社を売る相手として適切な会社であるのも重要です。
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まとめ
今回は買収プレミアムの理由やメリット、さらに過多な買収プレミアムを避ける方法について解説しました。
買収プレミアム自体は悪いものではありませんが、過度な買収プレミアムの支払いにより会社の価値が逆に下がる可能性があります。買い手は信頼力を大切にして、シナジー効果の算出に見合う金額を買収プレミアムとしましょう。
要点をまとめると下記になります。
・買収プレミアムとは
→買収の際に、企業の時価総額に上乗せされて支払われる現金
・買収プレミアムを支払う理由
→M&Aなどの目的達成の時間短縮、より確実な支配権の獲得、入札競争で勝つため
・買収プレミアムが過多になる要因
→シナジー効果を正確に予測できない、買収が不可能となる不安
・過度な買収プレミアムを回避する方法
→買い手側の信頼性向上
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。