M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新業種別M&A
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却の流れやチェック項目を解説!
スマートフォン・インターネット普及に伴うニーズの高まりを受けて、昨今のEC・ネット通販業界では事業譲渡・事業売却が広く実施されています。EC・ネット通販事業をM&Aで売却する場合には、プロセスの流れや準備方法などを把握しておくと良いです。
目次
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却
はじめに、EC・ネット通販事業および事業譲渡・事業売却の概要を紹介します。
EC・ネット通販事業とは
EC(正式名称:Electronic Commerce)事業とは、電子商取引事業とも呼ばれており、インターネット上でモノ・サービスを売買する行為を事業として手掛けることです。ECは、ネット通販・ネットショップなどを総称する言葉として位置づけられています。
Eコマースと呼ばれることもあるため、合わせて把握しておくと良いです。なお、ネット通販事業は、インターネットをはじめ電話・メール・FAXなどを用いた通信販売事業をさします。定義を見ると、ネット通販事業の方が対象範囲は広いのです。
EC・ネット通販サイトを利用すれば、実店舗を持たなくてもインターネット上にお店を構えられるため、開店費用を削減できます。場所・時間の制約を受けることがなく、売買行為における利便性が高い点も魅力的です。
EC・ネット通販のユーザーは、いつでもどこでも商品を閲覧・購入できます。こうした利便性の高さから昨今のEC・ネット通販業界は大きく成長しており、多くの企業がEC・ネット通販サイトを導入している状況です。
最近では、独自性が見られるWebサイトも多く存在しているほか、コンサートチケット・航空券などもECやネット通販サイトで購入できるなど取り扱い商品の幅が拡大しています。
業界を見渡すと、Amazon・楽天市場・ヤフーショッピングなどの大型EC・ネット通販サイトが存在する一方で、個人が運営する小規模のEC・ネット通販サイトも少なくありません。商品だけでなくサービスも取り扱えるため活用の幅は広く、今後も業界全体で成長が続く見込みです。
事業譲渡・事業売却とは
事業譲渡とは、会社の事業を第三者に譲渡する行為のことです。事業のすべてを譲渡するだけでなく、事業の一部を譲渡することもできます。事業譲渡の対象となるのは、有形や無形の財産・債務・人材・事業組織・ノウハウ・ブランド・取引先との関係などあらゆる財産です。
事業譲渡では、不必要な事業のみを切り離して譲渡できます。そのため、主力事業だけを残して、そのほかの事業を売却する目的で利用されるケースが多いです。ただし、類似する事業の実施が将来的に制限される点には注意が必要となります。
買い手からすると、契約範囲を任意に定められるため簿外債務・偶発債務などの引継ぎを回避できる点がメリットです。また、事業売却とは、対価をもって会社の事業を第三者に譲渡する行為をさします。
事業売却は買い手からの対価支払いが前提となる行為である一方で、事業譲渡は対価支払いが要件となっていません。関係性をまとめると、事業売却は事業譲渡における手法の1種という位置づけです。
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EC・ネット通販を事業譲渡・事業売却する理由
経営者がEC・ネット通販を事業譲渡・事業売却する代表的な理由は、以下のとおりです。
- 後継者問題を解決するため
- 主力事業に集中するため
- 事業転換をするため
- 売却利益を獲得するため
①後継者問題を解決するため
最近は、EC・ネット通販業界だけでなく、さまざまな業界の企業が後継者問題を抱えています。EC・ネット通販事業を展開する企業の経営者が高齢となり引退時期を迎えているにも関わらず、後継者として適任の人材がいないために仕方なく廃業を選ぶというケースが増加中です。
EC・ネット通販業界では、個人規模で事業が展開されているケースも少なくありません。事業譲渡・事業売却は、第三者にEC・ネット通販事業を譲渡する行為です。M&A時の契約内容によっては後継者問題を解決しつつ自身は経営から引退できるため、多くの経営者が実施を検討しています。
②主力事業に集中するため
EC・ネット通販サイトを運営する会社や個人の中には、実店舗を保有しているほか、他に本業を抱えているケースも見られます。こうしたケースでは、実店舗・本業の販路拡大を目的に、EC・ネット通販事業を運営している場合が多いです。
ただし、EC・ネット通販事業を運営するには、人件費をはじめ多くの費用が発生します。事業譲渡・事業売却を実施すれば、EC・ネット通販事業を第三者に譲り渡すことが可能です。事業運営にかかる費用を削減できるため、主力事業への集中を狙う経営者を中心に実施が検討されています。
③事業転換をするため
EC・ネット通販事業を運営する経営者の中には、サイト管理からIT分野などに向けて事業を転換したいと希望する人も見られます。こうしたケースでEC・ネット通販事業を売却すれば、事業転換を狙うことが可能です。
もともとEC・ネット通販事業の運営で多く見られるケースとして、バグの発生で事業がストップするトラブルが挙げられます。システムトラブルを避けながら運営するには、多くの費用が発生するうえにシステム管理のエンジニアと長期間にわたって契約を維持する必要があるのです。
EC・ネット通販を事業譲渡・事業売却すればトラブル回避にかかる維持費などを削減できるため、新事業に着手したい経営者から大きく注目されています。
④売却利益を獲得するため
事業譲渡・事業売却を利用すれば、EC・ネット通販事業の売却対価として利益を獲得できます。ここで獲得した売却利益は、経営引退後の生活資金に充てられるほか、他事業の資金として活用することも可能です。
例えば、サイト構築・アプリ開発などの費用に充てると、自身が持つ他のEC・ネット通販事業をさらに充実させられます。これにより、より大きな付加価値を持つサイトの構築も期待可能です。
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EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却の相場
EC・ネット通販業界には個人運営のサイトから大手企業が運営するサイトまで幅広く存在しており、M&A事例に登場するEC・ネット通販事業の規模も多種多様です。各M&A事例によって規模が異なるため、M&A相場は大きく変動します。
一般的な目安を挙げると、1つのEC・ネット通販サイトが対象となるM&Aでは、500万円〜1,000万円程度で取引されるケースが多いです。大手企業同士による事業譲渡・事業売却では、上記よりも取引価格が高額となる傾向があります。
加えて、大きな人気を集めている分野のEC・ネット通販サイトも、取引価格が高額になりやすいです。昨今のEC・ネット通販業界では、仮想通貨や女性向けのEC・ネット通販などが大きな人気を集めています。
仮想通貨に関するEC・ネット通販事業については、コインチェック事件の影響から数億円単位での買収事例は減少している状況です。とはいえ、依然として人気を集める分野であり、サイトM&Aをサポートする会社には多くの問い合わせが寄せられています。
女性向けのEC・ネット通販事業の買収希望者も多く、特にダイエット・美容・健康・医療・サプリなどに関するサイトが非常に人気です。EC・ネット通販事業と合わせて、メディア会社が運営するアフィリエイトメディア・オウンドメディアなどの買収ニーズも高まっています。
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EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却の流れ
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却の大まかな流れは、以下のとおりです。
- 相場の確認
- 専門家への相談
- M&A相手先の選定
- トップ面談
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終譲渡(売却)契約書の締結
- クロージング
①相場の確認
まずは、売却を希望するEC・ネット通販事業の譲渡・売却相場を把握すると良いです。EC・ネット通販事業の取引価格は、取り扱い商品・サービスだけでなくサイトの会員数やPV数などによっても大きく変動します。
具体的な目安を把握したい場合には、後述するM&Aの専門家へ相談するのがおすすめです。
②専門家への相談
EC・ネット通販事業を譲渡・売却するには、専門知識が必要となります。M&Aの実施は、仲介会社といった専門家への相談を前提に検討すると良いです。ここでは、EC・ネット通販を対象とするM&Aの実務経験を持つ専門家への相談をおすすめします。
専門家に相談して仲介契約を締結すれば、事業譲渡・事業売却を適切かつスムーズに進行可能です。それだけでなく、より良い条件で事業譲渡・事業売却を実現できる可能性も高まります。
秘密保持契約の締結
事業譲渡・事業売却においてM&A仲介会社と仲介契約を締結したときは、合わせて秘密保持契約も締結します。秘密保持契約は、情報漏えいに関する認識・責任の所在を明確にする役割を持つ契約です。
事業譲渡・事業売却において情報漏えいが発生すると、経営者が事業譲渡・事業売却の実施を検討している情報が周囲に知れ渡ってしまい、従業員・取引先などを混乱させるおそれがあります。会社の内情が漏れてしまうと、顧客・取引先などにも不信感を与えかねません。
上記のトラブルを回避するために、秘密保持契約は締結されるのです。M&Aの成否を直接左右する重大な役割を果たすため、確実に締結する必要があります。
③M&A相手先の選定
仲介契約および秘密保持契約を締結すると、M&A仲介会社は譲渡・売却先の選定を開始します。M&A仲介会社にはM&Aアドバイザーが在籍しており、適切な事業譲渡および事業売却に向けたアドバイス・サポートを実施可能です。
具体的には、クライアントの希望・条件を踏まえたマッチングを図ったうえで、適切な相手先として複数の候補者を選定します。選定された候補からさらに絞り込み、好条件で取引できる相手先を吟味したうえで、交渉を開始するという手順です。
なお、事業譲渡・事業売却する企業の情報は匿名扱いされ、支障のない範囲のみを相手側に提示します。その後に相手側が興味を示したら、秘密保持契約を締結したうえで、会社名やEC・ネット通販サイトの詳細な情報を開示して交渉プロセスに移行する手順です。
④トップ面談
売り手・買い手の間でM&Aを進めたい旨の意思確認ができたら、スケジュールを決めた上でトップ面談が実施されます。M&A仲介会社からアドバイス・サポートを受けている場合、面談の仲介役を担ってもらえるケースが多いです。
トップ面談では、買い手から具体的な質問を投げかけられることがあります。事業譲渡・事業売却する理由や目的などを尋ねられることも少なくありません。スムーズに面談が進行するよう、あらかじめ想定される質問に対する回答を準備しておくと良いです。
意向表明書の提示
意向表明書とは、買い手が買収の意思を示すために売り手に対して提示する書類です。意向表明書の提示は必須のプロセスではありませんが、提示によりM&A取引がスムーズに進行する場合があります。
提示のタイミングは、売り手と買い手によるトップ面談において双方の意思が決まった段階です。具体的には、買い手の概要や予定する譲渡価格などが記載されます。
⑤基本合意書の締結
トップ面談によりM&A実施が決定した場合、基本合意書を締結・作成します。基本合意書とは、M&A実施に関する基本的な諸条件をまとめた書類です。基本合意書の内容をもとに、今後のM&Aプロセスが進行します。
基本合意書はM&Aの最終的な同意をまとめた書類ではありませんが、M&Aプロセスを進行させるうえで重要な役割を持つため慎重に締結すると良いです。
⑥デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、売り手の会社にある資産・リスクなどを調査する行為であり、買収監査とも呼ばれています。デューデリジェンスでは、専門家が売り手の会社を直接訪問して調査が行われるのが一般的です。
ここでは、売り手に財務・税務・法務などの資料提出が求められる場合もあります。買い手からすると、売り手の会社が持つリスクに気づかずM&Aを実施すれば、M&A自体に失敗するだけでなくM&A後の経営にまで大きな支障を生じさせかねません。
上記のようなリスクを踏まえて、買い手はデューデリジェンスを徹底して実施します。売り手側においても、デューデリジェンスがスムーズに進むよう、自社内のリスクをあらかじめ整理しておくと良いです。
⑦最終譲渡(売却)契約書の締結
デューデリジェンスが終了して問題がなければ、最終的な契約を締結します。最終譲渡契約書に記載される内容は、買収金額・買収金額の支払い方法・従業員の処遇・最終契約までのスケジュールなどです。
EC・ネット通販の事業譲渡や事業売却では、最終譲渡契約書の締結により買収金額が決定します。双方が納得いく条件であれば最終譲渡契約書が締結され、事業譲渡・事業売却の交渉プロセスが終了する段取りです。
⑧クロージング
クロージングとは、M&Aを実行するプロセスです。事業譲渡・事業売却のケースでは、事業の引き渡し手続きと譲渡代金の支払い手続きを済ませたうえで経営権を移転させるプロセスがクロージングに該当ます。
事業譲渡・事業売却では取引対象となる資産・負債・権利義務を個別的に移管する必要があるため、クロージングにかかる期間は株式譲渡よりも長くなりやすいです。最終契約書により経営者が変更する場合には、サイト運営に関する引継ぎを追加で実施することもあります。
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EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却に向けたチェック項目
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却に向けてチェックしておきたい項目は、以下のとおりです。
- 相場を十分に把握しておく
- 将来性を確認しておく
- 現在の収益・予測される収益を確認しておく
- 優秀なエンジニアの在籍有無を確認しておく
- 特徴的な商品の取り扱い有無を確認しておく
①相場を十分に把握しておく
EC・ネット通販事業を譲渡・売却する際は、取引相場の目安をあらかじめ確認しておくと良いです。M&A実施前に大まかな相場を把握できていると、交渉がスムーズに進みやすくなります。
相場を知らないまま譲渡・売却に踏み切ってしまうと、想定していた売却利益を獲得できないトラブルが発生しかねません。事業譲渡・事業売却では、譲渡する事業・資産(Webサイト)により売却金額が変動します。
人気のあるサイトやPV数・会員数が多いサイトを譲渡する場合には、取引価格が高額になりやすいです。以上の点を踏まえて交渉に臨むと、適切な金額による譲渡・売却の実現に近づきます。
②将来性を確認しておく
事業譲渡や事業売却の実施後も引き続き運営されるため、買い手はEC・ネット通販事業の将来性を重視します。かつてのEC・ネット通販サイトはパソコンによるアクセスが主流でしたが、現在ではスマートフォンからのアクセスも多いです。
パソコンだけでなくスマートフォンにも対応したEC・ネット通販サイトが構築されていると、将来性を評価されることがあります。そのほか、自社オリジナルのブランド・商品・サービスなどが存在すると、将来的な売り上げが期待されるほか他社との差別化もしやすいです。
③現在の収益・予測される収益を確認しておく
魅力的なEC・ネット通販サイトは、販売商品・サービスが定期的にユーザーから購入されています。会員数・PV数が多ければ、それだけ収益を得る可能性が高まるのです。そのため、M&A前にサイトの会員数・PV数をなるべく向上させておくことをおすすめします。
会員数やPV数が多ければ収益性が評価されるほか、事業譲渡や事業売却後も収益が見込めると判断してもらえる可能性が高いです。
④優秀なエンジニアの在籍有無を確認しておく
EC・ネット通販サイトはインターネット上にお店を構えるため、サイトの運営を維持するには優秀なエンジニアが必要です。EC・ネット通販サイトを運営していると、バグの発生によりサイト運営がストップしてしまうことがあります。
上記のようなトラブルに対処するには、適切な技術によってフォローできる体制づくりが必要不可欠です。優秀なエンジニアを保有していれば、EC・ネット通販サイトを安定して運営できる可能性が高まるため、買い手から高く評価されます。
ただし、優秀なエンジニアは高い技術力を持っているために、好条件の会社に転職するケースが多いです。事業譲渡や事業売却によって、優秀なエンジニアが流出しないよう配慮する必要があります。
⑤特徴的な商品の取り扱い有無を確認しておく
EC・ネット通販業界は取り扱い商品・サービスが非常に多く、独自性のある商品・サービスを持っていると買い手は魅力的に感じます。業界全体で競争が激化していることもあり、他社と類似する商品・サービスを提供していては、成長性・将来性を評価してもらえない可能性が高いです。
独自性があり他サイトと差別化できていると、事業譲渡・事業売却を成功させるうえで効果的といえます。
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却を成功させる方法
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却を成功させる方法は、以下のとおりです。
- 自社に関する資料・データをまとめる
- 事業譲渡・事業売却の目的や希望をまとめる
- 従業員・取引先から理解を取り付ける
- 競合と比較したときの強みをアピールする
- M&Aの専門家に相談する
①自社に関する資料・データをまとめる
個人・法人を問わず、適切に事業譲渡や事業売却を済ませるには、事業に関する資料・データをまとめておくと良いです。自社の状態を知らずに事業譲渡や事業売却を決断すると、想定していた結果が得られないおそれがあります。
具体的には、まず自社のEC・ネット通販事業の商品やサービスのほか、月間売上・PV数・会員数・シェア・優秀な人材の有無・技術力・ブランド力などを把握します。そして各項目を分析しつつ、自社の強みと弱みを理解しておくことが大切です。
②事業譲渡・事業売却の目的や希望をまとめる
事業譲渡や事業売却の目的や希望は、事前に精査してまとめておくことが大切です。事業譲渡や事業売却の実施時に目的や希望がまとまっていないと、交渉がスムーズに進行しないおそれがあります。
具体的には、事業譲渡・事業売却の目的について検討しておき、交渉段階で的確に発言する準備をしておくと良いです。また、希望条件については、譲歩できる条件と譲歩できない条件を精査しておく必要があります。
③従業員・取引先から理解を取り付ける
事業譲渡・事業売却を実施すると、EC・ネット通販事業の運営方法が大きく変化する場合もあります。既存のEC・ネット通販事業を引き継がせるため大幅な変更は起こりにくいですが、経営者が交代する場合にはサイトの運営方法が変更されるケースも珍しくありません。
事業譲渡・事業売却の実施時には、取引内容が決定するまで従業員・取引先などに情報が漏れないよう注意する必要があります。取引内容の決定後は、従業員・取引先に内容を開示しつつ理解してもらえるよう配慮しなければなりません。
事業譲渡・事業売却による従業員の流出を防ぎながら、これまでどおり従業員・取引先との関係を継続していくことが大切です。
④競合と比較したときの強みをアピールする
昨今はEC・ネット通販事業を運営する会社・個人が非常に増加しており、競合サイトも多く存在します。自社の事業について、競業他社との相違点を明確にしたうえで、強みとしてアピールすることが大切です。
類似する商品・サービスを扱っている場合には、PV数・在籍するスタッフなどの観点からも強みを洗い出しておくことをおすすめします。
⑤M&Aの専門家に相談する
最近ではEC・ネット通販サイトが非常に多く存在しており、好条件の買い手探しが困難となっています。買い手探しに不安があれば、M&Aの専門家に相談するとスムーズに進める可能性が高いです。
例えば、M&A仲介会社はEC・ネット通販サイトの買収希望者に関する情報を保有しており、豊富なネットワークによって適切な相手先を探せます。マッチングだけでなく事業譲渡・事業売却プロセスをサポートする会社も多く、経営者にかかる手間を大幅に削減することができます。
少しでも良い条件での取引を目指すためにも、M&Aの専門家に相談を持ちかけることをおすすめします。
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却における相談先
EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却プロセスをスムーズに済ませるには、M&A仲介会社に相談すると良いです。M&A仲介会社には弁護士・公認会計士・税理士などの士業資格を保有するスタッフが在籍しているところもあり、事業譲渡・事業売却をはじめとするM&A業務に幅広く対応しています。
WebサイトのM&Aに強い仲介会社に相談すれば、適正価格での売却に向けたアドバイス・サポートを受けることが可能です。
もしEC・ネット通販の事業譲渡・事業売却をご検討の場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。
M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、これまでに培ってきたノウハウを活かしてEC・ネット通販のM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)相談料は無料となっておりますので、EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却を検討している場合にはお気軽にご相談ください。
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EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却における成功事例
最後にEC・ネット通販の事業譲渡・事業売却における成功事例を時系列順に紹介します。
- インタートレードによるヴィーダへの事業譲渡
- wajaによるデファクトスタンダードへの事業譲渡
- アジア開発キャピタルによるCreative Forestへの事業譲渡
- ハモンズによるエイジアへの事業譲渡
- 琉球インタラクティブによる沖縄セルラー電話への事業譲渡
①インタートレードによるヴィーダへの事業譲渡
2020年1月、インタートレード(東京都中央区)は、ヴィーダ(東京都渋谷区)に対して、連結子会社であるインタートレードヘルスケアの通信販売事業を譲渡すると発表しました。本件事業譲渡の取引価格は、非公開とされています。
インタトレードヘルスケアは、機能性キノコ「ITはなびらたけ」の生産・加工・販売・研究を中心に手掛ける会社です。自社グループ商品をはじめ、「食・健康・美容」に関する健康補助食品・化粧品も販売しています。
本件の譲渡対象は、他社商品も取り扱う通信販売事業およびECサイト「健康いいもの Online」です。買い手であるヴィーダは、会員コミュニティーの運営をはじめ、Webサイト・コンテンツの配信・企画運営・イベント事業などを展開する会社です。
本件事業譲渡は、売り手からすると、自社商品の販売に経営資源を集中させて収益力・企業価値の向上を目指した事例といえます。
②wajaによるデファクトスタンダードへの事業譲渡
2019年8月、waja(東京都港区)は、デファクトスタンダード(東京都大田区)に対して、電子商取引事業を譲渡すると発表しました。本件事業譲渡の取引価格は、7,000万円と報告されています。
売り手であるwajaは、世界のバイヤーが仕入れた商品を販売する「WORLDROBE」や、「REASON アウトレット」などを運営する会社です。このほか、ファッションアイテムの寄付・購入で社会貢献できる通販サイト「FASHION CHARITY PROJECT」も運営しています。
買い手のデファクトスタンダードは、リユースブランドやファッション商品などをECサイトにて販売する会社です。自社販路として、「ブランディアオークション」も展開しています。
本件事業譲渡は、買い手からすると、保有する販路を利用しつつ販売力の強化を目指した事例です。売り手が持つ新品商材を取り込むことで、品揃えの強化も図られています。
③アジア開発キャピタルによるCreative Forestへの事業譲渡
2019年7月、アジア開発キャピタル(東京都中央区)は、Creative Forestに対して、EC事業を譲渡すると発表しました。本件事業譲渡の取引価格は、3,000万円と報告されています。
売り手のアジア開発キャピタルは、主に投資事業を展開する会社です。2017年4月には、中国在住の顧客を対象とする越境ECサイト「銀聯在線商城日本館」の管理・運営などを手掛けるChina Commerceを連結子会社化しています。
しかし経営環境が悪化したことで、2018年7月に同社を吸収合併していました。吸収合併に伴い、越境ECサイトの管理・運営事業をEC事業部として承継したうえで規模を縮小しています。買い手であるCreative Forestは、ECサイト制作・運営・コンサルティング事業を展開する会社です。
本件事業譲渡は、売り手からすると、質屋・中古品売買事業・中国における日本食レストラン事業・マレーシアにおけるPKS供給事業などのコアビジネスに対する経営資源の集中を目指した事例といえます。
④ハモンズによるエイジアへの事業譲渡
2018年8月、ハモンズ(大阪府大阪市)は、エイジア(東京都品川区)が新設する子会社に対して、ベビー服EC事業を譲渡すると発表しました。本件事業譲渡は、3,300万円と報告されています。
売り手のハモンズは、EC小売業事業者向け在庫管理クラウドサービス「FULL KAUTEN」の開発・運営だけでなく、ベビー服に特化したECサイトも運営する会社です。買い手のエイジアは、メール配信システムを軸とするマーケティングコミュニケーションシステムなどを運営しています。
本件事業譲渡は、買い手からすると、売り手にあるノウハウの収集・活用によって主力製品の機能強化を目指した事例です。
⑤琉球インタラクティブによる沖縄セルラー電話への事業譲渡
2016年7月、琉球インタラクティブ(沖縄県宜野湾市)は、沖縄セルラー電話(沖縄県那覇市)に対して、通販サイト「沖縄特産品本舗」を譲渡すると発表しました。本件事業譲渡の取引価格は、非公開とされています。
売り手の琉球インタラクティブは沖縄発のインターネットベンチャー企業であり、2009年5月より運営していた「沖縄特産品本舗」は沖縄の特産品・お土産品・お取り寄せ商品を幅広く取り揃えた通販サイトです。M&A時点の取扱商品数は2,000点以上と、沖縄最大級のECサイトとなります。
買い手の沖縄セルラー電話は、電気通信事業を手掛けており、携帯電話サービスを提供する会社です。本件事業譲渡は、売り手からすると、買い手の経営資源を活かして、ECサイトにおける取扱商品のさらなる拡充・沖縄県産品の売上拡大を目指した事例といえます。
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まとめ
スマートフォン・インターネット普及に伴うニーズの高まりを受けて、昨今のEC・ネット通販業界では事業譲渡・事業売却が広く実施されています。EC・ネット通販事業をM&Aで売却する場合には、プロセスの流れや準備方法などを把握しておくことが望ましいです。
事業譲渡や事業売却により経営者が交代する場合には、大規模な事業転換が起こる可能性もあるため注意が必要となります。適切に譲渡・売却を済ませるには、専門家のアドバイス・サポートを受けると良いです。要点をまとめると、下記になります。
・EC・ネット通販事業とは
→インターネット上でモノやサービスを売買する行為を事業として手掛けること
・事業譲渡・事業売却とは
→会社の事業を第三者に譲渡する行為
・EC・ネット通販を事業譲渡・事業売却する理由
→後継者問題を解決するため、主力事業に集中するため、事業転換をするため、売却利益を獲得するため
・EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却の相場
→500万円〜1,000万円程度で取引されるケースが多い
・EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却の流れ
→相場の確認、専門家への相談、M&A相手先の選定と、トップ面談、基本合意書の締結、デューデリジェンスの実施、最終譲渡(売却)契約書の締結、クロージング
・EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却に向けたチェック項目
→相場を十分に把握しておく、将来性を確認しておく、現在の収益および予測される収益を確認しておく、優秀なエンジニアの在籍有無を確認しておく、特徴的な商品の取り扱い有無を確認しておく
・EC・ネット通販の事業譲渡・事業売却を成功させる方法
→自社に関する資料やデータをまとめる、事業譲渡や事業売却の目的や希望をまとめる、従業員や取引先から理解を取り付ける、競合と比較したときの強みをアピールする、M&Aの専門家に相談する
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鉱業業界ではM&Aが活発化しています。資源需要増大や規制緩和が背景にあり、大手鉱業企業は新興市場や環境配慮型鉱業への投資を進めているのが鉱業業界の現状です。鉱業のリスク管理はM&...
木材業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2023年最新】
この記事では、木材業界のM&A動向について説明します。木材業界では、専門技術の獲得、コスト効率の向上のためにM&Aが活用されています。木材業界におけるM&A・売却・買収事...
漁業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!
魚介類などの海洋資源は私達の生活に欠かせないものですが、漁業業界は厳しい市場環境が続いています。そのような中で、事業継続のためのM&Aを模索する動きも出てきています。この記事では、漁業業...
農業業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!
農業業界では担い手の高齢化と後継者不足による廃業危機に加えて、新型コロナをきっかけとした出荷額の低迷で経営状態が不安定化し、M&Aを検討せざるを得ないところが増えています。この記事では、...
海運業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!
この記事では、海運業界の動向を説明したうえで、海運業界でM&Aを行うメリットを解説していきます。近年のM&A・売却・買収事例も紹介して、M&A動向についても紹介していきま...
株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。